社員約6万人の人事関連データをデジタル化!「IT奨励賞(マネジメント領域)」を受賞

パーソルホールディングス株式会社は、パーソルグループ社員約6万人の人事データ基盤を構築したことで、公益社団法人企業情報化協会(以下、IT協会)が選定する「2022年度(第40回)IT賞」にて、「IT奨励賞(マネジメント領域)」を受賞しました。

写真:受賞したプロジェクトに関わったパーソルグループの5名。右から、中桐 亮(パーソルホールディングス)、吉澤 英俊(パーソルホールディングス)、朝比奈 ゆり子(パーソルホールディングス)、佐藤 武史(パーソルプロセス&テクノロジー)、麻植 裕司(パーソルホールディングス)

◆IT賞とは◆

IT賞は、公益社団法人企業情報化協会が”ITを高度に活用したビジネス革新”に顕著な努力を払い、優れた成果が認められた企業・団体・機関・個人が表彰される制度で、昭和58年の第1回より今年で40回目を迎えます。
IT賞審査委員会による厳正な審査により、2022年度は「マネジメント領域」「顧客・事業機能領域」「社会課題解決領域」「トランスフォーメーション領域」「オープンイノベーション領域」「ニューノーマルへの対応領域」「サステナビリティ領域」の7領域で、全32件の受賞がありました。

本記事では、2月2日に行われた「2022年度 IT受賞記念式典」での受賞式の様子と、受賞した取り組みを起案し、プロジェクトを牽引したリーダーの中桐 亮に聞いた「IT奨励賞(マネジメント領域)」受賞までの舞台裏と今後の意気込みをご紹介します。

受賞の様子

今回、パーソルホールディングスが受賞した「マネジメント領域」は、既存事業への業績貢献、情報システム部門の自社内(グループ内)地位向上に関わる取り組みを審査する部門です。

受賞した取り組み「IT部門発!スモールスタートで始めたデータ基盤で隠れたユーザーニーズをキャッチ!リーンに利活用を実現!」は、これまで人事部門が手作業で集計していた国内のグループ会社35社・社員約6万人分の人事関連のデータを、IT部門が主導してデジタル化したというものです。

授賞式典は2月2日、ザ・プリンスパークタワー東京(オンラインライブ配信併催)にて行われました。

企業情報化協会 会長の山内 雅喜氏から表彰楯を受け取るパーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長 朝比奈 ゆり子

プロジェクトリーダーに聞きました!

~受賞までの舞台裏と今後の展望~

中桐 亮/パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 DX企画部 部長。受賞プロジェクトスタート時は、人事・財務などグループ全体に影響するシステム開発や保守運用などを担う、グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部も兼務

目次

構築期間はたった3カ月!成功した理由は……

――受賞おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください。

中桐:ありがとうございます。とてもうれしいです!
今回IT賞にエントリーしたのは、社内でのIT部門の認知度を高め、デジタル化の機運を高めたいという想いからなので、今回の受賞で少しでもそれが叶ったらいいな、と思っています。
でも、実はマネジメント領域のIT最優秀賞を狙っていたので、正直悔しい気持ちもあります(笑)。

――今回のデジタル化でどのようなことができるようになったのですか?

中桐:社員約6万人分の人事関連データをデジタル化したことで、人事がエクセルなどを駆使して行っていた36帳票分の集計や分析を簡単にできるようになり、ダッシュボード(※1)でさまざまなデータを視覚的に確認できるようになりました。また、グループ集計のデータは、国内のグループ35社の人事部門間でデータの即時共有ができるようになったので、データ共有のためのメールのやり取りといった手間も省けるようになっています。

さらに、ドリルダウン機能で、データの集計レベルを1つずつ掘り下げて、集計項目を詳細に見ていくことができます。たとえば、社内で一番残業の多い部署がどこかを知りたいとします。そうしたら、社内の残業時間を集計した表やグラフから、一番多い部署をクリック、室をクリック……とやっていけばいい。そうしてデータをどんどん深掘りしていくと、残業の傾向やそれにつながる真因が見つかるという使い方もできるようになりました。
(※1)複数のデータや情報を1つの画面にまとめてグラフなどで可視化できるようにしたツールのこと。

――どのような点が評価されての受賞だったのでしょうか

中桐:大規模な投資や人材配置が困難な状況でのスモールスタートだったことが評価されました。

プロジェクトをスタートする前に、今回のデジタル化でどのぐらいの投資対効果があるか算出したのですが、年間で約864時間、コスト換算で300万円弱。正直、デジタル化のために大きく投資するには厳しい数字でした。それにデータ基盤をゼロから構築できるほどの技術力を持つメンバーもいなかったんです。

