杉山文野さんと一緒に「性とはたらく」を考える社内イベントを公開!

パーソルキャリア株式会社は、4月24日から5月5日に行われたLGBTQ当事者並びにその支援者(アライ)とともに 「“性”と“生”の多様性」を祝福する『東京レインボープライド 2021』にブロンズスポンサーとして協賛し、期間中はオンラインブースの出展や「オンラインプライドパレード」に参加しました。

また、5月11日には、スポンサーとしての参加を記念して、東京レインボープライド共同代表理事・杉山 文野さんをお招きし、パーソルグループ社員限定のイベント“杉山文野さんと一緒に考える「♯私らしいはたらく」”を開催。今回は、イベントの様子を一部抜粋してお届けします。

<東京レインボープライドとは>
東京レインボープライドは、「LGBTQの方が差別や偏見にさらされず、前向きに生活できる社会の実現」を目指した団体、およびイベントの総称で、今年設立10周年を迎えました。『東京レインボープライド 2021』は、コロナ禍であることもあり、オンラインにて開催。「声をあげる。世界を変える。」をテーマに行われました。
目次

イベントの目的

「LGBTQ」という言葉は社内外でよく耳にするようになりましたが、「当事者と接することがないから関係ない」「カミングアウトをされたことがないから実感がない」という声もあります。LGBTQ当事者は人口の8.9%(2018年電通調べ)存在するといわれており、決して遠い存在ではありません。人材サービスに携わる私たちはこのテーマをどのように捉え、何ができるのか?このテーマを自分ゴト化して考えるきっかけにしたいという想いから、本イベントを開催しました。

登壇者紹介

東京レインボープライド共同代表理事 杉山 文野さん

トランスジェンダー・NPO法人レインボープライド共同代表理事
1981年東京都生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、 現地で様々な社会問題と向き合う。 日本最大のLGBTQプライドパレードである特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事や、日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務める。現在は父として子育てにも奮闘中。

パーソルキャリア株式会社 P&M本部 棟近 直紀

2014年パーソルキャリア入社。Web、UI/UXデザイナーとして「an」「doda」等のサービス開発に携わる傍ら、2019年12月に有志で社内のLGBTQ アライコミュニティ「Rainbow PERSOL」を設立。LGBTQに関する基礎知識をまとめたガイドブックの作成や勉強会の開催等を通じて、さまざまな属性や価値観を尊重しあう重要性を発信している。

イベントの様子

平日の日中に開催されたにも関わらず、社員約50人が参加。イベントは、「基調講演:東京レインボープライド共同代表理事・杉山 文野さん」と、「ミニ対談:杉山 文野さん×棟近 直紀さん対談」の2部構成で行われました。
それぞれ一部を抜粋してご紹介します。


基調講演:東京レインボープライド共同代表理事・杉山 文野さん


●海外に逃げても、性別からは逃げられない。いまいる場所を生きやすく変えていくことを決意

子どものころから自分の体に対して違和感があったこと、生きにくさを感じて海外に逃げ出し、50カ国を巡ったものの自分の性別からは逃げられなかったこと。その経験によって「いまいる場所を生きやすく変えてこう」と決意し、現在の活動に繋がっていることなど、生い立ちを心模様とともに赤裸々に語りました。

●性は多様で目に見えにくい。

杉山さんは、性の在り方を構成する要素として、下記の3つをあげました。

① 『カラダの性』。染色体や生殖器などによって割り当てられる法的な性別。
② 『ココロの性』。性自認。ジェンダーアイデンティティといい、男性であるか女性であるか、はたまたそうでないかなど、自分が認識している性別。
③ 『スキになる性』。セクシュアルオリエンテーション、つまり性的指向。

さらに、もう一つ加えるなら「表現する性」があるとし、次のように問題提起しました。

「これだけ性は多様なのに、男女2つの性に押し込めて考えられることに、とても窮屈さを感じます。
また、性は目に見えないもの。その場にいる人の性は分かりません。しかし、現代の日本社会では、必ず異性愛者であるという大前提で会話がスタートします。ここに大きな課題を感じています」

また、LGBTQの当事者たちにとっての現状を、杉山さんは次のように語ります。

「当事者がカミングアウトをしにくい場所の2トップは、職場と家庭です。なぜならば、自分の居場所がなくなったら困る一番大切な場所だから。職場でのカミングアウト率は1割に満たないのが現状です。」

