パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第3回目はパーソルファシリティマネジメントの鈴木 亜依です。
「マネジャーって、何をすればいいんですか?」
パーソルファシリティマネジメントのプロジェクトコンサルティングユニットではたらく鈴木 亜依は、当時の上司にそう尋ねました。2021年11月のことです。その日、鈴木は上司からマネジャーへの昇進を告げられ、不動産の視点から企業価値の向上を目指すCRE(Corporate Real Estate)戦略チームと、オフィスの備品などを管理するメンテナンスチームというまったく業務内容の異なる2チームを担当することになりました。
それまで自分がマネジャーになることを想像していなかった鈴木にとって、昇進は「寝耳に水」。その上、どちらの業務も「多少の経験がある」程度だったため、うれしさや誇らしさよりも戸惑いが勝り、冒頭の質問につながります。
この時、「マネジャーの仕事は、組織の成果を最大化すること、チームの人材マネジメントをすること、どこに組織が向かうのかを明確にして、その道筋を示してあげること」という上司からの回答に納得した鈴木は、管理職としての一歩を踏み出しました。
「この役割を求められているなら、やってみようと。」
そこには、未知の世界が待っていました。
「ダメダメ」の営業からプロジェクトマネジャーに
鈴木は5歳から18歳まで、茨城県取手市で過ごしました。子どものころはレゴで家をつくるのが好きで、中高生になると建築や建物に興味を持ちます。都内の女子大に通いながら建築を学んだ4年間は、「純粋に楽しかった」と振り返ります。
大きな建築物よりも住宅や小規模な建物について考えるのが好きで、就職先として志望したのも、ハウスメーカー。一社から内定を得たものの、まさかの「内定切り」にあってしまいました。鈴木が大学4年生だった2008年はリーマンショックが起きた年で、同様の事態が頻発していたのです。慌てて就職活動を再開し、秋ごろにオフィス移転や設計を行う企業の営業として採用されました。
この会社で10年間はたらいた鈴木は、「最初のうちはダメダメでした」と苦笑します。入社して最初の半年間は飛び込み営業で、取れた契約は1件。その後、ルート営業のチームに配属されたものの、成績は低調でした。ただ、その間ずっと自分の言動を振り返り、何が良かったのか、悪かったのかを分析してノートにつけて、次の行動に反映させていました。
「無力感が強かったんですよ。結果に結びつかないから、私は何をやっているんだろうって思うじゃないですか。そのままにしていたら前に進めないから、少しでも進むために書いて打開したかったんです」
この地道な積み重ねが花開いたのが、5年目以降。最初のころはデスク1台売るのも苦労していたのに、「新しいオフィスに引っ越したい」という相談を受けるようになっていきました。もともと設計に興味を持っていた鈴木は、設計チームと一緒になってレイアウトを組み、見積もりを取り、コストコントロールをして、オフィス移転完了までサポートするという一連の流れを学びます。営業の業務の範囲を超えたものもありましたが、鈴木は「これこそやりたかった仕事だ!」と大きな手応えを感じていました。
「お客さまのオフィスだけど、そのオフィスについて私が一番知っているというぐらいになりたかったんです。何か困りごとがあったときに頼ってもらえる存在になろうと頑張っていました」
この会社では最終的に営業でありながら、プロジェクトマネジャーも兼ねるように。そうすると、年間2、3件のプロジェクトにしか携われません。転職を考えたのは、「この会社ではやり切った」という満足感とともに、「営業という立場ではなくて、プロジェクトマネジャーとしてもっといろいろな案件に専任で携わりたい」という思いが湧いたからでした。
コロナ禍で変化したオフィスの役割
転職活動の際には、「インハウス(自社内で行うこと)でやりたい」と考えていました。オフィス業界では必須とされる認定ファシリティマネジャーの資格を持っていたものの、「ファシリティマネジメントって、外部ベンダー側にいるとできないことが多い」と感じていたからです。
ファシリティマネジメントとは、「企業が事業活動をするために必要な施設とその環境を適切にする経営活動」のこと。転職活動中、200を超える拠点を持つパーソルグループのファシリティマネジメントを一手に担うパーソルファシリティマネジメントの求人を見つけた鈴木は、転職サービス「doda(デューダ)」に登録して、「この会社を紹介してください」と連絡。面接はトントン拍子に進み、2019年、プロジェクトコンサルタントとして入社しました。
入社して数カ月後には新型コロナウイルスのパンデミックが発生するという想定外の出来事が起きましたが、鈴木にとってはむしろファシリティマネジメントの価値を体感する機会となったと言います。
「みんなが出社しなくなって、オフィスって必要なの?という話になるじゃないですか。その時に、オフィスの統廃合を進めてファシリティコストを適正化し、年間に9億円ほどランニングコストを下げるような施策を立てたんです。これはインハウスだからこそできることだし、ファシリティマネジメントってこんな形で経営に貢献できるんだっていうやりがいを感じました」
コロナが落ち着くと、コロナ禍で一気に定着したリモートワークやオンライン会議など、はたらき方の変化に合わせたオフィス環境を構築する仕事が始まりました。求められたのは、社員の帰属意識やエンゲージメントの向上といった経営側の新たな課題を踏まえた上で、多様なはたらき方に対応するオフィスの在り方。パーソルファシリティマネジメントとして試行錯誤を繰り返すなかで、鈴木たちは、常に知識や情報をアップデートしながら、提案を行っています。
