事業フェーズに合わせて、組織体制を柔軟に変化!「lotsful」のチーム運営術

働き方改革の一環として副業が解禁となった「副業元年」の翌年、2019年6月にパーソルイノベーション株式会社が運営する副業人材マッチングサービス「lotsful(ロッツフル)」が誕生しました。その後、副業に対する意識は企業、個人ともに高まり続けています。

こうした時流の中、7人の社員で運営しているlotsfulでは、社員以外にも副業メンバーとして、外部パートナー7人、インターンシップ生3人、パーソルグループの人事施策「ジョブトライアル」(※)からの参加者が8人と、多様なメンバーがサービス運営に関わっています。(2021年8月時点)。

そこで今回は、「lotsful」代表の田中 みどりと、ジョブトライアルから参加している小西 雄介(パーソルR&D株式会社 第1エンジン実験課 エンジンプラットフォームグループ主任)、熊谷 絵里香(パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部)に、インタビュー。
前半では、「どうしてこうしたメンバー構成にしたの?」「どうやって組織をまとめているの?」といった運営に関する疑問を田中に、後半では、小西と熊谷に加わってもらい、「参加してどうだった?」「気付きはあった?」など、“気になる!”を聞いてみました。

(※)「ジョブトライアル」とは
パーソルグループの社員が、労働時間の一部(月8時間以内)を使って、グループ内の別部署の仕事を最大3カ月間行うことができる人事施策。現業務と異なる経験や人材交流を通して、視野を広げ、自律的な学びとキャリア選択のきっかけを得ることを目的とした取り組みです。

【前半】

目次

フェーズに合ったプロが、副業でジョイン!

――多様なメンバーで運営されていますが、なぜこのような編成にされたのですか?

田中:新規事業は、どこに注力し、どこに人材を投入したら事業がスケールするかを検証しながら進めています。そのため、フェーズによって欲しい人材、必要なスキルが変わってきますし、正直な所、多くの人件費をかけられるわけでもありません。ですので、固定で人材を抱えるよりも、そのときどきで必要な専門スキルを持った方に業務委託という形でジョインしていただく方が、組織の全体的なレベル、機動力、柔軟性も上がる。――そう思い、現在の組織形態を取るようになりました。

――lotsfulの誕生から2年強が経ちましたが、実際、外部パートナーも変わりましたか?

田中:はい。例えば、事業がスタートしたばかりのころは、webサービス開発やwebマーケティングの領域に長けた方に入っていただいていましたが、今は一定サービスの形ができ、認知を高めていきたいフェーズのため、SNSの運用やイベント開催などを強化しています。SNS運用の実行部隊としてインターンシップの学生に入ってもらっていますし、イベントを毎月企画・開催しているため、副業の方に企画部分から手伝ってもらっています。

――「ジョブトライアル」からも8人が参加されていますが、この人事施策を活用しようと思われた理由は?

田中:主な理由は二つ。一つはグループ会社の中に仲間を増やしたいという想い。もう一つは、新しい事業に関わるという経験をする人を増やしたいという想いです。こうしたチャンスというのはなかなかないと思うので。

ジョブトライアルを活用したのは、今回で2回目です。前回は2人に参加してもらい法人営業をお任せし、今回参加の8人にはリサーチ業務をお任せしました。人数が多かったので、3チームに分けて「サービスサイトの顧客体験を向上させるための調査」、「コンテンツマーケティングに関わる調査」、「lotsful促進につなげられるパーソルグループ内のリソース調査」を担っていただきました。

――この体制だからこそのメリットはありますか?

田中:チームにない知見やアイデアを注入してもらえる、ノウハウをインプットしてもらえるのが、大きなメリットだと感じています。

フルタイムメンバーは、日々lotsfulの運営や副業マーケットについて考えているので、副業領域の“玄人”になってきてしまって、世の中の感覚とずれてしまうこともあると思います。たとえば、セミナー企画の試案中、私たちが「今さらだよね、みんな知っているし」と思うネタも、実は世の中にはそんなに発信されていはいない、知りたい人が多い、など。そんなとき、多様なメンバーと一緒に仕事をしていると指摘してもらえるのでとても助かります。

そして、もう一つ。自分たちが副業メンバーと仕事をすることが、lotsfulサービスの向上にもつながっています。副業の導入を検討している企業の不安の一つに、「副業者にどんな業務をお願いできるのか」「お願いする前に押さえておくべきポイントは何か」「どう関わればいいのか」などがありますが、このような質問にも実体験を通してお話しをすることができます。

メンバーに求めるのは、コミットではなくビジョンへの共感

――多様なメンバーをどのようにまとめているんでしょうか?

田中:まとめていないですし、まとめようとも思っていません(笑)

立ち上げ当初は、副業メンバーにもフルタイムの社員と同じように全力でlotsfulにコミットメントしてもらいたいと正直思ってしまっていました。でも、副業メンバーは、ほかにも仕事を抱えている。当たり前のことなんですが、それに気付いて……。その後は、お願いした業務範囲とアウトプットの期待値を決め、いかに自発的に取り組み、良いアウトプットをしてもらえるかを考えて巻き込むようにしています。

――そのために工夫していることはありますか?

