東京と横浜で行われた、障害者雇用の今とこれからが分かるセミナーに3日間で約400名が参加。
パーソルチャレンジ株式会社は、厚生労働省より「障害者のサテライトオフィス※勤務導入推進事業」を受託し、その事業の一環として「障害者雇用の最新トレンド~障害者の在宅・サテライトオフィス雇用の可能性とはじめかた~」と題したセミナー(主催/厚生労働省)を2月13日(東京)、2月21日(横浜)、3月5日(東京)を行いました。
セミナーの中盤には、パーソルチャレンジ株式会社 経営企画部 部長の大濱 徹から、受託事業についての基調報告がありました。
※サテライトオフィスとは、企業の本社・本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのこと。本拠で行う業務と同等の仕事ができるように情報・通信設備を整えていて、本社の『サテライト=衛星』のように存在するため、この名が付けられました。
背景
企業における障害者雇用数は、2018年4月からの障害者雇用率の引き上げにより増加しており、今後さらに増える見込みです。そうした中、課題として挙げられるのがオフィスの在り方。障害者の中には、職業能力はあっても「不安を感じやすい」「疲れやすい」「光や音に過敏で業務に集中できない」などの障害特性により、長時間の通勤や通常の職場での勤務が難しい場合があります。サテライトオフィスは、そんな障害者に安定的に能力を発揮してもらうのに有効です。
そこで、障害者の就労環境の選択肢を広げられればという想いから「障害者のサテライトオフィス勤務導入推進事業」を受託。そして今回、障害者の在宅やサテライトオフィスでの雇用の可能性とそのはじめ方について広く周知するとともに、サテライトオフィス勤務の普及と就業定着促進のためセミナーを開催しました。
概要
障害者雇用やテレワークの有識者をゲストスピーカーとしてお招きし、テレワークを活用した障害者雇用拡大の可能性についてのセミナーやパネルディスカッションなどを行いました。
3月5日(東京)で行われたセミナーのプログラムと内容
厚生労働省の担当者より開会の挨拶が行われた後、基調講演、基調報告、パネルディスカッションの3部構成で行われました。
(1)基調講演
慶應義塾大学 商学部 教授の中島 隆信氏による「障害者雇用が示す『働き方改革』の方向性」と、野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 社会システムコンサルティング部 公共経営グループ 上級研究員の水之浦 啓介氏による「社会的潮流変化と障害者雇用の新たな可能性が企業経営にもたらす効果について」の講演が行われました。
(2)基調報告
大濱から「障害者のサテライトオフィス勤務導入推進事業」の基調報告が行われました。
事業の取り組み方針やサテライトオフィスでの雇用の流れをはじめ、候補のモデル企業と意思決定まで至らなかった理由の多くが、「遠隔で働く人事制度がない」「障害者がテレワークをするイメージがわかない」であったことなど、事業推進における障壁も報告しました。
また、企業と障害者がサテライトオフィスやテレワーク雇用を選ぶ理由も紹介。企業側の一番の理由は「職務能力の高い人材を雇用するため」であり、障害者側は「近隣に該当する企業がないので、遠隔で採用してくれる企業を探したい」でした。そして、「サテライトオフィスは一般的に仮のオフィスなどと言われることもありますが、そこで勤務する側からみれば日々通うオフィスなので十分に留意する必要がある」とし、サテライトオフィスでの雇用における企業責任として「就労環境整備」「人事労務管理」「業務管理」の必須要件や、任意要件の詳細を述べました。
(3)パネルディスカッション
「働き方の多様化による障害者雇用の拡大の可能」をテーマに行われました。
登壇者は、中島氏、水之浦氏に加え、テレワークの第一人者である株式会社テレワークマネジメント 代表取締役の田澤 由利氏と、事業に参加されたモデル企業のスタンデックスエレクトロニクスジャパン株式会社 常務取締役の福留 誠氏、特例子会社である株式会社テクノプロ・スマイル 代表取締役社長の大田 久光氏。そして、ファシリテーターを大濱が務めました。
まず、モデル企業の2名から、事業に取り組む中で浮上した課題と解決策が語られ、その後有識者の3名からテレワークの取り入れ方や新しいICT(情報通信技術)などの情報の入手方法のほか、コストのかかる障害者雇用も長期的な目で見れば、企業にとっても社会にとってもプラスになる、といった話がありました。
また、「障害者にとって、そして雇用する企業にとって、サテライトオフィスやテレワークというモデルは有効でしょうか?」という大濱の質問に、モデル企業の2名が回答。
大田氏は、「障害特性によって在宅が良い場合もあるので、サテライトオフィスが必ずしも有効とは言い切れないが、いろいろな働き方の選択肢を提案できるという点で、とても良いと思っている。実際、サテライトオフィス、在宅、テレワークを取り入れたことで働き方の幅が広くなった」とコメント。
福留氏は、「会社の人間関係が辛くて外に働きに出られなくなった、というような人には、サテライトオフィスはとても有効だと思し、定着にも役立つと思う」と話しました。
さらに、有識者3名からは、これからサテライトオフィスでの雇用やテレワークの導入を考えている、今回参加した企業に方々へメッセージが贈られました。
「テレワークは企業を強くするツール。子育て中の人や障害者なども含め、社員皆に働く場所、働き方、時間を提供でき、最大のパフォーマンスを引き出すのに有効」(田澤氏)、「サテライトオフィスやテレワークワークはインクルージョンを実現させるための『障害者雇用の入門編』と言えると思う」(水之浦氏)、「障害者雇用にはコストがかかるので、企業が直接雇用するもの良いが、現存する福祉施設を使って社会全体で採算をとるといった全体最適な考え方も大切である」といった話に、参加者は納得の表情で大きく頷いていました。
最後に大濱が「テクノロジーの出現や働き方を選べるようになった今、人と組織の繋がり方の転換点に来ているのだと思います。このディスカッションを通し、新しい繋がへの可能性の一つのツールとして、テレワークやサテライトオフィスというものに可能性があると感じました」と語り、ディスカッションは終了しました。
その後、パーソルホールディングス株式会社 執行役員の美濃 啓貴より、結びの挨拶が行われ、約130名が参加した3月5日のセミナーは幕を閉じました。
障害者を在宅やサテライトオフィスで雇用することの有用性から取り組む際の注意点までが示されたセミナーに、参加者は多くの気付きを得たようで「テレワークでの障害者雇用に可能性を感じた」「自社でも取り組みをはじめたい」などの声が上がっていました。
●大濱 徹
パーソルチャレンジ株式会社 経営企画部 ゼネラルマネジャー。
パーソルキャリアへ入社後、障害者の人材紹介サービス「dodaチャレンジ」に参画。2013年より、同サービスの責任者。のべ1,500社以上の採用支援と雇用アドバイザリー業務に従事。
現在は、パーソルグループで障害者雇用支援事業を展開する、パーソルチャレンジの事業企画やマーケティング業務を担当。
パーソルチャレンジは、障害者採用から定着までを考えた「障害者雇用の成功」を目指し、本事業の受託やセミナーをはじめとするさまざまな取り組みを行うともに、障害者の自立および成長を幅広く支援しています。