
パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第15回目は、パーソルキャリア株式会社の田村 春仁です。
ハイキャリアの転職では、圧倒的に高いスキルや能力、経験を持った人材を、ピンポイントで求められます。そのため、職位や給与、待遇も高い求人ばかり。そういった特性もあるせいか、転職に慣れたハイキャリアの求職者は転職先を「やりたいこと」で選ぶことは少なく、「待遇や条件」で選ぶことがほとんどでした。
その状況に疑問を感じた田村は、ハイキャリアでも、「待遇や条件」だけに捉われず、「自分の本音」を軸とした転職支援は必要に違いない、と活動をスタート。業界のセオリーを覆すこの転職支援が、大きな成果を生み出したのです。
肩書きや給与の金額ではなく、その人の本音に合った転職支援を
「面談を通して、ものづくりが好きだったことを思い出した。製造業に転職したいという新卒時代の想いが再燃した。そんな本音を引き出してもらえて、心の底から納得のいく100点満点の転職ができた」
田村が転職のお手伝いをした求職者からもらった言葉です。IT業界の営業職としてバリバリ活躍し、年収は1,800万円というこの求職者が転職したのは、年収900万円とこれまでの半分の年収になる仕事。それでも田村に笑顔で感謝を伝え、次のキャリアへと踏み出していったのです。
田村が手がけるのは現職での年収が800万円以上という求職者がメインのいわゆる「ハイキャリア転職」。輝かしい経歴や実績、スキルなど、ハイスペックでレアな人材です。そういった人材をスポットで求める求人、たとえば「A社が経営企画部長として年収1,500万円で人材を募集」という案件が発生すると、田村たちキャリアアドバイザーはこの高い職位・給与・待遇を切り札としてスカウトを持ちかけるのです。このように、ハイキャリア転職では求人が起点となり、待遇や条件を提示しながら求職者に提案するのが通常の流れとなっていました。
「求人と求職者の希望条件がうまくマッチングできなければ、そこで終了。求職者は、またさらなる優良案件を探して、次々と挑んでいく。転職しても、より高い条件の求人がないか常にリサーチを続ける人も多いのです。そのためハイキャリアの求職者には、1、2年という短い期間で好条件の企業へと転職を繰り返し、年収をどんどん上げていく人もいる。キャリアアップは年収アップとほぼ同義なのです。私はたくさんの求職者と話をする中で、本当に待遇だけが重要なのか疑問を持つようになったのです」
「条件面で転職先を選ぶ」というもはやハイキャリア転職の常識とも言える手法に田村が疑問を感じたきっかけは、求職者からの声でした。じっくりとキャリアについてディスカッションをした際に、求職者が「ヘッドハンターであるキャリアアドバイザーとこんなに心を開いて話せると思わなかった」「自分のキャリアを振り返る中で、改めて自分の強みが分かるとともに、社会人になるときに描いていた夢を思い出した」と話してくれたと言います。
「ハイキャリア転職では、役職や年収の最高値が求職者の価値として判断される傾向が強い。そのため、求職者も自分の『過去の実績こそが武器だ』という考えになりがちです。職位や年収の希望については饒舌でも、『やりたい仕事』『興味のある業界』がその希望に対してネガティブな要素となる場合は、なかなか話してくれない。つまり、本音を隠しているのです。それって本当に良い転職になるのだろうか。そう考え、求職者向けのスカウトメールを、条件や給与を前面に打ち出すスカウトメールから、キャリアディスカッションのご案内に変更してみました。すると返信率が各段にアップしたのです。ハイキャリアであるがゆえに、本当の転職相談ができていない求職者が多かったのです。そこから『条件に合致するかどうか』という目線でのスカウトやヘッドハントではなく、『求職者さまの本音の転職軸は何か』をじっくり聞くことを始めました」
これまでの常識を覆す田村のこのやり方で、冒頭のように「本当にやりたかった仕事に就けた」と喜び、転職先で活き活きと活躍する求職者が続々と生まれるようになります。田村は、従来のヘッドハンター型とは異なる「高い満足度と自分らしいキャリアを生み出すハイキャリア転職」という新しい形を生み出したのです。

自分が手を差し伸べることで、誰かの人生がより良い方向に動き出すなら
「キャリアアドバイザーという仕事は、自分にとって天職」
田村は胸を張ってそう言います。人と話し、本音を引き出し、求職者が望む仕事を紹介し、キャリアをお手伝いする。その仕事に誇りを持ち、この先もずっとやりがいを感じながら人材紹介業に携わり続けたい、と話します。
「世の中には、自分一人だけの力じゃ変えられないものもある。胸の内にやりたいことや想いを持っているのに、一人では動けない。変われない。そうやって悩んでいる人に自分が関わることで後押しをしたい。それがこの仕事に就いたきっかけでした。ハイキャリアの転職もその一つだと思うんです」
「人に手を差し伸べたい。サポートをしたい」と考えるようになったのは、かつて自分もそうやって助けてもらった経験があり、とても感謝しているからだと田村は言います。
中学生のころ、田村は自己肯定感が持てず1年間引き籠もりを経験したとのこと。「自分には何もできない。この先に良い未来なんてない」と悲観的になり、そこから抜け出せず、一人で悩み続ける日々を送っていたと言います。
「そのとき、手をさしのべてくれた人がいたのです。2年前に同じクラスだった同級生です。彼は何度も家を訪れて、2ヶ月間欠かさず家のチャイムを鳴らしてくれました。気にかけてくれても彼にはなんの得にもならないのに、手を差し伸べてくれた。そんな姿を見て、ある日自分も外にでる決心がつきました。そこからの学校生活も風当たりは強かったですが、彼が未来の可能性の話をたくさんして、希望を失わずに過ごすことができました。今でも大変なときは彼がしてくれたことを思い出して、前を向いています。」
直接の恩返しにはならないけれど、自分が手を差し伸べることで困っている誰かを少しでも助けることができたら、彼の想いに応えることができるのでは、と考えたと田村は言います。そこでたくさんの人の人生に関われる人材業界を志したのです。

