カゴメ有沢氏が語る、HRの在り方とは?『パーソルテンプスタッフ HRナレッジセミナー2021』と、続編イベントを開催!

パーソルテンプスタッフ株式会社は、HRの知っておきたいナレッジや課題解決のヒントを3つの異なる視点・テーマで伝える無料のオンラインセミナー“『パーソルテンプスタッフ HRナレッジセミナー2021』HRの今、そして「これから」”を開催しました。

3月1日には、「『まだらテレワーク』時代の生産性はいかにして高められるか?― 組織マネジメントの観点から ―(株式会社パーソル総合研究所 小林 祐児)」というテーマで、また、3月19日には、「働くみんなの『転職学』- 転職メカニズムの探究 中途採用者をいかに迎え入れるのか? -(立教大学 中原 淳教授)」というテーマで、それぞれ講演をいただきました。

それに続く第3回目として、3月29日、多様なはたらき方を推進していることで知られるカゴメ株式会社の常務執行役員CHO 有沢 正人氏に登壇をいただき、「毎年進化するカゴメの“生き方改革”とこれからの人事制度のあり方- Withコロナ時代へのあるべき対応と経営に資する人材の育成 -」というテーマでの講演を開催しました。

3回とも講演は大盛況。中でも3月29日の講演では、チャットに多くの質問が寄せられました。
そこで、4月26日に、同イベントで回答しきれなかった参加者の質問に答えるためのスペシャルイベントとして「カゴメ有沢氏 皆さまからのご質問にとことん答える1時間」を実施。
参加条件は、3月29日の講演に申し込み・参加した方をはじめとした招待者のみ。招待から開催日まで短時間だったにも関わらず、招待者の4分の1の方が参加しました。

本記事では、3月29日と4月26日のイベント講演内容を一部抜粋してお届けします。


3月29日開催:
毎年進化するカゴメの“生き方改革”とこれからの人事制度のあり方
- Withコロナ時代へのあるべき対応と経営に資する人材の育成 -


カゴメの事例として、年功序列人事をジョブ型人事に変えたことや、仕事に対して報酬を決める制度の導入についてを冒頭で説明。役員などトップから意識改革を始めることが会社のあり方を変えることに繋がることを説きました。また、この改革によって、カゴメの労働生産性が上がり、会社における働き方の改革と合わせて、個人の暮らし方が変わり、個々の価値観に応じたはたらき方が可能になると話しました。

有沢氏は、最高人事責任者として、次期社長の後継者を育成し、経営と連携して人材育成を行っています。ただ縦割りで業務を行うのではなく、経営戦略の一つの機能として人を育てることの重要性を説きました。最後に、「経営戦略は人がいなければ動かすことができない」、そのためには「何よりも一番先に人事戦略が進んでいなければならない」と提言しました。


4月26日開催:
『カゴメ有沢氏 皆さまからのご質問にとことん答える1時間』


3月29日の講演の質疑応答で、回答しきれなかった質問は約60問にも及びました。有沢氏のご厚意で、これらの質問に答える追加イベントを開催。本イベントでは、パーソルテンプスタッフ HRナレッジセミナー事務局の園田 圭美がそれらの質問を網羅できるようをジャンルごとにまとめて有沢氏に問いかけ、お答えいただくというスタイルで進行しました。

目次

人材獲得、育成のためにすべきこととは⁉

園田:「優秀な人材獲得に向けて、報酬の変動をどう考え、決めればいいですか?」という質問がきています。

有沢氏:カゴメの場合、管理職以上には、ジョブ・グレードの職務等級を導入しているので、基本的にはうちの職務等級に合わせていただくというのが原則になります。ただ、IT系など、いわゆるスペシャリストといわれる人たちに対しては、専門職制度を検討しています。こうした人たちはジョブ・グレードで測れないので、マーケットバリュー(市場価値)で測ります。

園田:「人材育成において金銭的な投資は、何を一番にすればいいですか?」。会社として、組織として、どこにコストをかけるべきかで悩んでいらっしゃるようです。

有沢氏:人は得意不得意などがそれぞれで違うので、一律に「これをやったらどうですか」というのは、私はないと思っています。ただ、一般的にいうと、管理職クラスにはリーダーシップとか、意思決定や戦略に対しての研修を、メンバークラスには、ロジカルシンキングやマーケティング、財務などの研修を受けてもらいたいと思っています。

園田:各階層で何が必要なのかを明確にすることが必要ということでしょうか?

