
パーソルグループはグループビジョンとして「はたらいて、笑おう。」を掲げ、誰もが自分の意思で「はたらく」を選び、自分なりの価値を発揮できる社会の実現を目指しています。本連載では、パーソルグループが描く2030年に向けた価値創造ストーリーの「今」の姿として、「はたらく」にまつわる社会課題の解決に挑むリアルな取り組みを紹介します。
第8回は、パーソルクロステクノロジー株式会社が島根県・隠岐諸島で取り組んだ自動運転バス実証実験です。人口減少や高齢化が進む離島地域において、自動運転バスとフェリーを組み合わせた新たな移動モデルの実現を目指し、地域住民や観光客の移動利便性向上に挑戦しました。
「自動運転バス実証実験」の取り組みと関わりが深い社会課題

本記事のサマリー
・人口減少や高齢化が進む離島地域において、自動運転バスによる移動支援の可能性を検証
・フェリーと自動運転バスを組み合わせ、島と島をつなぐ新たな交通モデルの実現に挑戦
・地域住民との対話を通じて、観光活性化や地域交流など、自動運転が生み出す新たな価値を発見
人口減少が進む地方。移動手段の確保が地域の未来を左右する
少子高齢化による人口減少が進む中、地域では労働力不足や地域経済の縮小に加え、公共交通機関そのものの維持が大きな課題となっています。
国土交通省によると、2008年度から2022年度までの間に全国で20,733kmのバス路線が廃止され、乗合バス運転手数も2019年度から2021年度にかけて約12%減少しています。運転手不足や交通インフラ維持の課題が深刻化しており、移動手段の確保は暮らしや地域経済の持続性を左右する重要なテーマとなっています。特に離島地域では、通院や買い物といった日常的な移動だけでなく、観光や地域経済にも影響を及ぼしています。

※出典:国土交通省「地域公共交通政策について」(2024年6月5日)、国土交通省物流・自動車局「数字で見る自動車2023」をもとに作成
こうした課題の解決に向けて国土交通省が推進しているのが、ICTやAI、ドローン、自動運転などの先端技術を活用して離島の社会課題解決を目指す「スマートアイランド」です。その実現に向けて国土交通省が公募した「令和7年度スマートアイランド推進実証調査業務」に、パーソルクロステクノロジーのプロジェクトが採択され、2025年6月25日~2026年3月6日の間、島根県・隠岐諸島での自動運転バス実証実験を実施しました。
※国土交通省「スマートアイランド推進プラットフォーム」https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/smartisland.html
※国土交通省「令和7年度 実証調査の実施地域について」https://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku11_hh_000130.html
自動運転バスとフェリーを組み合わせ、新たな移動モデルを検証
今回のプロジェクトの名称は「自動運転でつなぐ隠岐島前(おきどうぜん)観光プロジェクト」です。隠岐諸島の中ノ島にある海士町(あまちょう)と西ノ島にある西ノ島町の間を運航するフェリーに、自動運転バスを乗り込ませる交通モデルの実現可能性を検証しました。1つの島内での移動のみにとどまらず、2つの島間の移動を伴った交通環境の利便性を改善することを目指しました。
プロジェクトを統括した黒田 知広は、さまざまな顧客の課題を技術で解決するソリューション事業を推進する中で、テクノロジーがもたらす価値を再認識したことが出発点だったと語ります。
「私たちにとっては当たり前の技術でも、開発機能を持たない企業や自治体にとっては大きな価値がある。そのことに気付き、離島での実証実験に挑戦したいと思いました。隠岐諸島の中ノ島(海士町)や西ノ島(西ノ島町)では、総合病院や郵便局、役所など暮らしに不可欠な施設に行くために他島へ渡る必要があったり、フェリーターミナルから観光地に移動する手段がレンタカーしかなかったりと、移動や交通に関する課題を抱えていました。それらを解決することで、島民の生活支援だけでなく観光や地域活性化にもつながると考えたんです」
プロジェクトでは、自動運転バスによる移動支援を通じて、住民の暮らしや観光振興への効果を検証しました。パーソルクロステクノロジーは、自動運転ルートの調査や3Dマップ作成、自動運転ドライバーの育成、運行管理、走行データ収集などを担当。また、同社は自治体や観光事業者、自動運転バスを提供する株式会社ティアフォーと連携するとともに、パーソルグループ内の営業ネットワークを活用しながらプロジェクトを進めました。
「パーソルグループには全国各地の企業や自治体との接点があります。そのネットワークを活かしつつ、課題に応じたパートナーとの連携や柔軟なプロジェクト組成ができることは、私たちならではの強みだと思います。また、パーソルクロステクノロジーには自動運転の企画や設計だけでなく、実際の試験走行やドライバー育成を担う体制があります。構想段階だけでなく、現場での運用や実証まで一貫して実施できる点も、今回のプロジェクトを実現できた大きな要因でした」

