スポーツ業界の、リアルな「はたらく」を知る「スポーツキャリアフォーラム by doda」が大盛況!
713名が来場しました。
パーソルホールディングス株式会社は、パシフィックリーグマーケティング株式会社が主催し、パーソルキャリア株式会社の転職サービス「doda(デューダ)」が運営を行う、「スポーツキャリアフォーラム by doda」を6月14日にベルサール飯田橋ファーストで開催しました。
「スポーツキャリアフォーラム by doda」は、スポーツビジネスについて知り、キャリアの可能性を広げるイベント。パ・リーグ6球団をはじめとするスポーツビジネスに関わる企業のブース出展のほか、スポーツビジネスについてのトークセッションが行われました。
イベント内容
会場内には、多彩なスポーツビジネスに関わる企業がブースを出展。来場者は、会場案内を手に、興味あるブースを訪れては真剣に話を聞いていました。
また、メインステージではトークセッションを実施。まずは、パシフィックリーグマーケティング株式会社 代表取締役 根岸 友喜氏より挨拶があり、その後、4つのトークセッションが行われました。
1つ目と2つ目は、「スポーツ業界への転職 ホンネトーク」と題したトークセッション。3つ目は、「人事に聞く!スポーツ業界に欲しい人材」と題し、スポーツ業界が求めるスキルなどを人事担当者によるトークセッションが行われました。
そして、最後となる4つ目のトークセッションは、「特別対談『スポーツビジネストークセッション』」。公益社団法人日本フェンシング協会 会長 太田 雄貴氏とdoda編集長 大浦 征也による対談が行われました。
日本フェンシング史上初の五輪メダリストとなった太田氏。現在は、日本フェンシング協会の会長として、さまざまな変革を起こしています。トークセッションでは、具体的な取り組みや、スポーツ業界ではたらくリアルが語られました。その一部をご紹介します。
「スポーツビジネストークセッション」
スペシャルゲスト 太田 雄貴氏 × doda編集長 大浦 征也によるトークセッションより
メダルは次のステージへの「通行手形」 ― 引退後も輝くために
大浦:太田さんは、幼少期からずっとフェンシングをされて世界最高レベルまで到達し、引退してからビジネス色の強いお仕事(日本フェンシング協会会長)をされていますが、ビジネスのノウハウはどのように培われたんですか?
太田氏:ビジネスとフェンシング、根本は一緒だと思います。フェンシングはもともと戦略系のスポーツ。どう15点を積み上げていくかを考えます。目標に向かって、計算しながら緻密に積み上げていくという感覚は、ビジネスもフェンシングも似ているな、と思います。
大浦:競技に集中してきたことが、ビジネスにも活きているのですね。
太田氏:僕はそうでしたね。ロンドンオリンピックが終わって一度引退し、その後また現役に戻ったんですが、そのとき、フェンシングでやれることはやり切ったと思ったので、ビジネスサイドで活躍する経営者たちに会いに行こうと思ったんです。スポーツ選手はそれなりに知名度があるので、現役バリバリだったら大概会ってくれるんですよ。引退後だと会ってくれないんですけどね(笑)。
大浦:現役中という、会いたい人に会えるタイミングで、ビジネス界で活躍する人たちと接点をつくったんですね。
太田氏:僕がよくいうのは、「メダルは通行手形」ってこと。メダルを手段としている人は、引退後も輝ける確率は高い。でも、金メダルが目的の人は燃え尽きちゃうんですよ。僕の場合は、メダルを通行手形にして、次のステージにどんどん行くという感じでしたね。
後は、もう掛け合わせです。「フェンシングやっていました」「メダル取れました」「集客できます」「グローバルでできます」というと、掛け算で最終的に唯一無二になっていく――。そんな感じですね。
「あそこ面白かったね」といってもらえる部分をつくる ― 心拍数を表示
大浦:太田さんは、日本フェンシング協会の会長に就任後、いくつかの改革をしていらっしゃいますよね。
太田氏:僕は、アイディアがふっと浮かぶ右脳型ではないです。どちらかというと、超左脳型(笑)。でも、課題抽出能力は人より少し長けているのかな、と。なのでまず、「フェンシング界は、何ができていないんだろう」「スポーツ界に今、何が足りていないんだろう」って、足りていないところを抽出して、埋めることを行っています。
僕は、スポーツがメジャーになりやすいかを決めるのは、「ルール」と「顔」の2つの掛け算、と勝手にいっています。ルールはシンプルで分かりやすいほうがいいし、顔は見えるほうがいい。人は表情からストーリーを感じ、共感するものだから。じゃあ、フェンシングはどうでしょう?顔、見えないですよね。
その対策として、2018年12月にグローブ座で行った全日本選手権大会の決勝では、心拍数をモニターで表示してみました。選手がいま苦しいのか、楽なのか、心拍数が語ってくれる。ピンチのときは心拍数がガンと上がるんですよ。
大浦:面白いですね。
太田氏:はい。お客さんに「ルールはよく分からなかったけれど、『あそこ面白かったね』」といってもらえる部分を一つ、つくろうと思ったんです。
今年の全日本選手権大会の決勝は渋谷公会堂で行いますが、地方出身選手の地元にオフィシャルのパブリックビューイングを設置しようと思っています。地上波で全国放送をしてもらうのはとても難しいことですが、地方のローカル局ならパブリックビューイングに取材に来て、特集を組んでくれる可能性が高い。もともと決勝戦に上がる人が出るエリアはフェンシングが盛んなので、こうして効果的にPRすることで、強いエリアをより強くする、というサイクルをつくれればいいな、と思っています。
大浦:確かに地域ごとに印象的なスポーツ、というのがありますよね。
太田さんは、どうしてそういうことを思いつくのでしょうか?
