パーソルグループは、日本経済新聞社が主催する「日本版Well-being Initiative」(※)に参画しています。2024年10月3日から4日の2日間にわたり、「第6回 日経Well-beingシンポジウム」がオンラインとオフラインのハイブリット形式で開催されました。
今回のテーマは「ビヨンドSDGs視野に 多角的に議論」です。1日目のパネルディスカッションにパーソルホールディングス 代表取締役社長 CEOの和田 孝雄が、2日目のパネルディスカッションにパーソル総合研究所 シンクタンク本部 上席主任研究員の井上 亮太郎(1日目モデレーター)が登壇しました。
本記事では、2日間の様子の一部をご紹介します。
第5回の模様はこちら。
(※)「日本版Well-being Initiative」
Well-being(実感としての豊かさ)を測定する新指標開発やWell-being経営の推進、政府・国際機関への提言、Well-beingをSDGsに続く世界的な政策目標に掲げることを目指す。国内企業26社が参画。
【1日目】テーマは「将来世代の“はたらくWell-being”」
■登壇者(冒頭の写真右から)
SHIBUYA109 lab. 所長 長田 麻衣氏
丸井グループアドバイザー、ユーグレナ初代CFO(Chief Future Officer) 小澤 杏子氏
パーソルホールディングス 代表取締役社長 CEO 和田 孝雄
<モデレーター>パーソル総合研究所 井上 亮太郎
将来世代の“はたらくWell-being”を高めるためにできること
1日目のパネルディスカッションのテーマは、「将来世代の“はたらくWell-being”」です。30年後の世界で主役となるミレニアル世代やZ世代、α世代など将来世代の“はたらくWell-being”のために、今何ができるのか?を2セッションでトークしました。
まず話題にあがったのは、企業のFR活動について。FR活動とは、Future Generations Relationsの略で、仕事や社会について将来世代と対話する活動のことを言います。「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げているパーソルグループは、これまでに小中高生、大学生に向けた出前授業やワークショップを実施した例を紹介。和田からは「参加した学生はもちろん、さらには講師を担当した社員からも好評を得ている」と説明しました(参考:パーソルグループのFR活動について)。将来世代にとって「はたらくこと」をより身近に感じてもらうために、企業のFR活動の重要性は高まっていると言えます。
そんな中、そもそも将来世代にはどのような特徴があるのか。日頃から将来世代との交流が多いSHIBUYA109 lab. 所長の長田氏からは、「将来世代はデジタルネイティブであり、適応能力が高い」という2つの特徴が挙げられました。
そうした将来世代の特徴を踏まえ、次のセッションでは「将来世代との対話」という議題に移りました。
「成功はひけらかさず、失敗は共有することを意識している」そう語った和田に対して、長田氏も同意しました。
その上で長田氏は、「何気なく使う言葉の捉え方が世代間によって異なっている」とのエピソードを話しました。たとえば、企業内の風通しの良さを表現する「アットホーム」というワードは、将来世代が警戒する言葉の1つ。丸井グループアドバイザー・ユーグレナ初代CFOを務める小澤氏も「アットホームを理由に断れない雰囲気があるのではないかと不安に思う。怪しく感じてしまう」と述べました。
さらに、小澤氏によると世代間だけでなく、同年代間でも過剰に気を使ったコミュニケーションがなされており、将来世代一人ひとりが気兼ねないやり取りができる安全圏は狭まっていると言及しました。
最後に和田は、「違いがある中でも、企業活動は人材なくして成立しません。日本の将来を担う若者たちを支援し、私たちが与えられる最大限の価値提供をできればと思います」とパネルディスカッションを締めくくりました。
【2日目】テーマは「World Happiness Reportー世界のWell-being最新動向」
■登壇者(写真左から)
<モデレーター>公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事 石川 善樹氏
全国家庭科教育協会(ZKK)常任理事 小林 美礼氏
パーソル総合研究所 シンクタンク本部 上席主任研究員 井上 亮太郎
国際社会でWell-beingの潮流が高まってから約10年後、2021年にようやく日本の政策においても「政府の各種の基本計画等について、Well-beingに関するKPIを設定する」との文言が登場しました。翌年には、中央政府のみならず地方自治体でもWell-being指標の活用促進が盛り込まれ、国をあげてWell-beingを目指した取り組みがスタートしたと、モデレーターの石川氏がその変遷を語りました。
次に、全国家庭科教育協会の常任理事である小林氏にバトンタッチし、学校教育で次代を担う子どもたちに向けたWell-beingをどのように指導しているのかの事例が発表されました。小林氏は家庭科を例にあげ、子どもたちの金融リテラシーを育む授業や、核家族化が進み高齢者と交流がない子どもたちに向けた異世代理解教育などを家庭科が担っていること、また時代とともに変化する生活様式や家族の形、消費・環境問題など、社会のあり方に合わせた柔軟な指導も家庭科には求められていることを言及しました。
また、「学習指導要領において家庭科の指導目標が『より良い生活を工夫し、より良い社会の構築に向けて、主体的に生活を想像する資質や能力を育む』と定められており、『家庭科』という教科は、Well-beingの向上と非常に親和性が高い」と語りました。
最後に教員の“はたらくWell-being”について、パーソル総合研究所 シンクタンク本部の井上が「『多忙を極めている』といったネガティブなイメージが強い教員ですが、実際のアンケート結果では約6割の職員が『教員の仕事を誇りに思っている』との回答が得られたそうです。この結果から、多忙な側面はあるものの、活き活きとはたらいている教員の多さが実態としてある」と話しました。加えて、一般企業に勤めているオフィスワーカーと教員に行った「はたらくうえでどれほど幸福、または、不幸を感じているか?」というアンケート調査では、幸福指数にほとんど差はなかったと言います。しかし一方で、役職や年齢によって幸福指数と不幸指数に差があることも指摘しました。
昨今、教員の働き方改革について議論がなされていますが、井上は「どうすれば業務時間を短くできるのかといった一律的な残業抑制を問題提起するのではなく、『どうすれば先生たちの主観的な多忙感を和らげることができるのか』と捉え直してみるのもいいかもしれません」と話しました。子どもたちにとって身近にいる大人の一人である教員の“はたらくWell-being”を高める重要性に言及し、パネルディスカッションは幕を閉じました。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。