“はたらくWell-being”をすべての人に。パーソルグループによる難民包摂の取り組み2024(前編)

パーソルグループでは、多様な人材の新たなキャリア支援として、紛争などを理由に他国から逃れて日本へ来た方々を対象としたキャリア支援活動を開始しました。本記事では、2023年から2024年にかけて動き出したさまざまな取り組みを前・後編に分けてご紹介します。

目次

「助けてあげる」でなく、協働する社会へ

まずは現在、社会貢献活動として、パーソルグループの複数の難民・避難民支援活動のプロジェクトマネジャーを務めているパーソルキャリア株式会社の伊藤 剛から話を聞きました。

難民包摂とパーソルグループの接点は、どこから生まれたのでしょうか。

伊藤:難民包摂は、企業が対応を求められる「ビジネスと人権」の文脈でも重要なアジェンダの一つとして挙げられるようになってきました。「難民」と聞くと、一方的に助けるだけの関係をイメージしがちですが、パーソルグループ内で以前から難民問題に関心を寄せている社員たちは、ほかの国から日本に逃れてきた方を「弱き者=難しい民(難民)」としてではなく、「ともに日本で暮らす人材」として見ています。難民や避難民の方々を日本の経済活動を支える人材として受け入れていくことは、彼女/彼らの経済的自立・人生再建につながります。また、彼女/彼らを受け入れた職場では「DEI(Diversity, Equity & Inclusion)」の理解と実践が進み、そこから新しいモノ・サービス、日本らしい共生文化が生まれ、日本社会全体がよりたくましく成長していくと考えています。このように考えているのは、私たちだけでなく、最近では「人的資本経営」の枠組みで、難民の就労受け入れを捉えている企業も現れています。

<パーソルグループのビジョンと難民包摂>

さまざまな非営利団体と提携して難民・避難民の方々のキャリアをサポートする

パーソルグループでは、難民・避難民のキャリア支援をしているさまざまな非営利団体と対話や連携を開始。現在は、直接的な支援をしている一般財団法人パスウェイズ・ジャパン、NPO法人WELgee、独立行政法人国際協力機構(JICA)、中間支援組織の一般社団法人Welcome Japanといった団体と対話を重ね、それぞれの活動に参加しながら、国を逃れてきた方々のキャリア形成を支援する取り組みを進めています。

こうした取り組みの一つとして、Welcome Japanの活動に伊藤も参加し、「難民包摂による日本の共生社会の実現とイノベーション立国推進」「難民や避難民を含む外国からの移住背景を持った人材がはたらきやすい環境整備推進」といった就労に関する取り組みを行っています。その中で今、形になりつつあるものの一つが、組織の文化的多様性指標「Cultural Diversity Index(カルチュアル・ダイバーシティ・インデックス)」です。

<「Cultual Diversity Index ベータ版 実践教材と指標一覧>

Cultural Diversity Indexは、どういった背景から開発されたのでしょうか。

伊藤:この指標は、その組織・企業の文化的多様性(民族、人種、肌の色、文化・慣習、言語、宗教などに関係なく、多様な人々が快適に自身の能力を発揮できるはたらく環境であること)を測る尺度で、文化的多様性を包摂した職場環境を推進するガイドラインとなるチェック項目と実践方法の具体例をまとめたものになります。NPO/NGO法人、教育機関、パーソルグループを含む企業などのメンバーで構成されるチームで開発しました。評価尺度も完成させた上で、「難民や避難民を含む海外からの移住背景を持つ人々も働きやすい職場環境」の認証制度として運用していく予定です。原案となるベータ版を2023年6月18日に発表し、現在、アップデートをしている最中です。2024年6月20日の「世界難民の日」に、第1回目の認証企業を発表するべく、認証に参加いただける企業を広く募っていきます。

2023年6月18日に開催された「Cultural Diversity Index」ベータ版発表会で指標の説明をする伊藤
「Cultural Diversity Index」ベータ版発表会の記念セッションには、パーソルグループから、外国人材の就労環境に詳しいPERSOL Global Workforce株式会社 代表取締役社長の多田 盛弘も登壇

外国の方がはたらきやすい社会なら、日本人ももっとはたらきやすくなる

一般的な日本のはたらく人にとって、外国の方がはたらきやすくなることは、どのような効果があると思いますか。

伊藤:すでに、日本に在留する外国人は307万人と、過去最多を記録しています。しかし、なかなか日本独自のはたらく環境に慣れず、生きづらさを感じている方もいます。こういった方々のはたらきやすい環境づくりを支援することについて、「なぜほかの領域に手を付けずに難民、外国人ばかりひいきするのか?」というご意見をいただくこともありますが、難民・避難民や外国人のはたらきにくさのみを解決したいわけではありません。

というのも、「難民」や「外国人」という背景だけを持った人というのはいません。複数の背景が組み合わさっているのが通常です。文化的多様性を受け入れ、はたらきやすい会社をつくっていければ、日本のさまざまな個性を持つ方も同じように包摂されると考えています。この指標の視点・考え方は、ほかのマイノリティの方々を包摂していく際にも、役に立つものです。外国の方であるが故の肌の色、文化・慣習、言語、宗教だけでなく、価値観・ジェンダー・育児・介護など、さまざまなことを抱えながらはたらく多様な人材を活用する環境の推進を通じて、個人・組織の成長を支援したいという考えが、この指標策定プロジェクトの根底にはあります。

