テレワークで、営業組織のマネジメントは何を変えればいい?コンサルタントが語るニューノーマルとは

昨今の社会情勢に伴い、いま、世の中の「はたらく」が急速に変化しています。特集「はたらく見聞録」では、この時代を前向きに自分らしくはたらくためのヒントや、それを支える活動について連載でご紹介していきます。

今回のテーマは、オンライン環境における営業組織マネジメント術。テレワークへの移行が急速に進み、配下のメンバーと顔を合わせる機会が減ってマネジメントに試行錯誤している方も多いのではないでしょうか?組織変革支援コンサルタントとしてマネジメントの強化をはじめ、企業の抱える課題に寄り添い、提案をしてきたパーソルラーニング株式会社 マーケティング部の河村 亨に、オンライン環境下での営業マネジメントのポイントを聞きました。

 

河村 亨(パーソルラーニング株式会社 マーケティング部)

1990年、機械商社を経て、富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソルラーニング)に入社。2004年より営業成果を創出するためのシステム、制度、教育の一貫コンサルティング事業に従事。2009年より、特に「戦略実行」をテーマに組織変革支援コンサルティングを展開、現在に至る。

 

※本取材は、新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施しています(記事内画像は画面キャプチャを使用)。


マネジャーの8割が悩んでいる
テレワークでのマネジメントを成功に導く3つのポイント


――テレワークが普及し、営業マネジャーからはどのような声が上がっているのでしょうか。

河村:「これまでの商談の問題点が可視化されて効率がよくなった」「より論理的な指導ができるようになった」といった意見を耳にすることがありますが、そのようなポジティブな声は大体全体の2割程度です。残り8割ぐらいの方は「メンバーが何をやっているか分からない」「チーム内での意思疎通ができない」「メンバーの成長機会が阻害される」といった悩みを抱え、試行錯誤しながら日々頑張っているという印象ですね。

――そうした悩みを解決するために、マネジャーは何を変えていけばいいのでしょうか?

河村:次の3つがポイントになると思っています。

――順番に伺っていきたいと思います。

――1つ目の「組織が定めた管理指標をただメンバーに伝えるのではなく、自ら勝算を描きKPIを設定する」について教えていただけますか?

河村:たとえば、訪問件数や提案件数といった組織が定めた管理指標を達成するだけでなく、限られたリソースで、自分が預かった市場をどうコントロールしていけば具体的な成果が上がるのか。そのような戦略を構想するのが大切です。そして、自分として勝算が立ち、理由をしっかりと説明できるKPIをつくってメンバーそれぞれに割り振っていく。その進捗度を見ていれば、「メンバーが何をやっているかわからない」ということにはならないと思います。

――高い構想力が求められるというわけですね。

河村:そうですね。どこを省力化してどこに注力するのか、目標から逆算してデザインしなければいけませんし、それにはどんなプロセスが必要なのかという中間構想をしておくことも必要です。また、それだけでは終わらせず、それをメンバーに論理的に話すというのも大事なポイント。「わかってくれよ」ではなく、理解できるまで論理的に対話する。そのためには、「自分の中で理由付けを担保する」という能力を磨く必要があります。この論理的な説明力も、これからのニューノーマルの世界では、構想力とともにマネジャーが身に付けなければいけないスキルだと思います。

――2つ目の「客観的に良い商談の基準をつくって示し、メンバーとコンスタントにすり合わせを行う」とは?

河村:たとえば、商談をまとめるには、お客さまの決裁権者と話をする必要がありますよね。では、そのためには誰と会えば良いのか、どのような関係性を築くべきなのかなど、良い商談の基準を明文化します。そして、「決裁権者と会えていて、課題解決に向けた検討合意が取れていれば3点」、「権限を持たない人と話をしていて、課題認識すらしていなければ0点」というような基準をつくります。次に、これらを可視化するためチェックボックスのようなものを作成し、メンバーに各項目にチェックを入れてもらい、点数を積み上げてスコアリングします。この商談は、いま「提案フェイズ」で「スコア10点」、「受注確度は40%」といった感じです。こうして同じ基準をマネジャーとメンバーが共有し、可視化できるようにしておけば、あとは問題のありそうな商談の認識合わせをするだけです。メンバーの商談の進捗もわかりますし、効率も良くなります。

――しかし、そのような基準に当てはまらないようなケースも実際の営業現場では起こりえますよね。

河村:その通りです。「チェックボックスに何もチェックが付かないのに、ほぼ受注できそう」という案件もあると思います。そのときは、その理由を担当メンバーに確認し、説明を受ければいいんです。例外を例外として受け入れることは、とても重要です。問題なのは、最初から例外ありきで「営業は基準化できない!営業とはアートなのだ!」というようなメッセージをマネジャーが発してしまうと、何が良い商談なのかが、メンバー内で意思疎通ができなくなってしまうということですね。

