自分らしく、自分のペースで。それが健康的な、私らしいやり方 ― PERSOL Group Awards2024受賞の裏に(13)小田 千聡 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第13回目は、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の小田 千聡です。

小田が率いる健康経営推進事務局の活動が功を奏し、パーソルワークスデザイン株式会社(現パーソルビジネスプロセスデザイン)は、2023年度に経済産業省から健康経営優良法人の証である「ホワイト500」の称号を与えられました。
これは受賞当時のパーソルグループで唯一の快挙。その裏には小田の2年間の試行錯誤と葛藤、そして発想を大きく変える気付きの瞬間があったのです。

目次

日本の大規模法人のトップ500以内を目指す、大きな挑戦の始まり

2023年度、パーソルワークスデザイン(2024年10月から統合によりパーソルビジネスプロセスデザイン)は、経済産業省が定める「健康経営優良法人認定制度」で顕彰を受けた企業のうち、大規模法人部門の上位500社に与えられる称号「ホワイト500」に輝きました。これはパーソルグループで唯一の快挙。2021年度から3年にわたり、この「ホワイト500」認定を目指して活動を推進してきたのが、小田の率いる「健康経営推進事務局」でした。

経済産業省が定義する「健康経営」とは、

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

(経済産業省Webサイト「健康経営(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html)」より引用)

「私たちパーソルグループはグループビジョンに『はたらいて、笑おう。』を掲げています。弊社では『はたらいて、笑おう。』を実現するために、人々の心身が健康であることがとても大切なことだと考えました。体調が悪かったら、“はたらく”どころではありませんよね。また、ヘルスケアサービスをさまざま企業に提供する立場としても、自社の従業員が健康でなくてはならない。そんな想いから、2021年に健康経営推進事務局がつくられたのです」

その健康経営推進事務局の発足と同時に小田はプロジェクトにアサインされます。それまで小田が参加していた会社統合プロジェクトが一段落ついたタイミングでした。

「健康経営推進事務局の活動はゼロから、手探りで始めました。そしてすぐに難易度の高さに気付きました。申請のために取り組むべきこともとてもハードルが高かったのです。取り組む内容は、経営理念・経営方針の新たな解釈、健康増進の取り組みや感染症予防対策、組織づくりなどとても広範囲。それらすべてに取り組み、健康経営のガイドラインに見合った成果を上げなければなりません。さらに申請時には、その取り組みの内容や成果を調査票に落とし込みます。回答すべき項目は約80あり、提出する調査票は50ページほどになります」

まるでテストやレポートをどさっと課せられた気分、と小田は話します。従業員の健康について、これまで取り組んだ経験はもちろん、考えたこともなかった立場から、旗を振って主導する立場になった小田は、悪戦苦闘しつつ、一つずつ項目に取り組み始めたのです。

「毎日、テスト勉強をしているような気分でした。『ホワイト500』は手段で、それに取り組むことで『活き活きはたらける環境を実現する』ことがゴールだったはず。なのに、いつしか『ホワイト500』に申請するために『どう従業員の健康を向上させるか』を考えるように。本末転倒で、これでは認定されるわけがありません(苦笑)」

結果、2021年度と2022年度はさまざまな施策を行うも認定には届かず。それどころか、「健康経営」自体が社員に浸透せず、社内認知度は40%弱……。

「社内は全然健康になっていない。不調を抱えた人も減っていない。その様子を見て『あれ?これって私にとって嫌いなことを仕事にして、人にまですすめているのではないか?』と気付いたんです」

「競争、キライ」と「相対評価の社会人生活」の折り合い

「競争したりとか人と比べたりというのが、ずっと苦手なんです。だから学生時代の部活動とかサークルに入ってもすぐに辞めちゃっていて。『私ってなんにも一番になれてないな』と考えたりもするんですけど、『でもそれで別にいいじゃん』とも思うんです」

自分の性格をカラッとそう話す小田。そんな小田が、中でも苦手を感じていたのが「はたらくこと」。

「人よりうまくできなきゃいけなくて、そうでない人は居場所がない。はたらくって、私にとってはネガティブなイメージで、だから就職活動も、すごく嫌でした。自分なりに一生懸命やりましたが、内定がもらえず就職を諦めたこともありました。結局、ハローワークに駆け込んで、新年度直前の3月下旬に決まった会社に新卒で入社しました」

最初に入った会社では、売上データや伝票入力などの事務の仕事を経験した後、異動で人事部に。そこでは給与計算や退職手続きなどの業務を一人で担当することに。

「そのときに初めて仕事のやりがいを感じたんです。理由は『給与や退職処理など、人が知らないことをやっているから』。そして『自分しかできない業務を、自分のペースでやり遂げているから』。今まで一番を目指して全力で取り組んだことってなかったけれど、人事にはそういう仕事があるんだと気付きました。それもちょっとうれしくて『人事の仕事をもっとやりたい』と思うようになりました」

その後、人事関連の求人を探して転職活動。小田はパーソルワークスデザインの前身である株式会社日本アイデックスに入社します。

「中途入社の社員の扱いって、新卒入社とは違うじゃないですか。経験者としてどんどん仕事を任されるけれど、ついていけなかったんです。どうしてほかの人みたいにできないんだろうと、自己嫌悪する毎日でした」

