パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2022年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第10回目は、株式会社パーソル総合研究所の小室 銘子です。
アワードを受賞した「証券会社における全社員のキャリア自律意識醸成プロジェクト」は、小室自身にとってこれまでとは異なるキャリアを踏み出すきっかけとなったものでした。しかし、それは新しいことへの挑戦と言うよりも、自身のキャリアを振り返った時に、不思議な縁を感じる思い入れの強いプロジェクトになったそうです。
専業主婦だったころに感じた想いが、今も自分を支えている
大学卒業後、証券会社に就職するも1年半後に退職し、2年半ほど専業主婦をしていた小室。仕事に就いていなかったこの時期が、自身の生涯にわたるキャリアを決定づける重要な『トランジション(転機)』だったと言います。
「まだ若かったこともあるのでしょうけれど、専業主婦の自分は自身で稼ぐことができないから価値がない、って勝手に思い込んでしまったんです。そこで悶々としている中で、社会との接点を持てるからこそ『はたらくことが好き』なんだと気付き、その時の意識は今の自分にかなり影響しているのではないかと思います。はたらける環境があることに感謝しているので、仕事でどんなに辛いことがあっても耐えられる。その想いは変わりませんし、お客さまからお金をいただくのですから、その代わりに自分はどんな価値を提供できるのかということは、いつも意識しています」
小室が再就職した先は、紙の卸を行う中小企業。この会社での経験が、現在の業務につながる大きな糧になったと実感しているそうです。
「まったく経験がないのに経営企画室に配属されたんです。会社の中期経営計画や人事制度づくりに携わったのですが、中小企業だったからこそ、そういった会社経営の根幹に関わる重要な仕事も幅広くやらせていただけたと思うんです。そこで得た知識と経験は、営業を担当していたころには、あまり必要としないものでしたが、企業研修を担当するようになった今、すごくありがたい経験をさせていただいたと感じています」
人材ビジネスへの挑戦が新たな扉を開いた
新たな経験と知識を得たことで、小室の仕事に対する情熱は高まるばかり。これからさらに成長していく業界に身を置きたいと考え、転職した先が名古屋の人材派遣会社でした。この会社はまだ成長段階であったこともあり、派遣スタッフの募集広告から広告宣伝、コーディネーター、教育部門の営業など、社内のほぼすべての仕事を経験。その後、会社がテンプスタッフと経営統合したことで、小室はその後のキャリアを左右する大きな転機を迎えたのです。
「統合前の人材派遣会社時代に担当していた企業研修の仕事がすごく好きで、自分なりに成果を挙げられたという自負もありました。合併が決まった時に私は何の仕事で貢献できるのか、今後どうしていこうかを考えていたのですが、当時のテンプスタッフには研修の専門会社のテンプスタッフ・ラーニングというグループ会社が東京にあって、すごく気になっていたんですね。そんな時に上司である役員から『小室さんは、この先どうしたいの?』と聞かれたんです。そこで企業研修の仕事をやりたい気持ちを伝えたところ、テンプスタッフ・ラーニングへの出向(その後転籍)が決まり、単身赴任で東京へ行くことになりました」
新たな土地、新たな職場ではたらくことを考えると不安になりそうなものですが、当時の小室は、東京ではたらけることへのワクワク感に、また新しいことにチャレンジできるかもしれないという期待感に胸を弾ませていたそうです。そんな小室の言葉からは、変化を恐れない強さとバイタリティが伝わってきます。
「失敗はたくさんしてきましたし、その直後は『何でこうなったんだろう?』と落ち込むことは多々あります。ただ、次に同じようなことがあった時にどう対処すればいいのかを、めちゃくちゃ考えるんです。そこで『こうしたらいいのかな』と自分の中で思い描けると落ち着くと言いますか……。あとは悩んだ時には内省ばかりせず、人に話すことも多いですね。夫からは特に厳しいフィードバックがくるんですけれど、たぶんほかの人なら遠慮して言ってくれないような意見を言ってもらえるので、その時はショックでも振り返ってみるとありがたいなと感じます」