有沢氏:というよりも、その会社が何をしたいか、どういう会社になりたいのか、というところから逆算していかないと、それぞれの階層にどういう手を打てばいいのか分かるはずがない、と思っています。

単純に「研修に行ってください」というのでは、投資対効果は非常に薄いと思いますね。この研修を受けることで、自分が会社の成長のどこに役に立つのか、自分の成長にどのように役に立つのか――、その意義がちゃんと分からないと意味がないと思うんですよ。意義を見出さない研修というのは、僕はあり得ないと思っていて、やるからには“なんのためにやるのか”という目的が大事だと考えます。
目的は、“会社がどうしたいか”から逆算して決め、経営者がそれを社員に伝える。経営者や人事、社員皆さんが普段からちゃんとコミュニケーションすることが大事だと思います。

園田:個人のためのキャリア・成長という「個人の部分」と、会社の未来の姿・成長という「会社の部分」がカゴメさまはバランスよく融合しているな、と……。

有沢氏:基本的には「個人」が一番大切です。ここは絶対に間違わないでほしい。自分のマーケットバリューを高めることが、会社に対してコントリビュート(貢献)するという考えをもってもらいたいと思います。

HRBPに一番大切なのは、人柄

園田:HRBPに関しての質問がいくつかあります。「HRBPの方が、社員の方に対して、家庭状況などを細かく把握して問いかけるのはとても難しいと思うのですが、どのようにされていますか?」
※HRBPとは、Human Resource Business Partnerの略で、事業の成長を人事・組織の面からアプローチして実現しようとするポジションのこと。

有沢氏:テクニック的なことはコーチングです。あとはHRBPの感度。
我々が持っているタレントマネジメントの情報と、個人へのコーチングやヒアリングを駆使するという感じですかね。

園田:「コーチングはキャリアコンサルタントの資格をお持ちの方々がやっているということで、傾聴能力も非常に高いと思うのですが、どのように選抜されているのですか?」。資格をもっていれば誰でも良いというわけではないのかなと……。

有沢氏:選抜にキャリアコンサルタントの資格を持っているのが条件か、といったらそんなことありません。
いまのカゴメで、選抜時に資格を持っていたHRBPは一人もいません。
現場で尊敬されていて、コミュニケーション能力が高くて、あの人なら大丈夫という安心感がある、そういう人を選抜します。

キャリアコンサルタントの資格はHRBPになってから取ったほうがいいですね。なぜかというと、やるべきこと、ミッションがはっきりしている状態の方が気持ちが入るから。圧倒的に姿勢がちがいますよ。

KPIの「見える化」をせよ

園田:評価に関する質問もきています。「目標管理制度導入によるデメリットはどのように回避していますか?」とのこと。中でも多くの人が「定量化できない仕事がどうしてもあるのではないか」「評価者によってブレがあるのではないか」について気になっているようです。

有沢氏:定量化できない仕事は、基本的にありません。
カゴメにはKPI目標シートというものがあります。まずは5つを上限にミッションとアカウンタビリティ(組織とポジションの役割・責任・コミットメント)を記入し、次にそれに対して、「どんな課題があるか」「どうやって達成するのかの具体的な施策」「指標」を書きます。そして、それを「いつ、どこまでやるか」と、その「ウエイト」を記入します。
こうすることで、研究開発の仕事なども定量化できますので、上司によって評価がブレることはありませんね。このKPI目標シートは役員を含め、全社員のものを公開しております。

昇格、給与は公平性を担保せよ

園田:「昇格や選抜は総合的判断とのことでしたが、行動評価基準はないのですか?また、外部のアセスメント評価などは使われているのでしょうか?」

有沢氏:外部のアセスメント評価は使います。これがないと、客観性が担保できません。
論文審査とか内部の人間だけのアセスメントもありますが、大きな役割を担う等級に上がる際は、外部のアセスメントを入れています。

園田:「ジェネラリスト、スペシャリスト間の異動はどうしていますか?」。また、「スペシャリストの方の場合、年収変化の課題はどのようにすればいいですか?」という質問がきています。