豊富なトレーニング実績で、採用後を支援

続いて、ウクライナ避難民学生のインターン受け入れやWelcome Japanの「難民移民のデジタル人材包摂」プロジェクトに参加している、パーソルクロステクノロジー株式会社の大久保 直樹岸本 雄太郎から話を聞きました。

<パーソルクロステクノロジーのアセットを通じた難民・避難民包摂の可能性>

現時点における、ほかの国から逃れてきた方を採用する仕組みづくりの進捗について教えてください。

岸本:私たちの難民包摂の取り組みはまだ始まったばかりです。2024年2月に、一般財団法人 パスウェイズ・ジャパンさんのお力を借り、ウクライナ避難民の方1名の採用が決まり、インターンとしてご入社いただきました。まずは1名採用して、自社でどのように活躍していただけるのか、そしてどのような支援が必要になるのかを学びたいと考えています。

※パーソルクロステクノロジー、難民・避難民の背景を持つ外国人をエンジニアとして育成するプログラムを2月開始(2024年2月9日、プレスリリースはこちら

パーソルクロステクノロジーはグループ内でも、テクノロジー分野を担う会社です。そのため、エンジニアがお客さまの会社へ常駐する案件も少なくありません。自社の文化へ適応できるだけでなく、他社へ派遣してもはたらける状態にまでサポートすることが、当面の目標です。

すでに私たちは、海外人材を採用した実績を持っています。そのため、外国人向けの日本語研修プログラムなどは準備できている状態です。とはいえ、OSも日本語、業務状のコミュニケーションもすべて日本語ですから、支援は必要だと考えています。

また、今回採用させていただいたウクライナ出身の方は、弊社が得意とするRPA(Robotic Process Automationの略で人が行っていた作業を自動化するためのソフトウェア)の開発を経験したことがありません。そのため、日本語に加えて、RPAの開発スキルを学んでいただく必要があります。ただ、日本人のエンジニアを未経験からお客さま先のプロジェクト配属ができるまでサポートするプログラムはありますので、無謀ではないと考えています。

2023年6月18日に開催された「Welcome Japan Summit 2023 」に登壇し、難民・避難民包摂に寄与可能なパーソルクロステクノロジーのアセットについて紹介する岸本

大久保:また、文化的な壁を越えるサポートもしていきたいですね。パーソルクロステクノロジーには、すでに外国籍エンジニアが230人ほど在籍しています。中にはムスリムやヒンドゥー教の信者の方などもいるため、礼拝室の準備や、社内イベント時にはそれぞれの宗教に応じた食の対応もできています。一方、お客さま先のプロジェクト配属をする際には、配属先にも理解や準備が必要となるため、啓発も含めて進め方については考えているところです。

WELgee主催の「Refugee Career Demo-Day 2023」の記者会見に登壇し、今後の取り組みについて紹介する大久保 (右)

日本の深刻なエンジニア不足を、海外人材で補強

特に、今回はエンジニア職を採用されているのですね。

大久保:現在、日本ではエンジニアが不足しており、有効求人倍率は10倍を超えています。これから少子高齢化が続く中、さらなる人材不足は免れません。そういった中で、女性、シニアといった方々はもちろん、海外人材の活用は必須ともいえます。このような背景もあり、当社でも5年前から海外人材の採用を積極的に実施しています。
これまでに海外の方を雇用してきた経験があること、そして大規模に日本での海外人材活用を支援できるのは、パーソルグループならではの強みですね。

貴社が発揮できる、難民包摂においての強みを教えてください。

岸本:たとえば、海外人材の採用そのものが初めてですと、就労ビザの発行一つをとっても、手順が分からず戸惑うことがあるかと思います。しかし、我々にはすでに実績があるため、こういった障壁がありません。

今、すでにパーソルクロステクノロジーにいる外国籍エンジニアには、バイリンガル社員が都度支援をしています。また、生きた日本語を学んでいただくために、毎日30分、日本語で会話するセッションを用意。それから、これは私個人の取り組みですが、日本に興味を持っていただけるよう社外で東京観光に誘いガイドを行っています。

先程の「生きた日本語セッション」以外にも、パーソルクロステクノロジーでは以下の準備ができています。

  • メールで「やさしい日本語」と「英語」を併記し、海外人材も重要な情報を受信できるように配慮
  • やさしい日本語と英語で作成した日本での暮らしやビジネスにおける慣習を伝えるガイドブックを配備。ごみの分別や印鑑の利用方法、電車の乗り方などを案内

紛争や災害から逃れてきた方には、メンタル面でのケアが必要なことも想定されます。そのため、支援団体のアドバイスをいただきながら、サポートしていきたいですね。

大久保:パーソルクロステクノロジーのミッションはテクノロジー領域でエンジニア一人ひとりが自分たちの技術に誇りを持ち、そのスキルを磨くことで人と組織の生産性を向上させることです。

海外人材の活用は、この目標を達成するための戦略として欠かせないと考えています。今は1人目の採用が始まったばかりですから、これからしっかりと取り組んでいきたいです。

後編につづく

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

このページをシェアする
目次
閉じる