「10代でスポーツを辞めちゃう問題」現役女子プロサッカー選手とサッカー部員で考えるワークショップを実施

パーソルグループは、シルバーパートナーとして協賛する公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)とともに、女性が「10代でスポーツを辞めちゃう問題」を考えるワークショップを6月2日に実施しました。本問題はWEリーグ、選手、各企業パートナーが集まるWE ACTION MEETINGで議題に挙がっていた事項であり、ジェンダー不平等などにより引き起こされる課題だと感じていました。
(参考リンク:「第5回 WE ACTION MEETING を開催 WEリーグの持つ“資産”を使って4つのジェンダー課題解決策を考案」はこちら

当日はアルビレックス新潟レディースの選手6名と開志学園JAPANサッカーカレッジ高等部の部員37名が参加し、スポーツとキャリアについて考えました。

ワークショップの講師として登壇したのは、パーソルイノベーション株式会社 取締役執行役員の大浦 征也。
大浦は、転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わっています。
本記事では、当日のワークショップの様子を大浦の講義を中心にご紹介します。

当日の様子

ワークショップはアルビレックス新潟レディース所属で、本ワークショップ事務局の木村 春奈氏の挨拶でスタート。まずはイントロダクションとして、女性が「10代でスポーツを辞めちゃう問題」についての現状や背景についての説明がされました。

男女の「スポーツを辞める時期」を比較すると、女子は15~19歳のころに一気に辞める傾向がある一方で、男子に年代による変化はありません。
その背景には、たとえば、サッカーを続けたいけれど女子チームが身近にない場合、男子チームに混ざるしかなく、体力面はもとより、更衣室などの環境面でも不遇な環境を強いられているケースや、「サッカーは女子のやるスポーツではない」といったジェンダー差別の発言を受けるといったケースが挙げられます。このように、純粋にスポーツを楽しみたいと思っても、継続するにあたって不安を抱いてしまう実情があるようです。

また、プロ選手を目指したくても給与や大会入賞時の賞金額の差も男女で大きくあり、将来生活できるのかという不安を引き起こし、スポーツを続けること自体を辞めてしまうことも少なくないとのこと。

そこで、スポーツ選手のキャリア形成にはプロ選手以外の道も含めたさまざまな選択肢があることや、スポーツを継続していくことで得られる能力を知ることが「10代でスポーツを辞めちゃう問題」を解決することにつながると木村氏は言います。

この説明を聞いたあと、生徒たちは事前に課されていた「5年後(10年後)に自分はどうありたいか?」「今までサッカーに取り組んできて、得られたものは何か?」「今の自分の強みと弱みは?」の3つの問いについて、グループ分けされたメンバーに共有しました。

目次

スポーツと『はたらく』について

続いて大浦が、社会が大きく変化している中で、スポーツ選手も「競技だけに取り組むべき」という時代から、現役選手のうちから選手引退後について考え、さまざまな人たちと意見交換することの大切さについて説明。

高校卒業後に何かやりたいことはあるのかという質問を大浦が高校生たちに投げかけると、まだ先を見据えられていないと回答している生徒が多くいました。しかし、スポーツを続けるという選択肢には、選手として活躍する以外にも、指導者やトレーナー、審判など多様なはたらき方があることを説きます。その上で、スポーツ、特にサッカーの競技レベルを上げることが自分の人生の中でどういったプラスの影響を与えることにつながっていくのかを解説しました。

サッカーを続けることで得られること

サッカーを続けることで得られることは大きく3つあると大浦は言います。
一つ目は、数値では測りにくい非認知能力。具体的には自分が立てた目標に対して実行する目標達成力や日々コツコツと練習を積み重ねていく継続力などを示しています。これらは社会に出てからも大変評価される能力であると説明します。ただ、マインドやスタンスに頼ったこの能力だけでは不足しており、サッカーだけではないほかの仕事にも活かせるポータブルスキルの習得についても大切とのことでした。
二つ目は、現状把握をし課題解決をするポータブルスキル。試合後、自分のプレーの様子を客観的に振り返り・分析し、次の試合に活かすためにはどうしたらよいかを考えることは、ほかの仕事においても同じように活かせる能力であると説明しました。また、特にこのポータブルスキルはほかのスポーツと比較しても、サッカーで特に身に付きやすいと言います。なぜなら、サッカーはプレー中の環境変化がとても激しく、一人で完結できないチームプレーという特性もあり、予測がつかない状況に対して瞬時に判断する能力が求められるからです。
そして、三つ目に希少価値。これはサッカー競技に挑戦できる場所が少ない新潟県で取り組んでいることに価値があると言います。キャリアやスキルが重視されている世の中であるものの、だんだんと時代が変化している中で、その人ならではの希少性や人間性を持つことで、先に話した非認知能力やポータブルスキルがより際立つとのことです。
これには高校生たちも今までにない視点だったようで、驚きとともに未来に対して前向きな気持ちを感じている様子でした。

プロスポーツというはたらき方について

講義後は、アルビレックス新潟の石淵 萌実選手と道上 彩花選手2名と大浦で公開セッションを実施。「まずは10代でスポーツを辞めちゃう問題」について選手たちに質問すると、「自分が学生のころはその状況が当たり前だったため、特に何も感じられていなかったが、プロ選手の立場として改めて考えなければならない問題だと実感した」といった回答がありました。
ただ、「自分がサッカーを辞めようと思ったことがないくらい続けることができたのは、応援してくれているファンのためや自分自身の限界まで挑戦し続けていきたいという思いが強かったからであり、スポーツに対して『好き』という気持ちを持ち続けることが重要である」と道上選手。また、サッカーを続けていたことによって得られたスキルは、やはり物事への継続力なのではないかとのことでした。

自分にとっての「10代でスポーツ辞めちゃう問題」ワークショップ

最後に、今までのインプットを踏まえて、改めて「私は5年後(10年後)どうなっていたいか」「今までサッカーに取り組んできて、得られたものは何か?」「今の自分の強みと弱みは?」という問いに対しての回答をグループごとに話し合い、課題の再発掘を実施。講義の前に話し合ったときよりも、より将来のビジョンが具体的になったようで、今まで自分の気付いていなかった強みも発見することができたようです。

最後は全員で記念撮影をしました

参加した選手と高校生からの声

三浦 紗津紀選手

自分が高校生のときに抱えた悩みはいまだにあるという実情を改めて知り、WEリーグ選手として少しでもそういった社会を改善できるように貢献したいと思うとともに、自身のキャリアについても考える良い機会となりました。

柚留木 咲希さん

アルビレックス新潟レディースの選手と交流ができたことが楽しかったですし、今まであまり考えていなかった将来について深く考えていかなければという気付きになりました。


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