不安だった初めての外国人採用、今は“日本人職員に刺激を与える存在”に。活躍の鍵は「安心して仕事ができる環境づくり」

外国人材を労働者として受け入れるにあたり、2019年4月より新設された「特定技能」。「技能実習」とは異なり、人材不足が深刻な14の特定産業分野においての知識や技能が認められるとともに、日本語能力も一定の水準に達している外国人材に与えられる在留資格です。
2020年、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一時日本国内での受け入れが中止されていましたが、今月3月1日より再開の動きが出ています。

外国人材に特化した人材サービスを展開するPERSOL Global Workforce(パーソル グローバル ワークフォース)株式会社では、2019年よりさまざまな職種の特定技能人材の募集・育成、就業支援を行ってきました。特別養護老人ホームの運営やデイサービスなどを展開する社会福祉法人山水苑も、PERSOL Global Workforceが支援してきた法人の一つです。

山水苑は、昨年10月、同法人では初めての外国人材となる介護の技能実習生として、3年前から日本ではたらき始めたスリランカ人のミカさんを採用しました。今回は、山水苑の山本さんと菊池さんに、採用に至るまでの流れや活躍の場をつくるための工夫を、そしてミカさんには、現在はたらく中で感じていることを聞きました。

社会福祉法人山水苑
2007年3月に特別養護老人ホームを開設して以来、居宅介護支援、ショートステイサービス、デイサービスの高齢者福祉事業を行っている茨城県の社会福祉法人。
ご利用者やご家族に寄り添いながら地域の方々に喜ばれる事業を行っています。
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山水苑 山本さん・菊地さんインタビュー

──外国人材を採用されたきっかけを教えてください。

山本さん:介護業界は「採用困難業界」と言われており、我々も年齢や性別・キャリアなどを限定せず幅広く採用活動を行っていますが、必要な人員を思うように確保することがままならない状況が続いています。

そうした中、日本人だけでなく、海外の方でもご縁があったら採用していきたいと検討し始めていたときに、ちょうど行政からも「特定技能」の話題が出始めたんです。自治体の方にご相談していく中で、他社での外国人採用の実績も少しずつ聞こえてきたので、山水苑も本格的に外国人材を採用することになりました。

山水苑 山本さん

──通常は、国内だけで募集を行うと何名くらいの方が応募されるのですか?

山本さん:一概にお答えできないのですが、2020年度は、近隣にお住まいの方含め幅広い層にお声がけしました。山水苑は地域の介護事業所の中でも、求人への問合せをいただく件数が比較的多い方だと思うのですが、それでもやっと目標の採用人数に達したと思ったらまた欠員が出て……といういたちごっこを繰り返しているような状況です。日本国内の未経験者でも介護業界に興味を持ち、チャレンジしたいと思ってくださっている方は一定数いらっしゃいますが、もっと多くの方に、新たな就職の選択肢として「介護」を考えていただくためのはたらきかけをする必要があると思っています。

また、応募するにあたって、安定して長期的なキャリアを築けるかが不安になってしまうことも、介護業界にチャレンジする上でのハードルとなっているようです。介護業界の人材採用難を解決するためには、具体的なキャリアビジョンの提示や待遇改善など、介護業界に興味を持ってくださっている方に、日々より良く変化していく職場環境についてもっと知っていただく必要もありそうですね。

──一方、今回人材不足の解決策として初めての外国人材、ミカさんを採用されました。採用後4カ月が経った今の感想はいかがでしょうか?

菊池さん:はい、彼女はすでに技能実習生として3年間日本で仕事した経験があったので、言語の面などはある程度対応できるだろうと思いつつも、やっぱり初めての外国人採用だったので、不安はありました。3カ月以上経った今感じているのは、当初想定していたよりも、楽しく一生懸命はたらいてくれている、ということです。もちろん言葉や文化の違いをお互いに100%理解できているとは言えませんが、日々、コミュニケーションを積極的に取っているので、仕事に対する意欲が伝わってきますし、ミカさん本人も周りも大きな困難は感じていないようです。

──日本人職員の反応はいかがでしょうか。

菊池さん:本当に良い意味で刺激を受けています。日本人でも明るい性格の方はいらっしゃいますが、ミカさんは常に明るくハキハキとしています。「楽をして仕事をしよう」という考えがまったくなく、大変な仕事でも積極的に取り組んでくれるので、彼女を見て「こんな風にはたらきたい」と感じる職員もいると思います。
利用者である高齢者の方に対しても、利用者というよりも、自分のおじいちゃん、おばあちゃんのような感覚で優しく接してくれるので、利用者自身やそのご家族からの評判も良いです。

山本さん:やはり仕事に対するモチベーションは日本人と比べても大きく違うように感じます。仕事をするにあたり、国も、言語の壁も乗り越えるというのはかなり勇気のいることですし、入職への動機が違いますよね。私たちは日常の延長として仕事というものを捉えて、ややもすると、日々漫然と過ぎていってしまうということも多いと思いますが、彼女たちは、「はたらく」のための最初のアクションが「国境を超える」という非常に大きなチャレンジからスタートするので、仕事に対する姿勢や意欲の面でその違いは確実に感じます。

「特別養護老人ホーム山水苑サテライト」のロビー

──外国人材の採用・定着にあたり、気を付けていることを教えていただけますか。

山本さん:今後、外国人材の採用を検討している事業者の方もたくさんいらっしゃると思います。山水苑はこれまでも、採用したばかりの職員との面談を積極的に行い、不安を取り除いて安心して仕事ができる環境をつくることを心掛けてきました。それは、外国の方を採用した場合でもまったく同じです。
国や文化の違いに関しての心配もあると思いますが、まずはその人自身と向き合う「コミュニケーション」を大事にしていけば、大きな問題は発生しないと思います。

山水苑としては、最初の外国人材としてミカさんが入ってきてくださったことは、本当にラッキーなことでした。私たちが予想していた以上に、周囲の職員と自然に慣れることができておりましたし、利用者の方々もすぐに受け入れられていましたから。
また、昨年10月以降、ミカさんと一緒に仕事をすることで、外国の方とのコミュニケーションでどのような壁に当たりやすいのかを想定しやすくなりました。それを踏まえ、今後は日本語の言い回しなどを工夫していく予定です。

【ミカさん1問1答】

仕事中のミカさんの様子

Q.最初日本に来たきっかけは?
A.もともと日本に留学したいと思っていましたが、技能実習生として日本に来るチャンスがあったので、3年前に来ました。そして今年、特定技能に在留資格を変更して、山水苑ではたらくことになりました。

Q.特に日本に興味を持ったのはなぜですか?
A.もともと日本の文化が好きでした。あとは、いろんな観光地にも行ってみたいなと思っていました。同じアジアの国というのも良かったです。

Q.普段仕事をしていない時はどのように過ごしていますか?
A.いろんな観光地を回るのが好きだったんですが、いまはコロナで行けなくなったので、映画を見たり、本を読んだりしています。マンガも好きです。

Q.仕事をしていて特にうれしい瞬間はいつですか?
A.仕事で褒められると、とてもうれしくなります。周りのみんなが優しく、いろんなことを教えてくれるので助かっています。

Q.日本語で好きな言葉や、表現はありますか?
A.「かしこまりました」みたいな、日本ならではの敬語が好きです。独特です。

Q.今後の目標があったら教えてください。
A.今年7月にある、日本語能力試験を受験する予定です!

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