LGBT当事者かつ障害がある方のための転職・就職支援サービス ―誰もがはたらきやすい社会へのさらなる一歩

LGBT等の性的マイノリティ当事者かつ障害のある方が、より良い環境で自分らしくはたらけるよう、パーソルチャレンジ株式会社では、「LGBT当事者かつ障害者のための転職・就職支援サービス」を行っています。

取り組みの概要

近年、DI&E(ダイバーシティ&インクルージョン)の考え方の広がりによって、身体特性や性自認、性的志向など、多様な価値観を受け入れる機運が高まっています。しかしながらいまだに、「セクシュアリティに関する転職理由を面接で話しづらい」「障害とセクシュアルマイノリティの両方に適切な配慮のある企業が見つからない」といった、悩みを抱える当事者は少なくありません。

そこで、パーソルチャレンジでは、「LGBT当事者かつ障害がある方のための転職・就職支援サービス」を3月22日よりスタート。障害による配慮だけでなく、ジェンダー・アイデンティティやセクシュアリティに起因した不安や悩みを抱えた方に対し、専任のキャリアアドバイザーがキャリアプラン設計や求人情報の紹介などを支援し、転職・就職上の不安を一緒に解決していきます。
(詳細はこちら:https://doda.jp/challenge/service/support/rainbow.html

このサービス誕生のきっかけは、パーソルチャレンジ株式会社のキャリア支援事業部でマネジャーを務める並木 崇之がミーティングで発した一言。2017年の師走のことでした。

サービス開始までの軌跡

「……なにか納得できない。」そのもどかしい想いが提案に

並木は2014年にキャリアアドバイザーとしてインテリジェンス(現パーソルキャリア)に中途入社。その後、すぐにパーソルチャレンジに出向し、以来障害者雇用領域に携わってきました。並木は「誰もが伸び伸び暮らせる社会、差別のない社会づくりの力になりたい」という理念を持っており、これがパーソルへの入社理由でした。

そして、ある日のマネジャーミーティング。今後の事業について問われた並木は、

「障害者というだけでなく、社会的マイリティに属する方々へのご支援を広げていった方が良いんじゃないでしょうか」

と提案します。

さぞ、「LGBT当事者かつ障害者」の方を支援するサービスを立ち上げたいと何年も熟慮を重ね、機が熟したと判断して提案したのかと思いきや……。

「実は、ジャストアイデアで……。このときは気軽な気持ちで話しただけだったんです」(並木)

少しバツが悪そうに話す並木ですが、その提言は決して単なる思いつきではありません。自分の理念を胸にキャリアアドバイザーとして多くの障害者に真摯に向き合ってきたからこそ、あふれだした想いでした。

並木がキャリアアドバイザーとして担当している障害者の方の中には、LGBTの方も数多くいました。そして、その都度、はたらきづらさや不安を抱えながら転職活動を行っている姿を目の当たりにすると同時に、並木自身ももどかしさを感じてきました。

「紹介した求職者を面接した企業から、『障害者であることも、スキルも人柄も問題ないけれど、LGBTに対応ができないので……』といった見送りとなる返答をいただくたびに、やりきれない気持ちでいっぱいになりました。

LGBTをはじめとしたセクシュアルマイノリティは、国内で人口の約10%(LGBT総研調べ)存在すると推定されていて、決して遠い存在ではありません。それなのに、LGBTというだけで不利になることに、どこか納得できないでいました」(並木)

┃『否定しない』が根付いた風土の中、仲間とともに前進

「社会的なマイリティのある方々にもご支援を広げていく」――、並木のこの提言に、「NO!」の言葉は一切出なかったといいます。

「もちろん、ビジネスとして『こうした方がいいのでは?』『今やるべき?』という議論はありました。でも、パーソルチャレンジには、人の意見や考えを“否定”する文化がないんです。なぜなら、社内には障害者や、社会的マイノリティの方がたくさんいるので、誰かを、何かを、属性を否定することは隣の人を否定すること、助けないことは、隣の人を助けないことに直結します。それが感覚的に根付いている風土なので、今回も『いいんじゃない、やろうよ!』と、むしろ上司が背中を押してくれました。」(並木)

