高校生の自己決定を支援。パーソルと地域・教育魅力化プラットフォームが描く未来

パーソルホールディングス株式会社は、2023年4月から一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム(以下、CPF)が運営する“地域みらい留学”を中心とした高校魅力化の一連の活動に対し、ビジョンパートナーとして支援しています。
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パーソルグループは“はたらくWell-being”創造カンパニーとして、仕事を通じた幸福を感じられる社会の実現を目指す上で、自分で自分の「はたらく」を選択し、そこから喜びや幸せを感じてもらうことが重要であると考えています。そのためには、「将来世代(30年後の世界で主役となるミレニアル世代やZ世代、α世代など)」の若者たちが未来を見据えて、自らの想いや意志をもって自分の未来を選択していくことが重要となります。そこで、将来世代が自分自身で生き方や進路を選べる土台をつくるために、双方の強みを活かし「意志を持って自分が踏み出す一歩を自分で選択する人材を育成する」という目的に向け、協業をスタートさせました。

本記事では、協業の本格始動に向けた取り組みとして、パーソルホールディングス 代表取締役社長 CEOの和田 孝雄が、高校魅力化の先進事例である隠岐島前高等学校などを訪問した様子と、この協業への期待や意気込みについて、CPFの理事・会長である水谷 智之氏と代表理事である岩本 悠氏を交えた鼎談をご紹介します。

高校魅力化の現場を訪問、そこで聞いたサポーターや高校生の声とは……?

島根県松江市にある七類港から船に揺られること3時間、到着したのは後鳥羽上皇の流刑地で有名な隠岐郡に属する中ノ島の菱浦港。ここは島全体が海士町(あまちょう)と呼ばれる一つの自治体。過疎化が進む状況の中にあって、島外からの移住者の誘致や関係人口の拡大に成功していることで日本全国から注目を集めています。

目次

地域みらい留学の実態を探る

地域みらい留学とは、都道府県の枠を越えて他県の学校に入学し、育った地域とは異なる刺激や学びを得ることを目的とした取り組みです。隠岐島前高校はこの先進校で、なんと生徒の半分は島外からの高校生となります。

また、隠岐島前高校のすぐ近くに、高校と連携した公立塾である隠岐國学習センターがあり、「グローカル人材の育成」という隠岐島前高校と共通の目標を掲げ、一人ひとりの進路選択の実現を支援しています。
ここで和田は、高校と自治体をつなぐ役割としてこの地域みらい留学を推進している高校魅力化コーディネーター(以下、コーディネーター)と呼ばれる職員との意見交換、そして実際に留学している生徒を含む高校生たちとの座談会の機会を得ました。

地域みらい留学を推進するコーディネーターに聞いた、生徒の主体性の育み方

今回お話を聞いたのは、新立 みずきさんと原 周右さん。隠岐島前高校には普通科だけではなく地域共創科があり、生徒自らが探究のテーマを設定し、フィールドワークなどを行います。コーディネーターはその探究を含め、高校生のキャリア選択をさまざまな側面からサポートしています。

ここでは生徒の自発性と、「自ら決めること」に重きが置かれており、和田もその点に注目した上で、どのようにして自主性を育んでいるのかについて質問。そのポイントの一つには、地域との関わり方があるとのこと。生徒たちは地域の人にどう貢献できるのか、住人にどうしたら喜んでもらえるのか、という観点で探究のテーマを設定します。その解を見つけるためのヒントを地域の人たちから得るのです。その取り組みに対して地域の人たちも積極的に支援しようとする循環ができています。それらの活動・取り組みを通して生徒の自主性が育まれているのでは、とのことでした。

島外からの「留学生」が語る、隠岐島前高校を選んだ理由

和田との座談会に参加してくれたのは、海士町で育った2名の高校生と、兵庫県から留学生として海士町にやってきた増田 光花さん(3年生)の3名。増田さんは小学4年生のときに、テレビで地域みらい留学が紹介されていたことをきっかけに隠岐島前高校への進学を決意。高校1年生の入学時から隠岐島前高校に通っています。自分でやりたいことを実践できる、という文化に惹かれて留学し、やりたいと思った企画を次々に実現。将来のやりたいことも既に具体的に思い描いており、「隠岐島前高校にきたからこそチャレンジができ、見つけられた」とのこと。そんな自分の意志で進路ややりたいことをすでに決めている増田さんに対して、和田も感心している様子でした。

そんな増田さんから和田に質問が。「好きなことを仕事にした方がいいのか。それとも仕事は仕事と思って、それとは別に好きなことをした方がいいのか」という問いに対して、和田は「人生の時間の半分以上は仕事に携わる時間になる。だからこそ、好きなことを仕事にできることはとても幸せなこと。ただ、そうではない仕事であったとしても、その中からやりがいを見いだせればそれは十分その後の人生にプラスになる」とメッセージを送りました。

その後、留学生が生活する寮も見学。実際に暮らす生徒が寮の自治のための仕組みや独自のルールを解説しながら、寮ツアーを実施してくれました。

地域・教育魅力化プラットフォームとパーソルが目指す未来

パーソルがCPFのビジョンパートナーになったのは、何が決め手だったのか。今後両社でどんなことを実現できるのか。CPFの理事である水谷氏岩本氏とともに、和田との鼎談を実施。それぞれの想いを聞きました。

──まず、今回の訪問から和田さんはどんなことを感じましたか?

和田:話には聞いていましたが、本当に高校生の皆さんが生き生きとしているのが何よりも印象的でした。自分で学ぶ環境を選択して、そこで前向きに「なんでもやってみよう」という心持ちでチャレンジしている姿にパワーを感じました。

水谷氏:実際に子どもたちの表情やエネルギーからそのように感じてもらったことは本当にうれしく思います。

右から、地域・教育魅力化プラットフォーム地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事の岩本氏、会長・理事の水谷氏、パーソルホールディングス 代表取締役社長 CEOの和田。Entôジオラウンジにて

──水谷さんにお聞きします。今回パーソルにビジョンパートナーを打診いただいたのはどんなことがきっかけだったのでしょうか?

