独自開発した自動マッチングツールで、横のつながりをつくる1on1の機会を提供!

株式会社パーソル総合研究所は、自動マッチングツール「PeerC(ピアシー)」を開発し、部門横断「Peer1on1」の全社展開を開始しました。

取り組みの概要

Peer1on1とは、上司と部下で行う1on1とは違い、社員同士の横のつながりを強化すること目的としたインナーコミュニケーション施策の一つ。部門を越えて多くの人との対話の機会を設けてもらいたいと考えられたものです。しかし、たとえばマネジャーが、多くの多忙な部下のスケジュールを見て、空いている時間で何組ものペアをつくり、しかも毎月違う相手と1on1ができるよう設定しようとすると、それはとても大変な作業です。
そこで開発されたのが、”組織横断コミュニケーション”を設定する際の「面倒ごと」を取り除くツールPeerC。PeerCを使えば、「前とは違う相手を見つけ」「二人の空いている時間を探し」「Outlook上で予定を押さえる」の3ステップを自動で行ってくれます。PeerCでの設定も5ステップととても簡単です。

<設定5ステップ紹介>
ステップ1/PeerCにログインし、参加させたいメンバーを登録。
ステップ2/「プロジェクト(Peer1on1の運用単位で作成するものです。たとえば、”全社横断Peer1on1”プロジェクトや”管理職のみPeer1on1”プロジェクトなど)」を作成。
ステップ3/「プロジェクト」内に「グループ」をつくり、メンバーを入れる(同一グループ内ではマッチングしなくなります。たとえば、Aグループに佐藤さんと田中さん、Bグループに伊藤さんと石井さんと振り分けると、佐藤さんは田中さんとはマッチングせず、伊藤さんや石井さんとのみマッチングします)。
ステップ4/メール送信文を編集する(Outlookに自動で会議依頼が送られる際、ここで設定した文章が自動で送信されます)。
ステップ5/Peer1on1の開始時期と期間を設定して、「OK」をクリックする。

ステップ3の画面
ステップ4の画面

設定したメンバーそれぞれに自動でOutlookに会議依頼が送られるので、あとはスケジューリングされた日時に参加してもらうだけです。また、マッチングが不成立となったメンバーは、画面上で確認できます。不成立のメンバーに関しては手動で空き時間を確認して設定する必要がありますが、不成立の発生率は全体の1割未満。今後さらなる不成立改善に努めます。


今回の「PeerC」を活用しての部門横断Peer1on1の全社展開は、パーソル総合研究所のプロダクト開発部とコーポレート本部の広報チームが協力・連携してスタートした取り組みです。本記事では、「PeerC」の開発担当のリーダー田辺 友一(プロダクト開発部 アプリケーション開発)と広報チームの西山 裕子(コーポレート本部 社内外広報)の2人に話を聞きました。

左:田辺 友一 右:西山 裕子
目次

“良いけど手間がかかる”が理由で終了した取り組みを、部署の垣根を越え、協力し合って再開!

——社員の横のつながり強化のためのPeer1on1は「PeerC」の開発によって実現したのですか?

西山:いえ、Peer1on1自体は、2022年度にスタートした取り組みです。

——Peer1on1をスタートしたきっかけはなんだったのでしょうか?

西山:パーソル総合研究所が大切にしている価値観は、「ハーモニー&ケミストリー」で、これはお互いの価値観を尊重するハーモニーと、多彩なプロフェッショナルによるケミストリーを大事に組織の運営をしていこうというものです。
2021年、パーソル総合研究所は、人材開発・組織開発の領域でサービスを提供をしていたパーソルラーニングと組織統合し、新生パーソル総合研究所としてスタートしました。しかし、コロナ禍でリモートワークが中心なこともあり、顔と名前が一致しない状態で、「他部署のことが分からない」「一緒に仕事をするのは難しい」といった声が社内であがっていました。「ハーモニー&ケミストリー」の浸透と実現のためには、コミュニケーションが重要。でも、リモートワーク中心の組織でどうしたらスムーズに社員同士でコミュニケーションをとってもらえるのか……、それが大きな課題でした。そこで社員間のつながりと相互理解を深めるためのインナーコミュニケーション施策をさまざま企画し、順次実施していったんです。Peer1on1はそうした施策の一つでした。

——当時はどのように運用していたのですか?

