キャンピングカーで仕事もできる?チーム運営の鍵は「プロセスの可視化」にあった

昨今の社会情勢に伴い、いま、世の中の「はたらく」が急速に変化しています。特集「はたらく見聞録」では、この時代を前向きに自分らしくはたらくためのヒントや、それを支える活動について連載でご紹介していきます。

今回話を聞いたのは、Bizer代表取締役の畠山 友一。チームの生産性向上を実現する「Bizer team(バイザーチーム)」などのサービスを展開する一方、自身も、キャンピングカー内で仕事を行うなど、リモートワーク下でチーム運営をしながら、自由なはたらき方を実現しています。そんな畠山に、チーム運営の極意や、マネジャーの心構えについて聞きました。


畠山 友一(Bizer株式会社 代表取締役)

かつて8千社以上の企業への業務効率化・マーケティング支援を提案。自身も会社の代表を務めるなど、さまざまな組織でのチーム運営を経験した。2013年10月に独立し、株式会社ビズグラウンド(現・Bizer株式会社)を設立、代表取締役に就任。


※本取材は、新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施しています(記事内のインタビュー画像は画面キャプチャを使用)。


自由なはたらき方の裏に、リモートワークを断念した過去
仕事を個人からチームのものへ


ー普段、キャンピングカーでお仕事をされているという噂を聞いたのですが、本当ですか?

畠山:本当ですよ!こんな感じの環境ではたらいています。

ー窓の外に海が見えますね…。このようなスタイルになったきっかけは?

畠山:もともとアウトドアが趣味だったこともあり、最初は趣味でただ海や山に行っていたのですが、次第にそこで仕事もするようになりました。2013年に現在のBizerの前身企業を立ち上げてからしばらくの間は社員が私一人だけだったという事情もあり、あまり時間や場所への意識や制限がなかったんですね。

ーいま現在も、旅先で仕事を?

畠山:いまは新型コロナウイルスの影響もあってそれが難しいので、仕事のときだけは自宅に駐車しているキャンピングカーの中で仕事をして、子どもにご飯をつくるときなどは適宜家に戻っています。徒歩0分の書斎といった感じでしょうか。3月以前は、週に1~2回は出社し、メンバーと雑談を含めたコミュニケーションを取るようにしていました。

ーまさに時代を先取りしていますね。キャンピングカーワークをされる前にも、前職では完全にリモートでのチーム運営を検討されていたとか。

畠山:検討はしたのですが、結局、それは止めました。

ーなぜですか?

畠山:試しにはやろうとはしたものの、率直にいえば、組織運営が難しくなったんです。うまくいっていると思っていたプロジェクトに、メンバー間でちょっとした解釈のズレが出てきたりして。
コミュニケーションの問題に加えて、誰がいま何の仕事をしているのか、当時は、まだ正確に理解できていなかったんですね。

ーそのような経験が、「Bizer team」をつくる一つのきっかけに?

畠山:そうですね。結局のところ、仕事が「属人化」していることが、問題の根幹なのだと気付きました。そのため、「Bizer team」では、チームメンバーの誰が何をしているのか、仕事のプロセスを可視化して、仕事を個人でなくチームのものにすることを目指しました。

「Bizer」をリリースして約半年後の畠山(2014年11月)。
このころから、生産性向上ツールとして世間の注目を集めるようになった

畠山:自分が当たり前だと思っている仕事の内容だって、チーム単位でみたら、分からないことだらけだと思うんです。だから、仕事のプロセスの可視化を怠ると、チームとして業務の中身が見えませんし、人の異動があるごとにあたふたしてしまいます。仕事が個人でなく組織に紐付いていたら慌てなくてすみますし、かつその進捗がチームで可視化されていれば、場所が離れていても仕事ができるようになります。


「管理」でなく「監視」になっていないか?
マネジャーがすべきこととは


―現在の状況に目を移すと、リモートワークやシフト制勤務によって、メンバー同士が顔を合わせないケースも増えていると思います。マネジャーは、より難しいチームマネジメントを強いられているのではないでしょうか。

畠山:会えないことによる影響もあるとは思うのですが、そもそも対面の状況下であっても、マネジャーがチームの仕事をちゃんと理解できていないケースって、意外と多いと思うんです。

―なぜ、いま難しく感じてしまうのでしょうか?

