doda編集長が解説!今年の転職市場振り返り&2021年の「はたらく」環境予測

さまざまな社会の変化があった今年、「はたらく」をとりまく環境も大きく変わりました。
そんな2020年の転職市場の振り返りと、2021年の「はたらく」市場予測を、転職サービス「doda」の編集長を務める喜多 恭子(パーソルキャリア株式会社)が解説します。

喜多 恭子 パーソルキャリア株式会社 執行役員
1999年、株式会社インテリジェンス(現社名:パーソルキャリア株式会社)入社。
派遣・アウトソーシング事業で法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、人材紹介事業へ。その後、派遣事業の事業部長、アルバイト求人情報サービス「an」の事業部長を経て、中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年10月、執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。2020年6月、doda編集長就任。

※本記事で使用しているデータは、すべて「doda」が出典元です。


今年の転職トレンドは「リモートワーク」と「副業」


今年ははたらく環境が大きく変わった1年でしたが、「doda」内での2019年と2020年の検索キーワード数を比較すると、上昇率がもっとも高かったのが「リモートワーク」、次いで「副業」でした。

中でも、リモートワークは、3倍以上の増加となりました。これまで検索されてこなかった「フルリモート」というワードも初登場するなど、就業環境の常識が変わったことを示唆しています。

それでは、この「リモートワーク」「副業」求人の需要に対して、実際の求人数はどう変化したのでしょうか。
次のデータは、「doda」全掲載求人に占める「リモートワーク可」・「副業可」求人の割合を表したものです。

  2019年10月 2020年10月
リモートワーク可 4.2% 18.6%
副業可 0.7% 1.3%

全求人に占める「リモートワーク可」求人の割合は、前年の4.2%から18.6%まで増加、プラス14.4ポイントという結果になりました。
昨年は5%に満たなかったわけですから、企業側の対応が一気に進んだ年だったといえます。

一方で、「副業可」求人の割合はプラス0.6ポイントにとどまりました。企業側の対応としては、副業に関する人事制度の検討は、リモートワーク環境の整備よりも優先度は低かったといえます。


売り手市場が変化した1年


次に、全体の転職市場全体の動きを振り返ります。下のグラフは、2019年~2020年10月までの「doda」転職求人倍率の推移を表したものです。

4月に緊急事態宣言が発令された後、転職求人倍率は急降下しました。これまで2倍以上の高水準を維持してきた「売り手市場」でしたが、6月に2倍を割り、その後は横ばいとなっています。現在は、緩やかな回復基調にあります。

  

転職希望者は、例年4~5月にかけて増える傾向にありますが、今年は緊急事態宣言下で市場の動きが止まったため減少し、逆に宣言が解除された6月から増加しました。はたらき方の変化もあり、ニューノーマルの中で自分の価値観にフィットした職場を探す転職希望者が多かった印象です。一方求人数は、8月から緩やかに増加しています。


求人が増えた業界・減った業界は?


今度は、求人数の変化を業界別に見てみましょう。

2020年3月と比較した2020年8月の求人数は、いずれの業界も減少したのですが、もっとも減少幅が大きかった業界は「小売・外食」・「メディア(Web広告など)」でした。一方で、減少幅が小さかったのは「IT・通信」、「金融」、「メディカル」と続きます。

今年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しました。さらに、リモートワークの普及で企業にとってはITインフラ環境整備の重要性が高まった1年でもありました。「IT・通信」の減少幅が小さかったのは、そのような事情によるものかと思います。

また、その後の8月から10月の求人数を見ると、「メディア(web広告など)」の回復率がもっとも高いという結果になりました。
外出自粛ムードの中で、さまざまな業界でEコマース化が一気に進んだことに加え、リアルイベントが中止になったことから、企業の広告出稿が徐々にオンラインに切り替わり、それに伴ってweb広告系の業界での求人需要も高まったのではないかと考えています。


2021年は何がどう変わる?


最後に、来年2021年の「はたらく」市場はどのように変わるのか予測します。

まずは、個人側の動きです。

(Point 1)「ジョブ型雇用」への転換と「学びなおし」

(Point 2)キャリア形成における「スキルの棚卸」

ニュースなどでも報じられている通り、いま、日本でも大手企業を中心に、徐々にジョブ型雇用への切り替えが進んでいます。
AIの進化も進む中、自分の仕事のあり方も常に変わりますので、それに対応するために個人が学び続けることが重要となってきます。

また、雇用の流動化が進む中で、ただ新しい知識を学ぶだけではなく、自分自身のキャリア設計をどう行っていくかについても重要な課題です。そのため、仕事における自分の強みを言語化したり、これまでのキャリアの棚卸を行う、という場面も増えていくのではないでしょうか。

一方で、企業側としては次のような事象が起きていくと思われます。

(Point 1)リモートワークの定着と、新たなマネジメント課題の顕在化

(Point 2)テクノロジーを駆使したはたらき方・採用手法の進化

いま、一部でリモートワークから出勤勤務に回帰するような動きはあるものの、DXの推進もあり、リモートワークの普及は今後も進み、定着していくと考えられます。
一方でリモートワークの普及によって、新たなマネジメントの課題も浮き彫りになってきました。
例えば、リモート環境で仕事をすることでコミュニケーションが取りにくくなり、社員が「孤独」を感じやすくなったといわれています。「孤独感」が高まることは、モチベーションの低下や転職意向の高まりにも繋がるため、リモートワーク環境下でどのようにマネジメントしていくべきか、難しい対応が求められています。

企業がさまざまな課題への対応を迫られる中で、いま、HRテック(※)が急速に進化しています。
リモートワークでも“リアル”を感じられるようなツールが誕生しています。今後もHRに関わる新たなツールやシステムが続々と誕生すると考えられ、新たなHRデータも蓄積されていくことでしょう。
2021年は、テクノロジーを駆使するだけでなく、その中で得られたデータを自社のはたらき方や採用手法にどのように取り入れ、進化させていくかが重要なポイントになる1年になっていくと思います。
(※)人事・人材(Human Resources:HR)と技術(Technology)を組み合わせた造語。人事・人材領域へのデジタル技術の活用を指す。

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