パーソルグループでは、年1回、グループ内表彰「PERSOL Group Award」を実施しています。「PERSOL Group Award」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2021年度の「PERSOL Group Award」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。第二回目は、パーソルキャリア株式会社 伊藤 喬です。
一人ひとりの顧客と真摯に向き合うことを信条とする伊藤。その想いをより強くしたのは、およそ3年前に得た1人の経営者との出会いでした。
最後まで顧客と伴走したい想いがきっかけ
「会社とじゃなくて、伊藤さんと仕事がしたいんですよ」
顧客からそう声をかけてもらえるようになったのは、岐阜県のシステム販売会社の営業担当として、4~5年のキャリアを積んだころでした。
「当時、なんとなく花形のイメージがあったIT業界に飛び込んではみたものの、本当に苦労の連続で……。思うように成果を伸ばせず悩んだことも多かったですが、努力が少しずつ実を結び始めたことを実感させられるお言葉でしたね」
もともとシステムを売ること自体にこだわりがあったわけではないと語る伊藤。顧客との信頼関係が着々と育まれていることを実感し、新たなフィールドに目を向けるようになりました。
「一人ひとりのお客さまと向き合うという点では、システム販売の場合、受注が決定したあとはエンジニアにバトンタッチせざるを得ません。これが私としてはもどかしくて、最後まで自分が先頭に立ってお客さまとお付き合いできる仕事はないだろうかと考えるきっかけになりました」
伊藤が人材会社に着目したのは、そんな想いからでした。
営業としての難しさと醍醐味を噛みしめる日々
システム販売会社を辞し、伊藤はしばらく人材派遣会社でキャリアを積むことに。やがて人材業の中でもより多彩なサービスを経験したいと意欲をふくらませていきます。
「そんな中、パーソルキャリアが名古屋にエグゼクティブ部門を立ち上げることになり、旧知のキャリアアドバイザーの方からヘッドハンティング業務へ声をかけていただきました。これまでの経験を活かすチャンスだと直感し、このお誘いに乗ってみることにしたんです」
これが2017年のこと。所属はエグゼクティブ&ハイキャリア事業部で、企業に経営幹部としての業務を担える人材を紹介するのがメインの仕事です。
接する相手はこれまでとはまた違った層の人材ばかり。これを自己成長の糧としようと燃えていた伊藤ですが、現実は決して甘くはありません。とりわけ入社直後の1年間については、「ただただ、懸命にもがいていた時期です」と振り返ります。
「どうにか実績をつくらなければと、どこか営業本位で動いてしまっていたことで、空回りしていたのかもしれません。人材業の本質として、マッチング本位で考えなければ、やはり成約には至らないといことを思い知らされるばかりでした。苦しみ抜いた末、ようやく少し状況が好転してきたのは、人材を求める企業と納得のいくフィールドを求める個人、それぞれが本当に求めているものと向き合わなければならないという、ごく当たり前のことに気付いてからですね」
経営に関わる重要な人材をサポートするエグゼクティブ領域は、40~50代の方が中心で、その多くは自身のキャリアのゴールにふさわしい着地点を求めています。それだけに、非常にデリケートなやり取りが求められ、まさにそれがこの仕事の難しさであり、やり甲斐なのだと伊藤は語ります。
顧客から手渡された100枚超のアイデアメモ
営業本位に陥ってもいけなければ、ただ人を紹介すればいいとドライに割り切ってもいけない。本当の意味での顧客志向で企業に寄り添うとは、一体どういうことか?伊藤が身を持ってそれを体感したのは、ある経営者との出会いがきっかけでした。
「三重県で30年以上の歴史を誇る住宅メーカーの社長との出会いは、私のキャリアにおいて非常に重要なものでした。きっかけは3年ほど前に、『経営幹部候補がほしい』とお声がけいただいたのが始まりです。当時すでに70歳でありながら創業時のベンチャースピリットをもち続け、20代にも負けないほど常に目を輝かせて事業の展望を語る姿に衝撃を受けました。この時も、新たに物流不動産投資事業を始めたいとのことで、知見を持つ人材を探してほしいとご依頼いただきました」