畠山:難しいというより、心理的な不安なのかなと。たとえば、部下がパソコンやスマートフォンで仕事と関係ないページを見ていても、画面が見えなければ、上司からすると仕事しているように見えるじゃないですか。でも、顔が見えなくなった瞬間、「仕事してるかな?」と急に心配になってしまうんですよ。

―どうしても、安心を求めたくなりますよね。

畠山:こういうときに、たとえばリモートワークであればカメラを朝から夕方までオンにしたり、日報を提出させるというやり方もありますが、あまり本質的でないようにも感じています。
もちろんすべてがそうではないのだと思いますが、「管理」ではなく「監視」になっているケースも多いのかなと。業務が常に可視化され、進捗が見えていれば、わざわざ報告させる必要はないじゃないですか。

―畠山さんは、マネジャーの役割をどう捉えていますか?

畠山:いまの社会情勢がどうこうではなく、管理職は、組織のパフォーマンスに責任を持つ立場。チームとしていかに良いパフォーマンスを出せるかに注力しなければいけません。だからこそマネジャーは、チームの仕事を可視化し、それに沿ったリソースの配分を行うことが重要なミッションといえます。そしてそれは、メンバー視点では気付けない、中長期の視点で考えていく必要があります。
ただし、仕事を可視化しただけでチームの生産性が上がるかといえば、そうではないと思っています。下の図で表しているように、可視化チームパフォーマンスを上げるための第一歩に過ぎないということには、十分留意しなければいけません。

―どうすれば、仕事のプロセスを可視化できるのでしょうか?

畠山:いろいろな会社の方と話していて、いいマネジャーは、メンバーに仕事のプロセスをヒアリングして、ときには横で仕事の様子を見て、棚卸を手伝ってあげたりといった行動をされているなと感じます。一度可視化ができてしまえば、メンバーは仕事をしながら、その可視化されたプロセスに少しずつ修正や改善を加えることができます。
大事なのは、それを個人でなくチーム全体でわかるようにすることです。ツールも使いながら、チーム全員が仕事の流れを見えるようにしていれば、ノウハウも自然と組織にたまっていきます。

「Bizer team」の操作画面の例。チェックリストへの入力で、業務プロセスを可視化している


「人手でカバー」の時代はもう終わった
世の中の変化とともに、考えを変えるとき


―現在のような状況は、ある意味「できていない」ことに気付ける貴重な機会でもありますよね。

畠山:そうですね。いま、これまでの組織運営のやり方が通じず、苦労しているマネジャーの方も多いと思います。これを機に仕事の可視化ができるようになれば、上司はそれを基に、必要なときだけコメントすればよくなります。大変な状況下ではありますが、マネジメントの仕方が大きく変わるタイミングかもしれませんし、組織を強くするチャンスでもあるのではないでしょうか。最初は難しいかもしれませんが、それは慣れの問題なので、まずは続けることが大事ですね。

―それができれば、はたらき方は新たなステージに進む可能性も。

畠山:そうですね。これからは人手不足の時代なので、「忙しいから人を増やしてカバーする」ということができなくなります。かつ、現在のような状況下になると、メンバーを増やしても、仕事を手取り足取り教えることも難しくなり、チームの仕事が回らなくなってしまいます。
逆に、仕事を可視化して個人からチームのものにできれば、業務はもっと効率良くできるようになり、はたらく場所だって気にしなくてよくなります。それこそ、キャンピングカーで仕事をすることだってできるわけです。

―世の中が変わる中、考え方も変えていかなければいけませんね。

畠山:「大変なときも頑張ってカバーする」というマネジメントのやり方から、チームの仕事を体系立てて、整理して、最適な状態にしていくというやり方に変わる時期だと思います。そのような取り組みは、必ず、未来のチームの資産になっていくと思いますよ。そういう発想で、柔軟に考えを変化していけるとよいですね。

(以上)

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