「小1の壁」にどう立ち向かう?いま知っておきたいポイント

昨今の社会情勢に伴い、いま、世の中の「はたらく」が急速に変化しています。特集「はたらく見聞録」では、この時代を前向きに自分らしくはたらくためのヒントや、それを支える活動について連載でご紹介していきます。

今回のテーマは、「小1の壁」。多くのワーキングマザーがぶつかるという「小1の壁」ですが、よく知らないという方も多いのではないでしょうか?そこで、「小1の壁って何?」といった基本から、壁を乗り越えるための対策法、新型コロナウイルス(以下、コロナ)による影響まで、5年前に時短メンバーのみの営業部隊を立上げ、時間制約のあるメンバーたちの活躍に尽力してきた、パーソルテンプスタッフ株式会社 ダイバーシティ第二事業部で部長を務める安岡 忍に聞きました。

安岡 忍(パーソルテンプスタッフ ダイバーシティ第二事業部 部長)

社内のママ社員が活躍するための情報発信や交流をする場を提供し、子供を持ちながらはたらく社員向けに、「パーソルテンプスタッフ~先輩ママからのメモ 小1の壁編」をはじめとする、仕事と育児の両立のコツなどを記したガイドブックの発行を起案し、中心となって制作。



※本取材は、新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施しています(記事内画像は画面キャプチャを使用)。


「小1の壁」って?
乗りこえるための対策とは


――まず、そもそもなのですが「小1の壁」とは何ですか?

安岡:子どもの小学校入学を機に、はたらき方を変えなければならないような問題の総称として使われているワードです。

――具体的にはどんな壁があるのでしょうか?

安岡:いろいろありますが、大きなところでは下記の2点だと思います。

――【壁1:子どもを預けられる時間が短くなるのに、時短勤務制度が終わってしまう】を詳しく教えていただけますか?

安岡:小学校に入学すると、子どもが下校後過ごす場所は「学童」になります。保育園は18時から19時ぐらいまで預かってくれるところが多いのですが、公立学童は17時から18時前後に閉まります。一方で、企業の育児時短勤務制度は、小学生を持つ親には適応されないケースが多いのが実情。フルタイムでの勤務をすると、お迎えに間に合わない。これが「小1の壁」の最大の問題点だと思います。

――次の【壁2:保育園と異なり、親の平日のタスクが増える】ですが、具体的にはどんなことがあるのでしょうか?

安岡:小学校に上がると、教科書や体操服などの持ち物が増えるし、宿題も出ます。それらをサポートするタスクが親にのしかかってきます。それに加え、行事も増えるし、親が授業参観やPTAなど日中に学校へ行くことも多くなります。
また、夏休みになると、毎日お弁当をつくるというタスクも加わります。ほとんどの公立学童では給食がでませんから……。

――かなり高い壁ですね……。みなさん、どのようにこの壁を乗り越えているのでしょうか?

安岡:住んでいる地域、環境にもよるので一概にはいえませんが、多くのワーキングマザーが実践しているおすすめ対処法は下記です。

――まず、【壁1対策:(1)私立の学童に通わせたり、塾や習い事に通わせる】から教えていただけますか?

安岡:民間企業やNPOなどが運営している私立の学童は、公立学童に比べて預かり時間が長かったり、勉強を見てくれるなどのメリットがある場合が多いので、そちらを選ぶという手があります。また、学校や公立学童が終わったあとに、塾や習い事に通わせ、親が帰宅するまで子どもが一人になる時間がないように工夫している家庭も多いですね。

――私立の学童には希望すれば誰でも入れるものですか?

安岡:公立・私立の学童とも誰もが入れるわけではありません。定員がありますし、私立の学童がない地域もあります。また、私立の学童は高額というデメリットもあります。塾や習い事も抽選の場合がありますし、ほかの選択肢として、両親に預ける「鍵っ子」にするというのもありますが、これも、それぞれの環境や子どもの性格によります。それに、はじめは学童や塾に通っていた子どもでも、急に「行きたくない」といい出す場合も。まずは、情報収集をしっかり行い、自分が帰宅するまでの間、子どもが過ごせる場所や方法の選択肢をできるだけたくさん用意しておくのが良いと思います。そうすれば、いざというときパズルのように組み合わせることで何とかなる場面もあります。

――情報収集で気を付けるポイントはありますか?

