外国人材にとって、日本はいまでも憧れの国?アジアで一番の先進国?
思い込みをなくし、人材戦略を考えたうえでの外国人材採用が大切。
11月15日、PERSOL Global Workforce株式会社 代表取締役社長の多田 盛弘は、岩手県八幡平市で開催された岩手銀行とパーソルホールディングス株式会社が共同主催した「新在留資格『特定技能』を学び、外国人材を活用した成長戦略を考える」と題した外国人材の採用・活用に関するセミナーで講師を務めました。
今回のセミナーは、岩手県内の企業の人材不足を解決し、さらなる成長戦略をともに考えるための取り組み。「外国人材の採用・活用」における国内外の人材マーケットや日本国内の在留資格について学べるとあって、総勢約40名が参加しました。
セミナー開催の背景
日本国内の企業における人材不足は進んでおり、2030年には労働人口が644万人不足する(※)といわれています。中でも地方の中小企業の人材不足は深刻化しており、企業の成長戦略を考えるためにも人材確保の新たな方法を考える時期が来ています。
岩手県は今後約6万人の人材が不足すると予想されています。そこで、今年4月からスタートした新たな在留資格「特定技能」を活用し、現在の人材不足を解決できるヒントを考えるべく、今回のセミナーを開催しました。
(※)パーソル総合研究所 労働市場の未来推計 2030
セミナー概要
セミナーの目的は、「外国人材採用のステップを明確にする」こと。「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見・思い込み)を取り除く」「世界と国内の人材市場を正しく理解する」「自社の採用課題を理解する」「外国人材採用のアクションプランをつくる」の4つに重点が置かれました。途中、ワークシートを活用し、企業の人事・経営戦略においての課題を改めて考え、課題解決のためにはどんな人材が必要かを考える時間も設けられました。
セミナー内容(一部抜粋)
(1)新興国経済と外国人材の現状
「日本は経済大国である」「新興国では労働力が余っている」「外国人材より日本人材のほうが優秀」「外国人材は日本ではたらきたい」は思い込みであることが語られました。
パーソル総合研究所 APAC就業実態・成長意識調査(2019)
多田:日本が先進国で経済大国というのは間違いではありませんが、ここ数年の新興国の経済発展はすさまじい速さで進んでいます。経済成長率を見ると、日本がここ数年横ばいであるのに対し、ベトナムはなんと18倍、中国は30倍です。数年後には、都市部のホワイトカラー層ではインドの年収が日本に追いつく可能性もあります。
また、いままで日本ではたらく外国人材の割合で高い水準を占めていた中国やベトナムは、すでに高齢化社会に突入しています。特に中国は、労働力を提供していた側から獲得する側に代わる可能性が非常に高いと思われます。
さらに、自己啓発のための活動数を比較するとAPACの中で日本がもっとも低いという結果がでています。新興国の外国人材は『成長・成功』への意欲が強く自己研鑽をする割合が高いのです。
『憧れの国』『アジアで一番の先進国』という日本の国家ブランドはいまも健在ですが、徐々にそのイメージは弱くなっています。そのため今後の外国人材の採用にもその影響が出る可能性は大きいでしょう。
(2)日本国内の採用事情
今後の日本の人材不足に対し、「外国人材」が解決策となるのかについて語られました。
多田:2030年には労働人口が644万人不足するといわれるいま、『外国人材』は人材不足解決策の一つの手段にすぎません。『女性の活躍』『シニアの活躍』、そして『生産性の向上』のための施策も合わせた総合的戦略を考えることが大切です。
(3)外国人材採用のための具体的な制度
外国人材の各在留資格の特徴やメリット・デメリットが伝授され、「外国人材のほうが人件費が安い」ということも思い込みであることが語られました。
多田:外国人材といってもさまざまなレベルの多様な人材がいます。また、外国人材の採用にかかる費用は、本人への給与だけではない場合が多い(ビザ取得のための費用や、人材会社・監理団体への手数料など)ので、自社の人材不足を解決するために『本当に外国人材は必要か。またどんな人材をどのように活用するか』を明確にイメージすることが何より大事です。
(4)外国人材採用のための具体的な制度
外国人材を活用するために、企業で気を付けたいことが語られました。
多田:現在、外国人材を採用している企業の課題感、日本ではたらく外国人材の不満1位はともに『言語・コミュニケーション』。言葉の壁です。採用前に日本語のレベル感を確認しておくとともに、来日した後も彼らの日本語をフォローしていく必要があると思われます。
その後、外国人材の活用により企業のグローバル化に成功した事例も紹介されました。そして、最後に多田から、「外国人材とは企業にとって『グローバル化する可能性』である」とメッセージが送られ、セミナーは終了しました。
参加者の声
「整理して、分かりやすく教えていただきありがとうございます。優秀な外国人がはたらいていますので、むしろ日本人の勉強不足への危機感を感じます。人員不足により、はたらくモチベーションが下がってしまうのも現実ですが、単に労働力、ということではない存在として切磋琢磨していければと思います。」(宿泊業)
「外国人労働者もいいが、日本人もいいと思うところで悩みます。一番は企業の負担金です。いろいろ考えるヒントになりました。ありがとうございました。」(医療・福祉業)
「外国人材について、広く知ることができ、今後の採用に関する検討、事業展開に役立たせることができる。ありがとうございました。」(複合サービス事業業)
「外国人材も活用次第で、日本人と同等以上の業務を行うことができると感じた。また、労働力不足に対応できるのは、外国人材を登用することしかないと思われた。一方で、経費の出費や各種届出が必要である(書類作成の業務が多い)点について課題はある。」(その他)
これからもPERSOL Global Workforceは外国人材に関する思い込みをなくし、外国人材の採用・活用を考える地方自治体でのセミナー・講演などの取り組みを継続していく予定です。また、企業にとって「人材不足を解決し、これからの成長のための戦略」の中での解決策の1つとして外国人材に関する人材サービスも一気通貫で提供していく予定です。