「パラリンアート世界大会2022」パーソル賞・花守洸果さんが語る“表現者として生きること”

12月8日、パーソルグループが協賛している障がい者アートのワールドカップ「パラリンアート世界大会2022」の表彰式が開催されました。
今回で5回目を迎えるパラリンアート世界大会は、障害のある世界中のアーティストからアート作品を募集してグランプリを決めるイベントです。今年のテーマは「未来(FUTURE)」。国内だけでなく海外からも作品が集まり、合計498点もの作品が集まりました。表彰式当日は、オフラインのイベント開催とオンライン配信による形式での開催となりました。

※表彰式当日の様子はこちら

国内外の著名人が審査員となり決められたグランプリのほか、パーソルグループで独自に設けた「パーソル賞」は、パーソルグループ社員が審査員となり、オンライン投票により作品を選出します。今年のパーソル賞を受賞したのは、花守 洸果(はなもり ほのか)さんの『ふるさと』。
花守さんに、本作品にかけた想いや大会テーマでもある「未来」への気持ちについて伺いました。

目次

未来の「空」へ込めた想い

――パーソル賞の受賞、おめでとうございます!今のお気持ちはいかがですか?
花守さん:受賞の連絡が来たときは「まさか!」と思って、私でいいのかな?という驚きしかなかったです。努力して実ったことってほぼなかったので、本当にうれしいです。
描く前からある程度全体像のイメージはできていたのですが、これまでの受賞作品を見るとかなり描き込まれているものが多かったので、こんなにシンプルに仕上げていいんだろうか?って悩みながら制作しました。実は去年も応募したのですが落選してしまい、世界大会で作品を出すことって本当に難しいなと思い、入賞は半ば諦めていたのですが、今回の受賞でちょっと力が付いたかな、って感じています。

――今回の受賞作品『ふるさと』にはどのような想いを込められたのでしょうか。
花守さん:まずは「未来ってなんだろう」と考えるところから始めました。そこから思い浮かんだのは、今年私が一番衝撃を受けたウクライナ侵攻。ほかにもまだ紛争が終わらない地域もあれば、自然災害が起きたり、世界中でいろんなことが起きていて。そんなとき、誰もがふと空を見上げたときに「きれいだなぁ」って思えたら一番いいなって思ったんです。「過去」は絶対に変えられないもの、「未来」は何があるかもっと分からないけど、どんなときも空はつながっている。空を「美しい」と思う気持ちは、この先の未来も変わらないでいてほしい、という願いを込めています。

――作品で空を取り上げた理由について教えてください。
花守さん:もともと、私は遺跡が好きなのですが、どれだけ過去のものであっても現在まで残っているものって、時間を超越して同じ空の下でつながっている、それが「空」を題材にした大きなきっかけです。物心ついた時から、本当に美しい瞬間は日常の中にあるんだなって思っていました。これまで何度か東京に出てきたこともありましたが、地元へ戻ったときに眺める朝陽や夕陽、夜空を眺めるとそういった美しさを感じますし、この先の未来もそうあってほしいなって思います。

――絵画だけでなく小説や書道など、さまざまな創作活動をされていらっしゃいるそうですが、表現者として大事にされていることはなんですか?
花守さん:「感情」ですね。気持ちの揺れ動きが伝わるといいなと思っています。ただ、それよりも作品を見てくれた方がどのように感じて、どう気持ちが動いたのか、のほうが大事だと思っています。私はそういったきっかけの一端を担えたらいいなと思っています。

――花守さんは「未来」についてどのような想いがありますか?
花守さん:安定を求めるわけじゃないですけど、老後の心配なく生活できるぐらい、一人の表現者として認知度を上げていきたいです。
私の場合、精神障害がありますが、見た目は普通と変わらないので「どのへんが?」と周りからよく言われるんですよね。それとLGBTQ当事者でもあるので、マイノリティな部分がたくさんあります。大変といえば大変なんですけど……。理解はされなくてもいい。でも存在を認めてほしい。みんなと同じように一緒に生きているんだよっていうことを分かってほしいです。

私はもともと表現することが好きで、一時は芸能界で活動をしていました。でも声優の勉強をしていたとき、台本を覚えられないということに気付いて。いくら声優でもある程度台本の中身は把握しないといけないのに、それすらもできないなんて致命傷だなって、諦めようと思いました。それからというもの心がすさんでしまって、本当にどうやって死のうかなって考えるようになりました。今なら笑い話ですけど、当時は生きていてなんの意味があるんだろうって、かなり人生に終わりを感じたというか。夢もなくなってしまって、本当にどうしようもなかった時代がありました。その後、30代後半に入ってから精神障害の診断を受けたのですが、その時にこれまで取り組んできたことがなぜできなかったのか、やっと理由を理解できたんです。

障害の診断を受けてから、パラリンアートと出会ったのは救いでしたね。2019年に初めて作品を出したとき賞をいただいて、もしかしたらこの世界ならいけるかもしれないって思ったんです。これまでたくさん努力しても誰にも認められないときもあったけれど、パラリンアートと出会って、絵で評価していただく機会が増えてきました。今の自分にできることが絵を描くことなので、そこで表現することが認められて、それが仕事になれば一番うれしいですね。

花守さんには副賞として、パーソルグループの特例子会社であるパーソルサンクス株式会社が運営する「よこはま夢工房」で障害のある社員が手作りしているクッキー、「まえばし彩(いろどり)工房」で製作したハーバリウムと、「とみおか繭工房」で製作した富岡シルクを活用した賞状ホルダーが贈呈されました。また花守さんの作品は今後、パーソルグループのオフィス内装やノベルティグッズに活用される予定です。

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