離島ならではの交通課題と自動運転への挑戦
プロジェクトマネジャーを務めた下野 博史は、現地調査を通じて離島特有の交通課題を実感したといいます。
「夜の島は街灯も少なく、どこが道路でどこが海なのか分からないほど真っ暗です。信号の数もごくわずかで、道路幅も狭い。想定していた環境とのギャップに直面しながら、走行ルートや運行方法の検証を重ねました」
実証実験にあたっては、「本当に安全なのか」といった不安の声もあった一方で、「何もしなければ交通手段そのものがなくなってしまう」という危機感から、期待を寄せる住民も少なくなかったと言います。
2025年10月に実施された試乗体験会(レベル2※で走行)では、4日間で247人が乗車。乗車前は約40%の方が「やや不安」と答えたものの、乗車後は90%以上が「満足・やや満足」と回答し、自動運転への理解や期待の高まりがうかがえました。一方で、フェリーへの乗降に関しては課題も残りました。タラップが波で上下するため、自動運転システムが障害物として認識してしまったほか、船が回転することでバスの向きとシステム上のデータにずれが生じるなど、陸上走行だけでは見えない技術課題も明らかになりました。
下野は、実証実験を振り返って「今回はフェリーへの乗降部分を手動運転で対応しましたが、技術的な課題を明確化できたことは大きな成果でした」と語ります。
※レベル2(部分運転自動化):アクセルやブレーキなどを一定条件下で自動制御できるが、運転手は常に運転操作に介入可能である必要がある

試乗体験会アンケート結果(一部)

(n=247/2025年10月10~13日)
参照:https://persol-xtech.co.jp/news/report/20251121-014367.html


テクノロジーの力で、地域課題解決の可能性を広げる
今回の実証実験で見えてきたのは、自動運転バスがもたらす価値は移動課題の解決だけではないということです。島と島をつなぐ移動環境が整えば、観光客の回遊性向上や滞在時間の拡大が期待できます。観光を主要産業とする隠岐諸島にとって、それは地域事業者の事業継続や雇用の維持にもつながります。将来的には、自動運転の普及によって、遠隔監視や運行管理、保守・メンテナンスといった新たな仕事が生まれる可能性もあります。
さらに、地域の方々との対話を重ねる中で、荷物運搬や宿泊施設との連携、島同士の交流促進など、当初は想定していなかった活用アイデアも生まれました。「自動運転バスそのものが観光資源になるのでは」との声もあがりました。
黒田は、「特に印象的だったのは、島民の方たちが自動運転の可能性をいきいきと語っていたことや、子どもたちがバスに乗って喜んでいる姿です。実証実験の成果は、自動運転バスが走行できたことだけではありません。未来の地域や交通のあり方を考えるきっかけを生み出したことも、大きな成果の1つだったと思います」と振り返ります。
また、下野は今回の実証実験を通じて、自動運転バスにとどまらないテクノロジーの力を改めて実感したといいます。
「自動運転は1つの手段ですが、最終的には車である必要もありません。今回の実証実験も『自動運転バスを走らせること』が目的ではなく、地域が抱える課題に対してテクノロジーでどのような解決策を提示できるかを模索する挑戦でした」
現在は、隠岐諸島で得られた知見をもとに、他地域の自治体との対話も始まっています。高齢化や交通課題は全国共通のテーマである一方、地域によって抱える課題は異なります。今回の経験を活かしながら、パーソルクロステクノロジーは自動運転やAI、画像認識など幅広い技術を活用し、それぞれの地域に合った課題解決モデルの展開を目指しています。
担当者からのメッセージ
今回の実証実験を通じて印象的だったのは、地域の皆さまとの対話から、私たち自身も想像していなかった可能性が数多く生まれたことです。当初は交通課題の解決を目的にスタートした取り組みでしたが、自治体や観光事業者、住民の方々と対話を重ねる中で、観光や物流、人と人との交流など、さまざまなアイデアが広がっていきました。
テクノロジーは、それだけで社会課題を解決できるものではありません。地域の皆さまの声や知恵と組み合わさることで初めて価値を生み出せるものだと、改めて実感しました。今回の取り組みで得られた知見を活かしながら、これからも地域や自治体、企業の皆さまとともに課題解決に挑戦し、地域で暮らし、はたらき続けられる未来を支えていきたいと考えています。

エンジニアリング事業管掌
ビジネス企画本部 本部長 黒田 知広
技術開発統括本部 ソリューション本部
SDVシミュレーション推進部
マネジャー 下野 博史
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。




