「社会課題」の現場ではたらくって?「ソーシャル・ワークスタイル フォーラム2019 by doda」を開催

社会課題の最前線で、自分らしくはたらくには?ソーシャルビジネスのリアルを知る一日。

パーソルキャリア株式会社は、社会課題の解決に向けて、ビジネスの手法でソーシャルビジネスを担うNPO・NGO・ソーシャルベンチャーなどの「ソーシャルセクター」の多様なはたらき方についての情報を提供し、ソーシャルビジネスに興味のある「はたらく個人」が、自分に合ったかたちでソーシャルセクターへ参画することを支援するイベント「ソーシャル・ワークスタイル フォーラム2019 by doda」を、新公益連盟の後援を受け、11月16日に、ベルサール飯田橋ファーストで開催しました。

●開催背景
「人口減少社会」「環境問題」「貧困」といった社会課題の解決を目指すソーシャルビジネスへの関わり方は、新たな時代に突入しています。近年の「働き方改革」や「副業兼業解禁」といった流れを受け、プロボノやパラレルキャリア、NPOやベンチャー企業への留職などの新しいはたらき方が広がりつつある中で、ソーシャルビジネスへの関わり方も多様化しています。他方、従来の市民団体やNPOだけでなく、事業で自立していく事業型NPOや、株式会社を法人格としたソーシャルベンチャーも増加。一般企業のような給与体系・はたらく環境で、さまざまな職種を募集する団体も増えてきました。
こうした時代の変化を受け、ソーシャルビジネスに関わりたい「はたらく個人」が、自分に合ったはたらき方で、自分の興味のある社会課題に取り組むきっかけを提供するため、本イベントの開催に至りました。

本記事では、当日の講演やトークセッションのレポートをお届けします。

基調講演 「あなたらしい働き方で社会課題に取り組もう」

最初に、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の島田 由香氏による、基調講演を行いました。
(以下、講演内容を一部抜粋)


人には、「繋がっていたい」「認められたい」、そして「貢献したい」という3つのニーズがあります。きっと、ここにいらっしゃる皆さんも、そのようなニーズを強くお持ちなのではないでしょうか。
ここで、皆さんに一つ問いかけをします。皆さんにとって「自分らしさ」とはどういうことでしょうか?私は、これがすべての物事の根幹にあるテーマだと思っています。

「自分らしさ」を考えることは非常に重要です。なぜなら、そうすることで、自分を満たすことができるからです。私たちは、自分で自分のことを満たしているからこそ、ほかの人を満たすことができます。自分はどんなときにエネルギーでいっぱいになるのか、もしくは元気がなくなってしまうのか。それを知ることは、すごく効果的です。今日この場にいらっしゃる方は「いろんな人に貢献したい」という気持ちを強くお持ちの方も多いかと思います。そんな皆さんだからこそ、自分を満たすということを、ぜひ意識してほしいです。

では、「自分を満たす」はどういうことでしょうか。これは「どうすれば幸せだと感じていられるか」という問いに繋がります。幸せには、「地位財」と「非地位財」という2つの種類があります。地位財は、役職、お金、家、車など。これらもとても大切です。そして、非地位財は、感謝されたり、誰かの役に立っているという感覚。長続きするのは、この非地位財だということが分かっています。どんな非地位財が自分を満たすことになるのか、一度、意識を向けてみると良いかもしれません。

最後に。私たちは一秒ずつ、生まれた瞬間から、死に向かっています。あなたの大切な人生、あなたの大切な時間、あなたの大切な命を使って、あなたは何をしたいのかを、ぜひ考えてみていただきたいと思います。使命という言葉は、「命を使う」と書きます。すべての人が、それを生まれ持っています。人それぞれの使命に魂を震わせながら、豊かに生きてほしいと思います。


SESSION_01 社会課題現場ではたらくリアルトーク ~やりがい、お金、待遇、働き方~ 

最初のセッションは、NPOなどの社会課題現場に転職した社員やプロボノメンバーによるトークセッションを実施。社会課題現場ではたらく理由ややりがい、年収、待遇といったリアルなお話を、それぞれのはたらき方とともに語り合いました。

大手広告代理店と国際コンサルティング会社を経て、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに転職した尾崎 文則氏は、自身が転職した理由について「ビジネスの世界でキャリアを積み上げた先にある自分の姿と、社会課題に打ち込む自分の姿を想像して比較したとき、後者の方が“いい死に際”を迎えられそうだと感じました。自分は何のためにはたらき、何のために生きるのか。そのような自問自答をした結果、それは有名な企業ではたらくことではないと思ったんです。」と語りました。

