東北から、障害者雇用に新風を。新オフィスに施された工夫 ーコンセプトは「BeMe」

障害者雇用支援事業を手掛けるパーソルチャレンジ株式会社の東北オフィスは、先進的なオフィスづくりを審査・表彰する、ニューオフィス推進協会と日経新聞社主催の「第33回 日経ニューオフィス賞」にて、地域ブロック(東北エリア)主催の「東北ニューオフィス奨励賞」に選出され、9月18日に授賞式が行われました。
●受賞式の様子はこちら

受賞したパーソルチャレンジ東北オフィスは、2020年の1月に移転した1棟借りのオフィス。エントランスから業務スペースまで、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現するためのさまざま仕掛けや工夫が凝らされています。
今回は、オフィスの移転プロジェクトを担当した2人に、コンセプトから仕掛けや工夫に込められた想い、さらには、新オフィスになってからの変化や今後の展望までを聞きました。

目次

話を聞いたのはこの2人

瀬川 由美(パーソルチャレンジ エンプロイメント・イノベーション本部 仙台グループ マネジャー)
2006年入社。障害者雇用を促進するために障害手帳を持つ社員とともにパーソルグループ各社からさまざまな事務系業務を受託し、生産性向上を実現する仕組みや体制の体系化を担当。「たくさんの小さな人々が、たくさんの小さな場所で、たくさんの小さなことを成す。それで世界の状況は変えられる」を心に、日々、目の前のささやかな物事に対しても諦めずに丁寧に取組む。

岩根 利果パーソルファシリティマネジメント FMCグループ コンサルティングチーム)
2019年入社。現在は、ファシリティマネジメントコンサルタントとして外部のお客さまへパーソルファシリティマネジメントが提供するFMOサービスの提案を担当。1日の3分の1を費やす「はたらく環境」が変わることで、少しでも一人ひとりの人生が楽しく、充実して欲しいと思いながら、お客さまとともにつくるワークプレイスを目指す。


はたらき方が変わる?
オフィス内の仕掛けや工夫が、「こうありたい」の実現を後押し


東北オフィスのコンセプトは、「BeMe」(自分らしく)。これは、「障害者メンバーにどうはたらいてほしいか」「東北地域で障害者雇用のハブになりたい」といった、東北オフィスではたらく社員たちの想いが込められています。デザインポリシーとして『すべての集まる人が 楽しく、そして過ごしやすく、認めあう心と高い意識・意欲をもってはたらくことができる』を定めた後、コアになる部分を4つにまとめ、その頭文字をとりました。

この4つの中でも、瀬川が一番大切にしているのは「Mind」なのだそう。

「『自分のための努力を積み重ねる』というのは、私たち社員や障害者メンバーのミッションです。障害者の方の特徴の一つに、他者比較や、短期的な成果を求めるというのがあるのですが、長期的な視野を持ち、焦らず真摯に取り組むマインドを持ってもらいたいと思っています。それを宿せるところが、この東北オフィスであり、これからもずっとそうありたいなと。」(瀬川)

そんな瀬川の想いに対して、岩根は「マインド」を保つための工夫として、休養室や面談室をパーソルグループの基準よりも多く設置。これは、「困ったときやくじけそうになったときに、自分と向き合ったり、上司に相談したり……、前向きになる場所が不足しないように」考えたからだそう。
また、同僚と感謝や称讃を送り合い認め合う、ピアボーナスのような取り組みができるスペースもつくられました。「ありがとう」などと書くことができる手づくりの専用ステッカーとボードが用意されており、気持ちをステッカーに書き、ボードに吊るせるようになっています。


メンバーの励みになっているピアボーナスのボード。常にたくさんのステッカーが吊るされています。

岩根の想いのエスプリが効いているのは、これらだけではありません。
1階のエントランスには、「東北地域で障害者雇用のハブになりたい」という瀬川の気持ちに応えるような仕掛けが壁に施されています。壁には薄く「BEME」の4文字の枠が書かれており、その枠内に来客者など、はじめてオフィスに来た人にアルファベットや数字のスタンプを押してもらいます。スタンプが押されれば押されるほど「BEME」の色が濃くなっていき、多くの人との繋がりを刻みながら進化し続ける、完成形がない壁。――それはまさに東北オフィスや障害者雇用の在り方を表しているかのよう。瀬川はこの壁を「東北オフィスのシンボルにしていきたい」と、力強く語りました。


「BEME」の文字が大きく描かれたエントランスの壁。1年後、2年後と、色の変化が楽しみ。

なぜファシリティ担当の岩根が、社内外のコミュニケーションの施策を提案したり、自ら手づくりまでするのか――、そこには、岩根の“はたらく人”への熱い想いがありました。