本当にやりたいことを仕事にできる、そんな環境を日本全国に
人材業界を志したのには、もう一つ理由がある、と田村。大学時代まで過ごした地元北海道で、社会人の先輩であるたくさんの大人から聞いた話が、その理由を生んだのだと言います。
「育ったのは都市部ではなく、田舎町でした。大学時代の後半、社会に出ることを意識し始めたころ、周囲の大人と話すのはやはり仕事や人生の話が大半。そんなとき、地元の大人たちから『やり直せるなら、都会に行って大学にも入り、いろんな経験をしてからはたらいてみたかった』『自分が就職活動をしているときには選択肢が少なかった。もっと見比べて仕事を選びたかった』『たくさんの地域のことを知ることができていたら、違った人生になっていたかも』という話を聞いたのです。それぞれ願望や後悔は違うけれど、みんなどこかで都市と地方の情報格差を嘆いていた。特に、はたらくこと、仕事に関する情報の格差にです」
それに気付き、「地方と都市部の情報格差をなくしたい」という想いを田村は持つようになります。どこに住んでいても、誰もが自分に合った正しい情報を平等に得ることができれば、「もっと幸せな就職がかなうはず」そして「もっと活き活きとはたらけるはずだ」と考えたのです。
「そのために人材業界に入って、一人ひとりに合った仕事の情報をより多くの人に伝えたいと考えました。パーソルキャリアを選んだのもそのためです。配属後はキャリアアドバイザーとなり、求職者一人ひとりが納得して転職できるよう支援する仕事に、やりたかったことを一歩ずつ着実に実現できている、と大きなやりがいを感じていました」
田村が心がけていたのは、面談の中で内省が深まる問いを立て、、本音を引き出すこと。その上で、求人情報から求職者にマッチした求人を探し、紹介する。そんな求職者の人生に伴走できるキャリアアドバイザーを目指していました。そうして幸せな転職をする人を増やすことが「一人では動けないと悩んでいる人を助けること」につながると感じていたのです。
2022年、田村はハイキャリア支援部に異動となります。扱う金額も大きく、ハイスペックなレア人材の転職を支援する仕事、と心躍らせていた田村でしたが、これまでとは違う「まず求人があって、それにあった人材を探す」「切り札は職位・給与・待遇」というハイキャリア転職の仕事に疑問を感じ、その現状を覆すような転職支援を始めることになったのです。

天職に出会えれば、人の本来の可能性が最大化される
「キャリアアドバイザーの仕事は、人の機微を捉えることが重要なんです。声にならないお客さまの本音を、しぐさや言葉から問いを立て、本人に問いかける。このキャリア面談の中で求職者が本当に求めていることを読み取って応えると、納得のいく転職になる。これまでのキャリアアドバイザーの仕事でその経験を何度もしてきたので、ハイキャリア転職にも重要なはずだ、と考えたのです」
希望の職位や年収、待遇ではなく「かなえたい本音」を引き出し、その本音に最適な求人を紹介する田村のハイキャリア転職支援は、すぐに成果を上げ始めます。冒頭で紹介した求職者のように、とても感謝されることが増えたと言います。ただ、冒頭の例のように、年収がダウンすることも少なくはありません。それでは営業成績に影響が出てしまいます。
「その懸念はすぐに払拭されました。人材を紹介した企業からの満足度も上がったのです。『かなえたい本音』を軸とするので、求職者の満足度は高いのはもちろんですが、その求職者が活き活きとはたらけるので、採用した企業側にも良い影響が出るのです。結果、転職支援ができた方の総数は、活動前と比べて約130%にアップしたのです」
そのほかにも、外資系企業への人材紹介が2倍に増え、40代以上の求職者や年収800万円以上の求職者の転職も活動前に比べて約180%アップするなど、大きな成果が次々と生まれていると言います。これまでのセオリーを覆す田村の活動が、ハイキャリア転職の新たな形を生み出したのです。
「転職で天職に巡り会えた。そんな人が増えた、と転職支援をした方の笑顔を見ていると感じています。そして自分がやりたかった仕事が、ハイキャリア転職でもできていると感じています。これからもこのキャリアディスカッションを大切にして、キャリアアドバイザーとしてはたらいていきたいですね」
「キャリアアドバイザーという仕事は、自分にとって天職」と田村は言いますが、この言葉は、キャリアアドバイザーとしてたくさんの経験を積む、ずっと前に言い出したのだ、と田村は苦笑いで話します。
「まずは天職と言ってみることから始めました。それが正解になると信じて、この仕事に向き合い続けたんです。引き籠もって立ち止まっていたときに手をさしのべてくれた彼のように、この言葉が迷ったときや落ち込んだときに自分を引っ張ってくれる存在です。今は天職だと心から信じることができているので、キャリアアドバイザーとしてやりがいを持ってはたらけています」
自分がそうであるように、「自分の本音」を軸にすれば、はたらいて笑える人がもっと増えるはず。そのためにこれからも、一人でも多くの人のキャリア支援をしたい、と田村は力強く話してくれました。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。