業務運用におけるDXとは?導入に向けての組織課題とは?神戸市の職員にインターン研修を実施

パーソルテンプスタッフ株式会社は、2021年12月13日から17日にわたり、神戸市の職員2名にインターンシップ研修を実施しました。
神戸市では市民サービスのDXを推進しており、その取り組みの一つとして職員の方の民間企業でのインターン研修を行っています。今回は、民間企業におけるDXを体験する目的で5日間の研修プログラムを体験いただきました。

実施の背景

神戸市は、働き方改革の実現や少子化といった社会環境の変化に対応するべく業務改革を推進。より働きやすい職場、よりスマートで利便性の高い市民サービスが行えるようDX化に注力しています。

しかし、DX化は一朝一夕に成るものではありません。ITツールを活用する前に、市民目線に基づく業務のBPR(※1)なども必要になります。パーソルテンプスタッフでは、神戸市行政事務センターやコロナワクチン関連で神戸市から業務を受託しており、自治体だけでなく、民間企業でのBPRの実績があることから、今回、神戸市から職員のインターン研修の協力依頼があり、民間企業のデジタル活用・運用事例を体験し、ITツールをどう運用するか、業務改革をどう進めるかなど、何か気付きを得ていただければという想いから研修を実施しました。
(※1)BPRとは、Business Process Reengineeringの略で、既存の組織や制度、業務プロセスなどを見直し、再設計すること。

今回の研修に参加されたのは安田 慎氏と、三浦 佳織氏のお二人。
1日目、2日目は宮崎にあるパーソルワークスデザインのアウトソーシングセンターで、3日目から5日目は東京のパーソルテンプスタッフ、パーソルチャレンジのオフィスに訪問しての研修が行われました。

本記事では、今回の研修の企画担当者、パーソルテンプスタッフの犀川(さいかわ) 幸秀に聞いた研修の内容と様子をお届けします。

研修内容

――1日目、2日目は、宮崎のパーソルワークスデザインのアウトソーシングセンターでの研修ですね。なぜここで研修をしようと思われたのですか?

犀川パーソルワークスデザインの事業の一つに、「ヘルプデスク/コールセンター」の運営があります。自治体でもさまざまな部署で電話対応をしていますので、まずはここでどのようにITツールを使い、どう運用しているかを知っていただこうと思いました。実際にオペレータとしての研修を受講し、その電話対応(※2)をするという体験もしていただきました。
(※2)神戸市からの受託業務の受電。

電話対応実施中の安田氏

――コールセンターではどのようなITツールを使っているのですか?

犀川:パーソルワークスデザインでは、ナレッジ活用によるFAQ運用と対応品質向上に特に注力しています。具体的には、自動音声認識やFAQなど、オペレータのサポートにテクノロジーを活用しています。

お客さまからお問い合わせの電話がかかってくると、お客さまとの会話を同時に音声認識機能で文字にしてパソコンのモニター上に映し出します。そして、オペレータがお客さまの質問の要点だと思う箇所をクリックすると、その内容に近いFAQ(よくある質問と回答)の中でAIが一番近いと判断した回答が表示されます。

それ以外にも、スーパーバイザーがオペレータに対してフィードバックする際に、話し方や受け答えの良し悪しを評価する自動モニタリングツールも導入されています。
コールセンターは、最新のテクノロジーが業務オペレーションに活用されているところなんです。

会話をテキスト化するシステム「AI Dig」。画面右側にお客様との会話が、左側にFAQとAIの回答が表示される

――3日目からは東京ですね。どのような研修をされたのですか?

犀川:3日目の午前中は、パーソルテンプスタッフが受託している大型プロジェクトにおいて、従来紙で運用されていた申請受付業務がアプリ導入により大きく変化していく、その流れをどのような運用体制で処理しているかを視察していただきました。そして午後からはパーソルテンプスタッフのデジタルコンサルティングの担当者より民間企業でのDXの考え方や最新事例をご案内、解説してもらいました。

4日目は、午前よりRPA(※3)を導入するにあたってフローを再構築する必要性があること、その際の考え方などを学んでいただき、午後にはRPAの開発体験や、AI-OCR(※4)の体験が行われました。
RPAの開発体験では、まず、架空の事務業務を想定して業務フローを作成していただき、その後パーソルテンプスタッフが導入しているRPAツールを使って実際に開発にチャレンジ。自分が考えたフローがどのように自動化されるかを体験していただきました。

(※3)RPAとは、Robotic Process Automationの略で、これまで人間がパソコンで行っていた単純な入力作業やデータ抽出などのルーチン業務を、ロボットが自動で行う仕組みのこと。
(※4)OCRとは、Optical Character Readerの略で、画像データのテキスト部分を認識して文字データに変換する機能のこと。AI-OCRは、AI技術を加え、機械学習による字認識の精度を上げたもの。

RPA作成時の様子

――最終日はどのような研修を行ったのですか?