西山:2022年度の夏、主に社長からトピックスを発信する朝会という全社員を対象としたZoomミーティングの中で、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使用して自動で振り分ける形でPeer1on1の時間を取りました。その際、お互いに次の1on1相手を紹介し合ってもらったんです。そして、その後も“1on1の際に次の相手を紹介し合う”、という形式で月1回のPeer1on1をスタートさせました。

——紹介制のPeer1on1、面白そうですね。評判も良かったのでは?

西山:はい、おおむね好評でした。でも、「紹介する相手を見つけるのが大変」「お互いのスケジュールを見て1on1を設定するのが大変」という声もあり、一旦3カ月で終了したんです。効果は感じつつも、一人ひとりにとっては負担の大きかったことが反省点でしたね。
そうしたところ、翌年の2023年6月ごろ、Peer1on1の一参加者だった、プロダクト開発部の田辺さんが「相手を見つける」「スケジュールを調整する」といった課題は、自動マッチングツールのシステムを使えばカバーできると提案してくれたんです。

——プロダクト開発部でも、Peer1on1の評判が良かったんですか?それで開発をしようと?

田辺:部門を越えた全社員でのPeer1on1の取り組みは、施策としてとても良いという実感がありました。

開発をしようと考えたのには三つの要因があります。一つは、プロダクト開発部のミッション「新たな価値を創出する」を実現するためのテーマを考えている時だったこと。もう一つは、以前からプロダクト開発部の中では自発的にPeer1on1のような取り組みをしていものの、スケジュール調整など運用に手間がかかっていたこと。そして、もう一つが全社員でのPeer1on1実施後の課題が耳に入ってきたことです。

こうしたことから「Peer1on1の“不”を解消するシステムをつくってはどうだろう」という話がプロダクト開発部内で持ち上がり、2023年6月ごろに短期集中で、システムの骨組みとなる部分を開発しました。そして、コーポレート本部に「こういうマッチングツールはどうだろう?」と相談を持ち掛けたんです。

——開発をしてからコーポレート本部に持ち込んだんですね。持ち込まれた時、西山さんはどう思われましたか?

西山:素直に“自動マッチング”という発想自体が面白いと思いましたね。そして、このシステムが完成して負担の少ない形でPeer1on1を再開できれば、社員にとってもメリットが大きい。定着すれば「ハーモニー&ケミストリー」の促進にもなるとワクワクしました。もちろん、Peer1on1は一度終了した施策ということもあり、再開する必要性を社員に理解してもらえるだろうか、といった不安も多少ありました。ただやらないよりは、やった方がいいという確信に近い思いもあったので、どうすれば社員に受け入れてもらえるか、そのためにどの程度の完成度が必要か、といった具体的なことを田辺さんのチームの皆さんも交えて話し合いながら進めていきました。

田辺:西山さんから、前向きなコメントをいただけた時は、うれしさ半分、がんばって完成させねば、という気持ち半分でしたね。

——9月からのトライアルでは3部署を対象に実施したとか。

田辺:はい。3部署、約50名でPeerCを活用してのPeer1on1トライアルを2カ月間実施しました。ここでの目的は、①システムの自動マッチングがうまく動作するかのシステムのバグ出し。②全社展開の際の留意点などを得ること。この2つでした。
①では、自動スケジューリングの挙動についてのバグが発覚。スケジュール表上は2名ともにスケジュールが空いている時間があるにもかかわらず、空いていないとみなされてしまうケースがあったので、すぐにシステムを修繕しました。

西山:②に関しては、トライアル終了後にアンケートを取りました。2022年度の時と違い、誰かを紹介することやスケジュールを自分で組むといった手間が省け、コミュニケーション施策としては概ね好評でしたが、全社展開に際しては、狙い・目的、そして想定している導入効果などについて丁寧な説明が不可欠であることが分かりました。同時に、Peer1on1への苦手意識というか、よく知らない人と短時間とはいえ二人で会話することに不安や負担を感じる人も一定数いると想定されたため、事前に参加意向を確認するアンケートを行うことに。結果としては、約3分の2の社員が参加しています。

全社展開の事前案内は、朝会をはじめとするさまざまな機会でPeer1on1実施の目的やアンケートで見えた導入効果などについて詳しく説明。また、アンケートで「スケジュールを変更したくなったときの変更方法が分からない」といった意見もあったため、そうした運用上の課題はプロダクト開発部の皆さんと意見を出し合い、可能な限りシステム上で改修してもらいました。

