「大丈夫だよ」と肩をたたき合える、助け合いがあふれる社会を目指して ― PERSOL Group Awards2024受賞の裏に(6)和田 啓吾 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第6回目は、パーソルダイバース株式会社の和田 啓吾です。

和田が所属する「よこはま夢工房」は、クッキーなどを製造する焼き菓子工房。はたらいているのは障害のあるメンバーたち。月間24万枚ものクッキーを製造しているその菓子工房を、かつてないピンチが襲います。その逆境を逆に大きなチャンスに変えたのはメンバーたちと和田の「助け合い」でした。

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パーソルグループの重要な「ギフト」を担う焼き菓子工房

パーソルダイバース株式会社は、障害者雇用支援事業を通じ、障害のある方々のはたらく可能性を広げ、はたらくよろこびの創出を目指すパーソルグループの特例子会社。和田が所属しているのは「よこはま夢工房」という製菓を行う焼き菓子工房です。

「パーソルダイバースが運営する工房では、群馬・神奈川・千葉の各地域と連携して、農福連携やお菓子の製造、カフェ運営などを行っています。たとえば富岡製糸工場があった群馬県では、障害者を養蚕業の担い手として雇用し、歴史的建造物である旧富岡倉庫をリノベーションしたカフェを運営。また、よこはま夢工房は、神奈川県との取り組みの一つで、2006年に浦舟での開設を皮切りに、3つの拠点を横浜市内に開設し、3拠点で約180名のメンバーがクッキーやマドレーヌなど年間370万個以上の焼き菓子を製造。その焼き菓子は、主にパーソルグループ各社でノベルティとして配布されています」

中でもパーソルテンプスタッフ株式会社へ納めているクッキーアソートは、人気の商品。派遣先の企業や登録した派遣スタッフの方々へのギフトとして贈られています。使われる数は、なんと月間4万セット。クッキーの枚数としては24万枚にもなります。

「はたらくメンバーにはそれぞれ異なる障害があります。人それぞれの障害と得意不得意にあわせて作業を割り振ったり、日々の作業の様子や進捗をチェックしてアドバイスや修正を行ったりするのが私の役割。よこはま夢工房が作るクッキーを楽しみにしてくれている方に、しっかりとお菓子を届けたいと、皆と想いを一つに取り組んでいます」

そう笑顔で話す和田が大切にしているのが愛情と相互扶助。それは和田が大学時代に訪れた国・インドネシアの影響が大きいと話します。

多様性ある社会が穏やかに統一されている。その理由は「助け合い」

インドネシアについての研究を行うゼミに所属していた和田は、大学時代にインドネシアを5回訪れ、現地で文化や人に触れる中で、さまざまな影響を受けました。

「インドネシアには『パンチャシラ(Pancasila)』と言う建国五原則があります。この五原則は国是にもなっていて、その中に社会的公正という内容があります。そこでは、国民一人ひとりが社会の一員として、他人を尊重し公正を保つべきだということを謳っているのです。『多様性の中の統一(Bhinneka Tunnggal Ika)』という言葉が国章に刻まれており、国民の共通言語として浸透しています。インドネシアは、人口の約9割がイスラム教。ですがイスラム教は国教ではなく、ほかにもキリスト教のプロテスタントとカトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教が国家公認の宗教とされています。そのため多様な信条や信教の人が混在していますが、驚くほどいさかいはありません。お互いを尊重し、いつも気にかけ助け合って、一つの国としてまとまっているのです。つまり相互扶助です。このように多文化多民族多宗教が共存しているところが、インドネシアの大きな魅力です」

直接現地を訪れ、文化や人に触れることで和田はインドネシアのことがとても好きになったと言います。また、そのように多種多様な人が集っていながら心豊かで寛容な国であり続けられる理由の一つとなっているある言葉も好きになりました。

「それは『ティダ アパアパ(Tidak apa-apa)』という言葉です。日本語にすれば『大丈夫だよ』。その後には多くの場合『気にするな』という言葉が続きます。街中でもそこかしこからこの言葉が聞こえてきます。私自身も、困っているときやミスをしてしまったとき、落ち込んでいるときなんかに、よく肩を叩いてこの言葉をかけてもらいました。多様な考え方が混在している国だから、こうやってトラブルを避けているという側面もあるでしょう。でも、そこには相手のことを気にかけ助け合おうという愛情も込められている。この言葉をかけてもらうと『自分は大丈夫なんだ。がんばろう!』と心が軽くなるのです」

だから「ティダ アパアパ」が好きな言葉になり、愛情と相互扶助を意識するようになったと話す和田。そういった経験の中でより「人」への興味も募っていったと言います。「単純に一般名詞としての“人”ではなく、名前も顔もある一人ひとりの個人に深く関わりたい。さまざまな人の人生に関わる仕事がしたい」と人材業界を志すように。そしてそれがパーソルグループに入社した動機にもなりました。

たくさん人の人生の岐路に立ち合い、より良い方向へとサポートする

人材業界に興味を持って就職活動を続けていた和田ですが、パーソルグループの面接を受け「このグループではたらきたい」と焦点を絞りました。

「面接官や先輩社員と話していると、ほかの企業との明らかな差を感じました。それは『派遣して終わりではない』という姿勢です。就業するということは、どんな求職者にとっても人生の岐路となる。そこに立ち合い、お手伝いをする以上、紹介して派遣先が決まったら終わり、では責任を果たせていないのではないかと私は考えていました。出会った面接官や先輩社員は、そんな私と考え方が同じ。求職者の人生までをしっかり考え、フォローを続けることを是としていた。そういった方たちにあこがれて『このグループではたらきたい』と思うようになったのです」