太田氏:思いつくというより、僕の場合はほかからの転用ですよ。たとえば、花火大会は、打ち上げ前に協賛企業名をいいますよね。そこから、大会の冠スポンサーのほかに、試合ごとのゲームポンサーを募ったらどうだろうと思って、去年のグローブ座のときにやってみたんです。全日本選手権は全6試合(3種目×男女)あるので、ゲームスポンサーを6社見つけて全試合につけました。
頂点を極めるために、英語は必要だった ― アスリート・ファーストでない考え方
大浦:太田さんの改革のひとつに「選手選考に英語試験導入」がありましたよね。
太田氏:競技中、判定に不服があったときは、審判に抗議しなければなりませんが、英語ができないと抗議もできない。事実、フェンシング選手の英語力と競技結果は、連動しているんです。そこで、2021年に開催される世界選手権から、日本代表選手の選考に英語力試験を導入しました。導入にあたり、協会側から週1回、オンラインで海外の人と英会話をする機会を200名の選手たちに提供しています。スポーツは、現役時代に勝ったほうがより人生が豊かになりますので。
大浦:競技に集中してきた人にとって、英語学習はハードルが高いと思うのですが、理由はほかにもあるんですか?
太田氏:僕は、アスリート・ファーストではなく、アスリート・フューチャー・ファーストとして、選手の未来を第一に考えたい。選手が現役を引退した後も、キャリアの選択肢が複数あるように、次の舞台でも輝けるように、教育も手を抜かずにやりたいと思っています。
勝つことだけにこだわっていてはダメ ― 新しい種目づくり
大浦:今のスポーツ業界、太田さんとして、変革のポイントはどのあたりにありそうですか?
太田氏:勝つことだけにこだわっていてはダメだと思います。これまでは勝つことが補助金の対象になっていたので、勝利と収入が連動していたんですが、東京オリンピック後は、補助金の蛇口が絞められるといわれています。つまり、勝っても収入が増えないケースが出てくる可能性があるわけです。これからはどれだけ多くの人に共感されて、応援されるかが重要。トップクラスの選手の育成とともに、多くの人が競技に興味を持てるように間口を大きくして裾野を広げることが大切だと思っています。
大浦:一般の人がフェンシングに触れる機会って、多くはないですよね。裾野を広げるために、太田さんは何か改革を考えていらっしゃるんですか?
太田氏:フェンシングは現在3種目ですが、4種目目をつくっています。顔が見えて、ルールが分かりやすく、敷居が低い、というのをベースに設計していて、もう新しい道具も出来ました。フェンシングには電気審判機が必要ですが、これをすべてスマホでできるようにし、剣そのものが光ります。スターウォーズみたいな感じです(笑)。すでに、どうやってコミュニティーをつくり、広げていくかのフェーズに入っています。
スポーツ業界ではたらくには? ― 柔軟なはたらき方と、主体性
大浦:スポーツ業界に、こういう人たちに入ってきてほしいな、こういう感覚の人が入ってきたら活躍できるよ、というヒントはありますか?