――意思疎通のうえで、3つ目の「意図したコミュニケーション機会を設定する」ことが重要になってくると……。

河村:マネジャーとメンバーのミーティングで交わされる話題として多いのは、「商談の進捗確認」「問題のある個別商談の攻略法を考える」「悩んでいるメンバーの指導」の3つです。これらをグチャグチャにやってしまうケースが多いのですが、それではいくら時間があっても足りませんし、良かれと思って話したことがメンバーにとっては追求されているように感じる場合もあります。オンラインだと場の空気感で伝えるということはできないので、目的を説明しながら、メリハリをつけて話すことが重要です。

――雑談の重要性も高まっています。

河村:雑談も意図して、最適なタイミングで行えると良いですね。ミーティングを何となくの雑談からはじめるケースがありますが、きちんとした意図がないと「この時間無駄じゃないですか?」と思われてしまい、ともすればマネジャーへの不信感に繋がることもあります。「いまは雑談が許される時間帯なのだ」という認識を共有できると良いと思います。

――コミュニケーション力が問われますね。

河村:はい。ポイントの1でお話しした論理的な説明力や構想力と同様、コミュニケーション力もマネジャーが身に付けなければならないスキルの一つだと思います。

――どのスキルも身に付けるまで時間がかかりそうですが……。スキルを磨くために明日から実行できることはありますか?

河村:まずは、ポイントの2でお話した、「良い商談の基準を明文化」してみるのがいいと思います。完璧な良いものでなくてもいいんです。逆に最初からメンバーみんなを巻き込んで議論し、論理的な管理体制を構築していってもいいと思いますね。考えるプロセスに携われば、それ自体が「良い商談」を考える教育にもなりますし、当然、自分自身が考えたものとしてメンバーのコミット力も上がります。もちろん理論的思考はマネジャーに必要なスキルではありますが、どんなに論理的なマネジャーでも、ただ「これをやれ」といっても誰もついていきたいとは思わないですよね。


メンバー同士の交流の場をつくり、意図してテーマリーダーを育成せよ。
モチベーションの向上には、成功体験をさせのるが一番!


――マネジャーは大抵、配下メンバー育成というミッションも背負っていますが、今後、どのように指導し、成長機会を提供すべきなのでしょうか?

河村:テレワークが続くと絶対に不足するのがメンバー同士の交流です。先輩の話を聞いて良いところを盗む、成功事例や失敗事例をなんとなく共有する――、そういう時間がなくなってしまうので、意識してつくっていくことが必要だと思います。そのとき、ただ闇雲に「交流しましょう」ではなく、マネジャーがNo.2やNo.3の先輩格の人とメンバー、またはメンバー同士の交流が進むよう、仕掛けづくりをすることがとても重要です。つまりテーマリーダーのような存在を経験と啓発を通して意図して育てていくということです。人に教えるのが一番いい育成になりますからね。

――「モチベーションを上げる」というキーワードをよく耳にするのですが……。

河村:よく、「メンバーのモチベーションが上がらない」とそのことだけを悩んでいるマネジャーを見ますが、メンバーのモチベーションを上げるには、成功体験をさせてあげることです。やってあげるのではなく、うまく導いて、方向性を示し、成功させてあげる。それがモチベーションに繋がると思いますし、そうした指導をメンバーができるよう引き継いでいくことも育成の一つだと思います。


オンラインでも対面でもマネジメントの本質は同じ。
いまこそマネジャーとして一皮むけるチャンス


――はたらき方が変わる中、マネジャーも変わっていかなければいけませんね。

河村:実は、いまお話ししたことすべて、オンラインになったからマネジャーに求められるスキルというわけではありません。マネジメントの本質的なことなんです。

――対面であっても必要なことだと……?

河村:はい。オンラインだと、対面でできていた「その場の空気感でなんとなく伝える」といったことや、「飲みニケーション」で行間を埋めるということができなくなり、よりマネジメントの本質が求められるようになったと考えます。
テレワークになって「うまくいかない」というマネジャーはマネジメントの仕方を見直すよい機会ですし、マネジャーとして一皮むけるチャンスでもあると思います。ですから思いきり右往左往し、試行錯誤してほしいと思います。たとえ対面というはたらき方に戻っても決して無駄にはなりません。営業ではお客さまのことが、チーム内ではメンバーのことがより見えるようになると思います。

●パーソルラーニングでは、「オンライン営業マネジメントガイド」を公開しています。あわせてご覧ください。
●河村執筆のコラム「テレワーク時代のBtoB営業組織のあり方(全6回シリーズ)」はこちらから。

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