2030年には労働人口が644万人不足する(※)といわれ、企業にとって、人材の確保はますます困難になると予想されています。そんな中、企業の採用方法も変化しはじめています。今回の特集は、新しい採用方法として企業が注目し、パーソルグループでも広がりつつある「リファラル採用」! リファラル(referral)とは「推薦・紹介する」という意味で、リファラル採用は社員に人材を紹介してもらう採用方法のこと。紹介といっても、親族など血縁関係者を中心に紹介を受けて特別に入社となる「縁故採用」とはちがい、社員の信頼のおける方を紹介してもらうというものです。リファラル採用のメリットには、マッチング率の向上や応募側も知人から会社の魅力や社風を聞いていることから、リアリティショック(理想と現実のギャップに悩むこと)が起きにくいなどがあげられています。 でも、それって本当? そんな素朴な疑問に応えるべく、MyReferのメディア「HR Lab.」とコラボ!ingでは「リファラル採用 人事編」を、HR Lab.では「リファラル採用 入社者・紹介者実例編」をお届けします。 ingでお送りする今回の「リファラル採用 人事編」では、リファラル採用活性化クラウドサービス「MyRefer」を取り入れ、新卒採用に活用しているパーソルキャリア株式会社と、中途採用に活用しているポスタス株式会社の担当者にお話を伺いました! (※)パーソル総合研究所 労働市場の未来推計 2030 |
■お話を伺ったリファラル採用担当者はこのお二人
安藤 輝人 パーソルキャリア 人事本部 新卒採用部
2017年に新卒で入社し、人事に配属。入社2年目の際にリファラル採用制度を立ち上げ、社内に浸透。現在は、名古屋などの中部エリア採用とリファラル採用、企画職採用、社内の採用力向上施策など複数プロジェクトのオーナーを務める。
【リファラル採用導入の目的】
就職ナビなどの応募を待つスタンスでは出会えない学生と出会いたい、マッチング率を高めたい、というのが目的。2018年の夏からスタート。
山崎 晴夫 ポスタス 中途採用担当
2010年にパーソルプロセス&テクノロジーに新卒で入社し、5年間エンジニアとしてシステム開発を行う。その後、自ら希望して人事部へ移動。新卒採用の責任者を務め、2018年からクラウド型モバイルPOS+(ポスタス)の中途採用を担当。
【リファラル採用導入の目的】
POS+を提供するチームの組織を本格的に立ち上げるため、その組織づくりが目的。2018年からリファラルの中途採用をはじめる。
リファラル採用・入社の醍醐味は、一般採用では見つけにくい出会いの創出!
――どのような方から紹介があるのですか?
安藤:パーソルキャリアの新卒採用では、2019年度の1年間で合計1500件超の紹介があり、そのうち9割は、入社前の内定者からの紹介です。
山崎:私の部署では、中途で入社して間もない方からの紹介が多いですね。「知り合いにPOSシステムをつくっている人がいるから、紹介してみようかな」という感じでエンジニアの方を紹介してくれます。あとは、飲食業界に詳しいサービス業界の方。POS+はサービス業界へのサービスなので、業界のミッションに共感をしてくれる方には紹介しやすいんだと思います。同じ飲食業でも、たとえば居酒屋やファーストフードの店長さんからキャリアチェンジした方もいらっしゃいますよ。
――それはリファラルならではの大きなキャリアチェンジですね。
山崎:そうですね。異業界からIT業界への転職となると、求職者としては、自分が今後どう活躍できるかイメージしにくい。だから、自分から応募するというのはハードルが高いんだと思います。紹介された方にお会いすると、紹介者から同じような経歴で活躍している方の情報を知っていたとしても、「ずっと店長だったんですけど、できますかね?」って心配される方が多いですから。
安藤:新卒でも、同様のことがいえますね。たとえば理系の学生にとって、人材業界は就職先としてイメージしにくく、自分から応募はなかなかしてくれない。でも、理系の内定者が大学やゼミで後輩に「実は理系の社員って多いよ」「パーソルキャリアの選考会に参加すると成長に繋がるよ」など、知っている情報や、選考時の体験などを伝えてもらうことで、「じゃあ1回行ってみようかな」と、選考に来てもらえたりするんです。
山崎:紹介者に会社のことを理解してもらうのって、大事ですよね。中途採用の場合ももちろんですが、紹介者が内定者だとまだはたらいたことがないですしね。
安藤:ええ。だからこそ、紹介者側である内定者に、パーソルキャリアがどんな会社で、どんな人材を求めているのか、しっかり情報を伝えないといけないと思っています。そうしないと、せっかく紹介してもらっても、採用基準と合わなかったり、学生が大事にしている価値観とちがったり、「結局お互いにマッチしなかった」という結果になってしまう。一般的にリファラル採用はマッチング率が高いといわれていますが、情報をちゃんと伝えていないと…。たとえばパーソルキャリアでも、一時期リファラル応募のほうが一般応募よりも不合格率が高いということがありました。
紹介者は、自社の企業理念や目指すところを理解し、当事者意識を持つことが重要
――自社を理解してもらうために、実際に取り組んでいることはあるのでしょうか?
