DEIを進めることが絶対に必要だと確信する理由―わたしとDEI(18)大竹 航 ―

パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第18回目は、パーソルキャリア株式会社で人事本部長を務める大竹 航です。

「DEIを進めることが会社にとっても社員にとっても絶対に必要なことだと心から思っているんですよ。だから、難易度が高くてもやりきりたいんですよね」

大竹は、2002年にパーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)に入社以来、さまざまな事業に携わってきました。2023年4月、未経験の人事部を管掌することになり、改めてDEIの必要性を確信したと言います。なぜそう感じたのでしょうか?まずは、それまでの歩みを振り返ります。

目次

中途採用で転職した理由

大竹は、神奈川県鎌倉市で生まれ育ちました。学生時代は毎日を楽しく過ごすことに夢中で、将来についてそれほど真剣に考えたことはなかったと振り返ります。就職先は、某テレビ局の番組制作を担う企業。これといった強い志望動機はなく、「人気もあって楽しそうだったから」でした。

アシスタントディレクター(AD)として駆け回っていた4年目の夏、偶然にもインテリジェンスの活躍を耳にする機会があり、懐かしく思いました。学生時代の就職活動中、最終面接で落ちたのがインテリジェンスだったのです。

「当時、すごい成長率で伸びていたので、興味を持って採用試験を受けました。最終面接まで進んだんですけど、残念ながら落とされてしまいました(笑)」

社会人になって久しぶりにインテリジェンスという社名を耳にした大竹は、ふと気になって同社ではたらく友人に連絡を取りました。その際、「優秀な人たちが集まり、勢いがあること」「20代で管理職になってバリバリはたらいている同年代がたくさんいること」を聞いて、「もう一度、門を叩きたい!」と半ば衝動的に応募。中途採用試験はとんとん拍子に進み、2002年春、入社します。

意外なオファー

AD時代、専門学校に通って3DCGのプログラミングを学んだ大竹は、Webマーケティングの部署を希望していました。しかし、「まずは現場を知ったほうがいい」と言われ、ITエンジニアの派遣サービスを運営するITプロフェッショナル事業部に配属されます。

初めての営業は、目の回るような忙しさでした。そのうち少しずつ仕事に慣れてくると営業の楽しさに目覚め、その年の中途入社新人賞を受賞します。それからはWebマーケティングに携わった一時期を除き、人材派遣、人材紹介、公共事業、アウトソーシングに関わる事業の最前線ではたらいてきました。チーム目標の達成を目指して日夜全力ではたらく時間は大変でしたが、充実した時間になりました。しかし、そんな折に大きな転機となったのが、2008年に起きたリーマンショックです。

「失業した若者を大阪府が雇用し、職業訓練を施しながら営業を教えて、営業した先に再就職させていくというプロジェクトを始めたんです。採用、育成、再就職まで一気通貫で請け負えるインテリジェンスがそのプロジェクトを勝ち取りまして、私は事業責任者に就きました。その時、参加した若者たちの親から直接感謝の言葉をかけてもらったり、お礼の手紙をいただいたりしたんですよね。その時に、単なる『目標達成』だけではない、人材ビジネスの尊さや醍醐味を入社10年目にして初めて肌で感じました。かなりの遅咲きです(笑)」

このとき失業した若者の支援を担った大竹は、自身の就活時の経験も相まって「学生の会社の選び方、ファーストキャリアの作り方、考え方」に課題があると感じました。そこで「もっと学生と企業が、フラットな立場、同じような言葉で会話できなくてはいけない」という想いから、ベネッセコーポレーション株式会社と2015年に立ち上げたのが、「株式会社ベネッセi-キャリア」です。大竹は新卒事業本部の本部長として、この事業の成長に丸8年間奔走しました。

