
パーソルグループは、将来世代を重要なステークホルダーと位置づけ、対話を強化する
顧客の採用課題に向き合い、チーム業績やメンバー育成にも責任を持つ管理職。兼務の可能性を考えていた当時、担当グループの業績は順調とはいえず、「この状況で、やりたいと言っていいのだろうか」という迷いもありました。
それでも一歩を踏み出した神谷は、本業の意味やマネジメントのあり方、自身のキャリアを改めて捉え直すことになります。管理職不足や業務過多が社会課題として語られる中、なぜ神谷は自身の業務時間の一部をFR活動に充てているのか。その経験は本業や自身にどのような変化をもたらしたのか、神谷のこれまでを振り返りながら、管理職の挑戦を伺いました。
プロフィール
神谷 拓己(かみや たくみ)
パーソルキャリア株式会社 採用ソリューション事業部 エリア統括部 中部営業部 中部第4グループマネジャー。顧客の採用課題解決に向き合いながら、チームマネジメントを担当。2024年よりFR推進室を兼務し、小中学生を対象としたFR推進活動に携わる。
「地元に何かを返したい」から始まった、キャリア教育との出会い
——FR活動に関心を持ったきっかけを教えてください。
幼少期に母親を亡くしたため、地元岐阜の親戚や近所の方々に本当によくお世話になっていて、振り返ると地域の皆さんに育ててもらった感覚があります。通学路で顔を合わせれば気軽に声をかけてもらい、けがをしたときには手当てをしてもらうこともありました。家族だけではなく、地域全体に見守られながら育ったという実感があるんです。だからこそ、大人になってからもずっと「いつか岐阜のために何かできたら」という想いが心のどこかにありました。
そんな時に、過去一緒にはたらいていた同僚から、岐阜県の高校生を対象にしたワークショップのサポーターをやってみないかというお誘いをもらったんです。私が以前から話していた「いつか岐阜に貢献したい」「キャリア教育に関わってみたい」という想いを覚えてくれていたんですね。
今思えば、何気なく口にしていただけの言葉だったのかもしれません。でも、その想いを覚えていて、声をかけてくれたことで、一歩踏み出すことができました。
その時に参加した高校生向けワークショップが、私とFR推進活動との最初の出会いでした。

25年前の自分と、目の前の高校生が重なった
——実際に高校生と話したことで、どのようなことを感じましたか?
高校生たちと話して一番強く感じたのは、「25年前の自分と同じことで悩んでいる」ということでした。私は商業高校に通っていたので、高校2年生のころから就職活動をするために求人票を見ていたのですが、正直、何を基準に選べばよいのかまったく分からなかったんです。17歳、18歳の自分が、その先何十年も続く仕事を選ぶという決断をすることになるのですが、そもそも“決める”ということができない。結局、半ば逃げるような気持ちで大学進学を選びました。しかし大学に進んでも、再び「どんな仕事をしたいのか」「何を基準に会社を選ぶのか」という壁にぶつかりました。
岐阜の高校生も、「進路をどう選べばいいのか分からない」「将来やりたいことが見つからない」と当時の私と同じように悩みを抱えている姿に、時代は進めど「どのように決めればよいか分からない」という悩みは、昔も今も大きく変わっていないんだなと感じました。
「はたらく」ことをどう捉え、どんな観点で将来を考えればいいのか。その“迷い”を知っている自分の経験が少しでも役に立つなら、キャリア教育にもっと関わりたいと思うようになったんです。
業績が厳しい中で、「今じゃない」と言い続けるのをやめようと思った
——その後、FR推進室の兼務メンバーに志願されています。迷いはありませんでしたか?
正直、かなり迷いました。当時、私は管理職として12年目を迎え、管掌グループの業績は決して良い状況ではなく、組織として苦しい時期でした。そんな中で「今の自分が兼務をしたいと言っていいのだろうか」という想いがありました。
本業がうまくいっていない状況で兼務を希望することは、周囲から見れば「本業から逃げている」と映るかもしれない。そう考えると、なかなか決断できませんでした。
一方で、地域への貢献やキャリア教育に関わりたいという想いは何年も前から持ち続けていましたが、「今は忙しい」「今はタイミングではない」と言い続けてきた結果、何も始められていない自分がいたことも事実です。葛藤を持ちながらも、チャンスを掴まなかった未来を想像したときに後悔の念が増すのではないか。自分自身に問いかけ、「やってみてダメだったら、そのときに考えよう」と腹を決めて兼務メンバーへの志願を決断しました。
覚悟を決めて上司に相談すると、返ってきたのは「いいよ」という拍子抜けするほどあっさりした応援の言葉でした。その後、組織変更で上司が変わっても、誰一人として反対する人はいませんでした。振り返ると、言う前から「きっと反対される」と決めつけていたのは自分だったのかもしれません。送り出してくれる上司、本業を支えてくれるメンバーがいるからこそ挑戦できているのだと、周囲への感謝をこれまで以上に抱くようになりましたね。

