「PERSOL Work-Style AWARD 2021」のノミネート&受賞者が議論!私たちが「はたらく」を良くするためにできることって?

今年3月に開催されたPERSOL Work-Style AWARD 2021。「はたらいて、笑おう。」を体現する方々(グッドワーキスタ)に贈られる本アワードは、今年も業界や職種、はたらき方の垣根を超え、多くの方をノミネートさせていただきました。
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5月26日には、ノミネート者および受賞者によるオンライン懇親会を開催しました。5名のグッドワーキスタにご参加いただき、「『はたらく』を良くするためにできることは?」をテーマに議論ました。それぞれが持つ「はたらく」に対する価値観やこれまでの経験をもとに、白熱した議論が繰り広げられました。本記事では、当日の懇親会の様子をレポートします。

目次

はたらき方に正解など存在しない。一生懸命になれればそれでいい

――「『はたらく』を良くするためにできることは?」というテーマを考えるにあたって、はじめに皆さんのお考えを聞かせてください。

鬼島さん:経営者としての考えになりますが、常に従業員が自分のやりたい仕事をできているか、ワクワクできているかを考えていて、仕事を通じてそういった体験を提供できる会社にしたいと思っています。だから「『はたらく』を良くするためにできることは?」に対する個人的な解答は、「企業や経営者が仕事を楽しんでもらう工夫を考え続けること」となりますね。

鬼島 一彦(MTCJAPAN 取締役 経営者/Hinomaru Noodle 代表取締役 経営者/Choudo Ramen ブランドシェフ 共同経営者/Ennichi(日式カフェ居酒屋)共同経営者

グローバルチャレンジ部門。山形市出身。現在、ロシアのサンクトペテルブルクに居住。看護師として関東の医療現場で7年従事しつつ、スペイン、ウクライナ留学を経て2012年にロシアで日露ビジネスコンサル会社を起業。医療分野、飲食分野を中心に官庁系、民間企業のロシア進出支援を手がける。


瀬崎さん:私も鬼島さんと似ているかもしれません。まずは、会社や組織が変わらなければいけない。一度冨を築き上げた企業は、管理上の効率性やリスク管理の面から「減点主義」を採用しがちです。当たり前のことを当たり前にこなすことだけが評価され、それ以外は減点の対象になるか否かで判断される。鬼島さんがおっしゃるワクワク感って、チャレンジすることで生まれる気持ちですよね。もっとチャレンジできる風土や失敗を容認する雰囲気を組織がつくっていかないと、組織の中で仕事を楽しむという体験は、どんどん少なくなっていくかもしれません。

瀬崎 真広(NPO 法人ZESDA 理事)

パラレルキャリア部門。政府系金融機関に勤務しつつ、社外でNPO法人を運営。突出した強みを持たない自分だからこそ、社会人の誰もが一歩を踏み出し自分らしく輝ける仕組みづくりができると考え、自らをモデルケースとし、都会のサラリーマンが地方創生にて活躍しキャリア開発するための支援を行う。コロナ禍では町役場のワーケーションコンサルなどを受注しオンラインで仲間と共創。令和2年度農林水産省「漁村農村の宝」関東農政局選定個人優良事例。


ニコラさん:確かに日本は組織の中でチャレンジするという文化が少なく感じます。また、「これが正解だ」という固定観念も強すぎる。私が「ちん里う本店」に入社して、「伝統工芸品をもどんどん海外発信しよう」と提案したとき、周りにいた社員に白い目で見られたことを覚えていますが、いまでは売上のほとんどが海外。より良いはたらき方という点も含めて、決まった答えはないと思っています。

ゾェルゲル・ニコラ(株式会社ちん里う本店 常務取締役)

グローバルチャレンジ部門。2000年より日本に滞在。2012年に妻をサポートするため、明治4年創業から続く梅干の生産者で、当時同家の5代目が経営していた、ちん里う本店ではたらくことを決意。また同年、日本の老舗企業が海外で商品を販売するためのウェブショップ「NIHON ICHIBAN」を立ち上げ。2020年までに150のサプライヤーから100カ国以上に向けて6,000商品を販売。アメリカ、南アフリカ、ドイツ、北欧の再販業者との販売パートナーのネットワークも構築。ヨーロッパでの成長をさらにサポートするため、エストニアに「CHINRIU HONTEN EUROPE」を設立。


