パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Award」を実施しています。「PERSOL Group Award」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2021年度の「PERSOL Group Award」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。第7回目は、パーソルイノベーション株式会社 eiicon company 村田 宗一郎です。
これまでの成功体験が通じない苦難の時期を乗り越えて大きな売上げを達成した要因は、村田がそれまでのキャリアで培かった成功体験にありました。
オープンイノベーションを当たり前にするために
2008年にパーソルキャリアに入社した村田が、さまざまなキャリアの変遷を経て、パーソルイノベーション内のカンパニー、eiiconに転籍したのは、2020年10月のことでした。
「eiiconは、オープンイノベーションのプラットフォームを運用しています。2017年に代表の中村 亜由子がこの事業を起案した段階から、私もパーソルキャリアの業務と並行して、一部をサポートで携わっていました。しかしその後、私が仙台支社へ異動したこともあり、なかなか一緒に仕事をするタイミングが得られず、最終的にはグループ内の公募異動制度を活用してジョインするに至りました」
eiiconのミッションは、日本においてオープンイノベーションを当たり前にすること。つまり、近年ビジネスシーンで高まっている“自前主義からの脱却”を図り、外部の組織や機関が持つ技術・知見を意図的に取り込みながら、イノベーションを起こすことを支援しています。
「たとえばプラットフォーム事業部では、『AUBA』というオープンイノベーションプラットフォームを運営し、スタートアップから大手企業、自治体まで、さまざまな組織が共創パートナーと出会う機会を提供しています。一方、私が在籍しているエンタープライズ事業部は、大手企業の新規事業の創出や自治体の案件の受託を目指す部門になります」
いずれも共通しているのは、企業と企業をつないで新たな事業を生み出すことです。しかし、最近でこそ急速に浸透しつつあるオープンイノベーションの概念ですが、とりわけ地方の中小企業においてはリソース不足で人材を充てられないという事情もあり、なかなか理解が得られない現実があります。
そこで地方の公共案件を受託運営し、その先にいる地方の地場企業でオープンイノベーションを起こす突破口にしようというのが、村田が所属するエンタープライズ事業部の狙いです。
大幅な売り上げ増加を達成!
しかし、エンタープライズ事業部にジョインした当初は、苦闘の連続だったと村田は振り返ります。
「パーソルグループという大きな傘の下にいても、eiicon自体はスタートアップです。またコロナ禍という事もあり、事業会社の新規事業開発予算は抑制。一方で国からの補助金は潤沢にある状況でした。どれだけ準備しても自治体案件は失注もありえます。何日もメンバー総出で頑張って提案書を仕上げても、一瞬で失注が決まる世界ですから、むずかしいですよね」
それでも、次の自治体案件にアプローチを続けていました。ようやく光明が見え始めたのは、案件受注のための方法論を、あらためて見直したことがきっかけでした。
「今にして思えば当たり前のことなのですが、そもそもノウハウがないのであれば、事前に自治体にアプローチして、その事業に求められているものや勘所を直接尋ねるべきだったんです。そう方針を切り替えて、あらかじめ関係者に接触して何度も細かなヒアリングを重ねるようになってから、明らかに潮目が変わりました」
結局のところ、相手が企業でも自治体でも、人と人とのコミュニケーションが大切だということを、強く実感したという村田。果たして、積み重ねたコミュニケーションを通して得られたのは、情報はもちろん信頼関係という大きな財産でした。
はっきりと状況が好転し始めたのは、2021年3月。前もっての自治体へのアプローチとロビー活動が功を奏し、まずは愛知県と神奈川県の案件受注が立て続けに決まります。
「愛知県では、スタートアップの創出・育成を図るための『STATION Ai』という中核支援施設の整備を。そして神奈川県では、大手企業とスタートアップを連携させることで価値創造を目指す、オープンイノベーションのコミュニティ形成を、それぞれ支援させていただくことになりました。時には泥臭く、そして情熱をもってアプローチすることの大切さを、あらためて痛感する思いでした」
関係構築のノウハウを磨き上げた意味は大きく、その後もスポーツ庁や宮崎県など複数の案件を次々に受注。その結果、自治体受託数は前年比166%、売上げも前年比を大きく上回りました。これが、「PERSOL Group Award」受賞対象になりました。
視座を高めることにつながった過去の成功体験
前年の低迷がうそのような快進撃。躍進の背景について、「仙台支社での経験を抜きには語れない」と村田は言います。
「仙台支社には約2年間、法人顧客・個人顧客双方を管掌する支社長としてとして勤務しました。東北6県すべての人材マーケットが担当範囲となりますが、首都圏のマーケットと比較すると、まだまだ企業の採用ノウハウが未整備なエリアです。そのため、東京では激しい競争の中で勝ち筋を見出していく面白さがありましたが、東北では選考方法だけではなく、採用の考え方から採用方法までお客さまと一緒につくっていくところからはじめました」
マーケットが未整備であるがゆえにノウハウもない。そんな手探りの状況に、最初のうちこそ戸惑ったと語る村田。しかしそこで村田は、こんな気付きを得ます。
「なんでもゼロベースから始めなければならないということは、裏を返せば自分の裁量でいろんなことをやらせてもらえるわけです。つまりそこには、伸び代しかありません。そう頭を切り替えてみたら、一気に視界が開けた感覚を覚えました」
何事もポジティブとネガティブは表裏一体。これが転機になり、仙台支社での業績はぐんぐん上がっていったと村田は振り返ります。
「この2年間に得た成功体験が私にとっては非常に大きくて、仕事をする上での視座を高めることにつながったと実感しています。言い換えれば、物事を中長期的に俯瞰して判断する視点を得たということで、それはすなわちマネジメント能力に直結するものだと思います」
この経験を振り返って、不慣れな自治体案件に対しても、状況を打開する方法論をみずから創出すればいい。そこであらためて、それまでの成功パターンを捨てて提出書類の書き方を見直し、関係者との関係構築を強化し、そして何よりもその案件に対する情熱を前面にアピールするように努めたことが、大きな転機になりました。
「面白いもので、泥臭くネゴシエーションして、より分かりやすい書類の作り方を追求したり、自分たちの想いを全力で伝えたり、すごく基本的なことをさまざまな部分で改善したら、途端にPDCAがうまく回るようになりました」
それはすべての仕事に通ずる、成功の法則なのかもしれません。
「それに、同じ目標を持つメンバーがいるというのは、やっぱり大きな原動力になりますよね。文化を根付かせるために大変なことも、実現したい世界を共有している仲間の存在は、何よりも心強かったです。多くの案件に忙殺されている今も、それは同じですね」
その実現したい世界とは、オープンイノベーションが当たり前になっている日本であること。そのために村田はこれからも泥臭く前を向いていくのです。