人材サービス3社協業プロジェクト「ActivateHR」第一回イベントを開催

“採用難”はウソ⁈採用に関する課題解決のヒントと人事領域のスタンダードを、採用に成功している3企業が語る。

パーソルテンプスタッフ株式会社、株式会社ビースタイル、株式会社リクルートスタッフィングの3社は、多様な人材の活躍を推進し、企業の成長支援へのはたらきかけを目指す協業プロジェクト「ActivateHR」を8月に発足。9月19日に、ActivateHRの主催する第一回目のイベント、「成長企業から学ぶ!“採用難”はウソ⁈~採用・定着をアップデート~」が開催されました。

目次

イベント内容

数多くの企業の組織・人材活用・教育等のコンサルティングや研究実績を持つ合同会社YUGAKUDO 代表社員 田口 光氏と、人材の採用・定着・活性化に成功している企業3社の方々(サイボウズ株式会社 青野 誠氏、株式会社i-plug 田中 伸明氏、コネヒト株式会社 宮崎 拓海氏)をお招きし、「基調講演」「成功事例紹介」「パネルディスカッション」の3部構成で、採用難の中での課題をはじめ、その解決における事例やヒントが伝えられました。一部をご紹介します。

(1)基調講演/「令和に必須の採用・人材活用戦略~組織とHRの在りかたはどうなる⁈」
講演者:合同会社YUGAKUDO 代表社員 田口 光氏

生産労働人口の減少や求人倍率がバブル時の1.42倍を超えて、1.60倍以上に推移しているといった雇用を取り巻く環境をはじめ、今後重要となるのは、目標達成に必要な組織能力とボリュームを勘定した採用をデザインすることであること、さらにはオンボーディング(新たに組織に加入した人が早期に成果をあげられるよう組織としてサポートする仕組み)が必須であることなどが語られました。

(2)成功事例紹介

人材不足が叫ばれる中、優秀な人材の採用に成功し、事業を成長させている3社(サイボウズ、i-plug、コネヒト)それぞれの取り組みが紹介されました。

サイボウズの青野氏
「多様すぎるはたらき方の実現」として、はたらく場所と時間を完全に自由化していることや、社員の複業を解禁しただけでなく、複業採用を解禁して、数カ月でスペシャリストが採用できたことなどを語りました。

i-plugの田中氏
一人ひとりの「成長」を掛け合わせて戦略を実現するという人事戦略の元、一人ひとりの自己実現、成長に繋がる機会や仕組みを提供するという人事ポリシーを掲げ、時短正社員、在宅勤務、フレックスなどの制度を導入していることや、社内インターンや複業を解禁し、評価権限をリーダーに委譲していることを語りました。

コネヒトの宮崎氏
組織戦略として、人材のミッション共感をコアエネルギーにすることを掲げ、そこを重視した採用を行っていることや、採用した人材の温度を下げないように注力していることを話ました。そして、社員のモチベーションやエンゲージメントを高める工夫の一つとして、クエスト制度という独自制度を導入して個々の成長を促していると明らかにしました。

(3)パネルディスカッション/「成長企業から学ぶ!“採用難”はウソ⁈【採用・定着をアップデート(モデレーター:田口氏)

Q.「採用方法での工夫は?」
A.i-plug 田中氏:創業まもなくはリファラル(自社社員の紹介での採用)でしたが、今は、ほぼダイレクトリクルーティングです。企業認知の壁を乗り越える必要があり、採用責任者は自社事例をブログで発信するなどをしています。
A.サイボウズ 青野氏:採用ではいろいろなチャネルを使うことが必要です。サイボウズでは、会社の目指す姿や在り方に、共感してくれるかどうかを重視しています。

Q.「共感をどう図り、高める?」
A.コネヒト 宮崎氏:「ミッション共感」という抽象度の高い判断軸を用いて採用活動行っているため、顕在層、潜在層含め、お互い見極めていただくためにも接触頻度が大切だと考えています。そのため、カジュアルな会社イベントを積み重ねて、魅力を伝えています。
A.サイボウズ 青野氏:大規模なイベントは辞めて、キャリア採用の方々を対象とした部署ごと、テーマごとに開催する小規模イベントを開催し、具体的なテーマや仕事内容などを中心に実際の現場社員がお話しするカジュアルな会「キャリアBAR」を実施しています。
A.i-plug 田中氏:いきなり選考をするのではなく、お互いを知るプロセスを持つようにしています。新卒の場合は、内定を出す前に社員に同行してもらう機会を1日〜2日必ず経ていただくようにもしています。

