スポーツビジネスは、新たな時代へ。「Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD 2019」を開催

「スポーツ」と「ビジネス」の垣根を越えた先に、新たな価値が生まれる。

パーソルホールディングス株式会社は、Forbes JAPANとともにスポーツビジネスアワード「Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD 2019」を開催しました。
当アワードは、「アスリートの能力やスポーツの楽しさ」と「異なる分野」を掛け合わせる「新結合」によって、新しいスポーツの価値を生み出す挑戦者たちにスポットを当て、支援する取り組みです。「ワールドクラス賞」「ローカルヒーロー賞」「イノベーション賞」「キャリアデザイン賞」「テクノロジー賞」の5つの表彰部門で受賞者を決定し、10月31日、東京ミッドタウン日比谷にて、計5組の受賞者の表彰と、選考に加わったアドバイザリーボードによるトークセッションが行われました。

目次

当日のプログラム

当日は、受賞者への表彰のほか、「Forbes JAPANが考えるスポーツビジネスの可能性」「スポーツビジネスで新しい市場・価値を⽣み出すには︖」「“世界を変える” ⽇本の意外な得意分野」という、3つのテーマでトークセッションが行われました。受賞事例などから伺える最新のスポーツビジネスの潮流や、ビジネスとして成功するポイント、今後の日本におけるスポーツビジネスの可能性などについて語られました。

本記事では、オープニングセッションとして行われた「Forbes JAPANが考えるスポーツビジネスの可能性」の内容を、一部抜粋でご紹介します。このセッションには、本アワードのアドバイザリーボードの一人である、パーソルキャリア株式会社の⼤浦 征也が登壇しました。

オープニングセッション「Forbes JAPANが考えるスポーツビジネスの可能性」

●登壇者
大浦 征也(パーソルキャリア株式会社 執行役員)
斎藤 隆氏(MLBサンディエゴ・パドレス 球団本部・環太平洋顧問兼アドバイザー(ゲストアドバイザー))
藤吉 雅春氏(Forbes JAPAN 編集⻑)

●セッションの内容(一部抜粋)

スポーツの可能性は、まだまだ引き出せる

藤吉氏:本アワードの企画にあたって斎藤さんにメジャーリーグの経営などについてお話を伺った際、「ビジネスだけを考えれば、スポーツでなくても良いはず。なぜ、企業が球団を持ったり、スポーツビジネスに加わるのかを、しっかり考えた方が良い」というお言葉をいただき、大変参考になりました。

斎藤氏:スポーツとお金との関わり方を、どう考えるかですね。たとえば、日本とアメリカのスタジアムにおける大きな違いは、何だと思いますか?実は、アメリカの野球場には必ず、ほんの一部ですが、柵越しに試合が観れる「無料観戦ゾーン」のようなものがあるんです。ここでは、どんな経済状況の子どもでも、野球が観れる。そういう子どもは「座席で見たい」と父親にねだり、なけなしのお金で外野席に連れて行ってもらう。いつかその子は大人になり、収入を得て、今度は内野席のチケットを買う。そして次は、「もっと偉くなってバックネット裏やVIP席で観たい!」と願う。スタジアムの構造一つとっても、そういう一連のストーリーを描いて設計されているんです。

藤吉氏:スタジアムがファンをつくり、人を育てるということですね。

斎藤氏:はい。単にスポーツ界における雇用だけでなく、このように関わる人の「夢」をつくるのも、スポーツビジネスの大切なところだと思います。

大浦:日本でも、広島東洋カープの本拠地であるマツダスタジアムにはそのような無料ゾーンがありますが、まだまだ少ないですよね。いま、北海道日本ハムファイターズが新球場の建設計画を進めていますが、この構想には「野球をやるというだけのスタジアムではなくて、街そのものをデザインしよう」という発想があります。たとえば、スタジアム周辺にMICE(※)などを目的にミーティングルームをつくって、仕事の打ち合わせをするためだけに球場に来ても良いし、ショッピングモールなどをつくって、買い物だけのために来ても良い。でも、通り道に、ちょっとだけスタジアムの中が見えたりする。そうすると「今度行ってみようかな?」と思う人をつくることができる。これが、コミュニティデザインに繋がっていくのだと思います。単に、駅に近いところにスタジアムをつくるというだけでなく、小さな工夫で地域を活性化したり、そもそも、その地域にいなかった人を呼んだりなど、まだまだやれることは多いと思います。

(※)Meeting、Incentive、Conference(またはConvention)、Exhibition(またはEvent)の4つの頭文字を合わせた言葉

藤吉氏:アイデアひとつで、そんなにお金もかけずに実現できることもありそうですよね。

大浦:あとは、いままでスポーツに関わっていなかった方々が、いかに携わっていけるかということも、すごく重要です。

斎藤氏:これからつくるものだけではなく、いまあるものでも、ポテンシャルが高いものはあると思うんですよ。たとえば、保育園の子どもたちや老人ホームの方々の健康推進を、ドクターやパーソナルトレーナーとタッグを組んで実施したり。立派なビジネスとして成り立つんじゃないかなと思います。オリンピックだけがスポーツを盛り上げるわけではなくて、「地域にもっと寄り添う」「健康でいる」ということは、スポーツビジネスを考えるうえで、本当に大事にしなきゃいけないところだと思うんですよね。