横尾さん:はたらき方の「正解」を社会全体でつくり上げようとしている雰囲気、ありますよね。僕はこれにすごく違和感があります。仕事上、教育現場にいることが多くて、たとえば「変化する未来に対応できる人材を育成しよう」みたいなテーマの授業がよくあるのですが、似た言い回しって「はたらき方」の文脈でもよく耳にしませんか。僕は、不確実な未来に合わせて個人を変化させる必要なんてないと思っていて、究極的に自分が好きなこと、もしくは好きとはいえなくても一生懸命になれている仕事があれば、それってすでに良いはたらき方ができていると思っています。そういう意味で、自分が一生懸命になれること、好きだと思えることを「発見すること」。これが、個人のはたらくをより良くするためのヒントになると思っています。

横尾 祐介(クックパッド株式会社 コーポレートブランディング部 部長/クックパッドの家庭科総合プロデューサー/クリエイティブクッキングバトル 代表

ネクストキャリア部門。大手電機メーカーを経て、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社にて複数のブランドマネージャーを歴任。コンフォートブラジャーの先駆けとなった「スロギー」など数々のヒットを企画。現在はクックパッドにて料理の価値のリブランディング活動を行う。フードロスをテーマにした「クリエイティブクッキングバトル」や、中高生に向けた「料理×SDGs」をテーマにした家庭科など、社会課題を料理の観点から捉えた企画を生み出している。


海老原さん:同感です。そう考えると教育は重要なテーマだと思います。学校内外でキャリアについて考えたり、多様な価値観を持てる経験を提供することが重要になってくる。さまざまな出会いを通じて、やりたいと思えること、好きだと思えることを発見してもらい、その子の得意な事を認めてあげることが本人の自信に繋がるはずだと考えています。

海老原 周子(一般社団法人kuriya 代表理事/文部科学省 外国人児童生徒等教育アドバイザー/東京都教育委員会 スーパーバイザー/カタリバ・パートナー

ダイバーシティ部門。ペルー、イギリス、日本で育つ。慶應義塾大学卒業後、外務省傘下の独立行政法人国際交流基金や国連機関にて勤務。2009年より外国ルーツの高校生を対象にキャリア教育や居場所づくりを行う。10年以上の支援活動を通じて、300人以上の外国ルーツの若者と接した経験をもとに、政府の外国人材受け入れなどに対する政策提言も実施。自らも社会のマイノリティとして、見えない障害と言われる発達障害を抱えつつ、異なる違いを強みに活かし、楽しく社会を変えていくことを目指している。2016年にはこれからの社会を変える若手リーダーとして、EU主催「Global Cultural Leadership Programme」に日本代表として選抜。                                

横尾さん:教育現場に限らずですが、認めてあげるってすごく大切ですよね。「やりたいこと」のハードルを高くしすぎず、小さなことでも個性を尊重することで、「自分はこれが得意なんだ!人よりできるんだ!」って自己肯定感が高まって、成長や強みに繋がるのではないかと思います。

一生懸命になれることに出会うために、何をすべきか

――一生懸命になれることを見つけるのが難しいという人も多いのではないかと思います。皆さんはどのようにして、それらを見つけてきたのでしょうか?

鬼島さん:同じ人間って一人もいませんから、自分にしかできないことは誰しもが必ず持っています。私の場合は、自分が一番活きる場所や一生懸命になれる場所を考え、さらに看護師という仕事をしていたというバックグラウンドを見つめ直した結果、ロシアに辿り着きました。ロシアって日本人が全体で3,000人ほどしかいなくて、さらにその中で医療にフォーカスして仕事をしている人となると、ほとんど自分1人に絞られてくるんです。ですので、自分の存在価値や一生懸命になれることを「つくりにいった」という表現が正しいかもしれません。

「どのようにして自分自身を見つめ直したか」とよく質問されますが、私は他人からのフィードバックやコミュニケーションが大切だと考えています。人と接することによって、リフレクションで自分という像が見えてくる。地球に自分しかいなかったら自分が何者か分からないのと同じで、ほかの人と接することで自分の考え方を整理できたり、アイデンティティを発見できたりしますよね。

瀬崎さん:リフレクションは自分を見つめ直すうえでとても重要だと思います。ただ大組織の場合は同じ組織内でリフレクションを受けるのではなく、一歩外に出てリフレクションを受けた方が良いかもしれませんよね。