太田氏:スポーツやスポーツ団体に興味がある人って、とても多いんです。一方で報酬は、みなさんがいま企業からもらっている金額ほど、スポーツ団体は支払えない。なので、フェンシングの場合は、副業・兼業でうちにきてください、と募集をしています。
求める人材は、連盟などその団体のことを自分ごととして捉えられる人。そして、主体性を持っている人。「太田さん、こうしましょう」と発言できる人はとても貴重です。ただ、「これが僕のやりかたです」と、手段にこだわりすぎる人は難しいかもしれません。スポーツ界はまだまだお作法が多い世界。こだわりすぎると通る企画も通らなくなってしまうので…。
大浦:なるほど。いわゆる転職、常用雇用ではなく、副業・兼業など、関わり方を柔軟にするのもアプローチ法の一つということですね。実際にJリーグのチームなどで、週1の勤務など、いわゆる常用雇用ではない形で関わるというはたらき方があります。シーズン性がある競技だと、シーズン中だけ人が欲しい、ということもあるかもしれません。そして、なんといっても主体性。もしかしたら固い考え方の人もいるかもしれないので、そういう人たちや、ステークホルダーを巻き込みながら、主体的に新しいことを形にしていける人が求められているのですね。
質問タイム:きっかけに崇高なものは求めない!
最後に質問タイムが設けられ、参加者から「数ある競技の中でどうして今、フェンシングなんですか?」、「なぜ指導者にならなかったのですか?」などの質問が飛び出しました。太田氏は、「スーパーファミコンを買ってもらう代わりに父がすすめるフェンシングをはじめました。だから、中学生などには『きっかけに崇高なものを求めるなよ』と、よくいっています」、「僕が運営して大会をつくったほうが、誰がやるよりもフェンシングが伸びると思ったから」などと、気さくに回答しました。
こうして、60分の「スポーツビジネストークセッション」は幕を閉じました。
参加者は、フェンシングをはじめとするスポーツ業界のリアルを知って、スポーツビジネスに対しての理解が深まるだけでなく、ときおり笑いが起こる楽しい対談に大満足の様子でした。
プロフィール
太田 雄貴氏
国際フェンシング連盟 副会長
公益社団法人 日本フェンシング協会 会長
1985年11月25日生。平安中学・平安高校(現:龍谷大学付属平安中・高校)、同志社大学出身。
小学校3年生からフェンシングを始め、小・中学と共に全国大会を連覇。高校2年生で全日本選手権優勝。2008年、北京オリンピック 個人銀メダル獲得。2012年、ロンドンオリンピック 団体銀メダル獲得。2015年、フェンシング世界選手権 個人金メダル獲得。2016年、リオデジャネイロオリンピック 出場。日本人で初めてとなる国際フェンシング連盟 理事に就任し、同年に現役引退。2017年6月、日本フェンシング協会理事に就任。2017年8月、日本フェンシング協会会長に就任。2018年12月 国際フェンシング連盟 副会長に就任。
大浦 征也
doda編集長
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。人材紹介事業に従事。法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、キャリアアドバイザーに。転職希望者のキャリアカウンセリングやサポートに長年携わる。担当領域は多岐にわたり、これまでに支援した転職希望者は10,000人を超える。その後、キャリアアドバイザーの総責任者、法人営業部隊も含めた地域拠点の総責任者などを経て、2017年より現職。
社外にてJHR(一般社団法人人材サービス産業協議会)キャリアチェンジプロジェクト、ワーキンググループメンバー、SHC(公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル)理事にも名を連ねる。
本イベントの開催背景
日本政府は「未来投資戦略2018」の一環として、スポーツ業界を成長産業化させることや、2025年までにスポーツの市場規模を現状の3倍に拡大させる計画を策定するなど、スポーツビジネスはさらなる発展が求められています。しかし、スポーツ業界は、競技経験者が所属していた団体へ就職することや、競技経験者以外は知人の紹介で採用されることが多く、異業界からの転職希望者にはあまり門戸が開かれていないという課題があります。この課題を解決するため、ビジネスの知見を持ちスポーツビジネスに興味関心が高い個人と、スポーツビジネスの発展を目指す企業との出会いを提供するイベント「スポーツキャリアフォーラム by doda」を開催することになりました。
本イベントは2018年5月に第1回を開催し、今回は2回目です。
「doda」は、「スポーツキャリアフォーラム by doda」など、さまざまな企画を通して、スポーツ産業の発展を支援することやスポーツ業界の求人情報を発信することで、多くの人の「はたらいて、笑おう。」の実現を目指していきます。