九州から、障害者就労を変える。パーソルネクステージが取り組む「自立」への挑戦

障害者就労支援事業を行うパーソルネクステージ株式会社は、障害者がテレワークではたらくことができる就労継続支援A型事業所を、2022年1月5日に大分県大分市にオープンします。(詳しくはこちら

就労継続支援A型とは

一般企業に雇用されることが困難だが、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結による就労の機会の提供および就労の機会の提供、その他の就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練などの支援を行う福祉サービスのこと。

2020年9月の会社設立以降、福岡・鹿児島にオフィスをオープンし、今回で3拠点目(東京オフィスを除く)となるパーソルネクステージ。障害のある方が、はたらく機会を得て活躍できる社会への貢献を目指し、これまでの障害者就労にはない取り組みを進めています。

キーワードは、「自立」。どのような障害者就労支援に取り組んでいるのか、代表取締役社長の吉岡 直登と、福岡オフィスの責任者である落合 宏行、鹿児島オフィスの責任者である福永 翔の3名に話を聞きました。

首都圏の仕事を、地方で行う。福祉サービスとしての就労支援

――はじめに、パーソルネクステージの事業について教えてください。

吉岡(代表取締役社長):パーソルネクステージは、障害のある方と雇用契約を結んだ上で、はたらく機会と必要な支援を行う「就労継続支援A型」に分類される福祉サービスを提供しています。はたらきながら専門知識やスキルを身につけていただき、数年後、一般企業に就職していただくことを目指しています。

パーソルネクステージの事業モデル

吉岡:障害者が企業で就労するのには、いくつかのハードルがあります。企業側からは一定の就業経験も求められますが、自ら望んで職に就ける障害者は限られています。パーソルネクステージは、すぐに就労が叶わない方にトレーニングの機会を提供し、彼らが企業ではたらけるようになっていただくことで、日本の障害者就労の可能性を広げていきたいと考えています。

このような支援ができるのは、パーソルグループがこれまで、障害者とともに「はたらく」をつくりあげてきた実績があるからです。現在も、3社ある特例子会社(パーソルチャレンジ、パーソルサンクス、パーソルエクセルアソシエイツ)を中心として、約2,000人の障害のある方がグループ内で就業しています(※1)。障害者の多様な就労ノウハウを蓄積してきたからこそ、彼らの立場に立ったサポートができるのです。

――パーソルネクステージでは、どのような業務を受託しているのでしょうか。

吉岡:首都圏を中心とした全国の企業から、IT業務や事務業務など、テレワークで遂行可能なお仕事をいただいております。たとえば、webサイトの制作・運営・保守、社内イントラネットの運用、データの収集や整理、求人票の作成など。現在はパーソルのグループ会社からの受託がメインではありますが、グループ外のお客さまからも業務を受託しています。

――福岡、鹿児島に続き、今回新たにオープンする大分含め、東京オフィスを除くと、オフィスはすべて九州にありますよね。これには、どのような理由があるのでしょうか。

吉岡:「首都圏の業務を、地方で行う」というのが、パーソルネクステージの大きな特徴です。

地方在住の障害者には、就業を希望してもはたらきたいと思える求人が少なかったり、車通勤が求められたりといった課題がありました。一方で、都市部には先にご紹介したようなお仕事がたくさんありますし、その中には、障害者の方の成長につながる業務も多いです。また、テレワークであれば出社せずに遂行することができるので、出勤の問題も軽減されます。

オフィスの立地については、さまざまな地方エリアを検討する中で、一拠点目に選んだのが福岡でした。福岡は全国の中でもテレワークを積極的に推進していた自治体ですし、福岡で成功事例をつくることができれば、周辺の県にも同じモデルで事業を展開できるのではと考えたのです。

2021年12月1日に行われた、パーソルネクステージ大分立地表明式の様子(左から大分県の広瀬 勝貞知事、吉岡、大分市の佐藤 樹一郎市長)

自分のことを理解し、自立してはたらくためのサポートを実施

――次に、現場の様子について伺います。まず、どのような体制で業務を行っているのか、教えてください。

福岡オフィス
オープン年月:2021年2月
在籍人数:27名(クルー(※2)22名、支援スタッフ5名)
鹿児島オフィス
オープン年月:2021年10月
在籍人数:23名(クルー19名、支援スタッフ4名)  
(※2)パーソルネクステージでは、障害のある社員のことを「クルー」と呼ぶ。スタッフと対等な関係で、同じ目的地に向かって
歩んでいこうという想いが込められている。クルーの障害種類は精神障害が最も多く、次いで身体障害、難病のクルーも在籍。

福永(鹿児島オフィス):東京オフィスにある事業推進室で、お仕事の受託や業務の大枠の設計を行った上で、現地のスタッフ(生活支援員や職業指導員)に伝達します。スタッフから仕事の内容を聞いたクルー(上記注釈)は、作業をどう進めていくか、自分自身で工程を考えた上で実務を行っています。

