
パーソルグループは、将来世代を重要なステークホルダーと位置づけ、対話を強化する
小学4年生から中学3年生を対象とした本プログラムは、これまでに全国45都道府県を超える835校、87,838名の子どもたちに対して授業を提供してきました(2026年7月末時点 延べ実績)。単なる職業紹介にとどまらず、子どもたちが主体的に生き方を考える緻密な設計が評価され、「第15回 キャリア教育アワード」優秀賞、文部科学省が主催する「令和7年度 いーたいけんアワード」優秀賞を受賞しています。
「生きる力」を育む学びの場として、プログラムに込めた想いや、教育現場との共創、描きたい未来の展望について、「“はたらく”を考えるワークショップ」の開発者・FR推進室 室長 竜田 遼と、現場で子どもたちと向き合ってきた同室の馬場 瑞紀に聞きました。

竜田 遼
パーソルホールディングス株式会社 FR推進室 室長
パーソルキャリア入社後、キャリアアドバイザーとして個人の転職支援を行う。2018年10月より戦略人事、組織・人材開発に軸足を移し、並行して「“はたらく”を考えるワークショップ」を立ち上げ。2021年6月に、小・中学校向けキャリア教育プログラム「“はたらく”を考えるワークショップ」を推進するキャリア教育推進グループを立ち上げ、2025年4月より現職。

馬場 瑞紀
パーソルホールディングス株式会社 FR推進室 エキスパート
新卒から一貫して人事を経験。2019年4月パーソルクロステクノロジーに中途入社。人材育成・組織開発からダイバーシティなど担当。2023年より日本全国の小・中学校でのワークショップを実施。
大人が「正解」を教えない。子どもたちが自ら気付くワークショップ
——「“はたらく”を考えるワークショップ」は、ファシリテーターが全国の学校へ赴き、対面で進行する講師派遣型の授業です。このワークショップは職業紹介ではなく「はたらくとは何か」という問いが軸になっています。現場ではどのようなこだわりを持って授業を届けているのでしょうか。プログラム設計のポイントを教えてください。
竜田:このワークショップの特徴は、「はたらく」を入り口にしながら、子どもたちが自ら主体的に判断し、キャリアを形成していくための「生きる力」を養う授業である、という点です。どんな職業・仕事があるかを知る前に、自分自身はいったい何が好きで、どんな価値観を持っていて、これからどんな人生を歩んでいきたいのか。そうしたキャリア形成の土台となる部分を、一人ひとりに考えてもらうプログラム設計を行っています。

馬場:実際にファシリテーターとして現場に立つ際に意識していることは、大人が予め用意したゴールへ誘導しないこと、定義や正解のようなものを伝えないことです。はたらくことを「自分ごと」として捉えてもらうことで、子どもたちが自ら「分かった!」「自分はこう考えるんだ!」と一人ひとりに自分なりの解を見つけ出してもらうようにしています。
竜田:このワークショップで育みたい「生きる力」や「自己理解」は、日々の生活において「重要だけれど、緊急ではないもの」です。学校生活においては、どうしても偏差値や点数といった目に見える数値が緊急度の高い課題として優先されがちだと思います。それも必要なことですが、その結果、他人が決めた数値や評価だけで自分の人生を測ってしまうようになるのは、すごくもったいない。
——たしかに、就職活動や人生の大きな岐路に立ったときに初めて、「自分はどう生きたいか」という問いに向き合い、悩む大人は多いかもしれません。
馬場:そうなんです。ライフステージの変化や予期せぬ社会の動向など、人生の大きな転換期は誰にでも訪れます。そのときに自分を支えてくれる指針を、子どものうちから少しずつ見つけておくことが大切だと思うんですよね。
自分の人生を自分で描くために。パーソルがキャリア教育に向き合う理由
——なぜ、総合人材サービスを提供するパーソルが、キャリア教育を手掛けているのでしょうか?小中学生は、パーソルが提供するサービスのユーザーとは離れている気がします。
竜田:一番の理由は、パーソルグループが掲げるビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現するためです。はたらくことは大人になってからの営みと捉えられがちですが、キャリア形成という観点で見ると、けっして社会人になってから始まるものではありません。「はたらく」を考えることは、自分の生き方や人生そのものを考えることであり、そして、その土台となる価値観や考え方は、幼少期からの経験の中で少しずつ形作られていくものだからです。
馬場:私や竜田は長年人事領域に携わってきたのですが、新入社員研修などで「これからどんな社会人になりたい?」と聞くと、「まずは上司から教えてもらった仕事をこなします……」「会社の期待に応えます……」という声が多く返ってくることに、どこかもったいなさを感じていました。それらもけっして間違いではありませんが、周囲の評価を意識するあまり、「自分自身がどうしたいのか」という主観が抜け落ちてしまっているように見えたんです。