「一生懸命」が一つのキーワードになっていますが、私は一生懸命になれることって、「誰かから求められている」ケースが多いのかなと思うんです。だから、一見単純に見えますが、自分が一生懸命になれることを見つけるというのは、「個人がより良くはたらく」という意味でも、「社会貢献」という意味でも正しい考え方なのかもしれないと思いました。

横尾さん:それでも好きなこととか、夢中になれることって、ときとして感度が鈍って分からなくなったり、いまだにそうゆうものに出会えていない人だってきっとたくさんいるはずです。でも、別にそれは悪いことじゃない。そんなときは、偶然気付いたことや出会ったものを起点に考えても良いと思います。あの人が困っていたから助けてあげたとか、そんな小さなことがきっかけで自分が一生懸命になれることって見つかるもので、無理やり見つけに行くことだけが絶対ではないでしょう。

また、鬼島さんが「この世に同じ人間はいない」とおっしゃっていましたが、そういった小さな気付きや問題意識を持てることそのものが、その人独自の視点なので。一生懸命になれることを見つけるには、いろいろなルートや考え方があると思います。

海老原さん:求めれられていてもお金にならないこともたくさんありますよね。特に社会課題の解決を仕事としてきた自分のキャリアを振り返ると、そんなことの連続だったなって……。それでも自分の仕事にがむしゃらに、かつ楽しくはたらけたのは、必要としてくれる人がいたからだし、見過ごされがちな課題をどうにか解決することが必要だと自分が強く信じていたからだと思います。

ニコラさん:一生懸命になれることを見つけるためには、皆さんのおっしゃる通りいろいろな考え方やルートがあると思うのですが、共通していえるのは、いずれも「一歩踏み出す」必要があるということです。そして一歩踏み出したら、その先には必ず苦労が伴う。これまで自分の人生の中で夢中になったことや一生懸命になったことを振り返ってみてください。困難や苦労があったからこそ、夢中になれた、一生懸命になれたのではないでしょうか。そして、その苦労の先に、人々の笑顔や感謝、自分自身の成長があるのだということを忘れてはいけないと思います。

やりたいことを探すとき、私の場合は実現方法を考えずにまず自分がやりたいことを並べてみて、その後本当にやりたいことをピックアップして実現方法を考えていくという方法を取ります。何かに挑戦したいけど分からないという方はぜひ試してみてください。

懇親会に参加してみての感想

瀬崎さん:今日一日でたくさんの学びがありました。改めて、いまの時代、「感じ取る力」がすごく求められていると思いました。周りからどう思われているかとか、自分は何をやりたいのか、何が好きなのかもそう。機械のように目の前の作業をするのではなく、自分がやりたいことや興味があることを突き詰めて考えていくことが重要だと感じました。「感じ取る力」を磨くために、私にできることがないか、今日の議論を参考にしてもう少し深く考えてみたいと思います。

ニコラさん:人生は短いです。80歳まで生きるとして、ほとんどの人は生まれてからの10年の記憶と死ぬ直前の10年の記憶を失うといわれます。つまり、自分の人生のうち60年間の記憶しか残らないわけで、1年は約2%に充当します。何がいいたいかというと、人生は短いので行動あるのみということ。いまやりたいことがなくても、何か小さな行動一つが人生のヒントになるかもしれません。今日は貴重な時間をありがとうございました。

海老原さん:私自身はいまの仕事をやりきった感があり、次のステップを模索しているところでした。本日皆さんと話して、ヒントをたくさん得ることができましたし、次に自分が挑戦したいことを改めてもう一度じっくり考えてみたいと思えました。ありがとうございました。

鬼島さん:今回、PERSOL Work-Style AWARDの関係者の皆さまと交流できるという素敵な機会をいただいて、意見交換できたことは自分の人生の中でとても大きく、有意義な経験になりました。私はもともと看護師をしていましたが、看護師の仕事の魅力って患者さんのさまざまな人生に触れることができることだと思うんです。50年、60年生きてきた患者さんの一瞬一瞬の人生を本人から生の声で聞くと、自分の人生も豊かになっていくような感覚になります。まさに今日、色濃い人生を送っている皆さんの貴重な経験に触れることができて、自分が200年、300年と生きている気持ちになれました。本当にありがとうございました。

横尾さん:皆さんが挑戦していることを「やりきっている感」、それに今日一番しびれました。皆さんの想いに触れて、来週からはじまるプロジェクトへのモチベーションがさらに上がりました。こういう場をつくっていただけてありがたいですし、いろんな人と接すること、話すことの大切さに改めて気付きました。ありがとうございました。

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