ボトムアップと、トップコミットメント。dentsu Japanとパーソルが語る“らしさ”を活かすDEI推進

パーソルグループは、DEI(Diversity, Equity & Inclusion:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取り組みを通じて一人ひとりが活躍できる組織・社会を目指しています。

今回対談したのは、日本最大級の総合広告会社グループであるdentsu Japanにおいて、2024年1月にチーフ・ダイバーシティ・オフィサー(CDO)に就任した口羽 敦子氏と、パーソルグループの執行役員CGDO(Chief Gender Diversity Officer)であり、ジェンダーダイバーシティ委員長の喜多 恭子です。

国内電通グループ(dentsu Japan)は、多様な個の能力解放とその掛け合わせによって、新たな価値を生み出し続けるために、約2万4,000人の社員の「全員活躍」を合言葉に、ボトムアップ型でDEIを推進。本対談では、それぞれの企業文化や事業特性に根ざしたDEI推進のあり方と、その先に描く未来について語りました。

口羽 敦子氏
dentsu Japan エグゼクティブ・マネジメント チーフ・ダイバーシティ・オフィサー/電通そらり 取締役

タイの国立大学を卒業し、タイでキャリアをスタート。その後、電通へキャリア入社。以降、主にマーケティング部門で、国内外での事業開発やマーケティングなど、あらゆる業界のプロジェクトをリード。日本広告業協会(JAAA)DE&I委員会委員長も務める。

喜多 恭子
パーソルキャリア 取締役副社長 執行役員 兼 パーソルホールディングス 執行役員 CGDO パーソルグループ・ジェンダーダイバーシティ委員会 委員長
1999年、パーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)入社。派遣・アウトソーシング事業、人材紹介事業などを経てアルバイト求人情報サービス「an」の事業部長に。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年に執行役員・転職メディア事業部 事業部長。2022年4月より人事本部長。2023年4月よりdoda事業本部長に就任。2025年4月にパーソルキャリア 取締役副社長 執行役員 兼 パーソルホールディングス執行役員 CGDO(Cheif Gender Diversity Officer)に就任。

目次

原体験からDEIの道へ。

喜多:口羽さんは、2024年1月1日付でチーフ・ダイバーシティ・オフィサー(CDO)に就任されました。これまでどのようなキャリアを歩み、CDOに就任されたのでしょうか。

口羽氏:私は、電通タイ拠点の現地社員としてキャリアをスタートしました。その後、日本の電通に入社し、マーケティング領域で経験を積んできました。そして2024年、長年取り組みたいと考えていた障害者雇用の促進に挑戦するべく、特例子会社である株式会社電通そらりへの出向に自ら手を挙げ、同社の取締役に就任。同時に、dentsu JapanのCDOにも任命されました。

喜多:「障害者雇用に長年取り組みたいと考えていた」というのは、何か原体験があったのでしょうか。

口羽氏:小学生のころ、仲の良かった友人がダウン症のある子でした。一緒に過ごす中で、彼が見せる予想外の発想や行動が私にはとても魅力的に映ったんです。その経験を通じて、「違い」は制約ではなく、価値になり得るものだと自然に感じていたのだと思います。dentsuが持つアイデアやテクノロジーの力を活かせば、今ある社会の固定観念を覆し、多様な人が共創できる環境をつくれるのではないか。そう考えたことが就任の原点にあります。

口羽氏:喜多さんは2025年4月に、CGDOに就任されましたよね。就任までに、どのような経緯があったのでしょうか。

喜多:私はパーソルキャリアに入社後、中途採用、派遣、アルバイト・パート領域など、幅広い人材事業に携わってきました。そのなかで一貫して実感してきたのは、多様な人材が交わることで生まれるコラボレーションの可能性です。2021年にジェンダーダイバーシティ委員会が立ち上がった際に委員長就任を引き受け、2025年4月にCGDOに就任しました。
実はパーソルグループがDEI、特に女性活躍に本格的に取り組むのは今回が初めてではありません。過去にも機運が高まった時期はありましたが、十分に成果を出し切れず、取り組みが継続しなかった経験もあるのです。

口羽氏:そうした背景があるなかで、委員長就任を引き受けた理由はなんだったのでしょうか。

喜多:大きかったのは、トップの明確なコミットメントですね。2021年に代表取締役社長に和田(孝雄)が就任し、経営として本気で取り組む姿勢が示されました。パーソルグループは「はたらいて、笑おう。」を掲げ、多様な人が活躍できる社会を目指す企業である以上、まずは自社が体現しなければ説得力はありません。その覚悟が経営から示されたことで私自身も覚悟を決め、引き受けようと決めました。

口羽氏:dentsu Japanも、DEIのキーワードは「全員活躍」です。パーソルと同様に、人こそが唯一にして最大の資産。専門性とユニークネスを持つ多様なプロフェッショナルが掛け合わさることで、複雑化するクライアントや社会の課題に対して新しい価値を生み出せる。逆に言えば、一人ひとりが持つ能力を十分に発揮できていない状態は組織にとって大きなリスクであり、成長機会を自ら手放していることにもなります。2022年にCDOという役職が新設され、従業員一人ひとりが互いの違いを尊重し合える風土醸成を進めてきました。

