不安は脳でつくられる!産業医に聞く、”コロナうつ”を防ぐための心がけ

昨今の社会情勢に伴い、いま、世の中の「はたらく」が急速に変化しています。特集「はたらく見聞録」では、この時代を前向きに自分らしくはたらくためのヒントや、それを支える活動について連載でご紹介していきます。

今回のテーマは、「コロナうつ」。国や自治体から不要不急の外出を控えるよう要請があって以降、日々の生活は大きく変わりました。仕事では、慣れない在宅ワークや時差出勤が始まり、週末も家の中。急に生活環境が変わったことでストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。そこで、パーソルホールディングスの産業医を務める原島 浩一先生に、コロナうつにならないためのコツを伺いました。

原島 浩一先生 プロフィール
1968年群馬県出身 原島産業医事務所代表 群馬大学医学部および群馬大学大学院卒業。卒後は放射線科医として癌の放射線治療に従事。2007年4月から数社の専属・嘱託産業医、株式会社ホットランドの取締役を務める。2018年7月からパーソルホールディングス株式会社の嘱託産業医に着任。現在パーソルグループ内他社をはじめとして、ITや製造業など10数社の嘱託産業医を兼任。


※本取材は、新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施しています(記事内画像は画面キャプチャを使用)。


「コロナうつ」とは?


―最近「コロナうつ」という言葉を耳にするようになりました。コロナうつとは、どのような疾患なのでしょうか?

原島氏:まずはじめに申し上げておきたいのは、「コロナうつ」という疾病はありません。いま、耳にする「コロナうつ」は、新型コロナウイルス感染症(=COVID-19。以下、コロナ)関連の事柄をストレッサー(ストレスを引き起こす物理的・精神的因子)として生じている適応障害、不安障害、気分障害といった疾病と考えます。
つまり、コロナに感染するのではという恐怖感や、外出自粛で家の中にこもるというような従来と違う環境に適応できず、それがストレスとなってさまざまな精神的な障害が起こっている状態といえます。

―自覚症状にはどのようなものがあるのでしょうか?

原島氏:在宅ワークでオンとオフの切り替えがうまくいかず生活のリズムが乱れて睡眠障害を起こしたり、対人コミュニケーションの減少によってさみしさや孤独感を感じたり、生活の自由度が下がることでイライラするなど感情のコントロールができなくなったり…。また、コロナに感染したらどうしよう、会社がなくなるのではないか、という将来に対する不安でいっぱいになる方もいると思います。誰でも抱く感情ですが、こうした心的状況が長く続いて症状が酷くなると、精神疾病に繋がっていってしまいます。


不安は、脳でつくられる。
自分でコントロールできることに集中を!


―日々、どのような心構えで過ごせばいいのでしょうか?

原島氏:キーワードは「いま」と「自分」。自分でコントロールできることに集中するということが重要だと思います。

―未来ではなく「いま」なのですね。

原島氏:はい。未来のことは誰もわかりません。たとえば「いまよりも感染が広がって大変な事態になったら、私はどうなってしまうの?」と考えても、自分ではコントロールできないことが多いですよね。不安や恐怖は自分の脳でつくられてしまうものです。

―不安だと思うから、不安になると。

原島氏:はい。人はなぜか情報がネガティブであるほど、それを正しいと思いがち真偽がわからないネガティブ情報を積極的に入手してそれを信じてしまうと、なおさら不安になってしまいます。だからこそ信頼できる情報を得ながら、「いま」、「自分」でコントロールできることに集中することが重要です。その核となるのは、下の5つのポイントです。

―特別なことではなく、誰にでもできることですね。

原島氏:そうですね。でも、急激に環境が変わっているのがいまの状態なので、これがなかなか難しいんですよ。在宅ワークで通勤する必要がなくなったからと夜更かししてしまったり、オンとオフの境目がなくなってしまったりしていませんか?

―耳が痛いお話ですね…。

原島氏:だから、あえて普通のことを意識し、普通のことができるように行動することが大切なんです。


日時を問わず携帯で業務メールをチェック。
そのクセが、オンとオフの区切りをなくす


―具体的に日常で行うと良いことはありますか?

