【無料公開】 澤円・澤奈緒夫妻が語る、夫婦の時間管理とコミュニケーション(NewsPicks Brand Magazine Vol.2 本誌内インタビュー)

パーソルグループが協賛・企画協力した「NewsPicks Brand Magazine Vol.2 これからのはたらき方・生き方」では、「時間」と「(人や場所との)関係性」をキーワードに、複雑な現代を生き抜くためのヒントをお届けしています。(詳しくはこちら
今回はその中から、「夫婦の時間の使い方」をテーマにした記事をご紹介します。お話を伺ったのは、「プレゼンの神」と呼ばれる澤 円さん、造形作家として活躍する澤 奈緒さんご夫妻です。
互いに好きな仕事に打ち込む二人。インタビューを通じて浮かび上がってきたのは、自分の時間を犠牲にせずとも「時間を共有し合える関係」でした。
(制作:NewsPicks Brand Design / text by Kaori Sasuga , photo by Makoto Tochikubo , edit by Ai Kawaguchi)

澤 円
1969年、兵庫県生まれ。圓窓 代表取締役。立教大学 経済学部卒業後、生命保険会社のIT系子会社に入社。97年に外資系IT企業に入社し、2011年より現職。「プレゼンの神」と呼ばれ、年間300回以上のプレゼンをこなす。近著に『あたりまえを疑え。』(セブン&アイ出版)

澤 奈緒
1977年、東京都生まれ。10代をブラジルで過ごす。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業後、教育サービス系会社や映画配給会社などを経て、日本マイクロソフトで派遣社員に。2008年、造形作家としての初個展「SHOW TIME」を開催。15年よりアート仮装「KESHIN」プロジェクト開始、仮装で心の開放を推進するプロジェクト等を展開。


「一人の時間」を見守るパートナー

──普段、お二人はどのように時間を共有していますか?

円さん:仕事に打ち込みながら夫婦でコミュニケーションを取るために、日中の仕事が終わったあとの夜のスケジュールはグーグルカレンダーを使うなどして共有し、都合が良ければ一緒に夕食をとったり映画を観たりしながら過ごします。「二人の時間」と「一人の時間」は、あえてきっちりと線引きしていません。

奈緒さん:仕事が大切だと理解し合っているからこそ、一人で過ごしたい時間があれば、お互いにそれを伝えています。作品づくりのためには一人で集中できるまとまった時間が必要なので、そのときは別々の場所で過ごしますね。いまは二人の居場所が4拠点あって、私は自分のアトリエ兼、彼の仕事場にこもることが多いですね。ただ、お互いに仕事に没頭しがちなので、体調を崩すことがよくあって……。

円さん:彼女って、すぐに徹夜するんですよ。睡眠不足で体を壊すことが少なくないので、「あなたはロングスリーパーなんだから、徹夜しないようにね」と何度も注意しているんですが。

奈緒さん:昨年は、きついスケジュールで製作を進めていたら、顔面神経麻痺になってしまって。もう二度と経験したくないので、今年はなるべくマイペースにはたらこうと思っています。彼は私がちゃんと休みを取っているかどうか、チェックしてくれるんです。私はタイムマネジメントが得意ではないので。

円さん:「自分の体を大事にしないと、次からはもう許さん」という気持ちで見守っていますね。ただ、僕だってタイムマネジメントは得意じゃない。出張を詰め込みがちなので、人のことはいえないかも(笑)。

奈緒さん:昨年は、お互いに余裕のない時期があったよね。彼は、一日で日本の北から南までを縦断するような出張をしていて、隣で見ていたら顔色がどんどん白くなっていきました。「これはまずい」と思って、仕事をセーブするように何度もいったんです。お互いの限界が分かってきたからこそ、一人の時間に無理し過ぎていないかどうかを確認し合えているのかな、と。

「対面での会話」は必須なのか?

──お互いに仕事が忙しいと、夫婦のコミュニケーションの時間をつくるのは大変じゃないですか?

