「インドの女性のエンパワーメントを推し進める」生涯かけての実現を目指す、ビジョンへの第一歩 ― PERSOL Group Awards2024受賞の裏に(5)Bhaskar Lahkar ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第5回目は、PERSOLKELLYのBhaskar Lahkar(バスカル・ラカル)です。

インドの大手電子機器製造企業がインド国内に新たに開設する、スマートフォンなどの部品製造工場。インド経済の成長を加速する大プロジェクトとして国内外の注目を集めています。その生産ラインが必要とする派遣スタッフは、約1万人。そのニーズに応え、Bhaskarはインド全土を奔走。募集した派遣スタッフは、すべて女性でした。このプロジェクトは「インドの女性のエンパワーメント推し進めたい」というBhaskarの生涯を掛けたビジョンへの挑戦でもあったのです。

目次

一過性のタスクではない。人生をかけたビジョンへの挑戦

「ベンガルールで電子部品の組み立てスタッフ約1万人の派遣を実現する」という超大型プロジェクトに挑み、迅速に応えているのがPERSOLKELLYの Bhaskar。ベンガルールは、南アジア有数の世界都市。インド南部に位置し、インドにおけるIT産業の中心都市で、イノベーション都市としても知られている、いわばインドのシリコンバレーです。インドの大手電子機器製造企業が、台湾企業のスマートフォン部品の製造部門を買収し、インド国内での生産を本格化させることを決定しました。インド経済のさらなる活性化に寄与する事業であり、スマートフォン向け部品の世界需要を賄う一大プロジェクトと、世界の注目を集めています。当然ながら工場の規模は世界最大級で、そこではたらく組み立てスタッフも1万人規模と、歴史的な大プロジェクトとなっているのです。

もちろん、その規模の工場が建設されるのも、新規にそれほどの雇用が創出されるのも、とてもレアなケース。PERSOLKELLYを含む15の人材派遣企業が取り組み、インド全土から人材を集めていますが、各社ともに難航しているのが実際のところ。その状況下で、Bhaskarはわずか6カ月で1,300人の派遣を実現し、工場の稼働に貢献しています。しかもそのスタッフのほとんどが女性。

「私はこのミッションを、ただの業務やタスクと考えて取り組んでいません。これは、私のビジョンを実現する、逃すわけにはいかないチャンス。そして失敗することのできない大きなチャレンジなのです」

女性の社会進出が遅れるインドを、自分の手で変えていきたい

Bhaskarの故郷は、シロンという街。インド北東部にあるメガラヤ州の州都で、「東洋のスコットランド」と呼ばれる風光明媚な街です。ロックミュージックが好まれているなど、特徴はさまざまありますが、中でも際立っているのが「母方の家系を継承する母系制都市」であるということ。そのことがBhaskarの考え方に大きな影響を与えました。

「インドの地方では、男性が結婚相手の故郷まではるばる旅し、相手を自分の家に連れて帰るという婚姻のしきたりがいまだに多く残っています。家族をつくり、家族を守り、そして家系を受け継ぐのは、男性という考えです。女性は進学や就職をすることなく、家庭に入って家事や育児を担うケースがほとんど。でも、私が生まれ育ったシロンは違います。家庭では母が家族のリーダーです。女性がはたらきに行き、家計を支えることも多い。私はそういった『女性がリーダーシップを取る姿』を目の当たりにして育ってきたのです」

大学進学までシロンで過ごしたBhaskarにとって、女性の社会進出は、ごく普通のこと。でも大学に進学し、ベンガルールに住まいを移すと、そこには別の景色が広がっていたのです。

「それは男性優位の社会でした。女性の多くは進学してもそれを社会で活かすことなく家庭に入る。そして仕事に就くことは少ない。もし仕事に就けたとしても、十分な賃金を得られる勤め先は少ないのです」

大学では美術と経済を専攻し、卒業後はMBAも取得。一方で、クリケットなどのスポーツに打ち込むなど充実した日々を過ごしていたというBhaskarですが、大都市ベンガルールの実情を見るにつけ「女性がもっと社会進出できないものだろうか」という疑問もまた芽生えていたのです。

「小さな街シロンから大都市ベンガルールに出られたのは幸せだったと思います。ベンガルールでさまざまなことを学び、学生の日々を楽しめました。そして、人生を賭けるに値する『インドの女性の社会進出を推し進める』というビジョンを描くきっかけをつかむこともできたのです」