竜田:社会に出てから突然「あなたがやりたいことは?」と聞かれても、困ってしまう人が多いのではないかと思います。「キャリアは、大人になってから考え始めるもの」という世の中の前提自体を変えていきたいんですよね。私自身、社会に出てから自己内省や自己理解をしてみて「もっと早く知りたかった」と思うことがよくありました。パーソルグループが目指す“はたらくWell-being”を感じられる人を増やすために、小学生や中学生の段階からそのヒントを考えるようなきっかけを渡していく。それが、私たちがキャリア教育に取り組む最大の意義だと思っています。
——ですが、「はたらくとは何か」の答えは人それぞれですよね。明確な答えがないワークショップを、なぜパーソルが担えるのでしょうか?
馬場:それは、私たちが“はたらくWell-being”創造カンパニーとして日々さまざまな角度からビジネスの現場で実践し「はたらいて、笑おう。」というビジョン実現を目指している会社だからだと思います。“はたらくWell-being”には絶対的な正解がなく、一人ひとりの主観がすべてです。パーソルグループは、自分たちの正解を押し付けるのではなく、個人・法人含めそれぞれのお客さまとともに納得解を探し、そこに向けてのアプローチを提案している。それが当たり前のこととして社内に根付いているんです。だからこそ、学校現場でも子どもたちに正解を押しつけず、一人ひとりに寄り添いながら考える余白のあるプログラムを提供できるのだと感じます。
竜田:加えて、このワークショップの大きな強みは、子どもたちの前に立つファシリテーター自身の姿勢にあります。ファシリテーターを務める社員は、みんな自分自身の仕事やキャリアに主体的に向き合い、前向きに考えている大人たちです。子どもたちは非常に純粋で、大人の取り繕いや誤魔化しを鋭く見抜きます。だからこそ、私たちは一人の大人として、子どもたちの素朴な問いに「私はこう考えてはたらいているよ」と嘘偽りなく向き合う。ファシリテーターの存在そのものが強みだと考えています。目の前の子どもたちの未来のために、妥協なく向き合える存在が社内にいることがパーソルならではの強みです。

教育を学校の中に閉じない。社会全体で子どもを育てるパートナーシップ
——2018年の活動開始以来、多くの学校でワークショップを実施されています。学校という教育の場に民間企業が関わることで、どのような新しい価値や変化が生まれると感じていますか。
竜田:携わってみて、まだまだ学校と企業で共創できる余地がたくさんあると感じています。日本の教育は、自ら考え行動する「主体的・対話的で深い学び」の導入など、時代に合わせて大きく変化していますよね。ただ、キャリア教育に関しては、まだ「特定の職業について調べる」「優秀な先輩の話を聴く」といった、従来のスタイルにとどまっているケースも少なくありません。
馬場:100人いれば100通りの生き方がある時代ですから、誰か一人の成功体験を聴くだけでは、自分の未来と結びつけにくい。とはいえ、先生方には国や学校から求められている役割も多くあります。そのため、先生方だけで本質的なキャリア教育を実施することは、構造上難しいのも事実です。その結果、子どもたちが語る夢や、好奇心をじっくり受け止める時間が、どうしても不足しているのではないかと感じています。
竜田:キャリアの問いは大人になってからも一生考え続けるものです。先生方が日々全力で進路指導に向き合っていらっしゃるからこそ、私たちはそこから少し枠を広げた、もっと長い時間軸で「はたらく」を通じて自分自身を見つめる視点を届けたい。そこに私たちパーソルが関わる意味があると思っています。


「はたらいて、笑おう。」を目指す。一生を支える「生きる力」をここから
——最後に、この活動の先にお二人が描いている未来の展望を教えてください。
竜田:子どもたちにこのワークショップを届けることで、結果的に大人も子どもも、みんなが幸せに生きられる社会にしたいという願いがあります。ワークショップを見学した先生や保護者の方から「私たち大人こそ受けたい授業でした」という声をいただくのも、人生が子どもから大人まで地続きだからです。10年後、20年後の未来でも、その人がその時々で「いま幸せだ」と思って生きられる社会をつくりたい。そのために、「生きる力」を育むきっかけを、これからも提供し続けたいと思っています。
馬場:私自身が将来世代に何か自分にできることがないかと思い出したのは、10年以上前に目にしたユニセフ世界白書の報告書がきっかけでした。それによると、日本の子どもの「身体的健康」が先進・新興国の中でトップクラスである一方、「精神的幸福度」は低い水準にとどまっているというデータがあり、「前向きに将来を描けない」と子どもたちの声に、一人の親として非常にショックを受けました。子どもたちがもっと自由に明るい将来を描き、夢があってもなくても「自分は幸せだ」と思える社会にしていきたいです。
竜田:子どもは大人以上に甘くないですし、取り繕いはすぐにバレてしまう。子どもたちの前に立つと、「この大人は信頼できるか」と、僕たち自身が常に試されていると感じます。だからこそ、私たち自身も日々「自分にとっての幸せとは何か」を主体的に問い続けながら、学びの場を全国へ広げていきたいですね。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。