認定NPO法人サービスグラントの柴岡 久美子氏は、スキルについても言及。「プロボノに参加するとき『私なんかでお役に立てますか?』とおっしゃ方は多いです。もちろんそれはあるのですが、参加することで、ご自身が気付いていなかったスキルや、それまで見えていなかった世界に気付ける、という光景をよく目にします。と語りました。

また、「転職して得られたことは?」の問いに対し、READYFOR株式会社の小谷 菜美氏は「私が得たのは、“当たり前ではない環境”。一般企業にあったさまざまなものが存在せず、『何ではたらくんだろう』というところから考えければいけません。当たり前にあるような制度やルールも『自分がどうやるか』を主体的に考えられるのは、すごく良い環境だと感じています」と語りました。

SESSION_02-1 社会課題にビジネスで取り組むとは

次に、NPOという非営利組織ではなく、ビジネスとして社会課題現場の最前線で取り組む2社によるトークセッションを実施。ビジネスで取り組む意義や今後のソーシャルビジネスの未来について語りました。

株式会社キズキの安田 祐輔氏は、「株式会社で事業を行うことで、採用のしやすさ、意思決定のスピーディーさ、資金調達の難易度の緩和という3つのメリットを感じています。私は株式会社とNPOの両方を運営していますが、株式会社では事業を、NPOでは政策提言をする、というように役割を分けています。」と語りました。

株式会社ボーダレス・ジャパンの鈴木 雅剛氏は、「近年、ビジネスの捉え方が、誰かを蹴落として自分が利益を稼ぐのではなく『人や自然を大切に、サステナブルでなければいけない』という風潮に変わってきています。ソーシャルビジネスは、そのような新しいビジネスのあり方をつくり、新しい社会を再構築していくビジネスである捉えていただきたいと思います。」と語りました。

SESSION_02-2 これからのNPOの可能性について

次のセッションでは、日本を代表する団体3社が、今後のNPO・NGOの未来について対話しました。

特定非営利活動法人 Learning for Allの李 炯植氏は「我々NPOは助成金や寄付で成り立っています。規模を大きくすれば利益が出るモデルでありません。法律や政策にアプローチして、一人でも多くのお子さんが国・社会の責任のうえで守られ、幸せに暮らせる制度設計や、地域社会づくりをしていきたいと思っています。」と語りました。

認定NPO法人フローレンスの駒崎 弘樹氏は「NPOで大切なのは、どれだけの人を助けたか。どれだけのインパクトを社会に出せたかだと思っています。社会に課題があったら、まずNPOが課題の答えになるようなモデルを、小さくていいのでつくる。そして制度化する。制度化すれば、誰もが取り組めるようになります。点としての問題解決を面として問題解決にしていける。これがNPOの社会の変え方、戦い方です。これができるというのが我々の強みであり、希望なんです。と語りました。

認定NPO法人かものはしプロジェクトの村田 早耶香氏は、「ひとつの団体では支援できる人数に限界があることに気付き、いま、いろいろな団体と連携を取りながら活動を進めています。また、うちで勤務する人のためにも待遇面は、家族を養えるぐらいまで水準を上げてきました。副業もOKです。やりたいことをできるほうが、みんながハッピーだし、うちではたらくことに意味を見出してほしいと思っています。と語りました。

SESSION_03 総括 社会課題解決をキャリアの選択肢にするには
最後に、多様なはたらき方でソーシャルビジネスを実践している松田 悠介氏と、「doda」の編集長を務める大浦 征也による総括のセッションを実施。

大浦は「社会課題というと、壮大で縁の遠いイメージを持つ方も多いと思います。私もそうでした。でも、みんなが『自分の子どもに、幸せな人生を送ってほしい』と思うだけでも、未来は明るくなっていくと思うんです。いま目の前にある課題を、全員が一つずつ取り組んでいけば、きっと、社会も少しずつ変わっていきます。まずは、少しだけ問題意識を持って、ちょっとだけ行動を変えたり発信したりしていくことが大切なのだと思います。」と挨拶し、イベントを締めくくりました。

本イベントには、さまざまな社会課題の解決に取り組む23団体が参加。トークセッションや各団体のピッチを通じて、社会課題の最前線ではたらく社員のリアルな声を伝え、350名を超える参加者の方へ、ソーシャルビジネスの現場ではたらくイメージを深めていただく機会となりました。

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