1枚のスケッチを、まったく新しいモビリティとしてカタチにするまで ― PERSOL Group Awards 2023受賞の裏に(10)一山 倫弘 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2023年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第10回目は、パーソルクロステクノロジー株式会社の一山 倫弘です。

一山が手掛けたのは、現在吉野ヶ里遺跡をはじめとする観光地のイベントなどで活躍する『PARTNER MOBILITY ONE』というベンチ型自動運転モビリティ(※)の開発。大学と大学発のベンチャー企業とともに連携したプロジェクトであり、10カ月間という短期間で完遂させたものでした。

(※)モビリティとは、交通手段や移動手段に関わるモノ・コト全般を指す。

目次

はたらきながら、やりたいことを探す。幅広い学びを期待した、技術者派遣

一山は新卒で、日本テクシード株式会社(現在のパーソルクロステクノロジー)へ入社しました。当時の選択を振り返り、「やりたいことが分からなかった自分には、技術者派遣というはたらき方は魅力的に映った」と言います。

「正直に言うと、当時はやりたいことがなくて。私が通っていた大学は工業系で、周りはメーカーに就職する人が多かったのですが、自分は、絶対ここだ、と思う場所が見つかりませんでした。そこで興味を持ったのが、さまざまな企業へ技術職として派遣してもらうはたらき方。いろいろな企業、いろいろな製品に触れることで、はたらき始めてからやりたいことを探すこともできるのではと期待していました」

入社後5年ほどで、「技術的に学びたいと考えていたことは一通り経験できた」と一山は言います。その後、企業へ派遣される形から、企業の依頼を受け受託でものづくりを行う形へ、はたらき方を変更。年次が上がるとプロジェクト全体を統括するようになりました。

「最初は企業へ派遣されるはたらき方をしていたのですが、途中から企業からの受託でものづくりをするはたらき方になりました。形は変われど、さまざまな製品や技術を担当できる点では変わりません。そのときどきでやるべきことがまったく異なり、都度勉強が必要になる点は大変であり面白いです。年次が上がると、プロジェクトリーダーを任せてもらうことが増えました。その都度、担当する一つの技術やものなどを深めていくことも面白いのですが、プロジェクトリーダーは、プロジェクト全体を見渡しながら、予算の管理やスケジュール・進捗管理もできる。よりビジネス的な視点を鍛えられる。今では、プロジェクト全体の管理をすることに関心を持つようになりました」

「浮いた箱」のようなスケッチを、いかにモビリティへ落とし込むか

今回アワードを受賞したベンチ型自動運転モビリティ『PARTNER MOBILITY ONE』の開発は、久留米工業大学発のベンチャー企業からの依頼。大学と大学発のベンチャー企業とともに連携したプロジェクトでした。
『PARTNER MOBILITY ONE』は、2015年から久留米工業大学のインテリジェント・モビリティ研究所(所長:東 大輔)が研究開発と実証試験を進めてきた対話型AI自動運転システム「Intelligent Mobility Systemを搭載した複数人乗りの小型自動運転モビリティです。車両開発の企画・統括は久留米工業大学が担当。設計開発は、自動車開発で高い技術と実績を有するパーソルR&D、車体のデザインはLe DESIGNが担当しました。

「『観光施設などの敷地内における新しい移動手段をつくりたい』とのことで、ご相談をいただきました。近い考え方で開発された既存のモビリティもあるのですが、一人乗りで車椅子型のものが多かったんです。それぞれが車椅子型の車両に乗って移動するのでは会話がしづらいし、1人が乗って1人が車椅子を押すような形だと介護のような感覚になりやすく、ユーザーに抵抗感が生まれると。そこで、2、3人が一緒に乗り、会話を楽しみながら移動できるモビリティをつくりたいと望まれていました」

従来型とは異なる、コミュニケーションの取れるモビリティ。しかしそれがどのようなものか、プロジェクト発足当初、一山らのチームは頭を悩ませたと言います。

「大学側から提示されたスケッチは、本当にただ『箱が浮いている』ような見た目のもの。当初はプロジェクトチームも、これってなんだろうと考えるところからのスタートでした。これは開発後に試乗イベントを開催する際、警察に車両許可を求めたときの話なのですが、警察から『これは何?二輪車?軽車両?分類しにくいなぁ(笑)』と笑われたくらい。現物のモビリティが完成していても警察が困惑するくらいですから、プロジェクト発足時の我々はもっと頭を悩ませていました。何でモビリティを動かすのだろう。車輪?キャタピラ?って、そんな感じでしたね(笑)」

