「人と組織」の観点から、新規事業・イノベーションを科学した本を出版

1月29日、人と組織に関する調査・研究を行う株式会社パーソル総合研究所の主任研究員である田中 聡と、東京大学 准教授の中原 淳氏の共著「『事業を創る人』の大研究」(クロスメディア・パブリッシング)が発売されました。

目次

本書の概要

本書の特徴は、徹底的に「人と組織」の観点にフォーカスして、新規事業・イノベーションを科学している点にあります。

たとえどんなに優れた戦略があっても、それを実現に導く「人と組織」がなければ、新規事業は失敗に終わります。しかし、これまで出版されてきた新規事業に関する本といえば、新規事業を立ち上げるためのハウツー本や、イノベーション先進企業やイノベーター個人の成功秘話を綴った事例本がほとんどで、「人と組織」の観点から新規事業を考察した本というのは類書がありませんでした。

そこで、本書では新規事業経験者1,500名を対象にした調査結果と最新のイノベーション理論を手がかりに、「人と組織」という観点から、「なぜ多くの会社で新規事業がうまくいかないのか?」「成功した人も失敗した人も組織を離れてしまう理由は?」といった「新規事業にまつわる謎」を一つひとつデータで解き明かし、企業として実行可能な具体的な解決策を提案しています。

●以下のようなテーマにご関心のある方は、ぜひ本書を手に取ってお読みください。

・そもそも誰に新規事業を任せればよい?
・新規事業を任せる上で気をつけることとは?
・新規事業担当者が共通してつまずくポイントとは?
・新規事業部門の上司にふさわしい人とは?
・新規事業担当者の人事評価はどうすればよい?
・新規事業担当者の次のキャリアパスをどう設計すべきか?
・新規事業に対して経営者はどのように関わればよいのか?
・新規事業を生み出し続ける組織風土はどうすればできる?
・新規事業部門と既存事業部門との軋轢を避けるには?
・新規事業プランコンテストがうまくいかない本当の理由とは?

本書の目次

序章 事業創造の実態を探る

1 新規事業創造論の盲点は「人」
2 新規事業の成功確率は“挑戦母数”がカギ
3 新規事業の敵は、「社内」にあり
4 「新規事業は君に任せた」と言った時点でゲームオーバー
5 新規事業に関わる全ての人のための「見取り図」

第1章 新規事業は「人」で決まる

1 そもそも「事業を創る」とは
2 「事業を創る」の現状
3 問題は「人材」にあり、と決めつける前に
4 創る人をもれなく「廃人」にする魔の見取り図
5 「事業を創る」は“三位一体”である

第2章 データで見る、創る人の実像

1 入社前の実像【学生生活編】
2 入社後の実像【初期キャリア編】
3 「成功する」創る人の特徴

第3章 創る人を発掘し、任せる

1 創る人の選び方
2 新規事業の任せ方
3 「任せた」で終わらない

第4章 創る人を支える

1 創る人を待ち構える“死の谷”
2 創る人が直面する悶絶体験──4つのジレンマとの戦い
3 創る人は孤独
4 創る人を支える人

第5章 創る人と事業を育てる組織

1 既存事業との対立構造にどう向き合うか
2 人と事業を育てる組織風土
3 人と事業を育てる人材マネジメント
4 人と事業を育て、会社の未来を創造する

第6章 Interview 事業を創る先進企業の最前線

株式会社サイバーエージェント(曽山哲人氏)
株式会社東レ経営研究所(手計仁志氏)

特別付録 新規事業は「人を育てる」― 創る人の成長プロセス

本書を執筆した主任研究員 田中 聡のコメント

新規事業は会社の未来を築く大切な営みであり、本来、同じ会社にいる誰もが願ってやまない「希望」であるはずです。しかし、現状は必ずしもそうはなっていません。それどころか、調査の結果から見えてきたのは、多くの新規事業が「社内」によって潰されているという現状です。たとえ、どんなに素晴らしい戦略を描き、エース人材を抜擢したとしてもコケてしまいます。「創る人をもれなく廃人にしてしまう魔の構造」がある限り…。

新規事業にはじめから「正解」なんてありません。あるのは、創る人の想いだけです。創る人の想いが行動を生み、成果を出すことで、はじめて「答え」になるのです。移ろいやすい「人の想い」だからこそ個人任せにせず、組織が大切に、丁寧に育んでいく必要があるのだと私は思います。それが、他ならぬ自組織の手によって潰されてしまうというのは、会社にとって未来の芽を摘む自殺行為と言っても過言ではありません。

この本を執筆した背景には、本来、組織の誰もが願ってやまない「会社の希望」である新規事業が、わずかなボタンの掛け違いによって無用な軋轢に巻き込まれ、組織的に潰されてしまう、という構造に何とかメスを入れたいという想いがありました。

いつか、新規事業が会社の皆で育てる「育成事業」と呼ばれる日がやってきてほしいですね。そんな願いを込めて、1人でも多くの、そして1社でも多くの「挑戦する人と組織」にこの本が届けば嬉しいです。

著者略歴

田中 聡(たなか さとし)

1983年、山口県周南市生まれ。株式会社パーソル総合研究所 主任研究員。東京大学大学院 学際情報学府 博士課程(中原淳研究室)在籍。立教大学 経営学部兼任講師。慶應義塾大学 商学部を卒業後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。事業部門を経て、2010年に同グループ初のシンクタンク組織である株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)設立に参画。専門は、人的資源開発論・経営学習論。主な研究テーマは、新規事業担当者の人材マネジメント、次世代経営人材の育成とキャリア、ミドル・シニアの人材マネジメントなど。主な論文に「新規事業創出経験を通じた中堅管理職の学習に関する実証的研究」(『経営行動科学』 Vol.30 No.1)など。

中原 淳(なかはら じゅん)

1975年、北海道旭川市生まれ。東京大学 大学総合教育研究センター 准教授。大阪大学 博士(人間科学)。東京大学 教育学部卒業後、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学 客員研究員等を経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発・リーダーシップ開発について研究している。専門は人的資源開発論・経営学習論。
著書に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「研修開発入門」(ダイヤモンド社)、「フィードバック入門」(PHP研究所)など、共著に「アルバイト・パート採用・育成入門」「企業内人材育成入門」(ダイヤモンド社)など多数。

 


関連情報

中原 淳 准教授のブログ「NAKAHARA LAB 東京大学 中原淳研究室」はこちら
田中 聡 主任研究員が参画した「ミドル・シニアの躍進を探究するプロジェクト」はこちら

パーソル総合研究所について

パーソルグループの総合研究機関として、グループビジョン「人と組織の成長創造インフラへ」の実現に向けた調査・研究、コンサルティングサービス、人事関連サービスの提供を通して、企業の持続的な成長をサポートしています。

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