パーソルキャリアの代表、瀬野尾 裕から「人事本部の本部長として戻ってこないか?」とオファーがあったのは、2022年の冬。

「話を聞いて驚きましたね。実は、もしパーソルグループに戻るなら人事しかないと思っていたんですよ。インテリジェンスの時代から事業サイド、取り分け営業の最前線ではたらいてきましたが、ベネッセi-キャリアでは、フロントもバックも境目なくやりました。そこで初めて会社の仕組みづくりに携わり、経営サイドとして仕組みを変えることで会社が大きく変わることを体感しました。ベネッセi-キャリア同様、パーソルキャリアにも優秀で勢いのある人材がたくさんいると知っていたからこそ、その力をもっともっと活かせる仕組みづくりにチャレンジしたいという想いがありました」

「管理職になりたい」男女差30%

与えられたミッションは、「文化の再構築」。それまでのパーソルキャリアは、今とは違い退職率もまだ高い状況でした。幸いにして採用活動はうまくいっていたため、退職者数の多さをカバーするように新たな社員が入社していたものの、それでは社内に知見やノウハウを貯めることが難しい。そこで、人事制度や環境を改善してエンゲージメントを高め、社員の可能性を広げる方向に舵を切りました。

「長らく事業側にいたので、戦術や戦略以前に、社員の共感や理解が深まると、人は何倍もの力を発揮すると実感しています。逆に、どんなにいい仕組みをつくっても、その組織にいる人たちが会社や事業に誇りを持ち、常に意欲的な状態でいられなければ必ず衰退する。そういう意味で、キャリアオーナーシップとエンゲージメントの高い組織をつくるというミッションは、自分自身が大切にしていることと合致していました」

その実現に向けたテーマの一つとして、DEI推進のアクセルを一段と踏み込み、次のステージへ進める決断をしました。大竹は当初、「売上目標を達成するような感覚」で、数値で課題を可視化することから始めます。

女性管理職を増やすという目標は、大竹が着任する前からあったもので、最終目標50%に対して本部長就任時は31%でした。そこで「管理職になりたいか」という意向調査をしたところ、男性約70%に対して女性は40%程度。さらに、事業サイドの現場では「女性管理職を意図的、戦略的に増やす」ことに対して理解を得られていないことが分かりました。

そこで、まずは「男性社員に比べて女性社員の管理職着任意向が低いというジェンダーギャップを解消すること」「事業サイドの主体性を上げること」を目標に据えます。

「まず着手したのは、残業削減です。当時、全社の平均の残業時間が28時間ぐらいだったのですが、これはあくまで平均値。組織として無理のあるはたらき方を前提にしないために、まず整えるべき土台だと捉えていました。DEIの中でも特に女性活躍という観点においては、小さな子どもを育てる女性から『そんな状況では管理職はできない』という声も多かったんですね。それで一定の強制力をもって残業時間を減らしました。また、専門家を招いて男性が育児の難しさを学ぶような機会をつくったりと、矢継ぎ早に手を打ちました」

女性社員の声を聞いて生まれた新たな仮説

社会的にもDEIへの関心が加速度的に高まる中、外部の勉強会にも積極的に参加し、他社で成果が出たという代表的な施策は一通り実行しました。それもあり、手ごたえを感じていた大竹は2023年末、社員の意識調査の結果を見て目を疑います。「管理職になりたい」という女性の割合が1%も増えていなかったのです。

「環境面の改善とは別に、管理職になるかどうかの意思決定には、ほかにも要因があるのではないか……」

ショックを受けた大竹は、現場の女性社員の声を集めることにしました。すると、「会社の居心地は良くなった」という評価とともに「自分にスキルが不足していると分かっているのに、管理職をやらせてほしいと手を挙げることがいいことと思えない」「やりたいと声を大にしてアピールしないと管理職になれないなら、ならなくてもいい」という声が多いことに気付きます。この意見は、大竹に新たな仮説をもたらしました。

「パーソルキャリアらしさでもあるWILLを重視する文化そのものが、そもそもすごく男性的なノリで不調和の要因なのでは?」

「そもそも資本主義思想自体が男性優位の社会から生まれているという説もあるぐらいです。この固定化された価値観を変えるためには、もっと分かりやすい成功事例を提示しなくてはと思いました」