円さん:僕はワークスタイルとライフスタイルが混ざっていて、家にいないことが多い。物理的に彼女と離れて過ごすこともよくあります。でも、「時間の共有」ではなく「情報の共有」をしているから、コミュニケーションが不足しているとは思いません。それなら、対面で話すことだけにこだわらなくていいですから。

奈緒さん:ネット上のツール、主にメッセンジャーなどを通じて常にコミュニケーションが取れているので、わざわざ時間を確保して、対面で「どう思う?」と話し合うことはないに等しいですね。

円さん:目の前にいてもメッセンジャーで会話することがありますよ。

奈緒さん:朝、食卓に着くと一日の準備をしつつ、ノートパソコンを開くんです。ネットニュースを見ながら「こんなことがあったね」とメッセージを送ったり、お互いに好きな猫の動画を送り合ったり。「言葉遊び」のようなやりとりばかりで、内容のある話はほとんどしていません。まともな情報は10分の1くらいかも(笑)。

円さん:彼女はよく文章を打ち間違えるんですよ。僕の思い付かないような「面白い言葉」を編み出してくるので、それを見て僕はゲラゲラ笑っちゃう。

奈緒さん:思い付いた瞬間に急いで送ろうとするあまり、すごい言葉になります(笑)。ただ、その言葉が「二人の共通ワード」にもなっていて。

円さん:そんなふうに「文脈を共有している二人にしか通じない」ような、暗号化されたやりとりが多いほど、コミュニケーションの質は上がって、ハッピーになると思うんです。夫婦間、家族間のコミュニケーションって、そんな感じがいいなと。

奈緒さん:これからも、がっつりと向き合って縛り合うのではなく、背中を合わせながら、それぞれが好きな方向を見ていられたらいいよね。

相乗効果を、面白がる

──それぞれ異なる分野で活躍されているお二人ですが、異業種ゆえの刺激が、キャリアにも良い影響を与えていると思いますか?

円さん:僕たちは「ビジネス」と「アート」というまったく違うコミュニティにそれぞれの居場所をつくったからこそ、限られた時間の中でもお互いの仕事の範囲を広げられました。これまでもビジネスが行き詰まったときは、彼女のアート思考にヒントをもらったことがあります。

奈緒さん:私はアートの世界だけに適応するのがきつくなったとき、彼の方に歩み寄り、ビジネスとの横断を試みるようになりました。いまでは、どちらの業界にもこだわらず、苦しんでいる人に向けて「心の解放」をテーマに創作活動をしています。

円さん:共通の知り合いが多いこともポイントだよね。僕は10年ほど副業をしていますが、個人活動のほとんどに彼女との共通の知り合いやカルチャーが絡んでいるんです。

奈緒さん:私も彼の知り合いからお仕事を受けることがよくあります。彼がSNSで私の活動を発信していることもあり、パーティに行くと彼の知り合いと自然に繋がることができる。そこでは「澤さんの奥さん」ではなく、「奈緒さんの鳩のオブジェ見ました」みたいに声を掛けられます。

円さん:そうなれば、アート系の相談は僕を介さず、彼女に直接話がいきますよね。僕が大事だと思うのは、夫を中心としたコミュニティでも「妻のアイデンティティ」が確立されていること。そのために必要なのは、パートナーのすることに興味を持つことです。僕はこれを「解像度を上げる」と表現しています。

奈緒さん:あと、それぞれが楽しい体験をして、そこでの体験や知り合いを共有できれば「相乗効果」が生まれやすくなりますね。

円さん:それによって、予想外のところで発見があると、バンッと爆発的な効果が生まれることもある。それを面白がるのがポイントなんですよ。

奈緒さん:最近は、面白い経営者や科学者と繋がることが多くなって、「こんなことをする人がいるんだ!」なんて、よく二人で話しています。私たちが面白がるからこそ、繋がりがまたどんどん広がっていく感じですね。

円さん:面白いと感じる人たちとの接点が増えるほど、視野は広がっていきます。僕の考え方では、キャリアは究極的には「球体」であるべし。そのためにも異業種の人たちとも付き合って、自分という多面体を形づくる「点」を増やして、球体に近付けていく。
どんな状況でも生きられる状態になるには、あらゆる視点を持つことで「キャリア」という球体を大きくすることが求められます。球体が大きくなっていくと、価値ある時間を交換し合える人たちも増えていくでしょう。これは彼女とコミュニティを共有することで、僕自身が実感したことです。