さらに講演では、さまざまなデータも提示。LGBTQの割合は、おおよそ5~10%といわれていること(※1)、日本でいうなら、「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」など日本の代表的10姓は全体の約10%といわれており、その数とほぼ同じであると話しました。
(※1)パーソル社内資料では2018年の電通ダイバーシティの調査結果の約8.9%を主に引用


●企業がLGBTQに取り組むべき理由

企業はなぜ、LGBTQについて取り組むことが必要なのか――、その主な理由として2つをあげました。

一つは、「お客さまの中にもLGBTQの人が必ずいる。そこにはマーケットがある」として、実際にLGBTQマーケットの開拓に取り組む大手企業のCMを紹介。そして、次のように語りました。

「いま、日本にあるルール、制度、サービスは基本的に、LGBTQの人がいない前提で成り立っています。LGBTQの人はまるで透明人間のように扱われ、疎外感を感じていますから、自分たちを分かってくれる企業があれば、そこを利用したい、と思うのは当然です。企業としては、これまでLGBTQの人を取りこぼしていることになると思うので、その部分に対してのサービスを拡大していくといいんじゃないかと思います。」

もう一つは、「社内にいる当事者の人にとってはたらきやすい職場環境の提供」をあげました。

「LGBTQ当事者からすると、採用条件が同じであれば、差別やハラスメントがないところではたらきたいと思うのは当たり前です。また、こうした配慮のある会社は、誰にとってもはたらきやすいだろうと企業イメージが上がるので、採用全体にプラスにはたらくと思うし、はたらきやすさは生産性の向上、離職防止に繋がると思います。」

ただし、職場環境という話になると企業は往々にしてハード面を考えがちだが、「ハードよりハート」と強調します。

「新しいものをつくることはできなくても、そこにいる人たちの気持ちが変わるだけで乗り越えられることはたくさんあると思っています。まずは、LGBTQのことを知ってもらい、向き合う姿勢を皆さんに持っていただくことが大事だと思います。」

また、日本のLGBTQ当事者の自殺率が高いことや、海外と比べて日本は法整備などが遅れていることを指摘。G7(主要先進国首脳会議)においても同性パートナーに対する国レベルの法的保障が無いのは日本だけであり、OECD(経済協力開発機構)の加盟35カ国中、LGBTQの法整備ランキングが34 位であること(※2)を解説。法制化・制度化をしていくことが重要であると論じました。
(※2 出典はこちら

そして最後に、LGBTQの人たちに対して周囲ができることとして、「ウエルカミングアウト」という行動を提案しました。

『ウエルカミングアウト』は、周囲がLGBTQに対して『ウエルカムだよ』と伝えることです。たとえば、SNSなどで同性婚やLGBTQに関する肯定的なニュースなどが流れてきたときに『いいね』を押したり、リツイートをするといったことです。これだけでもカミングアウトできていない人にとっては安心感に繋がります。『この人になら話せるかな』とカミングアウトを考えるきっかけなることもあります。一日一 ウエルカミングアウト。ぜひ、はじめてみてもらえるといいなと思います。」

*「ウェルカミングアウト」はLGBTQへ肯定的であるというの個人の意思を示すものであって、当事者のカミングアウトを強制するものではありません。


ミニ対談:杉山 文野さん×棟近 直紀


イベントの最後15分で、杉山さんと、パーソルグループ内でLGBTQ アライコミュニティの代表を務める棟近による対談が行われました。

●違うことは個性。認め合うことで新しい価値観が生まれる!

棟近:杉山さんは、著書も出されていらっしゃいます。性の違いに対してポジティブなメッセージを発信されていますが、自分自身と周囲との違いを前向きにとらえるために重要な心構えなどはありますか?

