パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第3回目は、パーソルクロステクノロジー株式会社の大内 隆志です。
大内は20年近く、自動車の開発・試験に関わってきました。そんなベテランにとってもかなり困難な、短期間で通常よりも数多くの試験を完了させなければならないプロジェクトで、大内は初めてのリーダーを任されます。そこで大内が立ち上げたのは、経験の浅い新人を多く抜粋した新チーム。それはお客さまにとってはもちろん、パーソルクロステクノロジーの未来をつくるチャレンジでもあったのです。
窮地にお客さまが頼ってくれた。その想いに結果で応えたい。
2023年に新型車が発売されたクライアントである自動車メーカーの人気シリーズ。その発売を支えたのが、パーソルクロステクノロジーの大内が率いるチームでした。パーソルクロステクノロジーは、自動車・航空宇宙・産業機器・家電・ロボットなどの設計・開発・実験における請負、ITなどの技術領域における研究開発、そのほかにも、エンジニアに特化した派遣、若手未経験エンジニア層の育成支援といったさまざまなソリューションを展開しています。その中で、自動運転やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems/先進運転支援システム)機能を備えた車両の各種試験業務を受託し遂行するのが大内のチーム。
新型車には、従来の機能に加えて、メーカー初となる交差点内の右左折に対応した自動ブレーキも搭載されています。その追加機能も含め、厳格なガイドラインに則ってあらゆる角度から安全性を試験し、国土交通省に過程と結果を認められなければ、新型車の発売は実現しませんでした。
「通常の直進での自動ブレーキでも6カ月ほどかけて約5,000回の試験を行います。それに加えて今回は交差点内での自動ブレーキ試験を約3,000回行うことが求められました。合計8,000回超と、通常の1.6倍です。ですが、部品の納入都合により、許された試験期間は従来と同じ6カ月間でした。当然ですが試験の遅れが原因で、発表されている発売時期を変えることはできません。概要を知った瞬間、とても難しいプロジェクトだと感じました」
大内はこれまでのキャリアで、さまざまな自動車の性能試験を請け負ってきた豊富な経験を持っています。だからこそ、期間の短さによって生じるさまざまな困難はすぐにイメージがつきます。それゆえに、メーカーの担当者がとても困っているということも容易に想像できたのです。「パーソルクロステクノロジーの力を貸してほしい」という気持ちに応えよう、と大内は決意します。
「自動車開発の最後の砦が、安全性の試験です。そこまでたくさんの人が開発に関わり、発売に向けて邁進してきた。そのバトンを受け取り、認証試験をクリアして、発売というゴールテープを切るのです。とても重責のある業務。その委託先として私たちを頼っていただけた。その気持ちに応えたかった。安全試験は人の命に関わる試験。項目が多いことはもちろん、条件も厳しいものばかり。時間がない中での失敗は致命的ですから、急ぎつつも国土交通省が納得するクオリティとなるよう、チームで力を合わせて進めました」
新車の発売には、そのメーカーの社運もかかっています。人気車種ならなおさら。結果、大内のチームは無事に試験を終了し、予定通りに発売の日を迎えることができました。安全評価機関からの最高評価を獲得し、メーカーからも感謝の言葉をいただくことができたのです。「街で担当した自動車が走っているのを見るとうれしくなるとともに、達成感も感じる」と笑いながら話す大内。
そんな大内ですが、実は高校時代までは自動車にまったく興味がなかったのだと言います。
試行錯誤することで変化が生まれ、完成が近づく。その面白さの虜に
大内に自動車の魅力を教えてくれたのは、高校時代の授業で出会った未完成のソーラーカー。一人乗りのカートほどの小さな車を完成に近づける、というのが授業の内容でした。
「歴代の先輩たちが、少しずつつくってきた車でした。すでに人が乗って動く状態にはなっていましたが、完成にはほど遠い状態。そして自分たちの代では完成できず、未来の後輩たちに残りの開発を託す。そうやって受け継がれていき、果たして完成するのはいつか分からない。そんなソーラーカーでした」
その授業を選択した同級生は15名ほど。実はその誰もが、さらに担当の教師さえも、自動車には詳しくなかったんです、と苦笑いする大内。
「私たちの代が担当したのは、外装と電気系統。誰も自動車に詳しくなかったので、みんなで毎回、ああでもないこうでもないと、試行錯誤しながら作業しました。それでも1年間の授業を通して、ソーラーカーは少しですが完成形に近づいていて。その過程と変化、何よりチームで取り組む時間が面白かった。たくさんの人が関わり、一つのソーラーカーの完成を目指す。知恵を出し合って技術を活かし、みんなで同じゴールを目指す。そうして自分を含むチームも、受け継がれてきたプロジェクトの一部になっていくことに誇りを持てた。自動車業界の仕事もきっと同じような感じで面白いに違いないと考えるようになりました」
