<還暦以降の私のはたらき方③>私がはたらき続けるのは、関わる人たちに自分自身を還元したいから

人生100年時代に伴い、はたらく期間が今よりも長くなっていくと言われています。はたして自分は何歳まではたらくのか、何歳まではたらけるのか、はたらいた方がいいのか、不安を募らせている方もいるかもしれません。

そんな中、パーソルグループには、還暦を過ぎてもはたらき続けることを前向きにとらえ、現役で活躍し続ける社員がいます。彼らがはたらき続ける理由とは何か。3名の社員に聞きました。最終回は、パーソルテンプスタッフの丸山 進です。

丸山 進
パーソルテンプスタッフ株式会社で人事として従事。主にグループ会社内での社員の出向や転籍に関わる業務を担当。現在64歳。

スタンフォード大学のクランボルツ教授らが提案したキャリアに関する考え方「計画的偶発性理論」をご存知でしょうか。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定され、その偶然を活かして、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方です。

取材前からしきりに「大した経験をしてきていないけど、本当に私で大丈夫ですかね」と気にしていた丸山は、まさにその理論の体現者と言えるでしょう。ドラマチックな話はできない、偉そうに語れる身分ではない、と控えめながらも話してくれたことは、一つひとつの出会いや機会を大事に育んできた軌跡でした。

目次

ご縁はないと思っていたパーソルからの思いがけないお誘い

丸山の初期のキャリアは、広告代理店での新聞広告の営業です。新聞の記事下広告と呼ばれる、企画記事への広告枠を売ることが主な業務ですが、いわゆる「営業成績を追いかける」スタイルは向いていなかったとのこと。ゆったりとした語り口からも、じっくりと人と向き合うスタイルがフィットしそうなことが伺い知れます。

「広告代理店を辞めたあと、物流関係のアルバイトをしながら次の仕事への転職活動を始めました。そのころから自分はいろんな人と関わっていくことが向いているのではと思い、人材ビジネスに漠然と興味を持っていましたが、それでもまずは今の仕事につながるかなと、物流系案件が出ていた派遣会社に登録に行ったのです。その際にカウンセラーとの面談したのですが、募集業務の話は最初の方だけで、途中から私が興味を持つ人材ビジネスの話に展開し、結局そのあとはずっと雑談のような形で盛り上がって終わりました。帰り際、『丸山さんにはこの仕事(物流系)は向いていないわよ』と言われたのが印象に残っています(笑)」

実は、その派遣会社はパーソルグループのテンブロス株式会社(現パーソルフィールドスタッフ株式会社)でした。この会社とはこれっきりだろうなと思いながらも、このカウンセラーとの面談は丸山にとって非常に印象深く、とても満足した時間になりました。
数カ月後、テンブロスのコーディネーターから突然連絡が入ります。聞けば、グループ会社として人材派遣の新会社が設立されるので、そこで契約社員としてカウンセラーをやらないか、とのこと。

「その新会社が対象とする登録スタッフが比較的年齢が高い営業職も多いので、登録を行うカウンセラーにある程度ビジネス経験を持っている営業経験者を採用しよう、という方針だったようなんですよ。そこで当時のカウンセラーが『そういえば、丸山っていう面白い人がいた』ってコーディネーターに話してくれたようで。人材サービスに興味があるってことを覚えていてくれたんですよね。」

このとき丸山は42歳。当時の転職市場では異例の異業界へのキャリアチェンジとなりました。

意識していなくとも、人の記憶に残ることでつながるご縁

新会社・新組織というのは往々にして予期せぬことが起こるものです。丸山もご多分に漏れず、想定外の事態に向き合うことになります。
なんと異業界出身の営業経験者で組成されたカウンセラーという職種は、わずか3カ月で廃止に。人材派遣ビジネスを理解していない人たちによるスタッフ面接は、結果的にうまく機能しなかったそうです。

「実際に取り組んでいてもあまりうまくいっていないもどかしさもあったので、廃止は仕方ないと思いましたし、『ああ、これで次の契約更新はないな』って思っていました」

ところが、さらなる想定外の展開が起こります。その2カ月後、丸山には「サポート本部 人事担当」への異動の打診があったのです。サポート部とは人事や法務・総務などのバックオフィス業務が集約された組織。その異動の声をかけてくれたのは、テンブロスで面接をし、丸山を採用したマネジャーでした。

「声をかけてくれた定かな理由は聞いていません。強いて思い当たることと言えば、入社当初から勝手にメルマガを作って社内で流していたことでしょうか。というのも、人材派遣の進め方とか法律とかまったく分かっていなかったので、業務に関わる中で『これはまずい』と思って自分でいろいろ調べ始めました。それを、同じように困っているであろう同僚の年配カウンセラーたちにも共有したほうがいいだろうと思って、メルマガ形式で社内でつながりができた人たちも含めて展開していました。そんなことも異動のきっかけの一つになったのかもしれません」