杉山:僕自身は、「全部同じだったらつまらない。違いこそが人生の彩」、みたいに思っているんです。みんな同じ考え方で、同じ髪型で、同じ服着ていたら何一つ彩りはないですよね。同じ部分と違う部分、その両方を楽しむのが大事なんじゃないかなって思っています。

棟近:違うからこそ、違う視点があり、楽しむことで気付いたり、発見があったりすると。

杉山:前は「混ぜるな危険」と言われていたことも、いまは「混ぜねば危険」の時代です。世の中は多様化しているのに、企業さまの社内でダイバーシティが欠如していると、偏った視点になり、お客さまのニーズに合わなくなるんじゃないかな、と。

それに、社内のダイバーシティは、心理的安全性に繋がるもの。これはとても大事だと思っていて、違いが受け入れられると思うと、発言することにも恐怖心を抱かなくなる。個人としてもチームとしてもパフォーマンスを発揮しやすいし、新しい意見が出て、多様化するマーケットに合う商品やサービスが生まれることになると思います。

そうした組織になる第一歩として、「押し付けないこと」が大事なんじゃないかと思います。たとえば、お酒の席での「とりあえずビール!」文化。本当はソフトドリンクが飲みたいのに、場の空気から周囲に合わせてビールを頼んだり、「とりあえずビールでいいよね」と言われて頷いたり……。小さいことだけれど、こうした空気ができることや、それに我慢することに慣れてしまっているんですね。ですから、こういう小さいことから、「こうあるべき」ではなくて、「こうしたい」「こうありたい」をお互いに応援できるような関係性を築けていけたらいいなと思います。

棟近:「だれもが違う考え方を持っていていいんだ」、という雰囲気を日常の些細なところからつくることが、心理的安全性に繋がるということですね。

杉山:そうですね。LGBTQの話ってLGBTQに関する話だけではないと思っています。当事者がカミングアウトをするときは、日々の会話の端々から見極めるんです。「この人だったら自分の意見をちゃんと聞いてくれるな」、「尊重してくれるな」と。だから日々の些細な会話こそ、重要なんです。

●コロナ禍で低下するLGBTQ当事者のメンタルヘルス

棟近:コロナ禍となり、いろいろな人とコミュニケーションをとる機会が少なくなってしまいました。杉山さんは多様性という観点で、変化を感じられていますか?

杉山:東京レインボープライドは2019年まで代々木公園で行われてきましたが、コロナ禍となりリアルには集まれなくなりました。そこで、オンラインに切り替えところ、オフラインでの最後の年2019年が約20万人だったのに対し、世界中から参加者が集まり2020年は約45万人、2021年は2日間でなんと160万人を超える方々が視聴してくださったんです。本当に驚きました。これで新しい可能性に気付くことができましたね。

一方で、LGBTQ当事者の子どもや若者たちのメンタルヘルスが低下しているというデータがあります。外に活発に出れないとなると、たとえば、新宿2丁目など、LGBTQの人が多く集う場所で安心して話をすることもできない。親に理解がないと、ずっと理解がない人と過ごすことになりますから、メンタル的にそれは辛いですよね。

それと、同性のパートナーと暮らしていることを会社に内緒にしている場合、リモート会議中にパートナーの声が入ってバレたらどうしようという不安を感じている人も少なくありません。

棟近:最後に、杉山さんにとって「私らしくはたらく」とは?

杉山:自分を隠すことなく、心理的安全性を感じながらはたらくこと。「はたらき方は生き方」とよく言われますが、まさにそうだと思います。

個人が満たされれば、生産性もパフォーマンスも上がるので、会社にとってもいいですよね。ダイバーシティを推進して、お得なことはいっぱいあるけれど、損することは何もないと思います。ぜひ、力を入れていただければうれしいです。

『東京レインボープライド 2021』への協賛背景

パーソルグループは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を、すべての人たちが実感できる社会の実現を目指しています。グループ内では、Diversity, Inclusion & Equality(以下DI&E)の取り組みを実施しており、これまでも約2万人以上の社員を対象とした「DI&Eリテラシー研修」や、セクシュアルマイノリティを理解し支援するアライ活動や同性パートナーシップ婚制度の導入(※3)など、セクシュアルマイノリティの当事者であっても非当事者であっても、誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を目指した活動を続けています。
こうした取り組みを推進するために、パーソルキャリアでは「セクシュアルマイノリティが差別や偏見にさらされず、前向きに生活できる社会の実現」を目指す東京レインボープライドのブロンズスポンサーとして協賛を決定いたしました。
(※3)パーソルチャレンジ株式会社、パーソルキャリア株式会社が導入しています。

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