有沢氏:ジョブ型を導入している会社というと、全員がスペシャリストとイメージされると思いますが、カゴメはジェネラリストとスペシャリストが併存するのが当たり前ですし、私は、全員がジェネラリストであり、その中でスペシャリティを持つのが理想だと考えています。
スペシャリストとしてのキャリアを選択されたからといって役員になれないわけではないし、そこから逆にジェネラリストになられる方というのはとてもいいなと思いますね。

報酬については、スペシャリストの人はマーケットバリューで決定すべきです。マーケット評価のデータを毎年取り、その中で適正な基準を決めていく必要があります。
ジョブ・グレードで測れる人は、職務等級を毎年見直しますから、仕事の中身が大きくなれば職務等級が上がり、年収もアップします。

園田:スペシャリストを導入するも、ジョブ型を導入するも、スペシャリストの選定基準が曖昧でうまくいっていないという企業さまが多いようで、「基準をどう設けていますか?」という質問が何件かありました。

有沢氏:スペシャリストの方は、マーケットで見たときどれだけの価値があるか、それが唯一の基準だと思っています。それができなければ、社内の職務等級などで処遇するしかないんですが、それだと辞めてしまうことになりかねません。たとえば、「この方がほかの会社に行ったら、どのぐらいの年収をもらうだろう?」と考え、リテンションも含めてそのマーケットバリューをフェアバリューとして支払う、ということですね。

人事はオペレーションにあらず

園田:「人事はオペレーションだという思い込みが強いです……」というコメントがあったのですが、いかがでしょうか?

有沢氏:人事はオペレーションではありません。すべての仕事は、オペレーションと企画から成り立っています。忙しいという方は、オペレーションと企画の両方をやっているケースが多いんです。例えば、資料をつくったり、給与計算をしたりしながら、企画も考えて進めるといったように。これは正直無理です。オペレーションを分離して、人事は基本、人事施策、人事戦略の立案といった企画に邁進するのがいいと思います。
一方のオペレーションは、絶対必要で、もっとも大事な仕事です。だからこそ、企画と両方やるというのは無理。どちらもいい仕事ができない。これは、これまでの私の人事経験から断言できるところだと思います。

ですから、オペレーションはシェアードサービスを活用するのもよいと思います。しかし、オペレーションが分からないと戦略が出来ません。一回は経験した方がいいと思いますね。でも、みんながオペレーションと企画を兼務するという事態は避けた方がいいと思います。

園田:本日は貴重なためになるお話をありがとうございました。経営とともに歩まれ、改革をしてきた有沢さんだからこそ、人事に関する幅広いジャンルとその課題についてお答えいただけたのではないかと思います。また、講演ではなかなか語られないようなこと、有沢さんの人間味溢れるお話などがこういったイベントだからこそお伝えすることができたと考えます。

有沢氏:コロナ禍のこんな時期だからこそ、皆さんには仕事の意味などを考えてもらいたいし、助け合っていきたいと思います。ありがとうございました。

4月26日に行われた『カゴメ有沢氏 皆さまからのご質問にとことん答える1時間』のイベントは、こうして幕をとじました。3月29日の講演を受けて、その申込・参加者限定の招待制で“質問に答えるだけ”という、今回のようなスタイルの講演は、有沢さんにとってもパーソルテンプスタッフにとっても初の試みでしたが、参加者の方には大好評で、「講演の後でのこういった企画はより深く聞けてとても良かった」「講演では聞けないような情報や話がたくさん聞けた」「リアルな形式で良かった」などたくさんの感想が寄せられました。


●アーカイブ動画公開中!(6月30日まで)

『パーソルテンプスタッフ HRナレッジセミナー2021』のセミナー3講演の様子は、6月30日まで動画でご覧いただけます。
アーカイブ動画のお申込みはこちらから
(本記事でご紹介した「カゴメ有沢氏 皆さまからのご質問にとことん答える1時間」については、本公演申込参加者限定イベントのためアーカイブはございません。あらかじめご了承ください。)

パーソルテンプスタッフは、今後、派遣の情報提供のみならず、人材サービス会社として、人事に携わる方々の課題解決のヒントとなるべく情報をさまざまな形で提供し、多くの人の「はたらいて、笑おう。」の実現を目指します。

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