和田はいつも、自分が尊敬する人たちと出会うと、「同じように生きよう」と思うのだといいます。たとえば、サッカーに打ち込んでいた時は、好きなサッカー選手のように立ち振る舞ったそうです。先生や先輩も、心の底から憧れられる人に出会うと、その人の考え方や言動をつぶさに見て、同じように考え、動けるようトライしたといいます。

「モノマネではないんです。憑依させるくらい、同じように生きようと思うんです。スキルだけじゃなく、普段の発言や行動までもリサーチして『その人の良さ、その人の想い』までも自分に取り込むのです。パーソルには『こんな風にはたらきたい』『こんな生き方がしたい』と思える人がいた。だから、入社を希望したのです」

そんな和田に、OB訪問で出会った先輩社員がすすめたのが、パーソルダイバースの前身であるパーソルサンクス株式会社でした。その理念や事業内容を知り、まさに自分が大切にする愛情や相互扶助を大切にしてはたらける場所だと思った、と和田は言います。

「入社後も、生き方にあこがれ、自分もそうなりたいと思うような先輩や上司との出会いがありました。そして、たくさんの障害のあるメンバーたちの人生の岐路のタイミングに立ち合い、それをより良くするサポートができています。入社して3年。まだまだ実力不足を感じることもありますが、チャンスのある環境に身を置けていると感じています」

「大丈夫だよ」の言葉で助け合える会社、そして社会を目指して

2023年2月、よこはま夢工房を大きなピンチが襲います。それは和田にとっても、初めての大きな試練となりました。鳥インフルエンザが大流行し、原料となる卵の入手が困難になったのです。折しも、3つめの拠点がオープンした直後でした。3拠点で必要な卵は月間500kg。しかし、手に入る卵は60kgしかありません。

「とても月に4万セットのクッキーは製造できません。楽しみに待ってくださっている方にノベルティクッキーが届けられない。何より、卵で生地をつくる担当をしているメンバーの作業がなくなってしまう。そうなると、その方が仕事を失ってしまうことにもなりかねない。限られた時間の中で与えられた選択肢は二つでした。、代替品となる別商品を検討するか、卵を使わないレシピにチャレンジするか」

「おいしい」だけでは、よこはま夢工房の商品にはできません。製造を担当する障害のあるメンバーが、作業しやすいレシピでなければダメなのです。「障害のあるメンバーが新しい作業という変化に慣れるのは困難で、時間がかかる」と誰もが考えていたからです。それもあって、よこはま夢工房はスタートしてから18年間、生地作りは高い技術を身につけた限られたメンバーが担当し、同じレシピ、同じ作業工程を維持してきたのです。マネジャーやリーダーとともに和田は決断に悩みました。心は新レシピの開発に傾いているものの「メンバーは今後も安心してはたらけるだろうか」「お客さまにおいしいクッキーは届けられるだろうか」と迷っていたのです。

「そんな中、ある障害のあるメンバーにレシピを見せて説明すると、笑顔で『卵なしで作ればよいんですね?』『これまでの仕事はなくなってしまったけれど、また新しくこれを始めればよいんですね』と言ってくれたのです。そして皆で『よし、やろう!』と声をかけ合い、練習を始めてくれたのです。その時、メンバーがいつも『今日はこんなことに挑戦しました』『こんなことができるようになったんです』と報告しにきてくれていた情景が浮かびました。勝手に私たちが、障害のあるメンバーはみんな変化が苦手とバイアスを持っていたけれど、一人ひとりはいろいろできるようになりたいといつもチャレンジしていたのです」

変化に直面したメンバーが「大丈夫だよ!」と和田に声をかけてくれました。中には会話が苦手なのに、新しい仕事として教育役を買って出たメンバーもいたといいます。ピンチに、皆が助け合って、立ち向かっていったのです。

「自分がはたらく上で大切にしている愛情や相互扶助を、皆と共有できた瞬間でした。だからそのあとは、その気持ちに応えようと、メンバーがより快適に作業できるよう、新しい製造機械の導入を計画したり、レシピをより良くしたり、業務プロセスを大転換させたりと、全力でサポートに回りました」

一時期は80%減となった受注は、半年後には元の状態に回復。新しいクッキーは派遣スタッフやクライアントにも好評を博しています。また、製造現場を大改革したことで、作業効率も大幅にアップし、メンバーみんながはたらきやすくなったといいます。

「私が目指しているのは『助け合いあふれる社会』です。日常における人とのかかわりの中で、お互いが『小さな愛』をもって行動し、『困ったときはお互いさま』の風潮が浸透し、一人ひとりが安心して豊かな人生を歩める社会です。今回のピンチでよこはま夢工房の180名みんなが力を合わせてくれたことで、その実現は夢じゃないと教えてもらいました。これからは誰かの生き方を見習うだけじゃなく、自分だから生み出せる価値を発揮して、助け合いがあふれる社会の実現を目指したい。このよこはま夢工房をそのスタートにするのです」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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