パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第6回目はパーソルテンプスタッフ株式会社の堀口 道子です。
20代から30代にかけて、管理職の昇進試験を4度受けて合格できなかった堀口 道子がマネージャーに就いたのは2023年4月、43歳の時でした。
2003年に新卒でテンプスタッフ(現・パーソルテンプスタッフ)に入社して以来、営業一筋。現場で実績を積みながら、「マネージャーになるの、無理なのかな……」と半ば諦めかけていた堀口の前に道が拓けたのは、二人目の子どもが生まれ、育休から復帰したあとのこと。
堀口は「出産前は、『管理職になること』が目的化していました。管理職になって何がしたいという意志がなかったんです」と振り返ります。
出産や育休、時短勤務などを経験する中で、堀口にどんな変化があったのでしょうか?
「ボロボロ」になった就活で感じた驚き
堀口は1979年、北海道の小樽市で生まれました。小学校でソフトボール、中学校ではバレーボールに打ち込んだ反動で、高校では部活には入らず友人たちと遊んで過ごします。受験は「どこかは受かるでしょ」と甘く見てしまい、失敗。意識が変わったのは、東京に上京して寮に入った浪人時代でした。
「私が育った町は地元で進学・就職する人が多くて、たとえば東京の大学に行きたいと言うと『行けるわけないじゃん』と笑われてしまうようなところがありました。でも、東京では本気で一生懸命勉強している人がたくさんいて、私ももっと頑張っていいんだって思えたんです」
気持ちを入れ替えて1年間勉強に励み、都内の大学の商学部に合格。大学では消費者行動に焦点を当てたマーケティングのゼミで学びました。
堀口が就職した2003年は、大卒の就職内定率が55.1%にまで落ち込んだ就職氷河期のまっただ中。堀口も100社以上にエントリーシートを送り、1日4、5社の面接を受けても不採用が続き、自信を失って「ボロボロの状態」に陥ってしまいます。
それでもなんとか内定を得ようと幅広い職種の企業の採用試験を受ける過程で、新鮮な驚きをもたらしたのがテンプスタッフでした。
「とてもフランクな雰囲気で、いい意味で丸裸にされるような質問をしてくれたんです。苦しい就職活動中に、初めて自分の素直な考えを口にしてもいいんだなと思えて、すごく好感度が上がりました。それに、面接を待っている時にすれ違う社員さんがみんな挨拶をしてくれて、『人に興味がある会社なんだ』と感じましたね」
何よりも「人」に魅力を感じた堀口は、テンプスタッフに入社を決めました。
忘れられない出会いと言葉
2003年4月、新宿オフィスに配属。当時はまだ人材派遣ビジネスが世の中に浸透しておらず、堀口によると「派遣って何?」というレベルの認知度でした。そのため、1年目は新規開拓がミッションで、オフィスビルの最上階から1階までアポなしで名刺を渡しに行ったこともあると言います。
「そういう時代もありましたね(苦笑)。相手にされないことがほとんどで大変でしたが、先輩や上司が相談に乗ってくれたり、励ましてくれたり、ちゃんとフォローしてくれる環境だったので続けることができました」
営業には、受注した企業に派遣するスタッフの方を紹介する仕事もあります。1年目、忘れられないスタッフの方に出会いました。リストラにあい、「家族を守らなきゃいけないから」という切実な想いで登録してきた60代の男性です。「助けてあげたい」と思った堀口は、新規のクライアントにこの男性を紹介しましたが、話をまとめることができず。「スタッフさんの良さを伝えきれなかった」と泣きながら社内で先輩に報告したとき、こう言われました。
「そういう人を本当に助けたいなら、マインドも、スキルも、もっと強く高めるしかないよ」
胸に突き刺さったこの言葉を忘れず、堀口はクライアントを巡り、スタッフの方と向き合いました。
6年目、リーダーに昇格。マネージャーに次ぐ立場で、メンバーに気を配り、チームで決めたことを率先して実践することが求められます。とはいえ、やるべきことが明文化されているわけではないため、堀口は「最初のころは、なんとなくリーダーになってしまった」と後悔したと言います。
「リーダーの定義が私の中で曖昧だったこともあって、自分の仕事を優先してしまうことも少なくありませんでした。リーダーとしての立ち振る舞い方が分かっていなかったんです」
この迷走は、しばらく続きます。冒頭に記したように、その間に4度昇進試験を受けましたが、いずれも不合格でした。
仕事を続けるために始めたマネジメントの勉強
大きな転機となったのは、出産。2017年に生まれた第一子は内臓疾患を抱えており、完治するための手術を受ける2歳になるまで、発熱するたびに1週間程度の入院をする必要がありました。
営業は、クライアントとのアポ、派遣スタッフの方との同行など外出する機会が多いもの。当時はリモートワークの環境がまだ整っていなかったため、堀口は産休中、「仕事を辞めなきゃダメだろうな」と落ち込みました。それでも、「やっぱり仕事を続けたい!」という想いが湧き、はたらき方に制約がある中でどう貢献できるのかを真剣に考えます。
「自分の長い営業経験のノウハウをチームに伝えることで、営業部の数字を上げることができるんじゃないかと思いました。でも、きっとノウハウを渡すだけで成果を出すのは難しいと思い、メンバーに動いてもらうためにどうしたらいいのかを知るためにマネジメントの本を読んだり、いろいろとインプットするようになりました。それが思いのほか楽しかったんですよね」