日本国内だけでなく、欧米企業における事例まで探しましたが、参考にできそうな「これぞ」という分かりやすい事例が驚くほど少ないことも分かりました。そこで、大竹は3つのことを意識しました。

「1つ目は、DEIは慣性の法則に逆行するアクションであると認識すること。中途半端なアクションではもとのレールに引き戻されるということですね。2つ目は、アンコンシャスバイアスはあっても、加害者はいないという前提に立つこと。3つ目は『他に事例がないということは、我々が成功すればHRの良いショーケースになること』です」

経営陣も多様性を体感する機会に

この3点を踏まえ、2年目から利益目標と同等のレベルで女性管理職数の目標値を設定。昇格条件に当てはまるのに昇格していない女性がいた場合、人事から上司に説明を求めるという「現場へのコミット」を徹底しました。
その上で、管理職に昇格した女性が孤立しないよう「スポンサー制度」を設置。これは上級管理職の一部が対象で、直接仕事と関わりのない役員を相談役につける制度です。

管理職を対象にした「制限のあるはたらき方理解研修」も導入しました。たとえば「子どもの体調不良によるお迎えの連絡がくる」という状況を予告なしに疑似体験するもので、実際に帰宅して業務を終了しなければなりません。女性が担うことの多い役割を男性管理職が強制的に体験することで、互いの理解を深める効果が期待されています。

さらに、経営ボードの女性比率にも着目し、当初の5%から25%まで引き上げました。これによって、大竹からみても経営ボードに新鮮な変化がもたらされたと言います。

「社長も参加している会議で、ある女性が『ちょっと待ってください。それって本当にユーザーの視点は入っているんですかね?なんか気持ち悪いんですけど』と発言して、その場にいる全員がハッとしたことがありました。男性ばかりの会議では空気を読みあったりして、そういう発言がしづらい雰囲気が確実にあるんですよ。せっかく皆で集まって結構な時間を割いて議論しているのに、それでは意味がない。経営ボードの男女比率が変わってきたことで、経営陣も多様性を体感するいい機会になっているのです」

女性リーダーがもたらした変化の事例を調べていた際、印象に残ったエピソードがあるといいます。それは北欧の町で女性が市長に就いたときのこと。雪深い冬の時期、それまで毎朝、車道の除雪が優先されていたところ、歩道の除雪から作業するようにしたそうです。すると毎朝、凍った歩道で転んでケガをする人が減りました。

「この話題が一番ピンときたんですね。僕らにもきっと悪気なく気付けていない視点があるんです。その偏った視点でもここまで成長してきたわけだから、多様な視点が加わればもっと成長するんじゃないか、もっと多くの人がしっくりくる環境をつくれるんじゃないかって思いました」

これこそ、大竹が「DEIは絶対に必要なこと」と言い切る理由。パーソルキャリアのさらなる進化を目指して、現在36%の女性管理職が50%になる未来を目指します。

「自分にとってはそこがスタートラインです。その先にどういう変化が起きるのか明確に見えているわけではありませんが、楽しみですね。次の世代によい形でバトンをつなぎたいです。そのためにはもうふた踏ん張りほど必要そうです」

パーソルキャリアのFamily Day 2026にて(大竹は最後列右端)

<プロフィール>
大竹 航(おおたけ わたる)
パーソルキャリア株式会社
人事本部 本部長
2002年入社。人材派遣・人材紹介など、一貫して企業の採用関連業務に携わる。2013年より新卒領域を担当。新卒紹介サービスの「doda新卒エージェント」、スカウト型新卒求人サービス「dodaキャンパス」を立ち上げ、2015年にはベネッセコーポレーションとともに、合弁企業「ベネッセi-キャリア」を創設。取締役として就活支援事業全般を管掌。2023年4月より、パーソルキャリア人事本部 本部長に就任し、ミッション推進を支える人事施策をけん引。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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