こうして、2020年の4月ごろ、サービスづくりのプロジェクトがスタートします。並木にとっては初のサービスづくり。何をどうすればいいか分からずにいると、上司は他のプロジェクト立ち上げ時の資料を見せてくれたり、「次はこれをしないとね」「協力者が必要だけど、誰に話をしてみる?」など、フェーズごとにナビゲートしてくれたといいます。

また、並木は、LGBT当事者に共感し、寄り添いたいと「アライ(Ally)(※)」活動をする、パーソルチャレンジの有志コミュニティ「P-Rainbow」のメンバー。メンバ―には、LGBT当事者もいるため、リサーチに協力してもらったり、さまざまなことを相談しました。そして分かったのは……。

(※)アライ(Ally):LGBT当事者への理解・支援を表明する人たちのこと。

「P-Rainbow」のメンバー(左から2番目が並木)

「世の中には、転職・就職のサービスサイトはたくさんありますが、ほとんどの場合、LGBTがOKかどうかは書かれていません。つまり、LGBT当事者は、『LGBTを受け入れてくれるかを自分で聞かなければいけない』のです。そして、そのことに当事者は一番といっていいほど大きな壁を感じていました。

障害特性はもちろん、セクシュアルマイノリティに理解のある専任のキャリアアドバイザーが、転職活動のはじめから終わりまで、トータルにサポートすることをしっかり打ち出していこう、――そう思いましたね。今、サービスページには、そのことがしっかりと記載されています。」(並木)

こうして、サービスの骨格を順調につくり進めてきた並木ですが、実際にサービスを開始するためには、この取り組みを理解し、“障害者採用に理解があり、障害配慮があるはたらき方ができるだけでなく、LGBT当事者がはたらきやすい職場づくりに取り組み、DI&Eを推進する企業”を探さなければなりません。

そして企業の理解を得るためには、RA(リクルーティングアドバイザー/法人営業)の協力が必須。並木は、社内説明会を開いたり、RAが企業に渡すことができるような資料を作るなどしながら、地道に協力を仰ぎ、周囲を巻き込んでいきました。

「RAにとって、スタート前のサービスを企業に説明するのは、通常業務のプラスアルファの仕事です。その上、サービスサイトもできていない状態なので、アクションを起こしづらいのは当然のこと。企業から『パーソルチャレンジがなんでやるの?』などと質問をされたらきちんと意義なども答えなくてはいけないのですから……。だからこそ、RAチームには、個別で、全体で、メールでと、いろいろな方法で意義や、自分の想いなどを丁寧に伝えるようにしました。常に『相手の気持ちになって考えること』を意識していましたね。」(並木)

周囲の協力によって大手企業十数社から賛同を得て、ついに2021年3月22日「LGBT当事者かつ障害がある方のための転職・就職支援サービス」がスタートしました。

提供開始を発表したプレスリリース
まだまだ道半ば。社会的マイノリティの方々をもっと支援したい

登録者数は毎月30~40人と、予想をはるかに超える数。すでに二人が転職を実現し(2021年8月現在)、現在面接の真っ最中という方も多数います。残念ながら見送りになった人も中にはいるようですが、その原因はLGBTではありません。この現状に並木は大きな手ごたえを感じているといいます。しかし、ときには心を痛める出来事も。

「ときどきLGBTだけれど障害者手帳を持たない方の登録があります。『なかなかこういうサービスがなくて、やっとここに辿り着きました』と。しかし、ルール上、障害者手帳を持たない方にはサービスの提供ができないため、お断りせざるを得ません。それが申し訳なくて……」(並木)

そう口重に吐露すると、最後に今後の展望をこう語りました。

「まずは、このサービスを多くの方に知ってもらいたいと思います。そしてLGBTの方の支援ノウハウをしっかりとためていき、『LGBT当事者かつ障害者の転職・就職支援』という領域で日本のトップになりたいですね。

また、個人的な想いとしては『LGBT当事者かつ障害者』だけではなく、社会的マイノリティの方々を幅広く支援できるようになり、いずれ、わざわざ障害者やLGBT向けといったサービスなどなくてもいい社会、偏見や差別などがない環境で誰もがはたらいて笑える世の中になったらいいなと思っています。」(並木)

TRY!Points

・自身の理念を胸に、業務に真摯に向きあった
・周囲の言葉に耳を傾け、相手の気持ちになって考えた
・意義や想いを丁寧に説明した

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