「楽しいんですけど、難しいですね。こういうレイアウトにしたらこういう効果が出るんじゃないかとか、社員にこんな行動をしてもらいたいんだったら、こういう仕掛けや機能を置いた方がいいと提案するにしても、100%成功するという答えがないんです。コロナ前とは求められる仕事の内容が変わりましたね」
200を超える多種多様なパーソルグループ内拠点のファシリティマネジメントで得た知見を活かし、パーソルファシリティマネジメントはグループ内だけでなく、社外からも依頼を受けています。鈴木は社外のプロジェクトにも携わりながら、少しずつ知見を深めていきました。
コンサルタント的なチームを目指して
2021年11月、マネジャー昇進の打診があったとき、鈴木はCRE戦略チームに配属されたばかりでした。この唐突な人事には、理由がありました。マネジャーに欠員が生じ、管理職が足りなくなってしまったのです。
「私は10月からCRE戦略チームのリーダーに就いていました。だから、1カ月後にCRE戦略チームとメンテナンスチームを見るマネジャーになるなんて、1ミリも考えていませんでした」
このとき、先述したように上司からマネジャーの役割を聞いた鈴木はまず、「二つのチームがどういう状態になったらいいんだろう」と考えました。出した結論は、顧客から何か相談を受けたら、「こうしたらいいんじゃないですか?」と提案できる、コンサルタント的なチームになること。
これは鈴木が前職時代に営業職として実践していたことで、成功体験に基づいていました。しかし、これが難航します。鈴木が「主体的に動いていこう」と行動を促しても、思うような反応が返ってこないのです。最初のころは「なんで?」と疑問が募りましたが、上司に相談するうちに方向性が見えてきました。
方向転換する上で、管理職としての心得やフィードバック、評価の方法などを学ぶ管理職向けの研修も役立ちました。チームメンバーには、「なぜ、コンサルタント的なチームになるべきなのか」「そうなるためにはどうしたらいいのか」を繰り返し説明するようにしました。
「受け身になると、忙しくなる。自分からコントロールしたほうが楽になるんだよ。でもそのためにはいろいろな知識や選択肢を知っていることが必要だから、みんなで勉強会しようか?」
同時に、目先の小さな課題に対して「こうしたらできるよ」「この知識があれば大丈夫」と道を示すようにしました。チームを引っ張るのではなく、一人ひとりの背中を押すこの取り組みで、メンバーは徐々に変化していきます。鈴木は、マネジャーの業務が「得意じゃない」と苦笑します。それでも、思い切ってマネジャーの仕事を受けて良かったと感じています。
「これができるようになったとか、この前これをやったから次は違うやり方でやってみるとか、どんどん積極的になっていくメンバーの成長がうれしかったですね。個人的にも、俯瞰して見る力がついたと思います。自分の経験や思考が深まって、すごく成長したなって思いますね」
マネジャーの経験を生かして新たなステップへ
マネジャーとして試行錯誤しつつも充実した約2年半を過ごす中で、ある想いが少しずつ鈴木の胸をかすめるようになります。それは、「オフィス開設のプロジェクトをもう一度この手でやり切りたい」という想いです。パーソルファシリティマネジメントに転職してきた理由を改めて振り返り、上司や人事への相談を経て、2024年4月よりマネジャー職を離れ、同じく管理職の「エキスパート」に就くという決断をしました。「エキスパート」は特定の領域に関する高い専門性と知識をもって主にプロジェクトマネジメントを行う管理職のこと。パーソルファシリティマネジメントでは、野球にたとえるなら、マネジャーが監督、リーダーはキャプテン、エキスパートはコーチという役割分担で、3人で一つのチームを見るようになっているといいます。
「上司からは、お客さまの立場で、お客さまのやりたいことを汲み取ってプロジェクトを実行していくところがあなたのエキスパート性だと言われました。前職で培った営業マインドがベースになっているのだと思います」
エキスパートになって、6カ月。すでに、パーソルテンプスタッフの名古屋オフィスの再編などグループ会社のプロジェクトのほかに、外部のプロジェクトも2件担当しています。得意分野で水を得た魚のように駆け巡りながら、マネジャー時代の経験が今に活きていることを実感しています。
「プロジェクトマネジメントという自分の強みに加えて、CREとメンテナンスの業務管理をしていたマネジャー時代の目線も活かして提案できるという強みも持てるようになりました。私が今、楽しく仕事ができているように、同じく楽しいと思える人が増えるようなプロジェクトにできるよう、マネジャーやリーダーと一緒にメンバーをフォローしていきたいですね」
<プロフィール>
鈴木 亜依
大学卒業後ダイヤオフィスシステム株式会社に入社し、営業担当としてオフィス移転・リニューアルに多数従事。社内のプロジェクトマネジャーや設計を取りまとめたプロジェクト運営のかたわら自らプロジェクトマネジャー業務を実施したプロジェクトも多数あり。2019年よりパーソルファシリティマネジメント株式会社へ転職。パーソルグループ内の拠点開設、レイアウト変更プロジェクトを実施。2021年よりCRE戦略チームとメンテナンスチームのマネジャーに就任。2024年4月よりエキスパート職としてプロジェクトコンサルタント業務に従事し、現在に至る。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。