経営が責任を持つ。数値で進めるパーソルのDEI推進

口羽氏:パーソルは、具体的にどのようにDEIを推進されているのでしょうか。

喜多:大きく3つの柱を掲げています。1つ目が「トップのコミットメント」、2つ目が「制度・環境の整備」、3つ目が「風土構築」です。

口羽氏:人材に向き合う事業を主軸とされているからこそ、DEIの推進や浸透は比較的スムーズだったのでは、と想像します。

喜多:たしかに事業柄、人的資本に対する感度は高い組織だと思います。ダイバーシティやインクルージョンという言葉が浸透する以前から、それらを内包する施策は行ってきましたが、想像以上に伸びしろがあったのです。
たとえば、パーソルグループの新卒入社時の男女比は平均しておおよそ5:5ですが、管理職層になると2:8あるいは3:7という構成になっていました。知らず知らずのうちに、なんらかの女性の昇進に影響する要因があるかもしれないと気づいたのです。

喜多:まずは、「私たちはできている」という前提を今一度見直し、「見えていない側面もある」「より良くできるはずだ」という意識改革が必要でした。そこで着手したのが、風土構築です。多様性への正しい理解と受容、アンコンシャスバイアスの自覚と対処を習慣化するため、当時の国内グループ約2万人以上を対象にeラーニングによるリテラシー研修を実施。さらに、全マネジメント層向けのDEIマネジメント研修も行っています。理解しているつもりから、構造的に変える段階へ進むための基盤づくりをしてきました。

口羽氏:人材ビジネスであるからこそ、「できている」という前提があったという点は示唆に富んでいますね。

喜多:そして、先ほどもお伝えした「トップのコミットメント」に、何よりも重きをおきました。DEIのKPIを経営戦略に組み込み、DEIのKPIとしては、女性管理職比率と男性育児休業等取得率の2項目を設定しています。女性管理職比率はパーソルグループの総合職男女比率である37%を目標とし、2024年度実績では27.6%。最新の数字では28.3%まで上昇しました(2025年度上期実績)。男性育休取得率(1日以上)は2026年までに100%を目標とし、2024年度実績は84.3%です。

口羽氏:これまでのレポートも拝見しており、数値の伸び率が非常に大きいですよね。

喜多:ありがとうございます。先行指標を設け、KPIを設計し、評価制度にも組み込む。構造を変えなければ、変革は起きません。
最近では、女性管理職比率が40%に迫るグループ会社も出てきました。そこでは単に比率が上がったことに留まらず、意思決定の質が変わるという変化が起きています。これまでの“暗黙の了解”に対して率直な疑問や意見が自然にあがってくる。数値が変わることで会議の運び方や議論の質を変え、企業経営にも活きていることを実感しています。

意識変容から組織を動かす。dentsu Japanのボトムアップ型DEI

喜多:ぜひ、御社の進め方についても教えてください。

口羽氏:私たちは、dentsu JapanのDEI推進をリードする専門組織「DEIオフィス」を設置し、グループ横断で取り組みを進めています。ジェンダー関連のKPIはパーソルと同様、女性管理職比率と男性育休取得率項目です。2030年までに女性リーダー比率35%(米国を除くグループ全体)、男性育休取得率100%(国内事業グループ全体)を目標としています。電通における男性従業員の育休取得率は2024年度で103.1%、平均取得日数は67.1日です。

口羽氏:数値目標を掲げているものの、dentsu Japanはクリエイティビティを競争力の源泉とする組織だからこそ、「ボトムアップ型」の取り組みに重きを置いています。もちろんKPIは重要です。ただ、日々の現場ではたらく一人ひとりにとって、管理職比率や男性育休取得率の数字そのものは必ずしも実感を伴うものではありません。それよりも大切にしているのは、アンコンシャスバイアスを含め、自分の言動や態度が誰かの挑戦を無意識に止めていないかを考えること。個人の意識から変えることを重要視しています。

喜多:女性従業員を対象としたリーダーシップ育成プログラムなど、さまざまな取り組みがあるなかで、特に「DEIパーク」という取り組みに注力されていると伺いました。どのような取り組みなのか気になります。

口羽氏:DEIパークは、ボトムアップの取り組み創出を加速させる「アクション創出プラットフォーム」です。各グループ会社から選抜されたDEIリーダーが集まり、約1年をかけて座学と対話を重ねます。まずは「自組織のDEI課題は何か」を特定するところから始め、知識を学び、横のつながりを築きながら、組織ごとに必要なアクションを設計、実践まで行います。

口羽氏:2021年の開始以来、2025年時点で約1,600名のDEIリーダーが参加し、2025年度はグループ各社でのべ27,827人の社員がDEIアクションに参加しました。「自分ごと化」から始めることで、各組織の課題に即した取り組みが自走していく設計になっています。

喜多:DEIリーダーの参加対象者に制約はあるのでしょうか。

口羽氏:幹部層、ミドルマネジメント層と段階的に変えてきました。ボトムアップを重視していても、マネジメント層の理解と共通言語がなければ変革は進みません。現場から「マネジメントとの意識の隔たりがある」という声も上がったことから、組織を動かすレイヤーを巻き込み、意識変容を促しています。

喜多:これまでに、DEIパークなどのボトムアップから生まれた印象的だった取り組みはありますか?