そんな中、日本アイデックスがパーソルワークスデザインに統合され、小田はその統合プロジェクトに抜擢。そのプロジェクトが終わったタイミングで「健康経営推進事務局」が立ち上がったのです。

「自分で自分の成長が実感できる努力」を誰が批判できるというのだろう

「会社統合プロジェクトの完了が見え、今後自分がどのようにはたらきたいのか悩んでいるタイミングでした。バタバタと事務局にアサインされて、『健康経営』を知りました。自分を追い込まずとも、自分にとって心地良い状態で心身の健康を保ちながらはたらく、それが会社の価値向上にもつながるという考え方が新鮮だったんです。社員の皆さんにも健康経営を知って、実践してほしいと2年間活動しましたが、思うような結果が出ず、『ホワイト500』にも届きませんでした。そんな時に、自分にとってどんな状態が心地よいのか、改めて振り返ったときにピアノが浮かんびました」

「これまで何も長続きしなかった。私って軸がないんです」という小田ですが、ピアノは3歳から今もずっと続けていると言います。

「プロになるようなすごい演奏者ではないし、目指してもいなかったのですが、ピアノはずっと続けられていた。理由は、成果が見えやすいから。努力をまったく裏切らないから。才能は生まれつき決まっているかもしれない。その才能の大きさに合わせて伸びしろも決まっていると思います。でも、努力するとその伸びしろの中で、自分はちょっとうまくなれる。自分なりの伸び率があって、努力に応じて、確実にうまくなれる。他人と比べてどうこうじゃなくて、自分のペースで自分らしく成長できる。それが実感できるのがピアノです」

だから気持ち良くて、ずっと続けていられる、と小田は話します。そして、その気持ち良さは健康経営にも活かせるのではないか、と考えたのです。

「ピアノは、発表会で自分より難しい曲を上手に弾いている人がいても、自分が頑張って練習して、楽しんで演奏できたなら、私にとっては大満足。そうやって主観で取り組んで、自分を認めてあげる方が心地良い。そもそも『健康』というのも人それぞれの尺度や考え方、生き方で違うじゃないですか。健康診断の判定が悪くても今の生活スタイルが心地良い人もいれば、健康であっても、さらに良い状態にしたいと考える人もいる。本人の気持ちや心の健康など、数値では測れないものもあります。数値だけ見て『あなたは○○が悪い。健康な人を見習おう』と紋切り型で言うのは、私だったら嫌だな、と思ったんです」

そこから健康経営推進事務局の方針と施策が、大きな変化を遂げたのです。

誰のためでもない、自分のために、これから先も頑張ろう

これまでは申請する調査票をもとに、施策を考えて実行していました。健康診断の数値が基準値から外れている人に対して「健康になろう」とアプローチするのがメインでした。「対象の人にとってはやらされている感があるし、健康な人は関心を持てない方針だった」と小田。その方針を、ガラリと変更。社員一人ひとりが自分にとって心地良い状態に向かっている、その結果今より健康的な状態になることを目指して施策を始めたのです。

「見るべきものは調査票じゃない。パーソルワークスデザインの社員、一人ひとり。私たち事務局の3名だけが取り組むものではない、社員を巻き込み、社員の為になる施策は何だろうと考え実行しました。するとこれまで健康経営を知らなかった人や気になっていたけどどう協力していいか分からなかった人が、次々と反応してくれた」

想いに共感してくれる社員は50名以上に。その仲間を社内でさまざまな活動を広めるエバンジェリストとして「健康経営サポーター」に任命。ヘルスケア部門の現場の社員からは、朝活やオリジナル体操などの企画提案があり、部署を超えた活動が広がっていきました。それ以外に、仕事だけでなくプライベートにも応用できるメンタルセルフケアを推進。社員が自ら参加して、楽しみながら自分の健康に向き合う機会をつくることができました。

「これまで40%もなかった健康経営の社内認知度は、2023年9月時点で81%までに向上。施策参加者の83%から『仕事に良い影響があった』という感想をもらえました。何よりも『会社の健康イベントは楽しい』『教わったことを自分でもやってみた』という声がうれしかったですね。みんなが自分の『健康』を考えて、自分なりに前向きに活動するようになってくれた」

この変化の結果、パーソルワークスデザインは2023年度「ホワイト500」の認定を受けたのです。ただ、2024年にはパーソルプロセス&テクノロジー株式会社、パーソルテンプスタッフ株式会社 のBPO事業と統合し、パーソルビジネスプロセスデザインとなり、それに従い、「ホワイト500」の称号も返納することとなりました。

「せっかく認められたのに……という気持ちもあるにはありますが、むしろワクワクしているのが正直なところ。2023年の活動で、『自分の健康を、自分なりに考え、自分らしくより良くしていく』という私たちにしかないやり方を確立できました。パーソルビジネスプロセスデザインになり、社員は約10倍。増えた仲間たちにも、私たちの健康経営のスタイルを始めてもらえば、より多くの人がより良くはたらける環境を創出できる。より規模の大きな健康経営が実現する、と期待しています」

一つの挑戦を終え、休む間もなくさらに大きな新たな挑戦に向かっていく小田と健康経営推進事務局。パーソルビジネスプロセスデザインで「ホワイト500」の称号を得られれば、また再びのパーソルグループ唯一の快挙となります。その日を楽しみに、今日より明日、と小田はワクワクしながら歩むのです。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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