二人らしく「自分視点」で生きていく

──最後に「夫婦の時間管理の秘訣」を教えてください。

円さん:時間や空間の共有範囲が大きくなるほど、家族の幸福度合いは上がりますね。夫婦で共有していることは、ほかにもあります。たとえば、家の半径数百メートル以内には、夫婦行きつけの「台所のような飲食店」が何店舗もあるんです。

奈緒さん:夫婦セットで知ってくれているお店が多いよね。そういう場所が増えたのも、私が「苦手な料理はしない」と決めて、基本は外食だからです。

円さん:うちは「帰ると温かいご飯が待っている」という家庭ではありません。「苦手なこと」「嫌なこと」はしないと決め、それを得意な人に頼めばいいと考えているからです。その分、自分の得意なことに集中すればいい。これを僕は「時間の貸し借り」と呼んでいて、こうすれば夫婦の共有物である時間を有効に使えます。

奈緒さん:ほか家事でも、どちらかが苦手なことは、得意な方がするようにしていますね。たとえば、彼は「私の苦手な掃除」が得意で、私は「彼の苦手な片付け」が得意。そんなふうに凸凹がきれいに分かれています。

円さん:最初から完璧に分かれていたわけではなく、だんだん、その凸凹がフィットしてきました。

奈緒さん:新婚のときは、私も「ほかの奥さんみたいに料理を頑張ってみよう」と思った時期があって。でも、料理に3時間くらいかかってしまい、彼が「これからはつくらなくても大丈夫だよ」といってくれました。いまもホームパーティがあると、彼がつくってくれる。
そんなふうに「夫婦らしさとはこういうもの」という変な期待をお互いしなくなったおかげで、楽になれましたね。「ありもしない理想の夫婦像」がパートナーを苦しめるんだと思います。

円さん:「ほかの夫婦もしているから」と他人を基準にして自分の行動を決めるのは、自分の人生ではなく、他人の人生を生きている状態です。そもそも他人は自分の行動をそこまで気にしていないし、何かアドバイスしてくれることはあっても、責任を取ってくれるわけじゃない。だから、自分の生きたいように生きればいいですよね。

奈緒さん:私もこの1、2年で、ようやく自分視点の人生を生きられるようになってきました。ただ、気を抜くと戻ってしまいそうになります。そのたびに意識付けの繰り返しですね。一方で、その経験があるからこそ、同じような境遇にいる人に、私の経験を伝えたいんです。

円さん:自分の人生には限りがあるんだから、他人の人生を生きている暇なんてない。その限りある時間の中で、夫婦でできる「楽しいこと」や「したいこと」に最大限の時間を費やせるよう、タイムマネジメントしていけばいい。自分の人生を生きることそのものが、タイムマネジメントに繋がっていくんです。

お互いに好きな仕事に打ち込みながら、夫婦関係を円満に保つことはできるのか。澤さん夫婦は、自分たちらしさを忘れず過ごし、さらにはお互いのキャリアにも良い影響を与えている。「無理をしない」「他人を気にしない」「違いを面白がる」。澤さん夫婦がたどり着いたスタンスは、どんな夫婦にとってもヒントになるだろう。


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本インタビューが掲載されている「NewsPicks Brand Magazine Vol.2」を、抽選で30名様にプレゼントいたします。

本誌では、人生100年時代のはたらき方や、1週間の「時間の使い方」のティップス、多様化する時代の「個」と「社会」の関係性などについて、石川善樹さん、上野千鶴子さん、安野モヨコさんなどにお話を伺いました。
また、若くしてLINE執行役員を務める奥井麻矢さんが「成果を最大化するためのタイムマネジメント術」を伝授。そのほか、日本最大級の読書会「猫町倶楽部」や、新しい家族の形を提示する「拡張家族Cift」など、これからの時代に必要な新しいコミュニティの姿をご紹介しています。

複雑な現代を生き抜くためのヒントが詰まった一冊です。ぜひお手元にとってご覧ください。

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