しかし、物流不動産投資は伊藤の専門外。「正直、難しい案件だと感じました」と言う伊藤ですが、それでもどうにか力になりたいと考えたのは、ひたすら前向きに新規事業への想いを語る社長の姿に、心を打たれたからでした。
尽力の結果、3カ月後には社長が望む人材の支援が成立。これにより、顧客は晴れて物流不動産投資事業をスタートさせることができ、さらにはその後、3カ月の間に3人のマネジメントが実現。ご入社いただいた個人のお客さまにとっても新たなキャリアのスタートを切ることができました。
「支援の過程では、社長が具体的に事業をどう動かしていきたいのか、組織をどうしていきたいのか、つぶさにヒアリングを行ないました。そうするうちに自然と距離が縮まり、やがて社長のほうから『実はね、伊藤さん。物流不動産投資だけじゃなくて、ほかにもこんなことをやりたいんだ』と、手書きのアイデアメモを渡されるようになりました。最終的にそのメモは100枚以上に達し、アイデアマンぶりに驚かされたものです」
こういった経営パートナーとして相談をうけることがまさに、伊藤が目指していた顧客にとことん寄り添うビジネスパーソンの在り方でした。
「もう人材は御社に紹介できない」という言葉に込めた想い
ところが、風向きがおかしくなり始めたのは2020年の春ごろのことでした。
「長い社歴のある会社ですから、中には変革を好まない方もいらっしゃいます。そのため、私が支援した人材が新規事業を進めようとしても、思うように決裁が得られず、業務が停滞するようになりました。一方で、社長としては黎明期からの仲間である幹部陣を大切にしたい想いもある。悩ましい問題ではありましたが、そうこうしているうちに、支援した人材が退職してしまうという最悪の事態にまで発展し、私も社長も頭を抱えてしまいました」
新規事業を起こすためのスペシャリストを支援しても、経営側のボトルネックでそれが実現しないのであれば無意味。社長からは次の人材の紹介を求められましたが、これでは同じことの繰り返しになりかねません。
そこで伊藤はついに、「現状のままでは、もう人材を紹介することはできません」と、はっきりと社長に告げたのでした。
場合によっては縁の切れ目にもつながりかねない強いメッセージ。しかしこれも、顧客の今後を真摯に考えていればこその言葉です。
「その後、半年かけて何度も社長と対話を重ねたことで、経営体制の根本的な改善が実現したのは幸いでした。具体的には2人の副社長の退任が決まり、それに代わって営業部門やファイナンス領域を担当する副社長候補の人材を支援することになったのです」
半年の間、ひたすら親身に「社長が本当にやりたいことはなんですか」、「今のままでは社長のやりたいことが叶えられないじゃないんですか」と訴え続けたという伊藤。その結果、顧客は今、新たなフェーズに向けて進み始めています。
自分自身が頼られる存在になりたい
外部の立場でありながら、時に経営を左右する影響を持つのが、エグゼクティブ領域の人材支援にたずさわることの面白さ。今回の例は伊藤自身にとって、まさにそんなダイナミズムを実感するものでした。
「もちろん、いつもうまく事が進むとはかぎりませんし、いくら相手に寄り添ったところで、物別れに終わってしまうことだってあるでしょう。だからこそ、まだまだ日々勉強が必要だと感じていますし、もっと多くの経験を積まなければなりません」
パーソルキャリア入社からの4年間。その真摯な姿勢が育んだ縁は、枚挙にいとまがありません。
「ありがたいことに、中には『伊藤さんが紹介する人材だったら、書類を見るまでもありません。ぜひ会わせてください』と言ってくださる方もいます。これは本当に営業冥利に尽きるお言葉で、この仕事をやってきて良かったと、心から思える瞬間でもありますね」
そんな伊藤の今後の目標は、「伊藤に任せておけば大丈夫と言ってくださる顧客を、もっともっと増やすこと」です。
「究極を言えば、会社の看板より先に、私個人の名で頼っていただけるようになるのが理想です。その点、パーソルは他社ではありえないほど自由にやらせてもらえるので、その分、徹底してお客さまに寄り添うことができています。今の私にとって、これは本当に理想的な環境ですね」