女性活躍推進のカギは徹底した「機会の公平」。トップが語り合うDI&Eの今とこれから

3月8日の国際女性デーに際し、パーソルグループは3月13・14日の2日間に渡り特別オンラインイベント「『はたらく』女性と日本の未来を、本気で考える」を開催します。

ダイバーシティな社会づくりの重要性が高まる中で、「はたらく」においても、一人ひとりの多様な在り方が重視されています。しかし、長年叫ばれてきた「女性活躍推進」というテーマには、まだ多くの課題が残されています。本イベントでは、多様な「はたらく」を広めるために何ができるのか、そして女性の可能性を広げるためにどんなことが必要か、有識者の方々をお招きし、さまざまな切り口で議論します。

本イベント開催にあたり、パーソルホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO 和田 孝雄と、パーソルキャリア株式会社 執行役員で、グループ横断で女性活躍と女性管理職比率向上に向けた施策の検討と実行を推進し、人材育成や両立支援の加速を目指す「ジェンダーダイバーシティ委員会」委員長も務める喜多 恭子が対談。今回のイベントテーマに通じる女性活躍への想い、さらに、グループとして強く掲げる「機会の公平」について語りました。

※パーソルグループでは、Equityを講じてInclusionとEqualityを目指す姿としていることから、Diversity, Inclusion & Equalityと表記します。

目次

「自分たちらしい女性活躍」、推進の鍵は「トップの覚悟」

──パーソルグループとして、女性活躍についてどのように考え、推進しているのでしょうか。

和田:パーソルの出自であるテンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)は、1973年に篠原欣子が創業した会社です。当時の女性は社会に出て活躍できる場が多くありませんでした。「ないならば、自分でつくろう」と、オーストラリアのテンポラリースタッフ(派遣社員)のシステムを取り入れて起業したのです。
性別に関係なくはたらきたい人たちが「はたらく場がない・選択肢がない」という世の中の負を解消することが、パーソルグループの創業当時からの想いと言えます。

女性に限らず、障害のある方や外国人の方も、誰にとっても選択肢があり、はたらきがいのある状態をつくる。その第一歩として、女性のはたらく環境を整え、機会の公平をつくっていきたいというのが、我々の「女性活躍推進」に関する根本の考え方ですね。

和田 孝雄
パーソルホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO
1962年11月京都府生まれ。立命館大学 法学部 法学科卒業後、1988年スパロージャパン入社。人材派遣事業のビジネスモデルに可能性を感じ、1991年テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)入社。技術者派遣や事務派遣、IT統括部、アウトソーシング領域などを経て、2006年取締役、2016年代表取締役社長に就任。2008年パーソルホールディングス取締役、2020年取締役副社長、2021年4月代表取締役社長 CEO。「不易流行」を経営の信条とする。趣味はジョギングと読書

──そんな目標を掲げる中、喜多さんがジェンダーダイバーシティ委員会の委員長に就任した理由を教えて下さい。

喜多:実は過去にも何回か、女性活躍に力を入れようという機運がありましたが、なかなかうまくいかなかった取り組みもあり、本気で「女性活躍推進」を進められるのか、少し疑心暗鬼になっていたところもありました。

今回お受けするにあたり「トップがしっかりコミットしない限りは私自身もお引き受けするのは難しい」と、率直に和田さんにお話しさせていただきました。その上で、ざっくばらんに対話を続けていく中で、和田さんがトップとして必要性を感じて推進する覚悟があるとわかり、引き受ける決断をしました。
一例ですが、以前グループ全体で進めようと決まっていた施策が、ダイバーシティ推進観点からすると変更しなければいけないと感じたことがありました。そこを相談したら、和田さんは「その変更が本質的に女性活躍推進のためであればやろう」と言ってくれて。トップの覚悟が垣間見られたことに、安心感を覚えました。

喜多 恭子
パーソルキャリア株式会社 執行役員、パーソルグループ・ジェンダーダイバーシティ委員会 委員長。
1999年、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)入社。派遣・アウトソーシング事業、人材紹介事業などを経てアルバイト求人情報サービス「an」の事業部長に。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年に執行役員・転職メディア事業部 事業部長。2022年4月より人事本 部長に就任

──喜多さんが見るパーソルグループの今の女性活躍はいかがですか?

喜多:「我々らしい女性活躍とは何か」と聞かれたら、フェアネスを意識して、いかに機会が公平である状態をつくるかということだと思います。
先ほどの和田さんのお話にもあった通り、誰にも同じ選択の機会があるということが、結果として社会を変えていく一歩にもつながると、そうした考えをベースに推進しています。

2030年までの女性管理職比率目標、なぜ「37%」なのか?

──パーソルグループでは、2030年までに女性管理職比率を「37%」にする目標を掲げています。一般的に目にされる政府指標の「30%」より高い数値を掲げている理由はなぜでしょう?