安岡:子どもを預けられる・過ごさせてもらえる時間はもちろんですが、送迎の有無、通う道(人通りの多さなど)、夏休みの状況(お弁当はいるのかなど)、学校が学級閉鎖になったときの対応法など、できるだけ細かく調べておくことですね。


「パーソルテンプスタッフ~先輩ママからのメモ 小1の壁編」より

――上記の対策とともに【壁1対策:(2)フレックス勤務や在宅勤務といった制度を活用する】わけですね。

安岡:企業によって違いますが、使える制度はフル活用しましょう!たとえば、子どもの登校後に出社し、学童から帰る時刻に帰宅して子どもを塾に送っていったら、そのあと数時間在宅勤務をする。もしくは朝早くから前倒ししてはたらくなどです。学校や学童、習い事といった子どもの生活サイクルと会社の制度とを照らし合わせ、上手にスケジュールを組むことが重要ですね。

――夏休みも大変そうですね……。

安岡:学童に行かせている場合は、子どもは朝から夕方までは学童なので、その間親は仕事ができます。でも、学校と同時間にはじまるとは限らないので、時間を調べておく必要はありますね。

――【壁2対策:「やること」「やらないこと」「人に頼ること」を決める】というのは?

安岡:小学校に上がると宿題を見てあげる必要が出てきたり、運動会やPTAなど平日のイベント事も増えます。そのうえで家事を完璧にこなすのは至難の業。たとえば洗濯物はたたまない、平日の買い物は旦那さんに頼むなど、仕事と同じように家事タスクの棚卸しをして、「やること」「やらないこと」「人に頼ること」を決めるんです。そうすれば、家事時間も短縮できるし、気持ちの面でも楽になります。


環境に慣れるまでが一番大変!
夏休みまでが一つの区切り


――一番大変な時期はいつごろですか?

安岡:夏休みが終わるまでの期間だと思います。入学直後は学校や学童といった環境に子どもが慣れていませんし、親も時短勤務が終わってフルタイム勤務がはじまるなどの環境変化があります。はじめての長期の休みである夏休みが終わるまでが1クール。親も子どももそのころまでには環境やペースに慣れてくるので、ここを過ぎると少し楽になります。入学直後の環境変化を少なくするために、習い事を保育園のときから行かせるというのもいいと思いますね。

――夏休みまで親子ともども「慣れる」ための練習期間といえますね。

安岡:そうですね。春から夏の日が長いうちに、学童や塾、習い事へ通う道に子どもに慣れてもらうことも大切です。一人で通うことができないまでも、習い事に行く道の途中で待ち合わせができるなど、子どもが一人でもできることが増えると、親は楽になります。


コロナで休校も……。
大変さは、これまでの「小1の壁」以上⁉


――コロナの影響で休校になった方も多いかと思いますが……。

安岡:新しい環境に慣れるなど、通常4月からできることができていない状態なので、通常の「小1の壁」の何倍もの壁が立ちはだかるのではないかと危惧しています。学校がスタートしたら、学童もはじまるとは思いますが、通常学校より学童の方が「蜜」です。学童側の対応や対策も調べておいた方がいいと思いますね。

――そんな状況真っただ中にいる方へ、アドバイスをお願いします。

安岡:コロナの影響で、学校や学童の状況も刻々と変わっています。上司の方に状況をコンスタントに報告することはとても大切です。上司や管理職の方々には、特別扱いではなく「配慮」をお願いできればと思います。たとえば、小学校が休校中で在宅勤務のいまなら、子どものお昼時間のミーティングは避けるとか、音声ではなくチャットでミーティングをするとか……。その都度一緒に対策を考えられるといいですね。

――コロナの影響を受けて、今後、会社の環境や制度が変わるという方もいるのではないでしょうか。

安岡:そうですね。でも、環境や制度がどう変わっても最後は自分の捉え方と行動次第です。小1の壁はただでさえ高いですし、コロナの影響が大きい今年は例年よりもさらに高くなると思いますが、子どもは日々成長し、いろいろなことができるようになります。その成長を楽しみながら、できることをやり、乗り越えていただきたいですね。

(以上)

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