安藤:当社では、掲載された社員のインタビュー記事や、採用責任者が採用基準や「こういう人を採用したい」と話している記事などを、内定者に向けてSNSで発信したり、メールマガジンを配信したりしています。
また、紹介してくれた内定者の方を大切にしようというプロジェクトも動いています。紹介者が「MyRefer」のシステムに書いてくれたコメントを面接官に共有したり、リクルーターがきちんと「〇〇さんの紹介だよね」と伝え、コミュニケーションをとるようにしています。小さいことだけれど、それが大事だと思っています。
山崎:私のところではリファラル推進チームをつくっています。「どうしたら活性化するかな?」というようなミーティングを月1程度で行っています。そうすることで、会社のいまのフェーズを理解して、課題にチーム皆が当事者意識を持てるので、リファラルで友人に自社を紹介するときにも企業理念や目指しているところ、求める人材像などをしっかりと伝えられるんですよ。
安藤:当事者意識って大切ですよね。
パーソルキャリアの内定者は採用というものに対しての理解や、誰かのキャリアに関わっていくという意欲が高く、そこはよかったなと思いますね。内定者の中には、「後輩を紹介する」という枠を超えて、自身の感じたパーソルキャリアの説明会や選考に対する課題感や解決策を、採用責任者に提案をしてくれる学生もいました。
――リファラル採用の制度をつくるだけではうまくいかないんですね。リファラル採用はメリットが語られがちですが…。
安藤:リファラル採用制度をつくっても紹介してくれる方がいないと意味がありませんし、誰でもいいというわけではなく、やはり自社にマッチした方を紹介してほしいですよね。求める人材を紹介してもらうには、こちらの情報をきちんと伝えないと、と思っています。なので、ほかの採用手法に比べて工数はかかりますね(笑)。
山崎:中途採用も同じです。工数はぜんぜん減らない(笑)。でも、リファラル採用でマッチング率はアップしました。通常募集に比べて、入社率は約3倍にもなります。
安藤:新卒採用もマッチング率はアップしましたね。応募から内定までで3倍強。ナビやイベントなど、あらゆる手法の中でもっともマッチング率(エントリーから内定承諾に至る率)が高いです。
一般応募者もリファラル紹介者も選考方法は同じ!
紹介者は、企業のターゲットを把握したうえで紹介を。応募者は、紹介者の話をふまえ、最後は自分で判断することが大事!
――マッチング率アップの背景に、一般応募者とリファラル推薦者で、選考や面接の方法に違いがあったりするのでしょうか?
安藤:選考方法に明確な違いはありません。紹介時に書かれているコメントは読みますし、紹介者側に「どんな人?」と聞くこともありますが、それは判断材料になりません。あくまで通常の選考と同じく、パーソルキャリアに向いているかどうかを確認します。
山崎:中途採用も同じです。ただ、中途採用の場合、会社のフェーズによって、いまは採用できないけど2年後だったら…、ということもあります。なので、面談でたとえ不採用だったとしてもその後も接点を持てるように、面談の前に呑みに行ったり、カジュアル面談を行っています。そうすることで、不採用になった方が友人を紹介してくれたケースが実際にありましたよ。
――紹介する側に気を付けてもらいたいポイントはありますか?