「はたらく人たちの“やりたい”を後押しし、気持ち良く仕事をするための環境を提供するのが私たちの仕事だと思っています。施策を提案するのも、仕掛けや工夫をするもの、「がんばろう」とか、「ここが自分の居場所だと感じる」とか……、前向きな気持ちや安心感に繋がればいいな、と思ってのことです。考えたり、手づくりするなら、コストはかかりませんから(笑)」(岩根)


コンセプトカラーが意図せぬ効果を!
社員の誇りになった新オフィス


また、特徴的なのが各階でコンセプトカラーがあること。お客さまをお迎えする1階はフレッシュグリーン、リフレッシュルームがある2階はオレンジ、業務をする3階、4階はブルー系で、3階がオーシャンブルー、4階がスカイブルーです。岩根は「フロアで色を変えることで雰囲気を変えたりや、色で何階かが分かるようにしたかったから」といいますが、思わぬカラー効果も!

「3階は精神・発達障害のある社員が多いフロア。周囲の人の言動が気になるという障害特性から、業務に集中してもらうのがなかなか難しいのですが、少し改善されたように感じています。青は、静かに内省したり集中するのに効果的だと言われる色なので、もしかしたら色の効果かもしれませんね」(瀬川)

色の持つ効果なのかどうかはさておき、新オフィスは障害者社員にとって楽しく仕事ができる場になっているようです。実際に障害のある社員から贈られたコメントを瀬川がうれしそうに読んでくれました。

「パーソルチャレンジの社員の一員になるまでは人との繋がりや安心できる居場所がなく、一人で長い間ひきこもり苦しんでいる毎日でした。でもパーソルチャレンジの一員になりはたらき出してからは、さまざまな人との繋がりや、自分が社会に貢献できているうれしさを感じています。今やここは、自分の成長に欠かせない居場所になっています。
新オフィスのデザインポリシー「BEME」はまさに今の私の気持ちそのもので、とても素敵な言葉だと思っています。
新オフィスに移転し、その言葉を受け取り、かみしめ、これから1年経ったとき、さまざまな社会経験を経て、より成長した自分になりたい、さらなる「BeMe」を私自身だけではなく、社員の皆で努力しながら楽しみつつ創りあげていきたいと思います。」


2階の廊下のオレンジ色の壁にはメンバーの写真などが貼られています。3階のオフィススペースのブルーの壁には、コンセプトが!


一人ひとりがコンセプトの体現者であるオフィスに


新しいオフィスとなり、セミナールームが自由に利用できるようになったことで、進化した取り組みもあります。それは、障害者の方のために実施されている実際の業務に即したオフィスワークの実習機会。これまでの1日1時間や3時間という体験プログラム実習会を進化させ、5日間の実習プログラムや、公共職業能力開発施設の一つである職業能力開発校と連携をした1カ月の実習プログラムも実施しています。また、東北オフィスは、ほかにも障害者の雇用管理や採用に関する取り組みを行っています。

「私たちは、我々だけが障害者雇用に成功できればいいとは思っていません。東北オフィスでは、現在、入社1年時点での定着率は100%(全国平均は49.3%(※))、3年でも100%ですが、育成・マネジメントをする中でさまざまな失敗もしてきました。障害者雇用の歩みを止めないため『セミナーでナレッジを教えてほしい』という依頼があれば、失敗談も含め紹介しています。」(瀬川)

こうした熱心な活動が評価され、2019年には「平成30年度の仙台市障害者貢献事業者」として認定され、市長感謝状を贈呈されました。

最後に瀬川と岩根は、今後の展望とメッセージを下記のように語りました。

「『BeMe』というコンセプトは、我々一人ひとりが体現者となっていって、はじめて生きる言葉だと思っています。社員それぞれが、メッセンジャーとなって多くの人に知っていただき、障害者雇用の成功を目指していきたいと思います。
オフィス内を見学できるアトラクトツアーも行っています。ぜひいろいろな方に体験していただきたいですね。」(瀬川)

「東北オフィスには精神障害、身体障害、知的障害などさまざまな障害の方がいらっしゃいますが、特別に配慮したのは段差やドアの形状など、物理的に不便や危険を伴う部分だけ。ほかのオフィスとそう変わらない環境で、障害者の方々が活き活きとはたらいています。こうしたオフィス・取り組みをしている会社があることを多くの方に知ってもらえたらうれしいです。」(岩根)

パーソルチャレンジ東北オフィスには、現在、全78名(障害者社員67名)が在籍。求人媒体の制作支援や、派遣スタッフの契約・人事関連業務など、パーソルグループ7社から受注しているミドルバックのオフィス業務を行っています。障害者一人ひとりの能力や意欲に応える仕組みを考え、支援し、「はたらいて、笑おう。」の実現を目指します。

(※)独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「2017年4月 障害者の就業状況等に関する調査研究」より。

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