FR活動を始めて、本業の「その先」を考えるようになった
——FR活動の経験は、本業にどのようにつながっていますか?
大きく変わったのは、自分たちの仕事が社会に与える影響を、より長い視点・広い視点で考えるようになったことです。
これまでは、企業が人材を採用できたところまでを自分たちの仕事の範囲として捉えていました。
しかしFR推進活動を通じて子どもたちと話しているうちに、「はたらくこと」は、身近な大人の影響が大きいと感じ始めました。保護者が活き活きとはたらいていれば、その姿を見た子どもも「はたらくこと」にポジティブなイメージを持つかもしれません。私たちが企業の魅力を見つけ、共感する人との出会いをつくることは、その先の家族の価値観の変容にもつながっていくのだと思いました。
本業とFR推進活動は切り離されるものではなく、どちらも「はたらく」をよりよいものにする地続きの活動なのだと捉えることで、本業でのお客さまとの向き合い方も変わりました。
——具体的に、本業での顧客との向き合い方にどのような変化がありましたか?
特にお客さまへのヒアリング内容は変わりました。中小企業のお客さまからは、「うちには、他社と比べて魅力なんてない」と言われることが多くあります。しかし、実際にはそこでやりがいを持ってはたらく方がいるし、経営者自身も会社づくりや人材への想いがあります。
現在は、条件や制度だけでなく、「なぜこの会社を経営しているのか」「活躍している人は、どこに魅力を感じているのか」といったことまでていねいにお話を伺うようになりました。企業の担当者自身もまだ言葉にできていない魅力を、私たちが介在して言語化し、社内外へ伝える。その意味を、以前より強く意識しています。
異なるマネジメントに触れ、自分の引き出しが増えた
——具体的に、本業での顧客との向き合い方にどのような変化がありましたか?管理職としてのマネジメントにも、影響はありましたか?
FR推進室では、普段所属する営業組織とは異なるコミュニケーションやマネジメントに触れました。FR推進室は、主務メンバーよりも兼務メンバーが多く、所属する会社だけではなく地域や部署もさまざまです。これまでの定量的な業績目標に向かって組織を力強く動かすスタイルだけでなく、一人ひとりの個性やはたらき方を尊重し、相手に合わせてていねいに関わるマネジメントを体感できたことは大きかったです。
異なるスタイルをメンバーの立場で経験したことで、「このメンバーの意見を十分に受け止められていただろうか」「その人の強みをもっと活かせたのではないか」と、自分のチームを振り返るようになりました。メンバーとの関わり方の引き出しが増えたと感じています。

管理職だからこそ、挑戦する背中を見せられる
——管理職であることと、FR活動の兼務への挑戦をどのように捉えていますか?
以前は、子どもたちの前で自分が管理職であることを積極的には話していませんでしたが、とある方から、「管理職という立場の人が、今も新しいことに挑戦し、自分をアップデートし続けている姿そのものに価値がある」と言ってもらいました。
その言葉を聞いて、管理職であることは、自分だからこそ伝えられる「はたらく」の一つのあり方なのだと気付かされました。そして、立場や年齢に関係なく、人はいつからでも挑戦できる。何を語るかだけではなく、その姿を見せることも、将来世代に伝えられるメッセージの一つなんだと今は自分の一つの個性だと思っています。
「やりたい」を言葉にすることから始めてみる
——最後に、新しい挑戦に関心を持ちながら、迷っている方へメッセージをお願いします。
まずは、信頼できる誰かに、自分の「やりたい」を伝えてみてほしいです。私自身、上司に話すまでは反対されるのではないかと思っていましたが、実際に話してみると、周囲は応援してくれました。
実現できるかどうかは、伝えた後に考えてもよいと思います。私もやりたいという想いだけで決めたわけではありません。本業との両立ができるのか、自分に本当に務まるのか、何度も自問自答しました。そのように悩んでいた中で、以前どこかで「地元に貢献したい」「キャリア教育に関わりたい」と話していたことを、元同僚が覚えていてくれたからこそ、FR活動に出会えたのだと思っています。
「今はタイミングではない」と諦める前に、小さくても一歩を踏み出してみる。その先には、想像していなかった出会いや、自分自身の新しい可能性が待っているかもしれません。

FR推進室 室長 竜田 遼
パーソルのFR活動では、グループ各社から授業のファシリテーターを募り、兼務メンバーとして活動する機会を設けています。
そこには、社員一人ひとりのWillを体現する機会をつくるとともに、将来世代に、さまざまな仕事や経験、価値観を持った『リアルにはたらく大人』と出会ってほしい、という想いがあります。
また、会社や部署、職種を越えて集まったファシリテーター同士が刺激し合い、そこで得た気付きや経験を自分の仕事や組織に持ち帰っていくことも、この活動の大きな価値です。神谷の挑戦も、まさにその一つだと思います。
将来世代との対話をきっかけに、社員自身も新たな気付きや学びを得て、その経験がお客さまとの関わりや日々の仕事にもつながっていく。こうした兼務のあり方を一つの越境学習の機会として設計し、広げていくことで、将来世代だけでなく、社員や組織にも価値が還元されるFR活動をつくっていきたいと思っています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。




