リスキリングを支援する法人向けオンラインコーチングサービス『学びのコーチ』 ―“学び”と“はたらく”がつながる社会へ

パーソルイノベーション株式会社は、企業のデジタル人材育成を効果的な研修プログラムで支援したいという想いから、2021年7月より法人向けオンラインコーチングサービス『学びのコーチ』を提供しています。

取り組みの概要

「学びのコーチ」は、リスキリング(※1)に強みを持つデジタル人材育成サービスです。需要の高まるデジタル人材育成において「何を学ぶか」「どう学ぶか」に課題を持つ企業に、「各社のニーズに合わせた柔軟なカリキュラム設計」「コーチによる学習伴走」を通じてサービスを提供しています。また、より効果的なデジタル人材育成プログラムを提供するため、デジタル人材育成に適した学習コンテンツを持つプレイヤー(「Udemy(ユーデミー)」と「Microsoft」)と連携(※2)し、支援しています。

大きな特徴は3つ。1つは、各企業の求めるスキルに合わせた「学習カリキュラムを設計」して提供すること。もう1つは、受講者一人ひとりにキャリアコーチがつき、「キャリアコーチング」を通して現状認識と目標設定を行うこと。そして、3つ目は、受講中は技術に精通した「テクニカルコーチがオンラインで伴走」して進捗をサポートすることです。この3つを柱に、1~3カ月間オンラインで一人ひとりを支援することで、高い学習成果を生みます。学習継続率(※3)は99%を達成。また、サービス開始以降、クラウド資格(※4)取得の合格率は74%、受講者数100名を突破しています。(2022年3月末時点 パーソルイノベーション調べ)
(詳細はこちら:https://www.manabic

(※1)「リスキリング(Re-Skilling)」とは、個人においては「市場ニーズに適合するため、保有している専門性に新しい取り組みにも順応できるスキルを意図的に獲得し、自身の専門性を太く、変化に対応できるようにすること」

そんな「学びのコーチ」を構想し、生み出したのは、パーソルイノベーションのラーニング領域本部で現在「学びのコーチ」の事業責任者を務める柿内 秀賢です。

これまでの軌跡

2つの経験で学びの重要性を痛感

柿内は、2006年パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に新卒で入社し、12年にわたり「doda」のIT/製造業領域で、キャリアアドバイザーや法人営業として転職・採用支援に従事。この時柿内は、慢性的なIT人材不足を痛感すると同時に、DX推進企業が自社内でデジタル人材の育成を考えていることを知ります。

さらに、柿内がリスキリングの重要性を強く認識したのは、ある2つの経験からでした。
1つは、2008年のリーマンショックのあとのこと。「世界情勢が変われば、人が置かれている立場も一瞬で変わる」という現実を目の当たりにしたことでした。

「当時、不況の煽りを受けて、企業からリストラをされ転職を余儀なくされた方がたくさんいました。私は大阪でキャリアアドバイザーとして就職支援を行っていたのですが、なかなか内定が出なかったり、転職が決まっても収入が半減してしまったり……。家族がいる方、家のローンを抱えた方も多くいる中、希望に添えないことも多くて、私としても悔しく、申し訳ない気持ちでした」(柿内)

もう1つは2018年、パーソルホールディングスへ異動したときのこと。柿内はオープンイノベーション推進部の立ち上げメンバーとなり、DXに関する新規事業を提案することに。しかし、これまでの営業とは違う仕事のステージ。苦戦が続き、「自分自身をアップデートして知識を増やさなければいけない」と切に感じたと言います。

この2つの経験で、時代に合わせた学びが重要だと悟った柿内に、経営層から「ラーニング領域で、『学び』と『はたらく』を接続するサービスを創出したいので、事業開発をしてほしい」という打診があったのは、それからまもなくのことでした。

「とても光栄でした。はたらくに強い当社で、学びの事業を正面から取り組むことの大切さを感じていましたので、その仕事を任せてもらえることは大変うれしく思いました。多くの人に役立つサービスをつくろうと気合を入れたことを覚えています」(柿内)

想いをサービスにするために試行錯誤。作った資料はスライド約1,000枚

2020年4月、プロジェクトチームを発足。外部パートナーにも入ってもらいながら、柿内は自身を含む4名で事業の構想を練り始めます。しかし……。

「日本人は諸外国の人に比べて、自主的に学習をする人はとても少ないのが現状です。パーソル総合研究所の調査(※5)では、『自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動』が0個と答えた人が46.3%にものぼっています。企業へのヒアリングでも、『学習意欲がある人は一握り』という回答が多く、DX推進に関しても、社内でデジタル人材を育成したいけれど、『どう学習意欲を高めればいいのか分からない』『スキルが一人ひとり違うため、どうリスキリングを進めればいいのか分からない』とった悩みを抱えていることが分かりました」(柿内)

多くの人に意欲的に学んでもらうためにはどうすればいいのか……。
柿内は日本人が学ばない理由ついて、日本の雇用スタイルにあるのではないかと推測します。

「日本では、スキルより学歴によって評価されることが多い上、入社後一度配属されたら、多少スキルを磨いたところで希望部署へ異動できるのは稀。転職も経験職種以外では難しいのが現状です。そうした環境下では、自分がどういうキャリアを積みたいかを考える機会は少なくなるし、新しいスキルの習得に自主的になれないのも頷けます。そこで、まず動機付けをしっかり行うことが重要だと考えました。また、学びやすく、途中で挫折しないようにするために、スキルにあったプログラムをつくり、一人ひとりと伴走して応援やアドバイスを行っていけるような仕組みができないものかと思ったんです」(柿内)