「ビジョンを実現できる最良の手段」と思えたのが人材業界だった

2009年にMBAを取得し、社会に出ようと志したBhaskarですが、当時のインドはリーマンショックのあおりを受けて就職難の状況。苦労の果てにBhaskarが就職したのは、旅行会社でした。そこに2年半勤めた後、小さな人材派遣会社に転職し、「人材を扱う仕事の素晴らしさ」に気付いたとBhaskarは話します。

「本当に大変な就職難で、なんとか生きていかねば、という想いで旅行会社に入社しました。ただ収入は低く、福利厚生もほとんどなかった。生き延びるためにはたらいている、という日々でした。その状況が、人材派遣会社に転職し、大きく変化しました。伸びている業界と言うこともあり、私はどんどん成果を上げて出世し、大きな予算を任される支店のマネジャーとなりました。その時にはかなり生活も安定していましたね。余裕もあり視野も広くなって改めて自分のビジネスを見て、人材ビジネスの影響力を理解しました」

人を雇うということは、企業にとって大きな投資となる。そして、雇われる人の生活に大きな影響が出る。Bhaskarが手がけている派遣スタッフの平均給与なら、インドの最貧地区であれば、家族5人を養うことができる収入が手に入ることになります。「社会と経済を活性化させるだけでなく、多くの人の幸せをつくる仕事をしているのだ」とBhaskarはやりがいとともに大きな責任を感じたと言います。その時に「シロンのように女性がもっと社会進出できれば、より多くの人の幸福に貢献できるのでは」とビジョンが明確になったのです。

「比較的大きく、多くの雇用を生むプロジェクトを担当した時に『この仕事なら、私が描いたビジョンを達成できる』と実感しました。だからより大きな仕事を手がけたいと考え、世界のさまざまな国や地域にオフィスを持ち、国を横断して世界規模のプロジェクトを展開しているPERSOLKELLYに再転職を決めたのです」

インドの社会が、変化へ向け、一歩を踏み出した

転職後すぐ、チャンスが訪れました。それこそが「1万人のスタッフの派遣を実現する」という巨大プロジェクトです。Bhaskarはすぐに20人でチームを組み、15日間で100カ所の訪問地点をピックアップ。インド全土を駆け巡りました。100の小さな街、300の大学、250の派遣会社、100の技能講習所、そして12,000人の求職者とコンタクトを取ったのです。

「クライアントの説得も並行して進めました。『派遣するのは女性スタッフでいいか』という説得です。クライアントは、これほどの規模の求人を埋める女性の募集があるだろうか、と首をかしげました。ですが『家事や育児を見れば分かるように、女性は常にマルチタスクで視野も広い』『料理や裁縫など、細やかでていねいな作業ができる』何より『社会進出を果たせていない女性がインドにはたくさんいる』と説得を重ねました」

Bhaskarは自説を裏付けるため、インド全土から数百名の女性スタッフを集め、工場での勤務をスタートすることを計画。最初にBhaskarが派遣したのは157名の女性スタッフ。中には400km離れた場所から12時間かけてやってきたスタッフもいました。

「それ自体もかなりのチャレンジでした。私たちチームは、女性求職者の両親の説得に力を入れました。家庭から社会へ、女性を送り出すことに否定的な親もいます。まずは女性が収入を得ることで、家族の生活が安定することについて説明しました」

一番苦労したのが、この「親の説得」だったとBhaskar。求職者の家族は給与については理解しても、娘たちの労働環境と生活環境が不安、と首を縦に振らないこともあったといいます。そこでBhaskarはクライアントをさらに説得するため、寮を準備し、医療体制も整備。また子連れではたらきに来る女性スタッフのため、子どもたちが過ごせる場所も設けました。その良質な生活環境に、両親たちも、何より求職者たちが安心してくれたとBhaskarは話します。

「はたらき始めた157名の笑顔を見て、クライアントは納得し、私たちを信頼してくれました。女性スタッフたちからは『自由に社会で活躍できる』『自立できるチャンスに感謝しています』という声ももらえました。ビジョンの実現に、大きな一歩を踏み出せたと感じました」

その後の6カ月でBhaskarは1,300人を派遣。今後、2025年3月までにさらに1,300人の派遣を実現するため、今もチームでインド全土を奔走しています。

「今回の私の取り組みは、大海に1つの水滴を落としたようなものかもしれない。海面にはさざ波も立たない、そんな程度の変化かも知れません。でもこれを続けていけば、もしかしたら明日にはより多くの水滴が雨のように降り注ぎ、海面を大きく揺らすかもしれない。そうなればインド社会は変わるはず。人の幸せがより多く生まれる。その日が、私のビジョンが実現する日なのです」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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