原島氏:まず、生活リズムを整えるために朝の散歩をおすすめします。人間の覚醒と睡眠を司っているのは、セロトニンとメラトニンというホルモンです。太陽光(朝日)を浴びるとセロトニンが分泌され、その約13時間以降にメラトニンが分泌されはじめて、自然と眠くなるようにできています。しかし、在宅ワークで家に引きこもり、光を浴びずにいるとセロトニンがしっかり分泌されません。すると、睡眠を促すメラトニンも上手につくられず、寝付きが悪くなってしまうんです。

―それで、つい夜更かしをしてしまうと…。

原島氏:まさに悪循環ですよね睡眠障害が、体調不良を引き起こすことは往々にしてあります。しっかり睡眠をとることは何よりも大切。いまは、睡眠を可視化できるツールもあります。私も使っていますが、そうしたツールを使うのもいいと思いますね。きちんと睡眠がとれている=元気でいられるという裏付けになるので、一つの安心感になると思います。

―朝の散歩は、運動不足の解消にもなりそうですね。

原島氏:はい。散歩の後に朝食を食べれば、休息モードになっていた内臓も覚醒し、仕事モードにも入りやすくなると思いますよ。

―仕事のスイッチを入れるのに、いい方法はありますか?

原島氏:オンラインの朝会を開くというのは、一つの手だと思います。コミュニケーション不足によるさみしさや孤独感の軽減にもなります。できれば顔が見える形式で行えるといいですね。不安や気持ちなどを文字にすることが苦手なメンバーがいても、表情や声色がわかれば、それを感じ取れるかもしれません。
また、一人で仕事に煮詰まるのはよくありません。不安障害を引き起こす要因でもあるので、雑談をしたり、気軽に相談できる場を設けることもとても重要。特に4月の新入社員の方や異動者には充分にサポートをしてあげてください。

―仕事と生活の場が同じだと、オンからオフへの切り替えもなかなか難しいですよね。

原島氏:時間を決めて仕事をするというのが一番だと思います。仕事を終了したら、一切仕事は忘れる。社用携帯でメールを見るのもやめたほうがいいです。出勤していると退社という行動があり、物理的にオンとオフが別れていますが、在宅ワークだとそれがないぶん切り替えが難しい。しっかりと時間で区切ることが大切です。


原島産業医事務所(保健師 亀井 佑季)「在宅勤務における健康管理のアドバイス」より


もしも不安になったら、
いまの気持ちを書き出してみよう


―もし、不安や孤独を感じたらどうすればよいでしょうか。

原島氏:ぜひ、気持ちの棚卸しをしてみてください。不安な場合、何が不安で、なぜ不安なのか、その不安に対して何ができるかを書きだしてみてください。これはストレスコーピングのやり方の一つなのですが、漠然とした不安を客観的にみられるようになり、それまで思いつかなかった選択肢に気付けたりします。

―セルフケアが大切ということですね。

原島氏:はい。いまの状況に置かれているのは一人ではありません。「不安な気持ちは、世界の人々も皆一緒」、そう思うことも大切です。

―GWなど休みはどう過ごしたらいいのでしょうか?

原島氏:旅行や帰省、外出はできませんが、そのことをネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えて楽しめることを積極的に考えて行うのがいいと思います。時間があるから積読だった本が読めるとか、家の大掃除ができるとか…。デメリットではなく、メリットに目を向けて、健康的に休日を楽しんでみてください。

(以上)

※本記事は2020年5月に公開した記事です。
また、パーソルグループのオウンドメディア「はたわらワイド」の連載『はたらくHack!』でも、原島先生に、この時代を元気に自分らしくはたらくためのエッセンスをお聞きした記事を公開しています。併せてご覧ください。
第一弾:精油でストレスフリーな仕事環境を!「香り」を効果的に取り入れるコツ <産業医監修>
第二弾:咀嚼で幸せホルモンを増やして、疲れた脳にはブドウ糖を!<産業医監修>
第三弾:健康も仕事も制す!? 「新・睡眠のゴールデンタイム」 の眠り方<産業医監修>
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第五弾:快適にテレワークを行う「デスク周辺環境」のつくり方 室温25℃、植物配置で仕事が捗る?<産業医監修>
第六弾:誰にでもできる!自己肯定感を高める意外な習慣とは<産業医監修>
第七弾:仕事中のBGMには何がいい?集中力アップには「ホワイトノイズ」のすすめ <産業医監修>
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