個別カリキュラムで進めるため、異なる保有スキルの方が同時に研修を受講できる

この想いが「学びのコーチ」の最大の特徴、1対1の「個別最適化」の原型です。が、こうした想いを実際にサービス化するのは容易なことではありませんでした。

「デジタル人材育成と一言でいっても、従業員にどんなスキルを習得してもらいたいかは、業界や部署によって異なります。ユーザーへの提供価値をどこに置き、それをどう実現するのか。また、利益の見込みはどのぐらいか……、そうしたことを一つひとつ検討して潰していったのですが、それが本当に大変でしたね」(柿内)

新規事業の立ち上げ業務は、はじめてだった柿内。事業検討用に作成した資料は、準備期間の約1年でなんとスライド1,000枚を超えたそう。そうした奮闘の末、ついに2021年7月、法人向けオンラインコーチングサービス「学びのコーチ」をリリースします。

滑り出しは上々。スタート時点で大手2社から研修を依頼され、好調な出だしでした。しかし、柿内は日々、業務に忙殺されることに……。

「『学びのコーチ』の特徴の一つ“コーチの伴走”では、週一回のペースでコーチが受講生とコミュニケーションをとりながらアドバイスをするのですが、その裏では社外のプロコーチと私たち事業部とで学習時間や学習成果を定点観測し、状況を分析しています。リリース直後は、この定点観測のデータやコーチに聞いた受講生の様子を比較的アナログな手法で管理していたのですが、これが物凄く大変で……」(柿内)

スタート時の受講生は30名程でコーチは3名だったそう。30名に対して毎週30回のコーチング面談が行われ、柿内のもとには30名分の学習時間の実績のデータ入力の依頼が。さらに、データとコーチング面談情報を突合させて学習課題を洗い出し、どの受講生がつまずいていて、どのように学習支援するかを考えては、その支援結果としての受講者の変化に一喜一憂していたといいます。

あまりのハードさに、このままでは受講生の人数を増やせないと思った柿内は、数カ月後に学習ペースの進捗管理や学習状況のデータを自動的に回収できるシステムを導入。それにより、工数は大きく削減され、受講生の受け入れ数を大幅に増やすことに成功しました。現在では常に100名前後の受講生がおり、これまでに300名を超える方が研修カリキュラムを修了しています。

人は、人に見られ、認められると頑張る生き物

「ほとんどの受講者が最後までやり遂げ、2022年3月現在、学習継続率(※3)は99%を達成!また、通常では合格率20%と言われているクラウド資格(※4)取得の合格率は74%と、とても良い数字がでました。本当にうれしいです」(柿内)

こうした結果を出すことができたのも、サービスの根幹である“伴走”が大きな鍵となっているといいます。

「つまずくのはだいたい初期段階。俗に言う3日坊主ってやつです。
学習データを見れば、3時間勉強するはずなのに30分しかやっていない、0時間で取り掛かりもしていない、ということが分かります。そうしたとき、伴走しているコーチがコミュニケーションをとって一緒にペースメイクをし直すんです。そうして、この魔の時期を乗り越えると、その後は勉強も起動にのるんですよ。――人は、人に見られ、認められると頑張る生き物なんだな、とつくづく感じています」(柿内)

受講終了時、たとえ目指していた資格取得テストで不合格となっても、受講者は「やりきった!」と喜び、自分に自信をつけて「次は〇〇の勉強をしたい!」と自らスキルアップを目指す人も多いのだとか。
また、企業からも「従業員が前向きになった」という声のほか、「適切な研修を提案してくれる」と好評を得ています。

「『どの部署で、どんな仕事をしている人に、どんな業務を、どう行ってもらいたか』がはっきりすれば、自然と『どんなリスキリングが必要か』が見えてきます。こうしてジョブを細分化し、そこにどんなスキルが必要かを考えるのは、日ごろから、『仕事』と『人』をマッチングしているパーソルグループが得意とするところ。どんな人や組織にも最適な研修をご提案できるのは、我々の大きな強みですね」(柿内)

そして、最後に柿内は、次のように意気込みを語りました。

「サービスを通じて『どんな職種の方にどんなデジタルスキルが必要か』がずいぶん見えてきました。今後、それらを整理し、導入事例などをまとめた『DXジョブカタログ』のようなもの作り、リスキリングがもっと身近になるよう広めていきたいと考えています。
“学び”は個人や企業の可能性を広げること。学びの支援をすることで、『はたらいて、笑おう。』の実現を目指していきたいと思っています」(柿内)

TRY!Points

・受講者がどうしたら学ぶ意欲を持てるかを考えた
・サービス化に向け、1年かけて多くの課題を一つひとつ地道に潰していった
・受講対象者のジョブを細分化し、適切な研修を企業に提案した

(※2)「Udemy」は、世界中の学びを牽引する学習プラットフォームで、2015年よりベネッセコーポレーションが日本における独占的事業パートナーとして提携を開始。学びのコーチは同社と提携することで、個々人のキャリアに合わせて日本人が最新スキルを習得するに適したUdemyコンテンツを厳選/レコメンドすることができ、新たな学びの形「学びの個別最適」を実現。
「Microsoft」はクラウドやAIなどを扱うデジタルスキルを認定する資格と学習コンテンツを豊富に持つ。学びのコーチは同社との提携を通じて、個々人のキャリアに合わせた、より効果的なデジタル人材育成ラーニングプログラムを提供

(※3)学習継続定義:様々ある学習イベント(e-learning視聴、ピアラーニング、テクニカルコーチ面談等)が完全に停止している=学習離脱者と定義をし、(受講生総数-学習離脱者)/受講生総数=学習継続率として算出しています。

(※4)クラウド資格:高度クラウド人材と認定されるために必要とされるAWS SAA 及び Azure Administrator(AZ-104)を指す

(※5)パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」

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