和田:これが、パーソルグループの男女比率だからです。組織によっては半数が女性の部署もあれば、9割が男性の部署もありますが、グループ全体としては63%対37%が男女比となるので、そこに合わせて管理職も同じ比率で上がっていくのが筋だよね、というシンプルな考えからきています。

政府指標を超えることが目的ではなく、本当に機会を公平に提供していった結果、管理職も同比率である状態が当たり前なのでは、と。

喜多:私もこの考え方には賛成でした。フェアネスの考えから、男女ともに同じ機会を与えられて同じ選択ができる環境であれば、自然と37%になっているはず。なので、この数値は個人的にもしっくりきました。逆にこれが40、50となると、高い目標の数字だけが独り歩きしちゃうんじゃないかなと。数字にあわせるために実態に沿わない施策を進めたり、本来の「フェアネス」の考えと反する行動をしてしまったりするのでは、本末転倒です。

女性の立場からも、高い数字を目標として掲げられても「目標を達成するためにやるだけ。本当は何も変わっていない」と、違和感が生まれると思います。そうではなくて、「この数字がフェアだから」という考えと一緒に伝えれば、腹落ちしやすいはずです。

「6万通り」の人生のための選択肢を提供したい

──社内で和田社長と女性管理職との座談会も実施しているそうですが、参加されてみて、どのような印象をお持ちでしょうか。

和田:当たり前の話ですが、人は一人ひとりがまったく違う環境、状況の中で生きて、はたらいているんだなと、改めて実感しますよね。

「男だから、女だから」と一括にするのではなく、結婚の有無、子育てや介護のようなライフステージの変化、一人ひとり人生が違うのは当たり前で、みんな各々の状況でさまざまなチャレンジをしている。それを今までは当たり前と考えずに「仕事をするなら出世や昇進が何より大事」と、短絡的な考え方をしていたな、と。
その人の状況や属性に左右されない平等さを提供していかなければダメだし、そのために、まず「機会の公平」を整える。それこそ我々が考える「はたらく」につながることだと、強く思いました。

──一方で、多様性を重視するほうが、ビジネスや組織運営としては難しい部分があります。

和田:はい、とても難しいですよね。

私たちは、人材サービスを提供する側として、これから一層個々に細分化された「はたらく」に関するさまざまな支援をしていくことが、成長のトライバーになるととらえています。
一人でも多くの方にはたらく選択肢を提供するためにも、まずは会社として、今国内で社員としてはたらいている約6万人のために、6万通りの人生の選択肢を提供したい。選び方によって選択肢もどんどん枝分かれしていって、何百万通りもの道があるでしょう。「はたらいて、笑おう。」のグループビジョンへの向かい方は、いろいろな道や登り方があっていいよね、という意識を共有したい。これが、我々の目指す経営ですね。

細かいバイアスも、取り除きたい

──DI&E(Diversity, Inclusion & Equality)の取り組みを推進する中で、さまざまな気付きがあったと思います。具体的に挙がった声や、それを起点に行動したことなど、お聞かせください。

喜多:たくさんありますが、パーソルキャリアの例を挙げると、まず管理職登用のプロセスを見直しています。管理職への着任意向をメンバーに聞くと、男性よりも女性のほうが着任を望む割合が低かったのです。なんでだろうと、疑問に思ったので、調べてみた結果、女性の方が男性社員より自分を過小評価したり、周囲からの評価に自信を持てないケースが一定数あることが分かりました。

十分に結果を出しているにも関わらず自信のなさで迷ったり、不安で躊躇してしまった結果、面接官がその印象をそのまま受け止めてしまって「まだ無理かも」と誤認する事態が起きてしまう。

それらを防ぐために、パーソルキャリアでは面接官や上長と相談し、二段階面接の取り組みを始めたんです。

今後3年ほどのスパンで見たときに、管理職候補となる女性がなん人くらいいるのかを洗い出し、その人たちが管理職になるにはどのように成長していくとよいのかを上長にヒアリング。委員会としても管理職候補を把握して育成の手伝いをします。昇進のタイミングで対象者が推薦に挙がってこなかったら、なぜ上がらなかったのかを聞き、対策を考える。ここには第三者機関として人事も同席してもらい、客観的にも見てもらっています。来年度からは、このような管理職登用における取り組みをグループ全体でも推進していきます。

和田:これは非常に大切な取り組みなんです。上長や面接官は「覚悟があるのか」と問いたいわけですが、この「覚悟」という言葉の受け取り方は人それぞれ違うので、そこをつまびらかにしながらプロセスをしっかり踏んでいかなければならない。みんな次のステップへの不安があるのは当たり前のはずなのに、「覚悟がある」という言葉が言えるかどうかだけで差がつくのはおかしい。