大浦:いままでは、スポーツの領域にテクノロジーやビジネスが入ってきて、スポーツをアップデートしているような構造が多かったですよね。私は、スポーツが本来持っている力やエネルギーを、社会課題の解決に繋げていきたいと思っています。たとえば、地方出身のトップアスリートの中には、ゆくゆくは地元に戻りたいという方もいます。そういう方々が地元に戻ったときに、ジムのような施設や、おじいちゃん・おばあちゃんをケアする施設ではたらくということだってできる訳です。

プロフェッショナルが、スポーツ教育も進化させる

藤吉氏:学校の「部活」にも、いろいろな課題があります。

大浦:「スポーツは、必ず部活でやらなければいけない」「学校の部活は必ず学校の先生が顧問で教えなくてはいけない」という考えが根付いていましたが、部活ではない形でスポーツを行っている学校はすでにたくさんあります。有名なのは、東京都千代田区立の麹町中学校。部活動の顧問の多くを、外部から雇った専門家に委託したり、地元のクラブチームに参加させたりということをしています。

藤吉氏:これまでのスポーツビジネスの関係って、「お金を払って観戦する」というように、プロとお客さんが、完全に分断されていたように思います。でも、もう少しその垣根を低く、融合させていける気がしますよね。そのあたりに、ビジネスのチャンスがあるのではと思いました。

斎藤氏:僕が経験した日本の教育というのは、たとえば10点が一番スポーツができる人で、1点が苦手な人だとしたら、5点前後の生徒に向けた指導が中心だったと感じています。でも、そこに外部のプロの方が参画すれば、トップレベルの技術も教えられるし、あまり上手ではない子たちにも「ボールを怖がらないようになるにはどうすればいいか」などの考え方を教えることも可能だと思うんです。学校の先生だけでは、難しい部分も多いと思います。

藤吉氏:確かに、型にはめたものを教えてしまいがちなのかもしれませんね。スポーツは楽しいものですから、その楽しさを、どうやってスポーツ以外の世界と融合させていくのか。これが重要なテーマになる気がします。

垣根を越え、新たな価値を生み出していく

藤吉氏:斎藤さんも所属されていたボストン・レッドソックスでは、弁護士資格を持った超エリートの方がGM(ゼネラルマネジャー)になって以降、快進撃を進めていますよね。野球の専門家ではない方がチームに入ってきたことに、違和感はありましたか?

斎藤氏:まったく無いですね。アメリカでは、投資家がGMになっていますし、一般的ですよ。データならデータのスペシャリスト、映像なら映像のスペシャリストが、アメリカにはいます。彼らスペシャリストが持っているのは、野球の経験値ではなく「数字を抽出する能力」。そして、それを現場に指摘していくとき、「私が重要なのはこの数値だと思うけど、ピッチングコーチの〇〇さん、ここはどう思いますか?」という柔軟なコミュニケーションができる存在も必要です。現在メジャーリーグの監督の年齢がどんどん若くなっているのは、このようなことも背景にあるのかもしれません。

大浦:異業種からスポーツ業界に転職している方々を見ると、何かしらかの専門分野を持っている方が多いのは事実だと思います。某ドラマでも、そのような光景が描かれているものがありましたね。マーケティングやグッズ販売の領域を含め、特定の分野に詳しい方が、新たにスポーツとの関わりを持ちはじめています。

藤吉氏:誰でも、スポーツに関われるチャンスと可能性があるということですよね。

大浦:ビジネス界の方々が、スポーツ界に関わりやすくなってきていると思っています。その逆もあって、スポーツ界の人がビジネス界で活躍するという事例も見られます。スポーツとビジネスの垣根が取り払われていくと、社会課題も解決できるかもしれないし、もっともっと健康な国になっていくかもしれません。そういうことに繋がる可能性を秘めているのが、スポーツなんだなと感じています。

斎藤氏:そうですね。野球の現場では、普段ブルペンではすごく良いピッチングをするのに、マウンドではできない選手がいます。そのとき、一体の中で何が起きているのか…。その究明のスタートは、ヘルスケアの領域だったりします。野球の知識だけで解決できることには限界がありますし、異業種とのコラボレーションを積極的にやっていかないと、新しいものは生み出していけないのではないかと感じています。

「Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD 2019」 受賞者一覧

・ワールドクラス賞:富士通株式会社 ─体操の採点支援システム
・ローカルヒーロー賞:徳島県阿南市 ─「野球のまち」推進
・イノベーション賞:公益社団法人日本プロサッカーリーグ、株式会社コナミデジタルエンタテインメント ─eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン
・テクノロジー賞:株式会社ookami ─Player!
・キャリアデザイン賞:AuB株式会社 鈴木 啓太 ─腸内フローラ解析ベンチャーの起業

各受賞者の取り組み内容、受賞対象については特設サイトにてご覧下さい。
【Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD 特設サイト】はこちら

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