田中:どの範囲で注力してほしいのか、いつまでに何をしてほしいのかをきちんと提示すること。そして、実施いただいたことのフィードバックをできるだけするように心がけています。「こんな顧客の声がありました!」「こんな成果がでました!」とか。

そして、何より大切にしているのは、サービスに共感してもらうことです。そのため、サービスのビジョンや目指す方向性、実現したいことをしっかり伝えるようにしています。もし、共感してもらえてないなと感じたら、どんなに優秀な方でもお仕事のご依頼はしません。共感がなければ、良いアウトプットはできないと思っているので。

【後半】

「前向きになったね」。他部署、他領域の業務への挑戦が、学びや気付きに

ジョブトライアルに参加したお二人。
左:小西(パーソルR&D) 右:熊谷(パーソルプロセス&テクノロジー)

――小西さん、熊谷さんは、なぜジョブトライアルに応募されたのでしょうか?

小西:私は、所属部署での業務で、事業の拡大や新サービスの展開を考える際に他社の動向や状況を調べることがあるのですが、そうした部分のスキルを上げたい、リサーチ力を高めたいと思ったのが一番の理由です。また、ほかのグループ会社がどのようなことをやっているのかよく分かっていなかったので、それを知る良い機会でもあると思い、応募しました。

熊谷:私は所属部署で、「プロテア」という新規プロダクトを担当しています。プロテアは、自己成長のための“複業”を促進することで、社員と組織の成長を支援するサービスのことです。そこで、他社の副業サービスがどういった想いで進んでいるのか気になったんです。また、パーソルプロセス&テクノロジー内の新規事業であるプロテアと、独立した事業として運用されているlotsfulの違いを体験してみたいと思ったのも、大きな理由の一つです。

――実際に参加してどうでしたか?感じたメリットなども教えてください。

小西:得たことはたくさんありました。中でもさまざまなバックボーンを持った人が集まると、それぞれに見方や考え方が違うということをしみじみ感じ、それを改めて実感できたことは大きなメリットだったと思います。

熊谷:lotsfulの内容を知ることができたのはもちろんですが、スピード感や温度感、進め方など、所属部署とのさまざまな違いを肌で感じられたのはとても良い体験でした。
たとえば、ジョブトライアルからの参加者の受け入れ方一つでも違っていました。プロテアで受け入れたときは、わりと丁寧に業務のインプットをしたんですが、lotsfulにジョインして私が言われたのは、「分からないことは、皆さんから聞いてください」でした。違いが分かったとともに、自律してlotsfulの一員としてはたらく、という意識付けができて、気持ちが引き締まりましたね。

田中:私がジョブトライアルの受け入れで意識していた点は大きく二つありました。

一つは、「まず、やってみる」という経験をしてもらうこと。新規事業は失敗してナンボのところがあります。既存事業ではなかなかその考え方になれないので、ぜひやってみてもらいたいと思いました。なので、皆さんにリサーチをお願いする際も、すべてを指示するのではなく、自分がどうしていきたいか、仮説を立てて進めることができるよう、余白部分をあえて残していました。

もう一つは、「意思決定」をどんどんしてもらうこと。自分のキャリアを選択するときにも意思決定が必要です。その体験をしてもらえたら、と思って……。

熊谷:そうだったのですね!余白があったこと、意志決定の体験のこと、どちらの点もすごく感じていました。

――この経験をお二人は、本業でどのように活かしていきたいですか?

熊谷:「まず、やってみる」というスピード感は、活かしていきたいですね。行動前に時間をかけるより、行動をしてから振り返り、また行動する――、そうしたほうが時間対効果が高いように思いました。

小西:限られた時間の中で、どこまで価値を発揮できるか――、そうした課題感は常に持って取り組んできましたが、加えて「まず、やってみる」ということを意識していきたいですね。これまで新しく何かを始めようとするとき、会議や検討にたくさんの時間を費やしていました。検討のスピードを上げることも大切ですが、まずは着手し、スピード感をもって進める。それが限られた時間内でいいものをつくる鍵なのかな、と今回の体験を通じて感じたので。

――所属部署の業務に良い変化が出ていたりしますか?

小西:周囲の同僚や上司から「考え方が前向きになったね」と言われます。「前のめりすぎない?」と言われることもありますが(笑)、それだけ自分でも以前より意欲的になり、積極的になったと思います。案件を前にしたとき、「やってみたら何かあるかもしれない。動いてみよう!」、――そう思うので、どんどん動いていきたいと思います。

熊谷:私は、大きな気付きがありました。実は、所属部署での私の目標設定における上期の課題は「意思決定」でした。まだまだ上司にいろいろと聞ける立場だったので意思決定ができていなかった。でも、lotsfulでは自分で仮説を立てて決め、どんどん進めなければなければならなかったので夢中でやっていたんです。振り返ると、けっこう意思決定できていたな、と。それに気付けたのは、本当に大きいですね。所属部署でもがんばってやっていこうと思います。

――お二人ともlotsfulでとても有意義な体験をされたのですね。
最後に田中さん、今回ジョブトライアルを活用してみての感想などを教えてください。

田中:私とは異なる領域で経験を積んできた皆さんにジョインしていただいたことで、それまで着目していなかった部分のリサーチ情報をいただけるなど、着眼点や仕事の進め方なども含めてたくさんの気付きをいただきました。とても感謝しています。

一方、月に8時間という短い時間の中で何をお願いするか、もう少しフォーカスを絞ったほうが良かったなと反省しています。また、お願いする業務の解像度をもっと上げていくことも必要だと感じました。
副業者に何をどうお願いするか。――これは副業を導入している企業、検討している企業ともに壁となる部分。副業を促進していくにあたっても、私たちがまず受け入れ側のスキルを上げ、ノウハウをためていきたいと思います。

小西さん、熊谷さん、改めてありがとうございました。

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