最高人事責任者が会社を変える!?「doda」が人事必見のセミナーを開催!

今、CHRO(最高人事責任者)に求められる役割とは?
メルカリの成長を支えるCHROが思う人事ミッションは「組織と人材のWIN-WINを最大化する」こと。

パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、7月3日、株式会社メルカリ 執行役員 CHROの木下 達夫氏をお招きし、「最高人事責任者が会社を変える~人事が知っておくべきCHROの機能と役割は〜」と題したセミナーを開催しました。

目次

セミナー内容

はじめに日本CHRO協会事務局長でもある一般社団法人 組織内サイレントマイノリティ 代表理事 須東 朋広氏が、CHROの潮流について解説。その後、P&GやGEで人事のプロフェッショナルとしての経験を積み、2018年12月にメルカリにジョインした木下氏が、同社におけるCHROの役割やこの7カ月で行った具体的な施策について講演しました。その一部をご紹介します。

●変化する「働く人と組織の関係性」と、CHROに求められる役割(一般社団法人 組織内サイレントマイノリティ 須東氏)より

CHROの役割~「育成する文化」への変革

現在、AIやRPAなどテクノロジーの発展により、オペレーティブな業務は代替され、人間しか成しえない「高い創造性」や「コミュニケーション力」が求められています。そしてより「個」が独立してはたらく方向、つまり自らキャリアを選択・向上させ、企業に依存しない「自己選択と自己責任」の時代へと変わっていきます。

時代の変化に伴い、CHROに求められることはたくさんあります。中でも「育成する文化への変革」が特に重要です。ここでいう「育成する文化」とは、一人ひとりの人材の能力を引き出して「育てる」仕組みをつくり、変化に適応し、「育つ」ための機会を与えるということ。そして大切になるのが、はたらく人と組織の関係性に関するフィロソフィー(見方・考え方)を、しっかりと持つことです。
そこで重要なのが「心理的安全性」です。心理的安全性を確保するためには、企業がどんなスタンスではたらく人に向き合っているのか、フィロソフィーを明示することが大切です。

その上で具体的な制度を構築していくのですが、これからの人事制度構築において、「エンプロイアビリティ(※1)保障型」が台頭してくるでしょう。当事者意識や主体性を持ち、価値を創造する人材が活躍できるように、内発的動機づけと成長支援を行う制度構築が必要になってくるのです。

※1 エンプロイアビリティとは、Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉で、雇用され値する能力のこと。

CHROの役割~「現場の人事力」を高める

構築した人事制度を実際に運用するのは人事ではなく、現場のマネジャーに他なりません。運用されるために必要な力が、「現場の人事力」です。現場の人事力を高めるには、変えていかなければならない考え方が2つあります。1つは「超効率主義」です。働き方改革で生産性向上が問われていますが、「それって儲かるの?」「メリットは何?」といった投げかけばかりでは、良い人材も育ちませんし、新しいものは生まれないでしょう。次に、「職場マネジメント」も変化が必要です。理想的な職場マネジメントというのは、業務推進力と人望が厚い人材の登用や、期待役割の明確化と自立成長支援、心理的安全性が担保された丁寧なフェイストゥフェイスのコミュニケーションです。

これからの現場マネジャーに必要なのは、経営に対しては「どのような方法でビジョンを実現していくのか」という「経営言語」で提案すること。そして現場のメンバーに対しては「どのような姿になりたいか」といった「キャリア言語」で日ごろから話をすることです。そうした、現場の人事力を高めることも、CHROの重要な役割なのです。

●メルカリにおけるカルチャーと人事戦略について(メルカリ CHRO 木下氏)より

飛躍的な成長を続けるメルカリは、人事における「課題解決遊園地」

メルカリはまだ創業7年目の会社で、人事に関する課題が本当にあちらこちらにある「課題解決遊園地」です。フリーパスで解決し放題、楽しみ放題です。

メルカリのミッションは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」。これは創業時から掲げていることです。
GMV(流通取引総額)は、毎年40%以上の成長を続けています。そして、社員数は、3年前400名弱だったのが、現在は1800名を超えるほどの規模となりました。
このような成長曲線を描いている企業の人事やCHROだった場合、どのようなことが懸念事項として考えられ、どのようなことが大変だと予測されるでしょうか。

たとえば、「採用と入社後のオンボーディング」が考えられます。新入社員が抱えるであろうギャップですね。そして中途採用が中心で外国籍の社員も増えていますから、「文化の醸成と浸透」も課題になってくるでしょう。また、事業視点ではどうでしょうか。1年間で不要となった製品の推定価値は7兆円もの規模で、まだまだ大きく成長できる可能性を秘めています。その中でCHROは経営陣の一員という観点から、どのような打ち手を講じれば、成長を持続できるのかを考えていかねばなりません。もう一つ、IPO(※2)後のメガベンチャーは、リテンションリスクを抱えています。現在の離職率はまだ高くない程度ですが、今後のビジネス展開や企業の方向性次第では、これ以上になっていく恐れも考えられますよね。