そこで、SaaS(※2)製品を活用しながら、データ関連の知識を持つ私とクラウド関連の知識を持つ部員1名の2名で、コストを抑えながらスタートすることにしたんです。それが2021年の9月でした。そこから製品選定や社内調整などを行い、システムの構築フェーズに入ったのが2022年4月。そこから五月雨で2人メンバーを増やし、7月にはシステムを使える状態にしました。
(※2)サービス料を支払うことで必要な機能をインターネット経由で利用できるようにしたソフトウェアのこと。

――4人で、しかも3カ月ほどでシステム構築とは……。相当大変だったのでは?

中桐:とにかく知識と技術力が足りない状態でした。SaaSを活用するとはいえ単純に1つの製品を使うわけではありませんし、なんといっても機密性の高い社員6万人の人事系データを取り扱うわけです。情報漏洩などは絶対に許されませんし、安心・安全にデータを取り扱うための運用設計も必要です。慎重に何度もテストを重ねながら構築していったんですが……、なかなか思うようにいかなくて。SaaS製品を使っているので8割方はできるんですが、あとの2割がうまくいかない。でも、絶対に手は抜けない。難航状態が続いて本当に苦しかったですね。

――どうやって乗り越えられたんですか?

中桐:あとから入った2人もシステム開発の専門家ではなかったので、人員体制としては厳しかったのですが、全員が「このシステムを絶対につくるんだ!」という強い想いを持っていたんです。その想いこそが、いくつもの壁を乗り越えることができた一番の力だったと思います。みんな自律的にいろいろ調べては、あーだこーだと話し合い、右へ左へ蛇行しながらつくり上げていったんです。良く言えばアジャイルなんですが、従来のシステム開発では考えられないような超トリッキーな進め方でしたね。

――トリッキー?

中桐:はい、超トリッキーです(笑)。システムの構築は、家の建築に例えられることが多いのですが、家を建てるときはまず、設計書を書きますよね。そのあと、土台をつくり、そこに柱をたて、外壁や屋根をつくり、最後に内装を行う。システムをつくる際も従来こうした順番があります。でも、今回は、そんな順番なんて無視。とりあえず柱を建ててみて、それから設計書を書いたり、家が全部できていないのに一部の内装を先にやったり、その出来上がったものを見ながらまた設計を考えたり(笑)。できることをとりあえずやってみるという状態で、まさに挑戦と変革の繰り返しでした。

ニーズがないシステム開発はしない


――今回、人事データのデジタル化を行った理由は何かあるのですか?

中桐:バックオフィス系のデジタル投資は、その効果が示しにくく、後回しになりがちな領域です。私は「デジタルによって会社をよくしたい」という想いをもって入社した経緯もあり、2020年に入社後、まずは社内で潜在的なニーズがありそうな部署を探ったんです。そうしたら、どうやら人事部にニーズがありそうだ、ということが分かり、人事部へアタックをかけたところ、タッグを組んで進めることになったんです。私たちのデジタル化の提案に賛同し、一緒に取り組みを進めてくれた人事部には本当に感謝しています。

――先にニーズがあるか調べたんですね。

中桐:私のモットーは「ニーズのないシステム開発はしない」です。前職での経験と反省から、ニーズのないシステム開発をしても、誰も使ってくれないということが分かっていましたから。

――これから実現していきたいことや、今後の意気込みを聞かせてください。

中桐:今、“データのカタログ化”をしたいと思っています。会社の中にある膨大なデータを一括管理して、どんなデータが社内にあるのかをカタログのように見られるようにし、さらに、そのデータを自由に使っていいのか、使うにはどんな条件があるのか、誰に連絡すればいいのかなどを可視化できるようにしたいと考えています。これが実現すれば、運用効率も格段に上がるし、ガバナンス強化やセキュリティ対策にもつながります。

また、今回の人事データのデジタル化は、SaaS製品を活用して小さな投資と体制で実現しました。このように今や莫大なコストや高度な技術力を持つ技術者を大勢揃えなければデジタル化ができない、ということはありません。ですから、「エクセルで集計していて工数がかかっているので改善したい」というような小さなことでも気軽に相談していただければと思っています。そうして成功事例を積み重ね、パーソルグループのデジタル化を促進していきたいと思っています。

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