“計画された偶然”がもたらした、新たな道
その後、小室が所属するテンプスタッフ・ラーニングがインテリジェンス(現パーソルキャリア)の一部門と合併してパーソル総合研究所が誕生。小室はラーニング事業本部に所属しながら、さまざまな研修の営業を担当してきましたが、ここでまた転機が訪れたのです。
「ある日、上司から『小室さんは、これから何やるの?』と聞かれたんです。あっ、私は営業をクビになるんだと勝手に思い込んでしまって(笑)。そこで苦し紛れに『キャリア開発支援かな』と答えたのですが、きっと心のどこかにその想いはあったのだと思うんです。と言うのも、私は大学院でキャリアデザイン学の修士を取っていますし、派遣会社時代にはキャリアコンサルタントの資格も取っているんです。一応、下地はあったんですね。でも、上司から将来について聞かれなければ自分から口にすることはなかったのかもしれません」
キャリア形成に関する理論に、『プランドハップンスタンス』(計画された偶然)というものがあります。この理論は、キャリアは予期せぬ偶然の出来事によって左右されるものが多い。だから、その偶発性をポジティブに捉え、キャリアアップにつなげようという考え方のことを言いますが、小室は自分のこれまでのキャリアもまさにこの理論に当てはまるものだと感じています。
「時には嫌だなと思う仕事もありますけど、将来何かの役に立つかもしれないと楽観的に考えて行動するタイプなので、そういう積み重ねが自分の意図せぬところで新しい仕事に結び付いたのかなと思うんです。捉え方次第なのかなとも思うんですが、『こんな仕事嫌だな』と思ってやるよりも『この仕事面白そう』と考えた方が自分もハッピーですし、周りにもその空気は伝わるはず。仕事をするなら、楽しいに越したことはないですよね」
どんな仕事も「楽しむ」のが小室のモットー。そんな小室の姿勢が周りの人にも影響を与えるのかもしれませんが、本人曰く「人を仕事に巻き込むのがうまい」そうです。それは本人の快活な性格だけではなく、「楽しむ」という仕事への向き合い方が周りに波及するのかもしれません。
プロジェクトを通じて感じた仕事の醍醐味
今回のアワード受賞となった「証券会社における全社員のキャリア自律意識醸成プロジェクト」。小室にとって、証券会社は社会人としての第一歩を踏み出した場所です。このプロジェクトは、約3,000名の証券会社の社員全員に、自らのキャリアを考えさせる機会を設けるというもの。クライアントからの仕様書には、全社員を「年代」と「グレード」で8つのグループに分け、グループの特性に合わせて打ち出すメッセージを変えたいとありました。大型案件の受注だったこともあり、普段のプロジェクト以上に強い想いを持って取り組んだ中、仕事の醍醐味を感じる場面があったそうです。
「すべての年代に対して研修を行うケースは稀なので、今後ほかの案件を実施する際に自分の知見を広げるものにもなりましたし、難課題に対してさまざまな提案を出すことで、すごく大きなチャレンジをさせていただけた仕事でもありました。その中で、一般職ではたらいてきた40代後半や50代の女性の方が、これまでの人事制度が変わってジョブ型になったことで『もっと上を目指していいんだ』とか『まだ自分にもできることがあるんだ』と意識が変わっていくのを目の当たりにしました。そういう場面に立ち会えた、実感できたことがとてもうれしかったですね」
仕事を通じて、お客さまに価値を提供する。それは小室が専業主婦から再就職を果たして以来、今も常に意識していることです。
「はたらく人が自分のスキルを広げていくことで、はたらく機会を得たり収入を増やしたり、自分の夢を叶えていくことのお手伝いをできるのが、私にとってパーソルグループではたらく意義であり、喜びになっています。それを実現できるからこそ、パーソルではたらき続けているとも思うんです」
パーソルのグループビジョンである「はたらいて、笑おう」。小室はそれを具現化している一人であることは間違いありません。しかし、そこで満足することなく、お客さまに価値を提供し続ける。笑顔の向こうに、その強い意思を感じさせてくれました。