このように事業や市場が広がりを見せる中で、人事としてどのように経営陣の期待に応えて成長・加速を実現できるかが、CHROとしてのやりがいであり、大きなチャレンジだと実感しています。

※2 IPOとは、「Initial(最初の) Public(公開の) Offering(売り物)」の略で、新規公開株のこと。

組織と人材のWIN-WINを最大化する

私は「人事のミッションは」と聞かれたときに、いつも「組織と人材のWIN-WINを最大化する」ことだと答えています。

メルカリのHR領域では、現在2つの大きな転換を抱えています。
1つ目は「採用に強いメルカリから、個人の成長を加速するメルカリへ」のシフト。2つ目は、「圧倒的なCX(カスタマーエクスペリエンス)(※3)のために圧倒的なEX(エンプロイー・エクスペリエンス)(※4)を実現すること」です。

まず、メルカリ内の人事に関する課題を把握し、今後の打ち手を人事メンバーとともにつくることから始めました。応募から入社、評価・報酬、育成・異動、職場環境、そして退職まで、各フェーズでどれだけ良いEXを提供できているのか、組織診断サーベイなどをもとに現状を分析。明確になった課題を、フェーズアプローチをとって解決していくことにしました。1年目の打ち手としていま着手しているのは、「評価・報酬」です。そして、2年目は、HRシステムの改変。そして3年目はグローバル展開を見据えた仕組みを計画しています。

※3 サービスを利用した際に感じる心理的・感覚的な価値観のこと。
※4 従業員が会社組織の中で体験する経験価値のこと。満足度やスキルアップだけでなく、従業員の健康や組織としての一体感などに影響する要素すべてを対象とします。

人事施策を経営に提案するとき、気を付けることは

創業者の山田は、「やるべきだと思ったらどんどん提案して」と言ってくれます。実際に却下される提案もたくさんあるのですが(笑)、「10回持ってきて、合意を得ることができるのは1~2回でいい。イチローだって3割なんだから」と言ってくれる。チャレンジンできる環境なのは面白いですね。
一般的には人事が経営陣に制度、施策を提案するとき、職業柄慎重になってしまうことが多いと思います。メルカリでは、持っていきたい方針の確認や、中間報告などの位置付けで、仕掛り中の案件であっても経営陣と壁打ち的に議論を重ねていくことが許されています。大切なのは、施策を一つひとつ「ぶつ切り」で持っていくのではなく、「こんな組織を創るには、こんな施策が必要。そのためにこの提案をしている」というストーリーを持って提案をすることです。メルカリがミッションを達成できるよう、CHROとしてレバレッジを効かせて、大きなことを仕掛けていきたいと考えています。

その後、須東氏と木下氏によるパネルディスカッションと、会場からの質疑応答が行われ、セミナーは幕を閉じました。

登壇者プロフィール

株式会社メルカリ
執行役員 CHRO 木下 達夫

慶應義塾大学卒業後、1996年P&Gに入社し、人事部で採用とHRBPを担当。2001年GE入社。HRリーダーシッププログラムを経て、GEプラスチックス(現:SABICジャパン)のブラックベルト、同栃木工場の人事マネジャー、GEキャピタルの人事ディレクター、同アジアパシフィック人材・組織開発リーダー、日本GE人事部長などを歴任した後、マレーシアにてASEAN人材・組織開発ディレクター、GEオイル&ガス(現:ベーカー・ヒューズ・GEカンパニー)のアジアパシフィック人事責任者となる。2018年12月からメルカリに参画し、現職。

一般社団法人 組織内サイレントマイノリティ
代表理事 須東 朋広

最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会を立ち上げ、事務局長として8年半務める。その後、中高年、女性躍進、障害者雇用、転職者、正社員の雇用やキャリアの研究をインテリジェンスHITO総研(現パーソル総合研究所)主席研究員として、5年間務める。2016年10月一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げる。2019年7月より日本CHRO協会事務局長に就任。主な著書に『CHO-最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社)、『キャリア・チェンジ!』(生産性出版)などがある。

開催背景

ビジネス環境が絶えず移り変わり、先の見通しが立てにくい世の中。企業が成長を続けていくには、イノベーションの創出が不可欠であり、イノベーション創出人材の育成・登用が企業に求められています。そうした中、注目を集めているのが、戦略的人事を遂行するCHRO(最高人事責任者)の存在。そこでメルカリ 執行役員 CHROの木下 達夫氏をお招きし、セミナーを開催することになりました。

※詳しいレポート記事は、こちらよりお読みいただけます。

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