水谷氏:まず、大きなポイントとしては、どんな企業に我々の取り組みを応援してもらいたいか、というところから考えて、そこで浮かんだのは人材サービス業界でした。私も人材業界出身なので良く分かるのですが、この業界の方々は人を良く見ているし、人の価値がさまざまな視点で語られるべきであることを良く分かっている。そこで、人が持つエネルギーの大切さを実感していることが大事だと考えました。
その上でなぜパーソルさんなのか、それはグループビジョンに掲げている「はたらいて、笑おう。」に共感したからです。私自身、仕事を通じてワクワクしながら喜びを感じ、それが笑顔につながることを実感しています。これはCPFでも大事にしたい想いであり、本質的な思想が共通していると思ったので、ぜひパーソルさんとご一緒したいと思いました。

和田:ありがとうございます。「はたらいて、笑おう。」なので、これまでは私たちのサービスは仕事をしている人たちを対象にしてきました。ただ、中学生や高校生たちもいずれ社会に出ていきます。学生時代にどれだけの選択肢を得られるかどうかは、その後の人生にも大きく影響します。大人たちが早いうちから高校生の皆さんに、選択することの価値や意義を実感する機会を提供することで、彼らが「自分で決める」ことの重要性を肌で感じてくれると思います。自ら探究することで選択肢が増え、自分自身のキャリアのオーナーシップを持つことで、人生の推進力を得られるようになる。これは本当に意義深いことだと思いました。そういった人材が育つことで、ゆくゆくは企業の活力となり、ひいては日本の活力となっていくはずです。

特にCPFの取り組みは、全国の約100校もの高校と提携し、そこに全国の高校生が居住地を越えて新しいチャレンジをしている。より多くの高校生たちの背中を押してあげることで、私たちの目指す「はたらいて、笑おう。」の種をまくことができると思い、ビジョンパートナーとして支援することを決めました。

岩本氏:我々としても、地域の高校生たちに「こんなにかっこいい大人たちが、こんなにかっこ良く社会で活躍しているんだよ」という事例を見せてあげたいとも思っています。パーソルさんにビジョンパートナーを担っていただいたことで、パーソルの社員の皆さんを含めた「意志を持ってはたらいて笑っている大人たち」との接点が生まれることもとても楽しみだと思っています。

──CPFとパーソル、これからどんなことに取り組んでいけそうでしょうか?

和田:今回高校生の皆さんと直接会話させてもらって思いましたが、パーソルの社員にも私と同様の機会をつくりたいですね。これは双方にとって刺激になると思っています。たとえば、パーソルのキャリアアドバイザー職の社員との接点を持った場合、高校生の皆さんに対しては、将来の職業選択や自分がやりたいことについて考えるヒントを提供できると思います。一方でキャリアアドバイザーにとっては、まっさらな職業観の高校生と一からキャリアについて向き合うことは、一緒にキャリアをつくっていくことにもなるので大きなやりがいになると思います。あくまで一つのケースですが、パーソルが持つ強みを活かして高校生の皆さんにお役に立てることはいろいろあるはずです。

岩本氏:これは本当に大事なポイントだと思います。地域の高校生たちにとって身近な「はたらく大人」は、両親や教師など限られた職種になる傾向にあります。職種だけではなくはたらく多様性を知り、さまざまな形で“はたらく”を楽しんでいる大人と接することで、自分自身に選択肢があることを知り、可能性が広がることを感じてほしいですね。

水谷氏:今回和田さんに訪問いただいたこともまさにそれですよね。素敵な大人たちが自分たちに会いに来てくれて、今まで聞いたことないような話を聞いて、夢を広げることができたと思います。

和田:子どもたちが普段見ているはたらく人の背中といえば、家族など身近な人。親が仕事から帰ってきてどんな姿を見せるのか。愚痴ばっかり言ってしまっているのか、それとも、帰宅してからも、楽しく仕事を振り返っているのか。身近な人の価値観でキャリアを決めてしまう子どもたちも少なからずいるでしょうし、それだけではない世界があるということを見せたいと思います。SNSでもキャリア観はよく発信されていますが、それだけではきっと得られない体験になるとも思います。

水谷氏:おっしゃる通りですね。子どもたちは大人の真意を見抜きますし、だからこそ仕事を楽しむ本物の大人と直接対話する機会を経た子どもたちが飛躍的に成長していきます。それだけ子どもたちには影響力があるとういことです。

──改めて、今後の展望を聞かせてください。

岩本氏:自分の学びは自分で決める社会を実現し、パーソルさんと一緒に高校生たちのキャリアをつくっていきたいです。まだ社会に出る前の彼らに、可能性を広げる機会をつくっていきたいと思います。

水谷氏:これは高校生だけではなく大人にとっても同じなのですが、一人ひとりが心にエンジンを持っていることを忘れてはいけないですよね。言われたことを言われたとおりに動いてくれる人を望む社会ではなく、自分で決めて自分で踏み出すことができる、そんな人たちで溢れる社会をつくっていきたいと思います。

和田:子どもたちが“失敗”という言葉にとらわれないようにしたいですね。「失敗したら怒られる」「大人の言うとおりにしなくては」という呪縛から解放して、「チャレンジしていく」というパワーを全力で後押しできるようにしていきたいです。高校生の皆さんが、なんの疑問も持たずにチャレンジするのが当たり前だと思える社会を、そして自分の「はたらく」は自分で決める社会を一緒につくっていきましょう!

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