高校時代に「受け継がれたものを受け取り、完成させる」という瞬間には立ち会えませんでしたが、卒業後に自動車業界に就職して認証試験の担当をするようになると、何度も「プロジェクトを引継ぎ、多くの人の想いの詰まった自動車を完成させる」という瞬間に立ち会うように。その楽しさや達成感を味わう中で、いつしか自動車が好きになっていたと大内は話します。
信頼し合えるチームがあれば、どんな困難なプロジェクトも乗り越えられる
2005年、高校を卒業して大内が就職したのはUDトラックス株式会社。その後、2013年にチームごとパーソルグループの株式会社DRDに転籍。2016年12月にDRDと同じくパーソルグループの株式会社日本テクシードが統合し、パーソルR&D株式会社が誕生。また2023年1月にはパーソルR&Dを含む4つの会社が合併し、現在のパーソルクロステクノロジーになりました。大内のチームもその所属となりました。
「大型トラックの騒音振動試験から始まり、自動ブレーキの開発実験や国の認証試験の請け負いなど、さまざまな車種の多様な開発・試験に関わり、そろそろ20年になります。すべて『自動車の開発・試験』と言えてしまう仕事ですが、車種や機能によってメカニズムは異なりますし、時代によって性能も違う。そのたびに必要な知識をチームで学び、技術を身につけて、お客さまの要望に応えてきました。常に好奇心が刺激され、学びが絶えない仕事だったのが、これまで続けられた大きな理由ですね。あともう一つ大きな理由は、ずっと同じチームで仕事ができたこと。会社名はいろいろと変わりましたが、チームごと異動・転籍しているんです。あうんの呼吸で仕事ができる。それが楽しくて続けてこれました」
キャリアを重ねる中で、気が付けば大内もベテランと呼ばれるような多彩な経験を積み、年齢を重ねていました。そこで、面白く楽しい仕事を今後もずっと続けられるように、そしてパーソルクロステクノロジーの仕事がずっと続くように、大内はある挑戦への覚悟を決めたのです。
「リーダーを引き受けました。長いキャリアの中で初めてです。そこでリーダーとして、自分が感じているこの仕事の魅力と面白さ、そしてやりがいと責任の重さを、同じように若いメンバーたちにも感じてほしいと考えたのです」
完成しないからこそ、いつまでも成長できる楽しさを味わえる
新しい技術を扱い、通常よりも多くの試験を限られた時間の中で確実に行わねばならない、というただでさえ難しいプロジェクト。そのリーダーを任されるだけでも大きな責任が肩にのしかかります。大内はそのプロジェクトのメンバーに、あえて新人を多く配置しました。
「圧倒的に困難なプロジェクトです。でも、言い換えればなかなか経験できない貴重なプロジェクトでもある。そんなプロジェクトには、成長できるチャンスがたくさんある。まずは試験をしっかりと遂行できるよう、通常2チームの編成を、3チームに増強しました。その各チームに新人を配し、さらに教育係としてベテランもアサインしました。チームを増やすことで、試験を担当しなくてもよい時間が増えます。そこをベテランが新人を教育する時間としたのです」
大内がもっとも力を入れて構築しようとしたのは、コミュニケーションの取りやすい関係性。新人が疑問や不安材料があれば、すぐに相談できるような風通しの良さを目指しました。そのために大内を筆頭にベテランたちは、新人の仕事をしっかりと見て、声をかけて確認するよう努めました。
「教えるところはしっかり教える。サポートもしっかりする。困っていることはないか、細かく尋ねる。できたことへのフィードバックはしっかりと返す。業務中はもちろん、食事の時間などにもコミュニケーションをとることを心がけました。そうする中で、新人たちが『相談しやすい』『はたらきやすい』はもちろん『できるようになっている』『信頼され、仕事を任されている』と感じてほしかった」
安心でき、やりがいを実感できる環境の中で仕事ができれば、開発・試験の仕事の困難な部分ではなく、面白く興味深いところに目が向くと大内は考えたのです。
「認証試験は、厳格に条件が決まっており、スケジュールもタイト。そして『新製品の発売を実現する』という重責を担う仕事。でも、見方を変えれば、いろんな自動車に乗れるし、試験をクリアするというゲーム性の高い業務。自動車の仕組みも分かります。そしてちゃんと試験が終われば、お客さまからとても感謝していただける。さらには自動車業界の安全性にも貢献することになる。ほかにはないやりがいがたくさんある。それに気付いてほしかった」
その言葉通り、大内のチームは総テスト数8,170回を完遂し、国の評価でも最高水準を獲得。お客さまからも、感謝の言葉を贈られたのです。
「プロジェクトは想像以上に大変でした。でも新人の誰かが毎日『仕事、面白いです』と笑って話してくれた。自分が感じているこの仕事の魅力が伝わったかな、と思うとすごくうれしかった。そして、未来を担う新しいチームができたのもうれしいですね。このチームと、今後もいろいろな認証試験を手がけていきたい」
自動車業界の技術や知識は日進月歩で進化する。だから決して完成する仕事ではない。でも、常に学び研鑽する、この仕事の面白さはしっかり新人たちに伝えられた。安心してバトンは渡せるかな、と大内は話します。
「でも新人たちに完全にバトンを渡すのは先の話。いつまでも未完成のこの仕事を、もっともっと楽しみたいんです」
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。