Q.「人材難の中で、採用・定着・活性化に成功されている秘訣は?」
A.コネヒト 宮崎氏:自社にとって重要視したいところに焦点を当てた採用戦略を取ることが重要だと思います。弊社では社会貢献意識を持った人材をどう獲得するか、というところで工夫をしています。
A.i-plug 田中氏:ネームバリューのある会社と同じ採用戦略を取らないことです。我が社の時短正社員などの制度もそういった背景もあります。本当に欲しい人材をどう獲得するのか、事業戦略に沿って人事採用戦略も考えていくことが大事だと思います。
A.サイボウズ 青野氏:採用目標という数字だけ、規模だけを追い求めるのではなく、本当に必要な採用人数、ポジションを常に検討しています。その結果が、求める質の確保や定着にも繋がっているのではないかと思います。

最後は質疑応答が行われ、会場から「題名の採用難はウソ?とはどういうこと」という質問が上がると、「工夫のしようはあるということ。他社がやっていない手法、場所を選ぶ」(サイボウズ 青野氏)、「他社の成功事例をそのまま流用するでは上手くいかず、自社環境や戦略にあった人事戦略をとることが大事。また、週5フルタイムではたらく人材というスタンダードを捨てるだけで、だいぶ採用状況は変わってくる」(田口氏)と話しました。
3社の共通点は、人材難の中で、採用方法の工夫やはたらく環境、制度を見直したり、新しくつくるなど、会社の成長や事業戦略に沿った人事戦略を立てているということ。さまざまな従来の固定概念を捨て、採用などの手法や考え方をアップデートしていくことが必要であることが語られました。

登壇者プロフィール

田口 光氏
合同会社YUGAKUDO 代表社員
元Chatwork株式会社CLO

大手人材サービス企業・エンジニアリングサービス企業にて、新規事業開発・事業戦略・上場準備・M&A・人事総務・人材開発部門経験を経て独立。組織開発コンサルティングLearning Strategy Partnersを設立。多くのベンチャー・スタートアップ企業で顧問・役員を務める。
2019年5月1日より合同会社YUGAKUDOとして活動。中小企業機構/BusiNestアドバイザー 組織行動科学学会会員、人材育成学会会員 (社)企業研究会/組織開発研究委員。

青野 誠氏
サイボウズ株式会社 人事本部部長 兼 チームワーク総研研究員

2006年サイボウズ株式会社に新卒で入社。営業やマーケティング、新規事業立ち上げなどを経験後に人事部へ。現在は採用・育成・制度づくりとチームワーク総研を兼務。
2016年よりNPO法人フローレンスの人事部門にも参加し、複業中。

田中 伸明氏
株式会社i-plug 取締役 兼 CFO

前職の株式会社グロービスでは営業として関西圏の企業の人材育成・組織開発を支援。2012年4月にグロービス 経営大学院で出会った仲間とともにi-plugを創業。新卒に特化したオファー型就活サイト「OfferBox」を提供している。

宮崎 拓海氏
コネヒト株式会社 執行役員 兼 組織開発室室長

2006年株式会社リクルートに新卒入社し営業、商品開発業務に従事。その後、株式会社nanapi(当時は株式会社ロケットスタート)に取締役COOとしてジョイン。2014年、M&Aを経てKDDIグループ入り。KDDI傘下のSupership社にて組織開発、新卒採用など立ち上げ後、2016年6月よりコネヒト株式会社の組織面のPMIを担当。この時の縁から、2017年10月にコネヒト社へ出向、コーポレート部門を統括。2019年4月転籍、6月執行役員に就任。

「ActivateHR」とは

企業の成長や人と企業の在り方に関する気付きやヒントをイベントやホームページ、勉強会などを通じて提供し、これまでの価値観にとらわれない新しいはたらき方やはたらく場所などの提案を積極的に行うことで、企業の成長と多様な人材の活躍支援をしたいという想いから、パーソルテンプスタッフ、ビースタイル、リクルートスタッフィングが競合の垣根を越えて発足したプロジェクトです。
プロジェクト名称「ActivateHR」の「HR」はHuman Resourcesの略で、人事だけでなく、はたらく人そのものやはたらく環境、制度、仕組み、考え方などを、「Activate」=活性化するためのきっかけになりたいと考えています。ActivateHRは、これまでのHRの“あたりまえ”をアップデートすることを目指し、今回のイベントを始め、さまざまなカンファレンスイベントを開催していきます。

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