カウンセラーもマネジャーも、日々多くの人と関わっています。数多くの人と会う面談・面接の時間の中で、「この人と仕事をしたい」と思わせる記憶を残すことはそうそう容易ではありません。丸山の場合、わずかなコミュニケーションや行動でも、自然と次のご縁をつくっているのです。

会社という場所があるからこそ自分でいられる

その後、新会社は現在のパーソルテンプスタッフ株式会社へ統合となり、パーソルテンプスタッフの人事として経験を積んでいく中で還暦を迎えました。決して会社人間というわけではないものの、会社という場所は丸山にとって重要な意味を持っています。

「一人で何かをするのが好きで、用事がなければ家にこもってしまうタイプなので、会社という場があるからこそ活躍の場を与えていただいているんですよね(笑)。ずいぶんと自分の可能性を引き出してもらえたと思います。そういう自分を保つということもありますが、何よりも誰かの役に立っている実感を持てることはとても大きいです。そもそも、私としては60歳って元気なんですよ。むしろ『え?ここでリタイアしなきゃいけないの?』という感覚ですね。当たり前のように、このままはたらこうって思っていました。皆さんも60歳になったら分かりますよ(笑)」

とはいえ、定年再雇用ではたらく今、シフトチェンジは大事だとも丸山は言います。それは主には仕事に対して量から質にシフトしていくということ。気力は変わらずとも、体力はこれまでのようにいかないときもあるでしょう。自分自身のキャパシティを理解し、そこに合わせていくために、50代くらいから少しずつギアチェンジを考えていくのもいいのでは、と丸山は説きます。

「やはり再雇用後、制度としてもはたらき方が変わったので少し楽になりました。ギアを落とした感覚に似ています。ただ、単純に仕事量を減らすのではなく、これまでできていなかったことにチャレンジしたり、ちょっと工夫したり、時には思い切ってアクセルを踏み込んでみたり、より面白く仕事をしようという思考になっていますね。あと改めて思うのは、学び続けることの重要性です。ビジネス経験を積んでいたとは言え、実は知らないことだらけです。また、若い方からは常に新鮮な学びがあります。そういった吸収していく楽しみは変わらないと思います」

ちなみに、還暦を迎えた2018年6月、人事本部のメンバーがサプライズでお祝いをしてくれたそう。6月の人事は、賞与の支払いなどの業務が立て込むので超繁忙期。そんな中でも、丸山に気付かれないようにこっそり準備し、たくさんの方からのビデオメッセージや出し物を用意してくれたのです。本当に感激でした。どんなに忙しくても丸山のためにお祝いしたい、それは丸山に対しての日々の感謝の想いが根底にあることは間違いありません。

還暦祝いでプレゼントされた赤いちゃんちゃんことLove Foreverタンブラー

これからは「丸山 進」を還元する

それでも、組織の中でどのような立ち位置で仕事をするか、日々迷いがあります。そんな丸山は腑に落ちるある言葉に出会いました。それは女優の長谷川 京子さんがテレビ番組で言っていた一言、「長谷川 京子を還元する」。これまで自分を育ててくれた会社、そして社会に、感謝の想いを込めて恩返ししていくということです。なるほど、とこれからの自分の在り方を考える助けになりました。

「そう思うようになった原体験は、テンブロスのカウンセラーとの面談ですよね。あのときの私のように、思っていることを話して楽しくなったり、気持ち良くなったり、元気になってもらったり、そんな手助けをして還元していきたいんです。今思えば、柄にもなく今回の取材をお受けしたのも、この『還元』の意味もあったと思います。こんな人もいるのだな、と何かの参考になればと思います。それより『何か話したいことがあったら、気軽に連絡してね』というのが本音です。きっとよい話し相手になれると思います。気軽に声をかけてくれたらうれしいです」

そんな丸山から、これから還暦を迎える人たちに一言もらいました。

「私にとって会社という場所があることは大事なのですが、一方で、仕事以外のことに興味を持ちアンテナを張ることもとても意味があると思っています。家族との時間を持つことや趣味に打ち込むなど、なんでもいいです。結果的にいろんなことにつながってくるので、いろんな世界に目を向けていたいですね」

そんな丸山は今、テニスのスイングにはまっているとのこと。コートに出ることはほとんど無いのですが、肩こり解消と称してフォアハンド・バックハンドを日夜探求しているのです。「興味の対象はなんでもいい、自由である」と丸山が自らの体験をもって示してくれています。

最近お気に入りのアイテム。テニス・ウクレレ・囲碁・筋トレなど多岐にわたる
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