犀川:これまで見学・体験を通し、DX化が生産性、業務効率の向上に有効であることを体感していただきましたが、実際にDX化するために業務改革を進めようとすると、さまざまな壁が立ちはだかります。そこで、最終日の午前中は、業務改革を進める上でのポイントなどを、パーソルテンプスタッフでRPA推進を行っている業務改革推進部に、パーソルテンプスタッフでの事例を失敗談や成功談を含めて紹介してもらい、その後ディスカッションを行いました。

――ディスカッションはいかがでしたか?印象に残っていることはありますか?

犀川:事例を聞いての感想や気付きの共有のほか、ご自身の組織にたとえて考えていただけたようです。

パーソルテンプスタッフでの事例の中でも特に、「組織横断的にRPAの推進を進めていく際に、同じ業務だったとしても各部署における業務手順に違いがあり、その部分の標準化を現場からの意見を基にていねいに集約していく。その中でより良い手順を生み出していく」という部分において、市役所業務でも共通している事があり、その時の課題と解決手法について、盛り上がっていたのが印象的でした。

――午後からは障害者雇用の成功をミッションとしているパーソルチャレンジの事務センターへ行かれたそうですが、何か理由が?

犀川:この事務センターでは、パーソルテンプスタッフから移管した業務を行っています。その移管の裏には、業務の標準化とRPA導入があります。つまり、業務を標準化し、DX化することで、障害者の方が行えるようになりました。これは、すなわちDX化が新たなはたらき方を生み、新しい雇用につながることを意味しています。
この現場を実際に目で見て、運用者から現在の運営に至るまでの過程や、構築していく際のポイントなど生の声を聴いていただいたことで、DX化のメリットと必要性によりリアリティを持ってもらえたのではないかと思います。

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研修を終えて……

――5日間で、さまざまな現場を見学・体験されていましたが、神戸市職員の方々の反応は……?

犀川:かなりハードな日程での研修だったにも関わらず、初日から最終日までどんなことにも真摯に取り組んでおられる姿勢に感銘を受けました。そして最後には「楽しく過ごすことができました」と言っていただけて、うれしかったですね。また私たちにとっても初めての取り組みで、担当していただいた各グループ会社・部署の担当者からも「改めて自分たちが行ってきたことを振り返ることができた」と言っていただき、我々にとっても有意義な時間となりました。

――今後も、自治体職員の方に向けたインターン研修を行っていくのですか?

犀川:はい、今後もこうした取り組みを行っていきたいと思います。
実はずいぶん前から、“自治体の職員向けの研修プログラム”といったものをつくりたいと個人的に思っていました。そして今回こうした機会をいただき、実施することができました。内容の改善・強化も必要だと思いますし、長距離の移動を伴い、長期間に及ぶ研修は受講ハードルがやはり高いので、遠隔で実施できるように工夫するなど、さまざまな部分をアップデートして次に生かしていきたいと思います。

研修を終えて ~神戸市職員お二人の感想~

研修参加者である神戸市職員の安田 慎氏と、三浦 佳織氏に研修終了後に行ったアンケートの中から、一部を抜粋、編集してご紹介します。

安田 慎氏

人と人のつながり、横の連携と縦の連携がしっかりされていて、行く先々で感動しておりました。
RPAソフトを実際に動かす経験は目からウロコでした。属人的に作業してしまっている業務があるため、早急に解決すべききっかけを与えていただきました。
また、宮崎のコールセンターで自らコールを受けた経験は非常に参考になりました。音声を活字に変換する技術と既存のFAQとの連動の動きは、実際にコールを受けるにあたり安心材料でした。

三浦 佳織氏

いまだ人海戦術の部分にAI-OCRやRPAを活用すればかなり負担減になるのではないかと感じました。また、デジタル一辺倒に進むのではなくアナログの良さもうまく取り入れられているところ、組織(人員)のつくり方などは我々も導入できそうな考え方もあり非常に参考になりました。
1週間研修を受けるという経験もほぼ初めてで参加前は戸惑いもありましたが、いざ始めるととても楽しく過ごすことができました。また、企業側から見た神戸市という視点も持つことができたような気がして、大変有意義な時間でした。

前列:左より、三浦 佳織氏・安田 慎氏(神戸市) 後列:左より、岩下 隼一・曽我部 智雄・黒木 桜子(パーソルワークスデザイン)、大橋 秀平氏(神戸市)、犀川 幸秀(パーソルテンプスタッフ)、齋藤 啓介(パーソルワークスデザイン)*撮影時のみマスクを外しています。
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