口羽氏:たくさんありますね。印象的だったのは、あるクリエイティブ部門で、「ミライGM(ゼネラルマネージャー)制度」が誕生したことです。「女性管理職をスピーディに増やしたい」という課題を受けて、既存のGMのサブポジションとしてミライGMを設置したのです。現GMとは異なる年齢層・ジェンダーの人材を任命する仕組みとし、結果として意思決定の場に年齢・ジェンダーの多様性が生まれました。さらに、ミライGMがメンバーとの1on1を担うことで、従来のGMには届かなかった声が上がるようになったそうです。一方でGM側は業務量の調整が可能になり、次世代候補の力量やポテンシャルを見極めることができます。

ミライGM(MGM)導入後の管理職一覧
MGM会議の様子

喜多:組織・個人双方にとって価値のある設計になっているんですね。素晴らしいです。

口羽氏:さらにDEIパークの座学では、外部有識者ではなく、dentsu Japanの社員が講師になります。特に反響が大きいのが、社内でカミングアウトしたLGBTQ+当事者の社員と、その当時の上司が登壇し、性別移行のプロセスや当時の葛藤を語る回です。語ってくれる当事者の心理的安全性に最大限配慮したうえで登壇してもらい、上司も「当初は知識もなく戸惑いもあったが、本人の意思を最大限尊重しながら伴走した」というリアリティある話をしてくれるんです。そんな彼らのやり取りを通して、最後に「あなたならどうしますか」と問いかける。そこで生まれる対話は「もし自分だったら」と当事者意識を芽生えさせ、有意義な時間になっていますね。

喜多:非常に示唆的ですね。御社の取り組みは組織の内側から力を生み出していると感じます。

各社らしさを活かすDEI。その先に見据える未来

喜多:今回の対談を通じて、各社の事業特性や社員の特徴に合わせた推進スタイルがあることを感じました。御社は、どうすればDEIを自分ごととして昇華できるかを、ボトムアップのビジョン思考で考えていらっしゃる印象です。

口羽氏:そうですね。私がCDOに就いてからずっと考えているのは、「dentsu Japanの人の強みを一番活かすやり方は何か」ということです。当社グループには、各現場に百戦錬磨のクリエイターやプランナーがたくさんおり、アイデアを生み出す力とそれをやり遂げる実行力が備わっています。であれば、私やDEIオフィスのメンバーだけで考えるより、現場の力を活かした方がより良いものが早く生まれるはずだと考えました。

口羽氏:一方で、パーソルグループはトップコミットメントのもと、数値を起点に推進している姿勢を尊敬します。

喜多:ありがとうございます。グループビジョン「はたらいて、笑おう。」も然り、「人がよりよく、幸せにはたらく」という思想がベースにあります。誰かが活躍できなかったり、公平でなかったりしたら、幸せにはたらけない。当社は、社会や人の“不”、つまり「できていないこと」や課題を見つけたら改善したくなるカルチャーが強いです。特に数字の“不”は分かりやすいですよね。達成できていないのなら、そこを改善して到達したくなる。実際、数値ベースで語るようになってから、設計も運用も回り始めました。

口羽氏:素晴らしいです。私たちも、パーソルのようにビジネスとより強く結びつけながら前進させていきたいと考えています。ともするとDEIは、人事やカルチャーの話だと受け止められてしまうことも少なくありません。ですがそうではなく、ビジネスに直結することを常に示すようにしています。dentsu Japanのコンピテンシーは、今までにないアイデアを生み出し続けること。そのためには、自分にない視点を持つ人を貪欲に探し、視点をぶつけ合い、ジャンプしたアイデアを生むことが不可欠です。まだまだバイアスや従来型の価値観もあるので、そこを超えていきたいと考えています。

喜多:私は、自分の役割をできるだけ早くなくすことが目標だと言い続けています。ジェンダーダイバーシティを特別なテーマにしたくないのです。なぜなら、ジェンダーだけでなく、年齢や世代、障害の有無、さらには目に見えない違いまで含めた、より本質的なコラボレーションへ進んでいきたいからです。私たちが掲げる“はたらくWell-being”の世界観に一日でも早く近づきたいと思っています。

口羽氏:素敵です。今日はお話でき、とても刺激になりました。

喜多:こちらこそ大変学びになりました。ぜひまた、お話させてください。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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