行動を妨げる原因がちょっとした手間の場合もある

——そうして12月から全社でPeer1on1をスタートさせたのですね。3カ月(3月末取材時)たちましたが、今のお気持ちや周囲の反応などを聞かせください。

田辺:トライアルで発覚した自動スケジューリングの挙動については調整したはずだったのに、スタート直後、全体の4割ほどがペアにならなかったんです。不成立分は手作業でペアをつくることになり、スタートした喜びの余韻にひたる時間もありませんでした(苦笑)。でも、「Peer1on1、楽しみにしています!」といったメールが飛び交っているというのを耳にしたり、社内で「この間はPeer1on1でどうも!」などと挨拶をしている姿を実際に見かけたりして、確実に良い影響が出てきているなという感触があり、開発した甲斐があったとうれしく思っています。また、今回、ちょっとした手間が行動を妨げるということがよく分かりました。これは大きな収穫ですね。

西山:12月、1月とPeer1on1を実施した後にアンケートを行ったのですが、「Peer1on1楽しかった!」「面白かった!」という反応をたくさんいただきました。とても安心しましたし、自動で設定されたPeer1on1に、ほぼ対象者全員が参加してくだっているのは本当にうれしいですね。経営メンバーからも「各所の評判が良い」というフィードバックをもらっています。

Peer1on1での話題は、「仕事」や「趣味」ほか、「ライフスタイル」などの話も!

——アンケートでは、具体的にどのような意見がありましたか?

西山:ポジティブな意見では「コミュニケーションの機会として有意義」「他部門の仕事を知ることで視野が広がった」というものが多かったです。一方、ネガティブな意見ももちろんあって、「初対面の人とだと話題に困った」「緊張した」という人も。改善は必要だなと思っています。

——今後の展望を教えてください。

西山:社内広報の担当としてはPeer1on1の改良を続けつつ、社員の皆さんにはこうした部門横断 Peer1on1のような取り組みを楽しみ、“自身にとって意味ある時間”にしてもらえるようなはたらきかけを、これからも試していきたいと思っています。

田辺:PeerCは、ペアリングする対象の切り方次第で、いろいろな用途があると思います。現状で実施しているのは、全社員でのPeer1on1ですが、たとえば「同期新卒のPeer1on1」で設定することで、新卒社員のリモートワーク下の孤独を防ぐ手助けができるかもしれません。また「パーソルグループ横断の管理職」で設定することで、会社を超えた交流や管理職同士の悩みを相談する場になり問題解決につながるかもしれません。次のステップとしては、パーソルグループ内でPeerCを利活用する余地がないかを模索し、社員のQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上に寄与できればと思っています。

PeerCの開発に携わったプロダクト開発部メンバーにも話を聞きました!

田辺以外でPeerCの開発に携わったプロダクト開発部のエンジニア3名、江口 春紀、廣瀬 麻衣、山本 亮介にも苦労したことやうれしかったことを聞きました!

江口

社内のシステム利用や、新しいシステムをリリースするに至っての社内手続きに思うより時間がかかってしまいました。出来上がった時は「良かった」という安堵の気持ちの一方、きちんとマッチングされるかなどが不安で……。社員全員でのPeer1on1がスタートして、予定が入らないペアが多発した時は、冷や冷やものでした。だからアンケートで良い評価がいただけたと分かった時は、本当に良かったと思いました。

廣瀬

全社員となると一気に200名を超える利用者が想定され、Outlookの組織アカウントを使った大量の処理が問題なくできるのか、その動作の検証が何しろ大変でした。トライアルスタートの時は不安ももちろんありましが、“試してみたい”という気持ちが大きかったです。また、PeerCで自動マッチングしたPeer1on1が皆さんに受け入れてもらえるか心配だったのですが、思った以上に良いフィードバックをいただけて、とてもありがたく思っています。

山本

実施前は、皆さんがPeer1on1を楽しんでくれるといいなという期待と、本当に楽しんでくれるのかという不安が半々ぐらいでした。PeerCは、1on1を設定する際の負荷を下げるためのシステムなので、Peer1on1が良いものであるという前提があってのものなんですよね。プロダクト開発部ではPeer1on1がスタートする前から似た施策をやっていたので、その実体験から「Peer1on1は良いもの」という前提で開発を進めていましたが、もちろんそう思わない人がいることも知っていますから……。でも、結果として、事後アンケートで好評でホッとしました。

前列向かって右から時計回りに、西山 裕子、廣瀬 麻衣、江口 春紀、田辺 友一

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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