また、現在はまだ管理職に男性が多い分、面接官も男性が多い。その状況も変えていかなければと思います。第三者視点も入れながら、しっかりとしたプロセスにそって決めていくことが重要です。

──2022年4月時点で、グループ内女性管理職比率は22.9%で、前年比+1.4です。施策が効きはじめているからですね。

喜多:圧倒的に効いていると思います。「多様性を活かし、組織成果を最大化するマネジメント手法」をグループの全管理職が学んだあと、各グループ会社の人事やジェンダーダイバーシティ委員会に入っている仲間たちが、各個社に一番合うやり方で、評価や着任意向の施策を一斉に実施できたのが、数字がグッと上がった背景です。

言語化できない「しんどさ」、自分のせいだと思いこんでいた

──喜多さんは90年代のご入社ということで、まだまだ女性がはたらいてキャリアを積み上げていくのは大変なときだったと思います。具体的にどんなハードルがありましたか。

喜多:当時は、性別による待遇の差というものをそもそも自覚していなかったんですよね。言語化できないしんどさがあっても、性別の違いからくるバイアスが原因であるとか、まったく気付かなかったです。

モヤモヤしながら自分で勉強をしたり書籍を読む中で「これは性別の違いからくるしんどさだったのか」「私は特に間違ったことをしているわけではなかったんだ」と思えました。

たとえば、一日のやることには、掃除や洗濯などの家事も含まれるじゃないですか。でも、遅い時間にも会議が入ったりして、家事がまったくできない。当時はそれが当たり前というか。不妊治療をしていたときも、突発的に病院に行かなければいけない日があっても、上司や周囲に言えなくて。今考えたら、これも性別からくるハードルだと分かりますが、当時はそれが性差からくる障壁だとか、「選択肢や機会が公平ではない」だとか、私自身、気付かなかったです。同レイヤーに同い年くらいの女性がいなかったのも大きな要因かもしれませんが、「私だけがおかしいのかな」と感じ続けていましたね。

「100年続く企業」となるための、3つの重点施策

──女性活躍推進の施策の中の1つとして、来年度から実労働時間の削減にも注力される予定と伺いましたが、その背景について教えて下さい。

和田:全体の残業時間を減らし、同じ時間内でどれだけ成果を挙げられるかに目線を変えていくようにしたいですよね。その上で優秀なパフォーマンスを出した人が、昇進・昇格の対象となる。

長時間労働はずっとは続きませんし、もっと言うと、それを是とする考え方は「機会の公平」を見えにくくすると思うんです。

目先のことだけを考えれば、残業ができる人のほうが会社にとってメリットと感じるかもしれませんが、私たちはこのグループを5年10年で終わらせたいと思っていません。100年、200年続く企業になるためにも、長い目でみて持続性のあるはたらき方を実現するほうが、個人にとっても会社にとっても価値があると思います。そうした考え方を文化や風土に昇華させていきたいですね。

──今後の重点施策として、実労働時間削減、女性管理職比率の向上のお話を伺いましたが、男性育休取得はいかがでしょうか。

和田:はい、男性の育休取得推進にも力を入れなければなりませんね。ただ今はまだ、育休制度は整っていても実際に取得すると報酬が減ることや、その間の人員調整も含めて「周りを考えると取りづらい」状況などの課題が顕在化してきているので、そうした課題を洗い出しているところです。

育休を取得した男性から「子育てはダブルタスクどころかクアトロタスクでめちゃめちゃ大変です」という意見が出たりしました。
こうした育児の大変さや「ままならなさ」を知るのは、多様性への理解が深まったり、個人の価値観を広げたりすることにつながります。それは普段の仕事にもいい影響を与えると思いますし、そうした理解が広まるような会社にしていきたいと思っています。

女性管理職比率の向上、実労働時間の削減、男性育休取得、大きな施策から小さな施策までいろいろな角度から実践し、生の声を拾い上げて改善していきたいですね。
また、これらの取り組みをしている中で、きちんと前進していることをグループの皆さんにちゃんと認識してもらうことも重要です。一つでも積み上げられている、結果が出て少しずつでも良くなっているんだということを示していくのは、経営者としても重要視したい点です。

喜多:3つの重点施策をしっかりと推進するためにも、まさに和田さんのいう風土、カルチャーの醸成が大切だと思っています。目標を掲げて達成しても、社員が「体感がない」「選択肢がない」という状態にならないように、一歩ずつしっかり進んでいることを伝えながら、意見を取り入れて、形にしていきたいと思います。


2023年3月13日・14日に、特別オンラインイベント「『はたらく』女性と日本の未来を、本気で考える」を開催します。
有識者とともにさまざまな切り口から、女性活躍、そしてDI&Eについて考えます。詳しくは以下の特設サイトからご確認ください。

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