必ず専門家が応えてくれる。組織風土が、強みとなった

開発期間は、約10カ月間。モビリティ製品の開発期間としてはかなり短い期間です。一山らは、この10カ月の半分ほどを、「何をつくるか」の設計に費やしたと言います。

「『どうつくるか』の技術的なところよりも、『そもそも何をつくるのか』を明確にする難しさがありました。教授の望むような、浮いている箱はつくれないわけですから。スケッチがどんな意図で提示されたものであるかを紐とき、モビリティとして落とし込む作業が必要だったんです」

そこには大学側とていねいに打ち合わせると同時に、現実的に使える手段や事実を調べ提示する作業が必要でした。

「たとえば、『複数人で乗ってコミュニケーションがとりたい』という話を深掘りしながら、『じゃあ3人で乗れるくらいの箱を一旦想定しよう』と決める。すると人間3人くらいの平均的な身長や体重をもとに、乗れる『箱』の大きさや材質を決められます。あるいは『なぜ箱型なのか』を深掘りして、『車輪がむき出しになる車両感が強いものは避けたい』ということが分かれば、車輪やキャタピラ部分まで箱で覆うようにしようと決められる。つくるもののイメージが次第に固まるにつれ、その重さに耐えられるモーターは、合うバッテリーは、と細かいところが徐々に決まります。3人くらいが座って乗れる車輪の見えない、観光地での移動手段をつくるというゴールを明確に定めることがこのプロジェクトには重要でしたね」

全体のゴールが不明瞭な状態で走り始めたプロジェクトの中で、パーソルクロステクノロジーの体制や社風が、非常に役に立ったと一山は言います。

「車両開発の知見に富んだ方はもちろん、電気の専門家、機械の専門家など、専門家がたくさんいる。その上それぞれの専門家同士の垣根が低い組織風土であることに助けられた感じています。。『自分の専門外のことは何をやっていても、関係ないよ』なんて姿勢の人はいません。投げかければ、必ず応えてくれる。何をつくるかが明確ではない中でも、さまざまな専門家の連携があると、進むべき道が見えてくることはあるのだと思いました。それが、パーソルクロステクノロジーとしての強みなのだと思いますね」

会ったことのない高校生にまで仕事が届いた

「はたらいて、笑おう。」について聞けば、「技術者としては、つくっているものの、でき上がりが見えてきた瞬間が、一番はたらく楽しさを感じる」と、一山。そして、「ただ、このプロジェクトではそれ以上に、はたらくことのうれしさを感じる出来事もありました」と続けます。

「『PARTNER MOBILITY ONE』の試乗イベントに、高校生が来てくれたんです。来場者のほとんどがイベント会社や観光業界の方の中、高校生は目立っていて。最初は『なぜ?』と思いました。しかし話を聞くと『技術系の高校で学んでいて、将来こういうモビリティをつくる仕事がしたいんです』と。近い業界の方だけでなく学生の方が興味を持って、自分もやりたいと言ってくれたことが、個人的にはとてもうれしかった。知らない誰かにも届く仕事なのだなと感じました」

派遣も受託も、そして設計もプロジェクトリーダーも。多様な経験をしてきた一山が、次に思うことは、どんなことなのでしょうか。

「これは個人的な展望なのですが、パーソル独自の製品なども考えられないだろうかと思うんです。単にお客さまから『こういうものをつくってください』と依頼されるのを待つだけではない組織になれたらもっと面白いのかもしれない。これまで蓄積してきた多様な技術や経験があるから、『もっとこんなものをつくりませんか』とこちらから提案したり、パーソルとしての独自製品なんかもつくれたりしたら面白いかもしれないですよね。一つの技術に絞るのではなく、さまざまに学んでいく、そしてそれが活かせる楽しさを、もっと経験していきたいです」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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