山崎:会社の悪いところをどんどん話してほしいですね。自社のことだから、紹介する際にどうしても魅力的に語りがちになるんです。事業が成長しているとか。でも、成長段階には成長痛がある。私もカジュアル面談のときにきちんと話しをするようにしていますが、チーム内の細かい部分など人事から見えない部分に関しては、紹介者に話してもらうようにお願いをしています。入ってからギャップが生まれるのはよくないですから。
安藤:僕たちは、採用基準やパーソルキャリアの価値観が合っている方であれば、パーソルキャリア(人材業界)に興味がある方だけに留まらず、紹介してほしいということをお願いしたいですね。
業界をまだよく知らない方でも、たとえば「ベンチャーマインドがある方」「早く成長したいという思いがある方」も当社が求める人材像なので、アプローチできる幅を広げていきたいと考えています。
――紹介される側に気を付けてもらいたいことはありますか?
山崎:友人がいるからといって、その会社が自分に合うとは限らないということです。入社の意思決定をする前に、自分に合うかどうかを再度きちんと考えてもらいたいですね。
安藤:新卒採用の場合も同じです。大切なことは人によって違います。選考を通過して、意志決定フェーズに近付いてきたら、先輩の話のすべてを鵜呑みにしないで、自分にとっての軸は何か、立ち返って考えてほしいですね。それがないと、入社後に「先輩にこういわれて入社したけれど違った…」ということになりかねない。「意思決定するときは、先輩に惑わされず、自分で決める」を実践してほしいと思います。
山崎:志望動機を聞いたとき、「紹介者がこういっていたから」という方がいます。「大丈夫かな?」と思うときもあります。それがマイナスになるわけではないんですけどね。
リファラル採用は、お互いにとってWin-Winな取り組み。組織づくりにも一役!
――最後に、リファラル採用は一般化していくと思いますか?
山崎:はい。でも、リファラル採用を成功させるには、会社がリファラルを強制するのではなく、社員に「採用を自分ごと化」して考えてもらうことが大切です。ですから中途採用にリファラルを取り入れるのは、組織づくりの観点からも良いと思います。企業はやるべきだと思いますね。
安藤:新卒採用でもリファラルを推進していくべきだな、と思います。「自社に合う人を紹介してもらう」リファラル採用は、企業・就活生のお互いにとってWin-Winな採用方法です。現在の「たくさん集めて、たくさん落として、一部の人だけに入社してもらう」という選考・採用方法は、人事側、学生側、両方にとって非効率。それに、応募してくれるのを待つだけの採用方法は、応募者が多かった時代のもの。いまは待つだけではなく、学生にどう共感してもらえるか、共感してくれる方に入社してもらうにはどうすればいいかを考え、実行し、自ら後輩に紹介したくなる文化をつくっていけるようにするのが必要だと思っています。100人が応募して、100人が入社するのが理想。「合う人を紹介してもらう」リファラル採用を推進していきたいですね。
――ありがとうございました。
「リファラル採用 人事編」いかがだったでしょうか?
リファラル採用は、攻めの人事。紹介されたら、「どう活躍できるかわからない…」などと思わず、まずは選考に行ってみるのがおすすめです。ただし、入社の意思決定は自分でしっかり考えて決めることが大切、というお話でした。紹介しようかな?紹介されたけれどどうしよう…、と考えている方、ぜひ参考にしてみてください。
「リファラル採用 入社者・紹介者編」について
リファラル採用を活用して、声をかけ、声をかけられ、いま同じ職場で勤務するお二人のお話【リファラル採用 実例編】は、MyReferのメディア「HR Lab.」でご覧いただけます。 お話を伺ったのは、パーソルキャリア サービス企画開発本部 サービス開発統括部に勤務する三口 聡之介と髙澤 竜司。前職でも上司・部下であり、今も上司・部下の関係である三口と髙澤は、約2年前に4か月の差で入社。三口は転職後まもなく、髙澤に声をかけパーソルキャリアに誘ったといいます。 |