――支援スタッフが、一つひとつの仕事を細かに指示する……という体制ではないのですね。

落合(福岡オフィス):はい。実務の過程でも、クルー同士でチームを組み、協力し合いながら業務を完遂できる体制を組んでいます。これは、パーソルネクステージの大きな特徴の一つですね。クルーが自立してはたらけるようにサポートをするのが、スタッフの使命です。自分の力で仕事を回すことができれば、彼らの自信につながっていきます。

福岡オフィスでも、オープン当初のころは、業務を自分で管理することに苦手意識を持つクルーも少なくありませんでした。しかし、オープンから一年近く経った今、それができるようになった方も増えてきました。

福永:スタッフとしては、クルーが安心感をもってはたらける環境を整えることが第一です。その上で、クルーが自分自身のことを理解するお手伝いをしながら、チャレンジの機会を提供する。まだまだ道半ばですが、これらの積み重ねによって、彼らが自信を持てるような支援を行っていきたいです。

福岡オフィスの落合(写真左)と、鹿児島オフィスの福永(写真右)

――「自分自身のことを理解する」というのは、どういうことですか?

落合:自分自身の強み・弱みを把握し、どんな時に自分のスキルや特性が活かせるのか、あるいはどんな時に困るのかを知っておくこと。これは、仕事をする上で非常に大切です。就職面接などの機会において、自分自身の言葉でアピールしなければいけないポイントでもありますね。

福永:実は、福岡、鹿児島の両オフィスには、国家資格のキャリアコンサルタントを取得したスタッフが在籍しているんですよ。カウンセリングの引き出しを持つ専門家が、クルーにさまざまな“問いかけ”を行うことで、自己理解の促進をサポートしています。

――自己理解やチャレンジを重ねる中で、クルーにはどんな変化がありましたか?

落合:一番の変化は、積極性だと思います。「この仕事、やってみたいです」というような自主性のある発言が、日々増えていると感じます。また、自分のやりたいことに気付き、それをスタッフに伝える過程で、自分の想いや考えを言葉にできるようになってきました。

そして、創意工夫をしながら、仕事の成果もしっかりと出すことができています。
あるクルーが細かなデータ整理の仕事を行っていたとき、そのタスクに、効率改善の余地があることに気付いたようでして。従来はマウスを何度もポチポチとクリックして……、を永遠と行うようなタスクだったのですが、そのクルーは、自らエクセルのマクロを組んで、作業をワンクリックで終わらせてしまうという改善を行ったのです。これには、案件の発注者のご担当者さまも驚いていましたね。

福永鹿児島オフィスは、オープンしてまだ日は浅いのですが、面談や業務を重ねる中で最初は受け身だったクルーが積極的に質問をしてきたり、また、自分の想いを口にするのが苦手な方が、口頭で感謝の言葉を伝えられるようになったりするのを見ると、スタッフとしても大変うれしく思います。

クルーの成長機会を用意したい

――福岡・鹿児島の両拠点ともに、まだまだ進化の過程にあるかと思います。今後、どのようなことを実現していきたいですか?

落合:福岡オフィスの中で新しいチャレンジをしていくのはもちろんですが、福岡での取り組みを、ほかの地域に広げていきたいですね。クルーの仕事ぶりを世の中に発信し、障害者就労の世界に良い影響を与えていきたいと思います。

福永:鹿児島県内には、離島が数多くあります。そのような島々にも、障害がありはたらく機会を得られていない方がいますので、行政と協働しながら、島内でテレワークができる仕組みや環境づくりを検討していきたいと考えています。

――最後に、再び吉岡さんに伺います。パーソルネクステージの、今後の展望を教えてください。

吉岡:目指すのは、やはり障害者の一般企業への就労です。国全体でのA型事業所からの一般就労移行率は、平均で4.3%(平成30年度)。パーソルネクステージでは、この移行率を50%以上にしたいと思っています。

実現のためには、クルーの成長機会を用意することが重要です。今後はパーソルグループ外からの受託も増やし、クルーには難易度が高い業務もどんどんお任せしていきたいです。

障害のある方が活き活きとはたらくことができれば、それをサポートする家族や周囲の人も、きっと喜んでくれるはずです。パーソルネクステージとしては、このサービスを継続的に運営できる「事業」として成立させることで、障害者就労の現場で「はたらいて、笑おう。」を実現していきます!

東京オフィスの業務支援室のメンバー *パーソル(PERSOL)の「P」を模したポーズで

(※1) 2021年6月時点 実績
https://with.persol-group.co.jp/way/results.html
「グループ障害者雇用数」は身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計です。
重度身体障害者及び重度知的障害者については、法律上1人を2人に相当するものとしています。重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、法律上1人を0.5人に相当するものとしています。但し、精神障害者である短時間労働者のうち、①平成27年6月2日以降に雇い入れられた者 ②平成27年6月2日より前に雇い入れられた者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者は、1人としています。(令和5年3月31日までの暫定措置)


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