産休を終えてリーダーとして復帰すると、「まずは成果を出そう」と9時から17時までの時短勤務の中で精一杯はたらきました。子どもの体調不良による急な休みも、当時のマネージャーから「ぜんぜん大丈夫、何かあったらすぐに代わるよ」と言われて、気持ちが楽になったと言います。
復帰から半年ほど経ち、ある程度の成果を出したところでマネージャーに「(育休中に学んだ)マネジメントって面白いと思ったんです」と伝えると、「それなら」と3人のチームを任されました。実際のマネジメントは、教科書通りにはいきません。メンバーの性格や仕事ぶりの違いに戸惑いながら、少しずつ手ごたえを得ていきました。
「私は時短勤務ですし、たとえば子どもが入院した時は看護が必要なので休みます。その影響でじっくりと1on1ができなくても、電話やメールでできるだけコンタクトを取るようにしていました。そうすることで心を開いてくれた気がします」
この姿勢が評価されたのでしょう。2019年に入ると、上司から「マネージャー試験を受けてみないか」とオファーがありました。ところが、ちょうど第一子の手術と重なり、辞退。その後すぐ第二子を妊娠して産休、育休に入り、二度目に復帰したのは2021年5月でした。
その際、マネージャーに「二人目も落ち着いたので、本気で試験にチャレンジしたい」と宣言。それからは、リーダーを務めながら「なぜ管理職を目指すのか」「管理職になって何がしたいのか」「管理職になって会社にどう貢献するのか」などについて、時間をかけて棚卸しました。
パーソルテンプスタッフの試験は、所属部署の面接、本部面接、人事面接が行われます。面接で伝えたのは、主に二つ。
「一つは、マネージャーになれば、営業として変化の激しい派遣ビジネスに20年携わってきた経験とノウハウをチームに伝え、さらに自らアップデートしていくことでもっと成長できるということです。もう一つは、第一子の手術や看護の際、上司やメンバーが手厚くサポートしてくれただけでなく、自宅で仕事ができるように特例でノートパソコンを支給してくれるなど、会社としても私のはたらきやすさを最大限考慮してくれました(当時はリモートワークの制度がなかった)。その感動や感謝の気持ちをもって今度は私がマネージャーとして、部下やメンバーのモチベーションを高めたいと話しました」
「罪悪感はゼロじゃない」けれど
5度目の挑戦にして、結果は合格。2023年4月よりマネージャーを務め、現在は6人の営業メンバーと1人のアシスタントを率いています。
前面に立ってクライアントや派遣スタッフの方と直接やり取りすることは少なくなった一方で、オフィスの方針を浸透させ、チーム全体を導くためにどうすべきか、試行錯誤が続きます。
個性が異なるメンバーに対応するために参考にしているのは、昇進試験を受けた当時の上司で、堀口より10歳若い女性管理職です。
「私にとって初めての女性の上司でした。私のほうがキャリアも長いし、やりづらいだろうなと思っていたのですが、すごくしっかりしていて、やり取りもフラットで、レスポンスも早い。いつも解決に結びつくための最短ルートを通っているようなコミュニケーションで、とても仕事がしやすい環境をつくってくれて、尊敬しているので、意識して取り入れています」
パーソルホールディングスが実施している、グループ横断の新任マネージャー研修も役に立っているそう。
「同じパーソルグループでも、ぜんぜん違う雰囲気やコミュニケーションの仕方があるので、刺激を受けています。研修で一緒のグループになった人と、『メンバーにこういうことを言われた時、どうしていますか?』というテーマで話し合ったりするのも学びになりますね」
堀口は今も、9時半から16時半までの勤務を基本としながらマネージャーをしています。コロナ禍を機に、リモートワークとフレックス制度が整ったことで、二人の子育てをしながらの管理職も「思ったより大丈夫でした」と笑顔を見せます。
もちろん、子どもの事情で決まっていた仕事の予定を変えざるを得ないこともあり、「罪悪感はゼロじゃない」と明かします。しかし、入社から20年以上たった今も、就職活動時に背中を押した「人に興味がある会社」であることが、支えになっています。
「周りの人のことをよく見ている会社なので、メンバーや上司に関わらず、何かあった時には、『これやっておきましょうか?』『明日で大丈夫だから』と、いろいろ人が声をかけてくれる環境なんです。だからこそ、迷惑をかけた分、+αでどうリカバリーできるのか、頭を切り替えてやっていくことができています。そして何よりもマネージャーの仕事は常に意思決定を求められ、難しい反面とてもやりがいがあり、充実して楽しめています。これまで失敗や不安も多かったですが、自分に正直になってあきらめず挑戦して良かったな、と今本当にそう思っています」
<プロフィール>
堀口 道子(ほりぐち みちこ)
パーソルテンプスタッフ株式会社 首都圏営業本部 東京SC営業部 SC五課 マネージャー
2003年4月に新卒でパーソルテンプスタッフ(旧テンプスタッフ)に入社。以降新宿オフィス、品川オフィスにて主にクライアントサービスに従事。二度の産休・育休を経て、2023年4月に東京第二営業部 品川SC一課のマネージャーに昇格。2024年4月より現部署へ異動、現在に至る。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。